2011年9月30日金曜日

プリンセス帰途に着く

フランクフルトに向かうバスの中。今日中にはお城に戻る予定です。

2011年9月29日木曜日

アイネン・モメント・ビッテ

私のブログを読んで下さっている皆さん、更新が思うようにできずに済みません。
学校、ガイゼンハイムでのワークショップと続いた後、月曜からアルザス、ファルツ、ラインガウ、モーゼルを移動中で、思うようにネットにアクセスできません。
通訳をしつつなので、あまり写真は撮れていませんが、新しい発見の多い有意義な旅となっています。1日にお城に戻ってから、この旅の諸々はご報告させていただきますね。
10月に入るといよいよカンプタール近辺の白の真打、グリューナーとリースリングの収穫も本格化しているでしょう。
さあ、忙しくなるぞぅ!!

2011年9月26日月曜日

旅がらみ。「どういうこと?」な4つの出来事

925日(日)
その1:
日本を代表する旅行代理店J社より、オーストリアのワイナリー巡りツアーの企画&ガイド&通訳を依頼したい、との打診。
なんとその依頼内容たるや、ワイナリーや産地のホテル、レストランなどの選定&アポ取りは全部私におんぶにダッコな割には、ウィーン市内のホテルはJ社指定。空港からホテルへの送迎車など無駄なものは自動的について来るのに、一番肝心なウィーンからワイナリーへの足は「電車を使うか、自分で手配して欲しい」ですって。山の中をどうやって電車で行くんでしょうかねぇ? それに、旅行代理店のお仕事は、アゴアシマクラの手配ではなかったかしら? しかも、挙句の果てに参加者のリクルートは完全な私頼みJ社としては、その上私の日墺往復航空運賃は不要なのですから、こんなに美味しい話はないですよねぇ。
あー、あほらし。
その2:
今度は友人の企画する仏独ワイナリーツアーに通訳としてアルバイトしないか、との打診。嬉しいお誘いと思いきや、オーストリアからの交通費も現地の宿泊費も食費も自腹。通訳料も4日やるのに3日分しか支払われない上、低レート。
そんなバカな、とゴネにゴネ、ようやく1日分の通訳料のオンと食費の一部負担を得られたことで合意(強調しておきますが、それでもオーストリア往復と宿は完全な自腹)。
そこへもって来て、旅行会社の担当者からのメールに唖然。
「この度はツアーガイドをお引き受けいただき、有難うございます」。しかもご丁寧に「アシスタント・ガイドの心得」なる詳細インストラクションまで添付されているではありませんか…。
当然お返事には「この度通訳を務めさせていただきます岩城です」。そして友人には「ガイド引き受けた覚えはないから」。
その3:
ドイツの電車の切符の自販機は(全国的にそうかどうかはわかりませんが)、Fahrkarteと大書してあり、一見オーストリアとよく似ているように映りますが、買い方は機種により微妙に、または完全に違います。あれこれ試行錯誤するものの、いつも時間切れで最初の画面に戻ってしまい、なかなかお金を払うところまで行き着きません(あ、そうそう。日本ではお金を入れてから行き先でなく金額を選びますが、こちらは行き先を選んで、料金を確認してからお金を販売機に入れます)。…で、ようやくお金を入れる段になって、今度は小銭がないことに気づく。ここで€5、€10など小額紙幣がないと、ローカル路線の切符は買えません(涙)。紙幣を持っていたにしても、こちらの自販機はなかなかお札を食べてくれません。最初は入れたお札に問題があるのか、と違うものに替えたりしていたのですが、どうやら単にご機嫌の問題らしく、色々な入れ方をしてなだめすかしていると、57回目くらいに、ようやく食べてくれます
…ったく、疲れる、っつーの。
その4:
自販機が気まぐれなら、かなり大きな駅にしかない切符売り場の職員もてーんでいい加減。フランクフルト駅で「コルマールまで、なるべく早く着く行き方で」とリクエストすると、まだ5時ちょっと過ぎなのに、着くのは10時半過ぎだと言います。しかも、途中乗換駅では、スイス側から仏側まで10分以上歩く、との説明。一応サイトで大体の時間をチェックしていた私は「カールスルーエ経由はないの?」と確認。すると、ちゃーんと20分以上早く着く行き方があるではありませんか!! しかもこのおばはん、座席指定をしないと座れない長距離列車なのに、指定券の存在すら教えてくれませんでした。(おかげで私は、トイレ脇の通路に、肩身の狭い思いで立ち尽くす羽目に…)
もう、真面目に働いてよね!

…しかし、この遣り取りには、実は赤面ものの前段が存在します。
例によってつたないドイツ語で“フランクフルトとコルマールの往復。ただし戻りは中央駅ではなく、フランクフルト空港で”と言いたかったのですが、空港=飛行場Flughafenを何故か飛行機Flugzeugと言い間違えてしまったのです:)))))
おばちゃん、お腹抱えて笑ってたから、プリンセスの意表を突く言動に脳みそよじられちゃったのかも…
本日のお粗末。テケテンテンテン

2011年9月25日日曜日

笑ってやって下さい

今日で3日間のガイゼンハイム(ラインガウにある世界有数のブドウ栽培&醸造研究機関)でのワークショップが終わります。午前中はMWとドイツ語圏のMWに例えられるWeinakademikerの親睦会なので、パスして仕事をしています。
ランチの後はVDP(ドイツの一流ワイナリーの組織)テイスティング、そして夜はコルマール(アルザス)への移動、ということで、今日はずっと履いていた便利靴(ワイン畑歩きから、カジュアルなレストランでの食事まで一足でこなせる無難でタフな靴)から、普通のビジネスシューズに替えようと、スーツケースから靴を出して愕然…
写真のペアの左右ををよくお見比べあれ…
どちらもイタリア製だ、なんか文句あっか?
出発前のプリンセスの体調不良、タイト・スケジュール、3国をまたいでの飛行機と幹線&ローカル電車、バスを乗り継いでの旅行手配の煩雑さ、滞在許可問題のストレス…の重なったまさに“ご乱心”状態がおわかりいただけるか、と
とほほ…

2011年9月23日金曜日

ワインはディプロマティックに批判なさい

922日(木)
風邪を押してのワインアカデミーでのディプロマ・セッション参加、ようやく昨晩で終了。
泊まりがけセッションの間中は、各自学校近くに宿を取ります。そして、昼食は学校の向かいのホテルのビュッフェで、夕食は適当に街のレストランに集まって、翌日の授業に影響を及ぼさない範囲でワインを楽しむ、というのが恒例です。

今回はさすがに最初の二晩は、体調不良のためお付き合いできませんでしたが、3日目にようやく復活。前回私が日本から甲州ワインを2種持って来たので、今晩はお返しに豪出身でスイス在住のティムが極上のスイスワインをご馳走してくれることになっています。他にも色々な生徒がワインを持ち込んでいる模様。

で、持込ワインと店のお勧めを適当に混ぜ、赤白の順番だけ決めて食事中にブラインドで飲んでいき、皆でコメントを出し合います。当然、WSET Diploma方式で、クオリティ、その理由、品種と産地、価格帯、ヴィンテージ、飲み頃などについて、あーだこーだ、言い合うわけです。8時半から夕方5時半まで、みっちりテイスティングをさせられて、まだ懲りずにやってます:)

ただ、この集まりの、他と違ってちょっと恐いところは、「NG。酸化しまくってるし、安っぽい樽が強過ぎる。ちょっとこれは飲めません。€5以上出したくない。」などと言って、グラスに残ったワインを吐器代わりのビールジョッキに空けたりした場合、「それ、僕のワイン」「これ、兄が造ったワイン」といった反応がザラだと言うこと。涙目で睨まれます。
英語クラスの面々は、私とスペイン人、そして二人のスイス在住豪人を除いて、全て東欧から。


 プロ、それもワイン屋やソムリエ、ジャーナリストだけでなく、ワインメーカーやワイナリーのオーナーもクラスには多いうっかり貶し過ぎると、クラーい雰囲気になってしまうので、あくまでディプロマティックにワインを批判する術を学ぶことになります。

造り手としての誇りだけでなく、チェコ、ハンガリー、スロヴァキア、スロヴェニア、スペイン、オーストラリア、スイス、日本…と、それぞれのお国自慢も火花を散らします。
また、こちらのヒトは授業中であっても、きっぱり自説を述べるばかりか、「今のゆかりのコメントは、ボディもフレーバー・インテンシティーも、余韻もミディアム・プラスなのに、クオリティがアクセプタブルはおかしくないか」などと、他人のコメントにも堂々とケチをつけてきます。

チェコではかなり有名なソムリエールらしいクラーラが、
ワイン誌のテイスティングパネルも務めるワインメーカー、ペーターにワインを注ぎます。
そこへもってきてお酒が入ると、日本人的にはタラーっと冷や汗ものの言葉をぶつけ合うこともしばしば

今晩はブルゴーニュ、ボルドーのグラン・ヴァン、そしてローヌ大好きな私の仲好しティム君が「あんたはスノッブ」と虐められています
可哀想にティム君「いや、僕は美味しいワインを愛しているだけなんだ。このチェコのワインも素晴らしいし、君のワインも大好きだよ」とカポカポ、カポカポ、グラスを空けていくうち、すっかり出来上がってしまったよう。「ゆかり、オーストラリア的ワイルドな考えが浮かんじゃったよ」などと妙な台詞を吐いては、魔が差したキューピーような含み笑いをしています。
Australian wild thoughtにご満悦のティム

ねえねえ、ティム、いい加減にしないと明日の授業が辛いぞー:)

プリンセス崩御の危機

今までシリアスなことはあまりこのブログで公表してきませんでしたが、滞在許可が下りない問題は、いよいよ深刻化。しかも、その許可申請のあり方がなんとも理不尽なのです。
この問題、これから皆さんともじっくり考えて行きたいと思います。
滞在許可が下りない場合、近いうちにプリンセスの一時崩御もあり得ることをお知らせしておきます。

2011年9月21日水曜日

7ユーロの南仏ワインに大感激!

9月21日(水)
昨日、朝最初のワインに鼻を近づけると…、おお、安そうで、薄そうな、低温発酵っぽいエステル香と、オールドワールドっぽい抑え目の果実味とミネラルを、微かながら感知できるではありませんか!!! 
たかだか7ユーロの、マス・ネゴシアン(Jean Jean)のピクプール・ド・ピネ Picpoul de Pinet Ormarine 2010 に、うち震えるが如く感嘆するプリンセス:) たまには風邪もひいてみるものですね。

2011年9月20日火曜日

無嗅覚テイスティング実験

9月20日(火)
昨日の授業は、いやぁ参った…鼻が全然利かないので何をテイスティングしても、砂を噛むようです。全部苦くて不味い…。
MWを受験中の講師ジュリア・セヴェニッチに「ねえ、このオレンゴン、まるでブルゴーニュでしょ、森の下草のような複雑な熟成香に、シルキーなタンニン…。感激ものよねぇ」と訴えかけられても、何のことやら、な悲しい状態

…でもプリンセスはくじけません。試験本番に風邪で臨まねばならない事態だって、ない訳ではありませんから、その時の心構えくらいは、この場で習得しよう、とばかりに、無嗅覚の中、いかにワイン・テイスティングの答案を書き上げるか、丸一日人体実験を繰り広げました。

普通、外観⇒香り⇒味わい⇒結論、と書き進めるのですが、この状態でそれは無理。外観を見てある程度熟成度合いに見当をつけたら、全く知覚不可能な香りをすっ飛ばして、味わいをみます。
そこでわかったのは、比較的感知可能な順に;

  1. 香りがまった嗅げなくても、一番よくわかるのはタンニンの量です。これは味わいというより触覚ですからね。でも、「甘い」とか「ファイン・グレイン」などの質の把握までは難しい。
  2. 次に、余韻の長さも比較的よくわかります。
  3. 甘さも大分感度は落ちているものの、なんとかわかります。
  4. アルコールは喉や口中の温かさである程度感知できるのですが、通常高めで感じる独特の甘さや、更に高くなると出てくる苦味のニュアンスまで感じることができません。
  5. 悲しくなるくらいわからないのが、ワインの命であるふたつの要素、『酸』の高さと『香り&味わいの風味のニュアンス』です。

の一番肝心の部分を、精度が悪いながらも感知可能な要素と、いつもは補助手段にしかならない外観から可能な限り多くを読み取った情報とを組み合わせて、これまでのテイスティング記憶の引き出しから言葉を探し出して、それらしく得点の取れるテイスティングノートになるよう、作文:)して行きます。

これ、なかなか知的ゲームとして楽しい!
ひょっとすると、普段の私の得点を百とすると、60-70いけてるような気もします。

とはいうものの、熱のある中、別に理論編の講義も受けつつ17種のワインをこの方法でテイスティングし、答案を仕上げるのは、言葉では語り尽くせぬ負荷のかかる、精神的&肉体的に消耗し切る作業でございました。

2011年9月19日月曜日

神様、どうかゆるやかに!

9月19日(月)
昨日は具合が悪かったので、ホテルに着いたら何か食べ物を買って部屋で食べ、サクサク作業を片付け、早めに寝たい気分だったのですが、何せ日曜はコンビニのひとつも開いていません(って、そんなものも存在しないし)。
仕方なく、ルストの町のヴィルツハウス(=ビストロみたいなもの)で食事。
なかなかの人気で、アルフレスコのテーブルはほぼ満席。Reserviert(=reserved)の札も散見されます。
私「ひとりなんだけど、どこか空いてる?」
給仕「ガンツ・ウンテンGanz unten(一番下なら)」
石畳の下方に目をやると、確かに一番下のドン詰まり、隣の家の壁際にパラソルもかかっておらず、花も飾っていない2人掛けテーブルが空いています。給仕が指示したのが、そのテーブルであることは明らか。
でも、プリンセスは最近、ドイツ語で苦労する腹いせに、逆にドイツ語がわかっていてもわからないフリをする術を習得しました。
二人掛けのひとつ手前の高い段に、きちっとセッティングされた4人掛けも空いているのを目ざとく見つけたプリンセス、「一番下」なんて聞こえなかったフリをして、堂々と上席に座ってしまいました:)
その心がけがいけなかったのか、ホテルに戻ると熱は上がるし、鼻もまったく通らなくなってしまいました。色々やるべき仕事は残っているのですが、ここまで具合が悪いと、明日に託して、もう寝る以外ないでしょう。


…そして今朝…うーん、熱は昨晩より多少低そうですが、鼻の通りは依然芳しくなく、しかも気管支全体に痒みが広がり、咳が出てきました。声もガラガラです。
これからの授業や講義が万全の体調で受けられないのは仕方ないにしても、お願いですから神様、傍迷惑に咳き込むような症状にだけはしないで下さい。そして通訳の仕事に入る26日までには、普通の声をお返し下さい!!!

2011年9月18日日曜日

怒涛のロードへ…あーあ、絶妙のタイミングで風邪

9月18日(日) 
プリンセスは何かと段取りが悪く、ひとつのことに夢中になると、下手をすると食べるのも寝るのも忘れてしまう、難儀な性分。

ああ、それなのに、なんと言うことでしょう。土曜の夕方には前にマリーレンシュナップスで登場したヴァイングート・サックスWeingut Saxから、シュトゥルム・フェストSturm Festの招待と、うちのお城ではやはり数週間前に我が家に夫妻で滞在したPhilip Blomの自作"Boese Philisopher"の朗読会、という外せないイベントがダブルブッキング
おまけに、明日朝から3日間、ノイジードラーゼーの西岸ルストで泊まりの授業、その後4日間、今度はドイツのガイゼンハイム大学で講義、モーゼルのトリアーでVDPテイスティング、26日からはアルザス、ドイツ(ライン、モーゼル、ファルツ、バーデン)へワイナリー巡りツアーの同行通訳、と、息をつく間もない厳しいロードが続きます。

大丈夫かプリンセス? ちゃんと全てのホテルと飛行機、列車の予約はできているのか?

ああ、しかも、日曜朝の出発前に翻訳と翻訳訂正も済ませておかねばならない…。

けれど、風物詩シュトゥルム(英語のstorm. 発酵途中のブドウ果汁。つまり、ジュースとワインのハーフ。一線級のワイナリーは全ての果汁をワインにしてしまうし、発酵途中で刻々と品質が変わるし、全く酸化防止剤などを添加していないので、基本的に自家製をその場で飲むしかない)は絶対に飲んでおきたいし、英語圏でのオーストリアワイン本の定番"Austria Wine"の著者で、本職は哲学者のフィリップの朗読会も是非聴きたい
ミュラー=トゥルガウのシュトゥルム。この時点でのアルコール6%。
泡がブクブクな様子を嵐に例えての命名だと思っていましたが、その割に泡立ちは穏やかで、濁り酒のよう。
甘酸っぱくて、時間があったら5,6杯は軽い:)という味わい。
ビアギット曰く「飲み過ぎるとシュトゥルム(嵐)になるんじゃない?」 ぞういう説もありか:)

ご近所と長年の顧客が集まって、ワインの成りかけを楽しむ、風物詩。因みに乾杯の「プロースト」「ツム・ヴォール」はワインになるまで使わず、たしか「ゲタウフト」とかなんとか、不思議な音頭をかけていました。

結局、まず翻訳を片付け、次にお向かいのサックスさんちでジャガイモにニンニクソースをかけた(これが美味しいんだけど、匂いが強烈!)アテで、ジョッキになみなみと注いでくれたシュトゥルムをゴクゴクと飲み干し、速攻でお城の2階ホールに集まりつつある人々へのワインサービスに駆けつけました。
ワインライターは本業ではなかった、フィリップ・ブロム。
下は朗読会後、サインに応ずる彼。
フィリップの朗読は、お題がフランス革命時の哲学者の話で、しかもドイツ語では歯が立つはずもありません。ビデオ撮影を予め許してもらい、ドイツ語が上達してから、改めて聴き直す予定です。

…そうこうしているうちに、数回くしゃみが。朗読会が終わる頃には、喉も痛んできました。
まずい! そういえば、うちでは魔犬エラちゃん、長男のヨハネス、オフィスのエヴェリン、と風邪っぴきが溢れています。
どうやらこっちの風邪は動物⇔人間間で伝染するらしい(本当か?)

ああ、旅をしながら風邪を治さねばならないかぁ…辛いなぁ…

2011年9月17日土曜日

落穂拾いもまた楽し


9月17日(土) 
秋になって、プリンセスは週末の午前中はお城の庭の落ち葉掃除を仰せつかっています。
芝生に落ちた枯葉を熊手で芝を痛めないように集め、同様に石畳の通路や中庭は、長い柄つきのブラシで落ち葉を集め、ブドウの収穫カゴと同じものに一旦入れ、後でまとめて捨てる、というお仕事。
お城の敷地は広いですから、これだけでみっちり2時間半から3時間の作業です。正直最初は、翌日腰が痛くなりました:)
でも、プリンセスはこういう肉体労働が意外に好きです。労働の跡が目にはっきり見えるところも気に入っています。
それに、この落穂拾いには、実はもうひとつの役目があるのです。それは庭に数本植えられた胡桃の実の収穫です。今日だけで20個近く拾ったでしょうか。
割れているのを食べてみましたが、さすがに自然に落ちるまで木についていた実は、生理学的熟成も十分:)で、生でも十分な美味しさ!
こうして拾った胡桃は、集めておいて後からハンマーで叩き割り、中味はケーキに、サラダに、そしてシュナップスに漬け込んでリキュール(これがとーっても深みのある大人の味わいで、クリームなどに混ぜると絶品!)に、と大活躍します。

2011年9月16日金曜日

赤の収穫始まる!

916日(金) 
平地に見えますが、この畑は前方東側が斜面になっています。

645分から、ピノ・ノワールの収穫に参加しました。開始時の気温なんと9度。一度外に出てから、慌ててダウンを取りに返る寒さです。
お城の下からバン2台で繰り出します。

お城から南方に2kmほどの高台。ハイデボーデンHeidebodenの下方にあるヴァクセルバウム・ハイデWachselbaum? Heideと称するらしき畑(畑作業の女ボス、クリスティーナのドイツ語は本当に聞き取り難いし、とにかく要らぬ口は利けない雰囲気なので、何度も発音してもらう訳にも行きません。でも、そんな畑、地図にはないなぁ…)での収穫です。

ピノ・ノワールPinot Noir、こちらで言うところのブラウブルグンダーBlauburgunder或いシュペートブルグンダーSpätburgunderは中世に修道士がブルゴーニュからオーストリアにもたらして以来この地に育ち続ける、半ば地場品種のようなもの。

1本のブドウの木についているブドウの房数はざっと15から18? 結構多めです。ただし、畝幅が2m以上x 90cmくらい(あくまで私の目算)なので、1ha当りのブドウの木の数が半分前後と考えると、大体収量はブルゴーニュ並の30hl/haに収まるのでは、という印象です。

収穫の要領ですが、メインの梢から出ている新梢についているブドウだけ収穫し、副梢と言われる、後から出てしまった余計な梢についたブドウや、状態の悪いブドウは落とします。大体地面から90cmくらいのところに主梢が仕立てられていますが、そのラインより上についたブドウも基本的に落とすか、そのまま木に残します。

こんな感じになっています。下の方に固まっているブドウだけ収穫します。

もちろん、木自体がやられているようなブドウには最初からノータッチ。
状態の悪い房、実はこうして地面に落とします。
上方の副梢についた実は収穫しません。














こういう状態の房が一番困ります。
でも、萎んでブヨブヨしているところは、大概妙な味わいです。

難しいのは、その状態の見分け方。レーズン状に乾燥した実はOKだけれど、萎んでブヨブヨする状態はNGだと教えられました。

かつてNZで楠田浩之さんの収穫を手伝ったときには、何せ一緒に収穫したのが楠田卓也兄、シノワの後藤さん等々…オタクの窮めつけのような面々。「怪しいのは落とせ」とばかりに、律儀に落としに落としまくって、その畑の収量を確か13hl/haだかなんだか、とんでもない低収量にしてしまいました。



そりゃあ、落としまくれば間違いなく綺麗な味わいになるでしょう。


でも、それでは歩留まりが悪過ぎて、ワイナリーの経営を傾かせます。各ワイナリー、或いは各ワインに丁度いいさじ加減、というものがあるはずなのですが、そこまで撰果の基準の徹底がされてはいないようです。…、で周囲の様子を伺うと、結構サクサクなんでも収穫カゴに入れているように見えます。いや、彼ら、彼女らは何年もこの作業をしているのですから、瞬時に厳しい撰果ができるのかも知れません。

プリンセスは勿論無償労働ですから、「ここは勉強させてもらおう」ということで、新梢に正常についた実、副梢についた実、レーズン状の実、ブヨブヨ状態の実、などなど、「どうなんだろう?」と思うものはいちいちつまみ食いをしながら、収穫を進めていきました:)
8時半過ぎに15分程度の休憩。収穫労働者は、どうやらこのタイミングで朝食をとるようだ。
因みにお昼12時のきおんは25度を超していました。
こうしてプラスティック籠に収穫されたブドウは、トラクターで回収されます。

いやあ、面白かった!

同じ木でも全然糖度が違うし、レーズン状のは甘くて美味しいけれど、萎んでブヨブヨの実はお酢になる手前みたいな味わいのものが多い。
それがわかってしまうと、美味しくないブドウから美味しいワインができるはずはないので、いきおい撰果が厳しくなってしまいます。



プリンセスにはやはり、超高値のウルトラ・プレミアムの収穫しか、させてはいけませぬ。



2011年9月15日木曜日

曇りのち雨、最後に快晴 の誕生日

914日(水) 
先週始まったゼクトの収穫は、5日間で終了。ゼクトのブドウはとにかく酸が命で、少しでも酸が下がったら使わないのがウチの流儀。ところが当主ミヒャエルによると、オーストリアの多くのゼクトは、通常のワインを収穫した後に残った実でゼクトを造るとか…。唖然。私の本や記事を読んで下さった皆さんは、どうして私がオーストリアのゼクトに(ブリュンドゥルマイヤー他一部を除いて)全く肩入れしないか、不思議に思ったかも知れませんが、そして実際、「この気候なのに、何故ゼクトの大半がどーでもいい味わいなのか」私自身とっても不思議に思っていたのですが、理由はそういうところにもあったのですね。

さて、ゼクトの収穫が終わると、ウチでは1~2週間ほどおいて赤の収穫を始めるのが普通です。
その間も労働者の数は普段より多めに確保されていて、例えば暑い日が続いて酸の低下が心配されたり、長い雨が予想されたりすると、糖度が十分(或いはそれに近く)にまで達した区画のブドウは収穫できるよう待機しています。で、結局全く収穫がなければ、収穫籠(といってもプラスティック製)を洗ったり、庭の落ち葉掃除やら遅めのバラの手入れに借り出されたり。
待機労力を総動員してバラ園の手入れを目論んでいたおじいちゃんペーターは、栽培・醸造長のカーナーさんが、金曜に一部のピノの収穫を決めたことで、期待していた働き手をとられてしまい、テーブルを叩いてくやしがっていました:)
この時期、同じ産地にあっても、植えているブドウの種類や量、それぞれの熟度などは様々ですから、収穫籠をはじめ様々な機器を貸し借りし合うのは普通のこと。オフィスには色々なワイナリーの当主や醸造長がやってきては話をして行きます。今日もドレさんがオフィス・マネージャーのヴォルフガングと長話をしていました。

そんな活気と緊張感の入り混じる雰囲気の中、有難いことに、ここに来て雨が丸一日降っていたことはありませんが、きっと2日以上降り続いたりすると、いやーな雰囲気になるんでしょうねぇ

ところで今日、私の誕生日の朝は重苦しい空模様でした。慌しい状況下、誰も私の誕生日になんか気づく人間はいませんし、第一、本人自身、鍵3つ紛失の痛手から回復していません。おまけに懸念の長期滞在許可は、なんでも最近高官の移民権がらみの汚職があったとかで、異様に厳しさを増しており、通常の方法では下りそうになく…。13日の夕方に突然電話で、BOKU(University of Natural Resourceだったか)への願書を書くように指示され、必要書類の用意やら、ドイツ語のカリキュラムと格闘しつつの出願コースの決定やらに明け暮れていましたし。
お昼近くにはとうとう雨も降り出しました。プリペイドフォンのチャージすら隣町まで行かねばできず、雨の中とぼとぼと20分以上歩いてようやくチャージ料金を払うも、今度は電話をかけてチャージを実行するのに、ドイツ語のインストラクションとの闘い。

Nothing is easy here….なのです。

そんな道中、携帯に電話が入りました。地元のおっさんのドイツ語は注意して聞かないとドイツ語ともわからない程方言が強く、お手上げ。”Auf englisch order langsam, bitte.”(英語か、或いはゆっくりお願いします)と叫ぶと、なんと鍵が届けられた、と言うではありませんか!!!
はるか北方のHornという駅からの電話。つたないドイツ語で、最寄の駅まで届けてもらえるよう依頼し、その数時間後、ようやく鍵を取り戻しました
気がつけば空は快晴。涼やかな風が流れています。マーケティング協会の黒い名札下げにつけた3つの鍵は、最高の誕生日プレゼントになりました。

名札下げを誇らしげに首から下げ、夕食のテーブルにつく私。鍵が見つかり、初めて今日が誕生日であることを家族に伝えました。
出て来るとは思っていなかっただけに、電話を受けたときは涙が出るほど嬉しかった!

おじいちゃんは私のためにゼクトを1本セラーまで取りに行ってくれ、おばあちゃんとエファ、曾おばあちゃんの世話をしているダナは抱きしめてふたつのハッピーを祝福してくれました。

最後はいつも快晴。プリンセスの人生、そうでなくっちゃ。

2011年9月14日水曜日

まじっすかぁ?

9月13日(火)
とてもプリンセスの使うお言葉とは思えませぬが、本当にそういう気持ちです。
長期滞在許可を得るための最終手段として、大学への正式登録を勧められています…
しかも大学は、自然科学系。ド文系の私にはあまりに縁遠く、それも縁故(オーストリアでは非常に重要)の関係で、今月1日に既に出願期限の切れた大学へ、横車を押し切って出願せよ、との指示。

うーん、どこまでプリンセスの人生は激動の連続なのでしょう?

万が一、というか、これが最後の手段であるなら、受け入れてもらわねば困るのですが、万が一出願が認められると、30年以上遅れの大学一年生が誕生します。

…それって…

2011年9月13日火曜日

ルーディ・ピヒラー 2009 vs 2010


913日(火) 
ルーディ・ピヒラーRudi Pichlerは、ファルスタッフFalstaff誌の2010年ワインメーカー・オヴ・ザ・イヤーに選出されており、その看板畑アハライテンAchleitenが、全09ヴィンテージ中同誌最高得点を記録するなど、09年ヴィンテージの大スター的イメージがあります。

しかし、実は09年は「貴腐はその質にかかわらず一切用いない」ことをモットーとするルーディが、泣く泣く(そして細心の配慮のもと)貴腐ブドウを別に醸造し、健全果とブレンドした例外的なヴィンテージであったことを知る人はあまりないでしょう。

美しい酸とミネラルを愛するプリンセスは、断然彼の2010年の方がお気に入り。ルーディ本人も、自分の過去最高の仕事、と胸を張っており、実際2010年こそ“ミネラル男”ルーディ「らしい」年です。

さて、そんなルーディに彼の2010年についてSmaragd 2010の会場でちょっとだけ語ってもらいました。何せ大人数が出入りする会場内。聞き取り難いかも知れませんが、どうぞ。

…と思ったら動画のアップが上手く行きません。明日までに画像とサーバの問題(が、色々あるのです。お城は物理的ロジスティクスだけでなく、ネット環境のロジも単純ではないものですから…)を解決しておきます(汗)。
今日のところはRudiの写真でご勘弁を。
ファルスタッフ誌のワインメーカー・オヴ・ザ・イヤーは、一生に一回しか選ばれない、
謂わばオーストリアワイン界の“殿堂入り”のような賞。過去10年の実績が考慮されます。
因みに今年の受賞者はカンプタールのヨハネス・ヒルシュ。
うちのお城シュロス・ゴベスルブルクのミヒァエル・モースブルッガーも2006年に受賞しました。



2011年9月12日月曜日

鍵3つ紛失…とほほ なプリンセス

911日(日) 
名札用の首から吊り下げるバンドに、部屋の鍵、正門横の鉄扉の鍵、自転車の鍵、の3つ鍵をつけたおいたものを土曜に紛失しました…。

前にも書きましたが、プリンセスには大きな泣き所があります
病的注意散漫&物忘れ、軽はずみな行動…、早く言えば超ドジなのです。
幼少の頃から、常に落ち着きがない、授業を真面目に受けない、と教師から目をつけられ、約束の日時を一週間取り違えたり、14時と4時と間違えたり、数字を一桁入れ違えて転記し、郵便物が届かなかったり、満点だと思って書き進めた答案の解答欄がひとつズレていることに最後に気づき、パニックになったり、レポートの締切日を取り違えて留年したり、約束されていた昇給をあまりの凡ミスの多さに拒否されたり、出張に行けば必ずジャケットやサングラスのひとつやふたつは紛失し、大切な国際セミナーに旅立つ成田のチェックイン・カウンターでパスポート期限切れを知らされたり…、と、まあ数知れぬ失敗を重ねて来ました

今回の鍵の紛失には、思えば色々伏線がありました。
1.まず、いつまでたっても長期滞在許可のメドが立たないことが心配で、心ここにあらず、の状態でした。

2.そこへ持ってきて、今週は収穫が始まり、おまけにウィーンでのミーティングやら、テイスティングやら、急な長期出張の打診&交渉&段取りやら、目の回る忙しさでした。

3.そして、土曜の午後を丸々使ってSmaragd 2010テイスティングに行こうと思っていたのに、金曜になってバルセロナ在住の知人が土曜にウィーンに来る、と言い出し、急遽金曜の午後にテイスティングを押し込んだものの、全部を踏破できず、土曜彼女に会う前に、もう一度テイスティングをねじこもうと焦っていました

4.最後に、我がお城のロジスティクスのややこしさに、相当苛立っていました

4つ目は説明が必要です(…とそのことを考えるだけで、頭を灰色の雲が覆うような気分になります)。

外門は2つあります。どちらの鍵も私は所有していません。なので、毎日の開門時間を把握して出入りするのですが、例えば駅に行くのに、片方が閉まっていて、もう片方から出直ししようとすると、お城は広いので、片方の門に行って戻り、もう片方の門から出直そうすると、15分程度のロスになります。

土曜も実は、出ようと思った方の門が閉まっていて、狙った電車に乗り損ねました。しかも、その日は帰宅がウィーンからの終電になる予定で、その場合徒歩圏内の最寄駅ゴベルスブルクを通る電車はもうないので、最後の乗換駅ハーダースドーフまで自転車で行く算段だったため、門まで自転車で坂を降り、自転車を持って急勾配を再び上がり…という徒労を繰り返す訳です。で、疲れ切ってその後に乗った電車の乗り換えを間違え、結局時間切れで友人と会う前にテイスティングに寄ることは諦めました。

空間的に広いことだけが問題ではありません。お城にはエラ(フィッツジェラルドから命名)という巨大な犬がいて、普段は大人しい、とっても可愛い番犬なのですが、この犬には野生が残っており、例えば小動物、例えば家族以外の侵入者、使用人などを家族しか入るべきでない領域に見つけると、猛然と襲いかかり、かなり危険です。
なので、その日お城のどの場所でどういう催しがあるか、どの部屋でどの来客があるか、等々によって、この犬をどこに格納しておくか、どのドアは開け放しておくか(逆に鍵をかけるか)をいちいち変更せねばなりません。
そういうこともあって、家の裏口やオフィスの入り口など重要なドアを全て開けられる共通鍵は、主人夫妻と夫人方の両親しか持っていません。
しかも、共通鍵には出入りする身分によっていくつかの種類があるのですが、どの鍵はどのドアとどのドアを開けられるのか、ちゃんと言い当てられる人は誰もいないのです。

よって俄かプリンセスの場合、どのドアからお城の特定の場所に行きつけるか、自室からどこを通って外に出るか、は毎日ある種賭けのような状況なのです。

わかっていただけます? このちょっとしたカフカ気分…。

で、お城の敷地に入る予備鉄門の鍵をなくして、どうやって部屋に辿りついたか、って?
セキュリティー上詳細には書けませんが、敷地には家族のみ知る抜け穴から(洋服を傷めぬようジャケットを裏に着て:)潜入しました。

自室の鍵がないのにどうやってベッドに辿りついたか? 夜中に家人を起こすのはためらわれましたし… 結論から言って、辿り着きませんでした。

実は、私の部屋と台所の間には薪などの加工・貯蔵のための作業ピロティーのような場所があり、それらの道具やらお城の掃除道具やら洗剤やらをストックする倉庫と私の部屋は壁を隔ててつながっているのですが、その収納倉庫のドアの鍵はかけないことになっています。
なので、倉庫の空きスペースに、積まれていた椅子用クッションを4枚並べ、簡易ベッドとし、絨毯だか毛布だかわからない小汚い毛織の布をかけて仮眠をとりました。
トホホ…

これが土曜の夜のプリンセスの寝床


自転車と自室の鍵は予備がありましたが、一応外から出入りできる鉄門と客間の鍵の両方に共通の鍵を亡くし、お城の主人家族に多大な迷惑を掛けることになってしまいました。
ハーダースドーフ駅までの道を歩き、鍵が落ちていないか確認しましたし、電車のロスト&ファウンドや土曜に行ったカフェやレストランにも連絡は取りましたが、今のところ見つかっていません…。

お世話になっている上にこの不始末…本当にごめんなさい。

こういう事件があると、過去の同様の失敗体験がムクムクと蘇り、神様に「人間やめなさい」と言われているような、つくづく情けない気分になるプリンセスなのでありました。

2011年9月11日日曜日

2010年スマラクト・レポート                 酸&ミネラル・フェチの私は感動!

99日(金)の午後、ヴァッハウWachauのヴァイセンキアヒェンWeisenkirchenで開かれた“スマラクト2010 Smaragd 2010”というイベントに行ってきました。
ヴァイセンキアヒェンはヴァッハウ中部の典型的な愛らしい田舎町で、
メルヘン風情が漂います。


距離的にはゴベルスブルクからおそらく25km前後しか離れていないと思うのですが、
バスも電車も
1時間に1本か、悪くすると一日3本、みたいな土地柄なので、
電車とバスを乗り継いで、
1時間から2時間かかってしまいます。

しかも私はこの教会の足元にある会場を見過ごして…
このリボンがついていれば、翌日もまた戻って来てテイスティングできます。

北のワインが大好きな皆さん、2010年はあなたの年です!

小さな会場には、産地毎、畑別に並べられたスマラトばかりがずらり98
満員の会場。今日はリースリングにフォーカスすることにしました。
グリューナーとリースリング中心ですが、ヴァイスブルグンダー、ノイブルガー、珍しいところではソーヴィニヨン・ブランなども混ざっています。
あまり大きくない会場に人がぎっしりですから、飲みたいワインを思うようにサクサクとテイスティングできる訳でもありませんし、見知りの生産者や来場者とは挨拶の言葉のひとつも交わさねばなりませんので、正直こういう形式のテイスティングでは、ワインの細かいニュアンスまで味わうことはできません。あくまでヴィンテージや産地・畑の全体的な印象を掴んだり、これまで知らなかった生産者を見出したりできればラッキー、というところ。
とにかく公共交通事情が最悪なので、夕食までに家に戻ろうと思うと、テイスティング時間は1.5時間ほどしか取れません。…ならば仕方がない、今日はリースリングだけに集中しよう、ということで、本来の順番は「1)ドナウ右岸(南岸)→2)デュルンシュタイン、ロイベン→3)ヴァイセンキアヒェン、ヨッヒング、ヴェーゼンドーフ、ザンクト・ミヒャエル→4)シュピッツ、シュピッツァー・グラーベン、シュヴァレンバッハ」となっていますが、時間の関係で、まず右岸をカット。左岸(北岸)も順序とは逆に、シュピッツから東に向かってテイスティングして行くことにしました。パワフルで濃厚なものから繊細なスタイルへ移行するより、逆がいいと思ったのです。

全体的傾向として、2010年は、果実味が豊かな万人向けの09年から一転高い酸とキリリと締まったミネラルが魅力高めの酸と硬質なミネラルを肯定的に評価する“北のワイン好き”にはたまらなく魅力的な年でしょうが、高い酸は苦手、原成岩由来のミネラルは苦くて嫌、という人にはちょっと厳しい、好き嫌いの分かれるヴィンテージでしょう。

ただし、通常絶対的な酸が高くなればなるほど、リンゴ酸対酒石酸のバランスが、前者に傾くものなのですが、この年のユニークな点は、ふたつの酸のバランスが、総酸量が通常の年と変わらない、というところにあります。なので、信頼のおける生産者に限り、ではありますが、酸は確かに高いのですが、尖った青さや金属的な鋭さとは無縁の、円やかな酸になっており、この普通なかなか得られない特徴の両立こそが、このヴィンテージ一番の魅力と言えるでしょう。
また、雨の多い畑仕事の難しい年ではあったのですが、開花期の花振るいなどの影響で、自然の収量減となっている前提の上での雨は、むしろ土壌の深い部分のミネラルを吸い上げることに肯定的に働いたようで、特に古木のブドウを使ったワインなどは、非常に複雑で緻密なミネラルを感じることができます。

また、最近のスマラクトはオイリーでヘヴィー過ぎる、と思っている向きにも、全体的にやや細身で軽めの2010年は、歓迎されるはず。

ヨーゼフ・ヘーグルJosef Höglのワインは一旦消えかけた余韻がふわっと膨らみ戻って来るところがいい。
シュピッツのコーナーにはフランツ・ヒルツベアガーSrもいたのですが、写真を撮る前に逃げられました…。

ヴァッハウでは珍しい石灰岩のSteinriegl.
シュメルツSchmelzもそれらしい伸びのいい柔らかなミネラルのワインを造っています。

2010年は”ミネラル男”、ルーディ・ピヒラーRudi Pichlerの年。彼ほど凝縮間溢れるミネラルを表現できる生産者はいない。

お気に入りのThal畑ではなかったものの、リニアでスタイリッシュなアルツンガーAlzinger(左)のワイン。
テーゲルンゼアホーフTegernseerhofのマーティンのワインは、いつも通りエネルギッシュ。
そういえば、今日はルーカス・ピヒラーとトニ・ボーデンシュタインの姿がありません。

「あ、ちょっとちょっと写真はダメだよ」といきなり叫ぶかと思えば、近くに寄って「グラスが空の時はね」。
エメ、クノルEmme Knoll Jr.って本当に変な人(私、変人好きです:)
実は彼のワインは、超有名どころの中では、最も地味というか、特に若いうちは焦点の定まらない印象があります。
その辺り、ニコライホーフと共通点を感じます。クレムスタールなので今日は出ていませんが、
彼のファッフェンベアクとニコライホーフのフントは、畑が近いこともあり、ダークなミネラルが瓜二つです。
ルーディやプラーガーのRiesling Achleitenや、F.X.ピヒラーのKellerberg、アルツィンガーのThalが出ていなかったり、ニコライホーフやペーター・ファイダー=マールベアクPeter Veyder Malbergが参加していなかったり(消費者にとっては誰がVinea Wachau加入かどうか、なんてわかりませんからね)色々不満もあるのですが、クノル、FXピヒラー、プラーガー、アルツィンガー、プラーガー、ルーディ・ピヒラー、ヒルツベルガーといった所謂ビッグ・ネームの中に、上述した『高くて円やかな酸&複雑で緻密なミネラル』の魅力を備えていないワインは皆無。シュメルツ、テーゲアンゼアホーフ、ヘーグル、ラーグラー、ドナウバウム、ホルツアプフェルといったそれに続く生産者達も、非常に魅力的なワインを造っていることを確認。

私にとっての発見は、ラーライースRalais、ハルツェンライテンHarzenleitenといった、中部ヴァッハウの西端にある畑のポテンシャルの高さ。ミネラルの凝縮感がアハライテンやホッホライン、コルミュッツなど、トニ(プラーガー)やルーディのワインを思わせる(ラーライスはホッホラインのサブ・アペレーションなので当然か)出来。また、上記以外で新たに注目したい生産者としては、カートイザーホーフ=カール・シュティアーシュナイダーKartäuserhof-Karl Stierschneider、バイヤーBayer、フランツ・ピヒラーFranz Pichler、ゲベーツベアガーGebetsberger、といったところを挙げておきます。

番号違いで間違ってテイスティングしてしまったグリューナー数種から推測するに、グリューナーもリースリング同様2010年はスリムで締まったミネラルと豊かな酸の年。ものによってはブラインドで出されると「リースリング?」と勘違いしそうなものすら多そうです。最も冷涼な西部のワインは、品種を問わず、多少味わいがモノトーンに傾きがちかも知れません。

まとめると、2010年は大穴&お買い得に走らず、定評のある生産者のワインに狙いを定めた方がいい、とお伝えしておきましょう。収量の多い中途半端な生産者の2010年は酸が高い分、痩せて尖った味わいになりがちです。もっとも日本に定番として輸入されているヴァッハウの生産者はほとんどトップクラスなので、まず安心です。

2011年9月9日金曜日

気になるお天気とプリンセスの乾燥肌


99日(金) 
おお、もう週末かぁ。時間が経つのが早いこと!
今週の火曜あたりから、めっきり夜の気温が下がり、北向きの部屋に夏がけ一枚で寝ているプリンセスは、たまりかねてフリースを着ています。昨日は昼から肌寒かったし、すっかり「夏は去りぬ」の風情。

この気温低下は、この時期としては多少ブドウの酸が少なめの今年、ブドウにとってはとても有難いこと。酸が低下する速度が遅くなれば、最後には07のように、一旦熱波で酸の減少が心配されながら、実にきれいな伸びのある酸が得られる訳で、そこら辺は単純に酸の量の多寡では測れぬ、深遠な成長過程のバランスの妙というものがあるのです。
ただ、ここ数日は、気温が下がるとお日様も陰りがちなのが、困ったところ。まだまだブドウは緑の葉をつけており、光合成によって栄養を蓄え続けています。…、というか、完熟期最終段階の今こそ、単純な糖度ではない、風味の熟成に決定的なとき。どうかこれから収穫完了まで、昼間はお日様に燦燦と輝いてもらい、夜はググンと冷えて欲しいものです。

ところで、ここら辺の空気は、「雨かしら?」と思うような空模様でも、かなり乾燥しており、乾燥肌のプリンセスにはちょっとイタイ。化粧品には一切お金を掛けないプリンセスをして、BIOのモイスチャークリームを買いに走らせる事態となっています。まあ、愛するブドウの健康状態を思えば、喜ばしい。何せ、雨はもちろん、貴腐ワイン以外には湿気も不要。とにかく健全な果実を収穫したいのですから。

2011年9月8日木曜日

プリンセス、都に上る

97日(水) 

昨日は朝9時過ぎの電車に乗って、都ウィーンへ。

元々、3つミーティングが昼、午後、夕方と重なったので、それならMAKÖsterreichisches Museum für angewandte Kunst in Wien:応用美術館、と訳すのでしょうか?)で開催されているRUDOLF STEINER Die Alchemie des Alltages(ルドルフ・シュタイナー 日常の錬金術)をじっくり観て来よう、という算段。

ミーティングの資料やら、テイスティングのためのグラス12個やら、とにかく多種類の大荷物。さらにシュタイナー展のカタログも買って来ようと思っていたので、カメラ持参は断念(って、別に大きなカメラではないのですが、色々持って行くと絶対に何か落としてくるのが、プリンセスの弱点)。

ルドルフ・シュタイナーはワインの世界では、ニコライホーフやニコラ・ジョリー、フィリップ・パカレなどで名高い“ビオディナミ”biodynamics農法で有名ですが、実は音楽、踊り、文学、経済、建築、教育、農業、医薬学…、と多岐に渡る業績を残した知の巨人。当時のオーストリア=ハンガリー帝国(現クロアチア)に生まれ、高等教育をウィーンで受け、スイスやドイツを拠点にその理論を発表、実践しますが、当初から彼を巡っては賛否両論の嵐。ヨーゼフ・ボイス、カンディンスキー、モンドリアン、ミヒャエル・エンデなど多くの芸術家に影響を与える一方で、オカルトだ、非科学的だ、新興宗教だ、と揶揄されることも多かったようです。

今回の展示は、そうした賛否両論のどちらにも偏らず、客観的に、そして多面的に、彼の仕事を紹介しており、肉筆の原稿や絵、構想スケッチから建築模型、使用していた家具から、バレエ作品のビデオ上映まで、色々直接この目で見られたのは有難い。

私の主たる関心はもちろんビオディナミにあるのですが、実はもうひとつ、深堀りしてみたいことがあります。それは実は“エンデの遺言”というNHKの番組をもとに書かれた一冊の本から始まってるのですが、世紀末から第二次世界大戦前にかけて、オーストリア=ハンガリー帝国では、様々なalternativeな資本主義とでもよぶべき経済システムの模索が行われていたようなのです。で、どうやらシュタイナーもその一翼を担っており、銀行を作ったりしているんですね。

現在の資本主義がヒトを幸せにしないことは、誰もが感じていることです。そして、資本主義が浸透し、急速にテクノロジー偏重へ傾きつつあった、19世紀末から20世紀初頭に、現在我々が抱える問題の多くが、実は先取りされています。

シュタイナーを含め、その時代のLebensreform運動の中に、もしかしたら、オルタナティヴ経済システム、地球環境保護、個々の人間性を尊重する共同体のあり方…、そうした全てを包括する、“もうひとつの、もっと人間的な社会システム”の可能性が眠ってはいなかったか。そんな夢想に耽るにも、当時世界の知の中心であったウィーンは相応しい場所だと思うのです。

名物マリレン・シュナップスの蒸留に立ち会う


9月6日(火) 



お城の北側、ランゲンロイスに通じる道を挟んでお向かいのサックスさんちのワイナリーで、今マリレン・シュナップスMarillen Schnaps (或いはマリレン・ブラントMarillenbrand)を造っていると言うので、仕事を中断してお邪魔しました。

昔の馬小屋を改造したこの辺りの典型的小規模ワイナリー

ビルギット・サックスは規模の小さなWeingut Saxのおかみさんであると同時に、我がSchloss Gobelsburgのオフィスの一員でもあります。

セラードアの入り口を開けると、フワーンと漂うマリレ(=アプリコット)の酸っぱ甘いいい香り。部屋の左奥にその香りの元がありました…単式の蒸留器。


右の長い筒に窓が沢山あるのは、アルコール度数の違う蒸留酒を取り出すだめ。


写真を撮ろうとすると、スルスル、ッとフレームの脇に消えてしまう照れ屋のお父さん。でも私が下手糞なドイツ語(こういうことろで英語が通じることは、まずありません)で、自分はワイン・ジャーナリストで、ワイナリーには山と訪れたが、蒸留をしている現場を見るのは初めてだと告げると、蒸留器には電気式と薪を燃やすものがあること、最初に蒸留されるのはメチル・アルコールであること、2回蒸留するやり方もあるが、ここでは1回しか蒸留しないこと、などなどを話してくれました。「こうやって座ってるだけで、1時間半もあればできるんだ。眠っててもできるよ」と笑いつつも、ちゃんと竈の火は絶やしません。コンスタントにポット部分が60℃くらいをキープする必要があるのだそうです。


温度計はほぼ60度を指している。機械一式のお値段は250-300万程度、とか。





既にボトルに詰められたマリレン・シュナップスを試飲させてもらいました。
アルコール度が50%近くあるはずなのに、喉を刺すような感覚は皆無。アプリコット果汁をさらにピュアにしたような、角の取れた優しい味わいだ。特に透明でトーンの高い、それでいながらおだやかな香りが素晴らしい。

うーん、これは仕事中にはあまりにも危険:)

「とってもナチュラルで柔らかな味わい。いつまでも香りを嗅いでいたい。日本に帰るときは一本買わせて下さい。」と言うと、「手の甲にシュナップスを一滴垂らして、2分以上香りがもたないのは、フレーバー添加。2分以上経ってもちゃんと香るのが本物。」と教えてくれた。

段々打ち解けてくれたお父さん
帰りがけ、言われたとおり手の甲に一滴垂らしたマリーレンは、お城に戻って10分以上経っても、清清しい香りを仄かに保っていました。

2011年9月6日火曜日

役人役に立たず。

9月6日(火)   
ワインの世界にいると、オーストリアでは十分英語で暮らせるような気がするのだが、地方で暮らそうとすると、それは大違い! 先週ランゲンロイスの町役場で教わった、クレムスの移民局の役人は、担当柄当然英語を話すものと思っていたが、今朝電話をして全くの徒労であったことが判明。結局オフィスのヴォルフガングに明日改めて連絡を取ってもらわねば埒があかないと諦める。ああ、また他人に要らぬ仕事を作ってしまった、と。そして、いつまでたっても全く見込みの立たぬ長期滞在許可申請の今後を想い、暗い気分…。
あ、そうそう、学校の20周年記念パーティーの席上で、ORFというこちらのTV局に取材されました。「わたし、本2つ書いたあるよ。3つめ欲しいあるよ」みたいなド下手なドイツ語をお聞きいただけます:)http://tvthek.orf.at/programs/70021-Burgenland-heute/episodes/2833637-Burgenland-heute/2836059-Weinakademie

ゼクト用ブドウ収穫開始!

9月5日(月)
今日からゼクト用のブドウの収穫が始まる予定、というのは知っていたが、なんだか天気は晴れたり曇ったり、小雨がぱらついたち。昼時に労働者用昼食部屋を覗き、確かにRenner畑で朝から作業を始めていることを確認。チーフ・ヴィティカルチャリスト&ワインメーカーのカーナーさんに頼み込んで午後から収穫作業に加わった。


収穫3種の神器:はさみ、手袋、そして水

Renner(読み方はレンナ­ーとレナーの間)は、ハイリゲンシュタインHeiligensteeinとともにカンプタールを代表するリースリングの銘醸畑ガイスベアクGaisbergの麓部分にあるグリューナーの畑。その一部の樹齢15年未満の若木から、ゼクトに使うブドウを収穫する。



地元民、ガイゼンハイムからの研修生、ルーマニアからの労働者達などに混ざって収穫開始。
要領は写真の作業前(上)と作業後(下)をご覧いただければわかるように、新梢に対し、ブドウがひとつだけ残るように他の実を鋏で切り落とす、謂わばグリーン・ハーヴェスト。その落とす実をゼクトに使うのだ。それって賢いと言うべきか、それじゃ高品質は望むべくもない、と言うべきか…。けれど、落とした房の実はかなり甘い。


作業前
作業後





















           それにしてもこうして中腰で一日9時間以上の作業。別に力が要る訳ではないが、かなりの重労働だ。

作業は朝6時45分から12時、午後1時から5時まで。
しかしゼクトのベースが全てグリーン・ハーヴェストの果汁、のはずは断じてない。本場のシャンパーニュも品種間、畑間、ヴィンテージ間のアッサンブラージュが命のワイン。おそらくブレンドの妙が色々あるのだろう。その辺のところはちゃんと追跡確認しておかねば。
常々私はオーストリア・ゼクトの王者はブリュンドゥルマイヤーだと思っているのだが、同じカンプタールで、メトード・シャンパーニュで造られる2つのゼクトのスタイルと品質の差はどこにあるのだろう。彼のところもグリーン・ハーヴェスト果をアッサンブラージュしているのか、今度聞いてみよう。
さて、新梢に対し1房だけブドウを残す作業の結果、1本のブドウの木に通常6房が残ることになる。そしてあと2週間ほど風味の成熟を待って、今度はエアステ・ラーゲEaste Lage(所謂グラン・クリュと1erクリュを合体させた概念)“ガイスベアク”の名を冠したワインに使うブドウを収穫することになる。


3時ころから雲行きが怪しくなり、雷鳴の後、大雨に。直前に予定作業完了。ほっ。
畑が大分濡れたので翌朝は作業を9時からに延期。我々の願いは叶い、火曜は見事な秋晴れとなった。


大雨が降り出す3時半前に、見事に予定区画の収穫完了。
正午と午後5時にトラクターで小型の収穫ボックスをピックアップし、ブドウはそのままワイナリーへ。ソーティング・テーブルで更に葉などを取り除き、ブドウはそのままホールバンチで即座にネウマティック・プレスにかけられる。うちには垂直プレスもあるのだが、今日の作業に関しては使われていなかった。

ソーティングテーブルで混入した葉や、質の悪い実は除去。

そして、ネウマティック(空気圧式)プレスへ
畑で念入りに、更にソーティング・テーブルで選果されたブドウは、グリーンハーヴェスト果と思えぬ粒ぞろい。


ゼクト用果収穫初日に尋ねるのも早過ぎるか、とも思ったが、カーナーさんに今年のグリューナーのキャラクターについて、聞いてみた。


やはり8月最後の熱波の影響で、現時点で糖度は高いが酸はやや低目、ということ。
最近のヴィンテージでは、今年同様熱波があり、収量と品質、どちらも満足の行く出来だった07年に近い、らしい。
ただし07年は成長期に雨が多く、一転した7月の熱波の後、収穫期は非常に冷涼かつ晴天に恵まれ、最終的には綺麗な酸のよく伸びる、所謂クラシックな味わいの年になった。


ゼクト用ブドウの収穫を終えて2週間後、スティル・ワインの収穫の頃がどんな天気になるのか。今後の天候変化と最終的なワインになるまで、スタイルがどう変遷して行くのか、ワクワクドキドキものだ。