2011年11月30日水曜日

シュロス・ゴベルスブルク グリューナー6アイテム踏破ワイン会@トラットリア築地トミーナ

プリンセスの住んでいるお城ワイナリー“シュロス・ゴベルスブルク”は、辛口だけでも全部で10種類のグリューナーを造っています。
その中で日本に定番として輸入されているのは、寂しいことにたったの2種!
そこでこの日は、残りの8種類のうち、プリンセスが『是非日本に根付いて貰いたい』と切に願う、エアステラーゲ(単一畑のトップ・サイト)3種と、ワイナリー&お城を所有するツヴェッテル修道院伝統の製法を現代に蘇らせたワイン『トラディツィオン』の計4種+ツヴァイゲルトをお城からレストランに直送し、本場仕込みのイタリアンとの相性を楽しみました
ワインは左から;
1) Domäne Gobelsburg Grüner Veltliner Niederösterreich 2010 importer :Mottox
2) Schloss Gobelsburg Grüner Veltliner Steinsetz シュタインセッツ Kamptal DAC Reserve 2010 :Mottox
3) Schloss Gobelsburg Grüner Veltliner Grub グルップ Erste Lage Kamptal DAC Reserve 2010 : 未輸入
4) Schloss Gobelsburg Grüner Veltliner Renner レンナー Erste Lage Kamptal DAC Reserve 2010 : 未輸入
5) Schloss Gobelsburg Grüner Veltliner Lamm ラム Erste Lage Kamptal DAC Reserve 2010 : 未輸入
6) Schloss Gobelsburg Grüner Veltliner Tradition トラディツィオン Kamptal DAC Reserve 2009 : 未輸入
7) Domäne Gobelsburg Zweigelt Niederösterreich 2009 : 未輸入
冨山シェフはトリノの国立調理学校出身。グイードなどピエモンテの名店で修行されています。
では、ワインとお料理を振り返ります。
今回はワインの解説とサーヴをプリンセス一人でこなしたため、料理の写真は撮る暇がありませんでした。済みません。

1) まず、食前酒&全てを試した後のお代わり用として出した、希望小売価格で2千円を切る“ドメーネ”GV(一部買ブドウも含むお城で最もベーシックなワインのひとつ)のコスパの高さにプリンセス自身驚きました。とっても綺麗でチャーミングな核果風味にミネラルもあり、あらゆるお食事を引き立てるタイプ。前菜に添えられた野菜にもとてもよく合いました
2)  けれどやはりドメーネの後にシュタインセッツ”を飲むと、小石土壌ならではのミネラル感と骨格に格の差を感じます。贅肉のない旨みが、前菜の天然真鯛のカルパッチョとズバリの相性
3) 続く“グルップ”はハイリゲンシュタインの丘東端に位置する完全なレスの段状畑。小石のシュタインセッツとの、土壌による味わいの違いがはっきり(小石:キリッ。レス:フルーティーで円やかながら石灰由来の噛み応え溢れるミネラル感と余韻:所謂グラに溢れる)。粉砂糖まぶしのような厚みのある味わいが、やはり前菜に出たアナゴのテリーヌ バルサミコ風味とガップリ四つに組んだ印象です。
汚い絵ですが、お城ワイナリーと銘醸造畑、そして著名ワイナリー(Bründlmayer, Hiedler, Hirsch, Loimer)の位置関係がおわかりいただけます。

4) ガイスベアクの丘の麓にある“レンナー”片麻岩主体の原成岩を薄くレスが覆います。ご本尊リースリング ガイスベアクは黒っぽいミネラルとオレンジを思わせる汁気の多い果実味が持ち味。暑く乾燥した年にはしばしばハイリゲンシュタインをバランスで凌駕します。レンナー10年は酸が高いので、ちょっとリースリング的。スカンピのオーブン焼きとピッタリです。
5ラム”はオーストリアで最も名高いグリューナーの畑ハイリゲンシュタインの丘の麓にあります。その名の通りのローム土壌ですが、その下の岩が実にユニーク。隣り合った丘にありながら、地殻変動のため、ハイリゲンシュタイン(西)はガイスベアク(東)を含むこの辺り一帯と全く異なる年代の地層なのです。そのため、両者の味わいには土壌の違いが反映され、ハイリゲンシュタインは常にガイスベアクより強く、白っぽい目の詰まったミネラル感と堅固な骨格、火成岩由来の熱エネルギー感を誇ります。ラムとレンナーの差も前述のリースリング銘醸畑の味わいの差に準じますが、ラムの方が真南向きでしかも凹状なため、より暑く、しかも岩の上に積もったロームが厚いため、リッチで凝縮感溢れる味わいとなります。スカンピの味わいをさらに深め、胆やミソの部分と一緒に食べると益々好相性(このワインは濃厚なクリームソース仕立にもピッタリのはず)。そして、ポルチーニ茸のリゾットの旨みも倍増させてくれました。
ハイリゲンシュタイン、ラム、ガイスベアク、レンナー、グルップの位置関係です
お料理はリゾットの前にピッツァ マルゲリータが出ていますが、これは最初のGVをお代わりして合わせるのが正解
5) ブログでも製法をご紹介した、中世よりお城に伝わる伝統製法で造られた"トラディツィオン"は、その重層的凝縮感と角の取れた円やかさがポルチーニの旨みと共鳴したのは言うまでもありませんが、辛口なのに重厚な旨みがデザートとも十分対峙できることも、立派に証明されました。
6) ピノの遺伝子を1/4持つ、ピノ・ファミリーの末っ子とも言うべきツヴァイゲルトは、ややもすると泥臭くなりがちですが、さすがはお城ワイナリー! ピノ一族らしい品の良さを前面に出して来ています。ピッツァもスカンピもワン・グレード上の味にしてくれましたし、実際には合わせていませんが、アナゴのバルサミコ風味に実は一番合ったのではないか、とプリンセスは踏んでいます。それにしても、この品質で想定小売価格2200-2300円程度、というのは凄い!
GVと並んで、ワインを飲みつけたヒトの、家飲みやカジュアルな食事には最高の相棒となることをプリンセスが請け合います: ) !!!
ブログとFacebookで参加者を募った積りが…蓋を開ければいつもの面々です: )
料理もワインもたっぷり堪能。幸せそうな皆さん&プリンセス
トラットリアの冨山シェフ、スタッフの皆さん、そして参加者の皆さん、オタッキーな会を支えて下さり、本当にありがとうございました!

2011年11月24日木曜日

プリンセス悶絶の美味しさ!!!

金沢に来ています。
到着当日、まず近江市場で食欲を刺激しました。


この町、都会でありながら歴史に裏打ちされた伝統&情緒を感じさせる点で、どこかウィーンとの共通点があり、プリンセスはここ数年毎年のように訪れています。
また、ロンドンWSETで最初の日本酒特別講座の通訳を務めたご縁で、日本を代表する蔵元さん達と知り合う機会をいただき、プリンセスとなってからは、富山の満寿泉や松任(金沢近く)の天狗舞を訪問し、日本酒造りの現場を欧州のワインファンに向けてレポートする楽しみもできました。
そして今回。常日頃のお城暮らしで募る和食渇望欲求を充たす為、天狗舞の車多専務のご紹介&友人のネット調査により、貴船、おとめ寿司、山下で食べ倒しました!
写真を整理してから、お店別にレポートしますので、あと少しお待ち下さい!

2011年11月23日水曜日

世界のリースリングと鮓@銀座壮石

プリンセスは21日シノワに続いて、22日の晩は銀座壮石でワイン会。
世界のリースリングと鮓の相性を楽しみました。
板さんの紅林さん(向かって左)には、お城ワイナリー当主ミッヒがお邪魔した際、
翌朝築地魚市場に連れて行っていただきました。
オーナーの岡田さんとお母様。築地寿司岩創業者の娘さんとお孫さん。
ワインは左から以下の通りです;
1) Schloss Gobelsburg Riesling Heiligenstein 2010
2) Hirsch Riesling Gaisberg 2009
3) Marc Kreydenweiss Riesling Wiebelsberg 2008
4) Crawford River Riesling Henty 2009
5) Van Volxem Riesling Alte Reben 2008
6) Schloss Gobelsburg Pinot Noir Alte Heide 2009

最初に出てきたウニ載せ湯葉。
出汁がよくきき、もしかしたらヴィンテージ・シャンパーニュの方が合ったかも? 
湯葉と対になって出てきた白子ポン酢。
白子のネットリした甘みとHirsch Gaisberg 09は共鳴し、Gobelsburgはいいコントラストを描きました。
酢の物。酸の高いGobelsburg Heligenstein 2010年とは多少ぶつかった感もあり。
素材が新鮮なら生魚とワインは非常によく合います。サバ、カツオ、カワハギの中で
カワハギの肝和えの甘苦味がKreydenweissのミネラルと熟成の始まった旨みによく合いました。
カウンター9席、テーブル11席、貸切で行なわれました。
お料理とワインが美味しければ、当然会は盛り上がります。
牡蠣とろろ。牡蠣にはKreydenweissのミネラル、生姜餡の蜜っぽさにはCrawford Riverが抜群!
全てを通してRieslingと一番の相性…美味しすぎて蓋を取った写真を撮るのを失念…とほほ。
鴨の旨みと野趣が、Schloss Gobelsburg ピノの多少くぐもった果実味といい相性。
銀ダラの粕と焦げには、いっそアウスレーゼか、寧ろニューワールドの樽の効いたシャルドネの方が合ったかも。
Van Volxemはツメにの甘さとコクにも負けません。イカのネットリ感はリースリングに。
ヅケはやはりピノ。トロの脂もやはり赤を求めます。
リースリングやグリューナーに代表される、MLFを行なわず、新樽で熟成しないタイプの白ワインは、こうした生魚や、素材の旨みを生かした野菜料理、魚の塩焼きなどに実によく合います。
まずはオウチで、ちょっと勇気を出して、和食にもワインを合わせてみて下さい!
ただし、酢の物の酢はワインの酸と喧嘩をするので控えめに。
また出汁味が主体ものは、寧ろヴィンテージもののシャンパーニュやシャブリ、新樽熟成したシャルドネの方が、より旨みが共鳴するような気がしました(とは言うものの、樽の強いもの、あまりにリッチでクリーミーなものは、和食の繊細な素材感を覆ってしまうので注意!)。
そしてヅケなど醤油味には多少熟成したピノを是非合わせてみて下さい。
思わぬ発見や味わいの広がりが感じられて楽しいですよ。

パフォーマーの気持ち

プリンセスの母君はフィギュア・スケートをTVで観戦するのが大好き。
一緒に食事をしながら、だからプリンセスもよく観ていました。…ただ漫然と。
ところが数年前「フランスものは教えません」と宣言する高橋尚子先生に「バッハしか弾きません」と逆宣言し、チェンバロを習うようになり、バッハ3声のフーガをさらうようになって以来、先生の前で1曲を弾き通す際、プログラムを滑りきるスケーターの心持ちが手に取るようにわかるようになりました。
例えば;
☆最初のトリルで指が絡まないか⇒最初の3回転ルッツで転ばないか
☆テーマが左手に出現したのに漫然と弾き過ぎてしまうと、「よし、次のテーマでは一段と綺麗に聞かせてやろう」と意気込む⇒コンビネーション・ジャンプが抜けると、次の単独ジャンプをコンビネーションにしようと意気込む
☆あんまり上手く行き過ぎると、途中で「そろそろ失敗するのではないか」と、段々身体に緊張がたまり、どーでもいいところでミスをする⇒これは全くスケートでも同症状
…といった風情。
人間どういうところから“核心”を垣間見るチャンスを得られるか、わからないものです : )。

ふくろうマークの "ヒードラー"             2011年収穫レポート その1

お城ワイナリーからの距離という意味では、何度かブログでご紹介したヒルシュに続いて、ふくろうのマークでお馴染みのヒードラーHiedlerが、有名どころとしてはご近所ワイナリー№.2的存在。

自転車で20分ほどの距離にあるのですが、ヒルシュと違って道のりが平坦でないことと、普段よく通る道筋にないため、お城住まいになって以来、まだ1度しか訪ねていません。
で、そろそろ崩御間近の10日、あちらの収穫がひと段落したのを確認し、お城ワイナリーも通常のブドウの収穫が終わり、翌日に貴腐の収穫を残すのみ、という状況を見計らって、2011年の収穫状況を当主ルードヴィックにインタヴューして来ました。
郷土伝統的建築でもなくハイテクでもなく、スペイン人である夫人マリアの趣味も反映したに違いな建物。
エティケットでおなじみの森の守り神『ふくろう』が門柱に鎮座しています。
基本的に、久々に質量ともに満足の行くヴィンテージになった、と嬉しそう。
問題点を挙げるなら、8月下旬から9月初頭の熱波。その影響で;
1)アルコール度はどうしても高め。
2)皮が厚く、フェノール分が高い(特にグリューナー)。
少し解説をしておきますと、
1)のアルコールについては、「今年は14.5~15%の白が出る可能性もある」と、困惑の表情。
また、通常いつも早めに収穫し、DACワインを作る畑であるシュピーゲルSpiegelでも、今年は法制上はReserveとなってしまうため、13.1%以上になってもReserveと名乗らなくてもよくなるよう、法令を改めるべく運動している、とか。

ところで、熱波の影響は当然酸にも及びますが、7月から8月中盤まで比較的涼しく日照が少なめだったため、根がよく張っており、恐れられたほど酷い低下を招かなかったかったのは救い。
また、発酵中に失われる酸量が今年は少なかったことや、自然に起こるMLFで失われる酸量も少なめに見積もられることから、最終的ワインの酸量は、天候から考えれば比較的よく保たれそう、と言っていました。

2)については、プレスの際、皮から過多のフェノール分を果汁に出さないよう、細心の注意とテクニック(ネウマティックプレスを回転させない、圧力を弱める、など)が必要だったそう。
夫人マリアのラテン気質は、今ではすっかり夫ルードヴィックにも伝染。ワイナリーは陽気な雰囲気に溢れています。
以上を総合して、「一番の問題は」とルードヴィックは言います。
「消費者のマインドだよ」と。
一時期アルコールの高い、威風堂々たるスマラクト的ワインをもてはやした消費者の嗜好は、近年真逆にスイングし、アルコールが軽めでエレガントなワインを好む傾向へとシフト。「ラベルのアルコール分を見ただけで敬遠されるのではないか」と心配そう。
けれど酸が晩夏から初秋の熱波を経ても比較的良く保たれたことや、根がよくミネラルを吸い上げたことなどの要因で、ワインの味わいはバランスよくチャーミングな果実味&香味に溢れているので、「消費者はワインを飲んで考えを変えるかも」と強気も覗かせていました。

セラー見学と、2010年ヴィンテージから、新顔など数種かいつまんだテイスティングの様子は、後日『その2』でお伝えします。

2011年11月22日火曜日

リースリング ハイリゲンシュタイン&ガイスベアク   ワイン会@シノワ渋谷

昨晩は渋谷シノワでワイン会。
シノワのオーナーソムリエの後藤さんとは、もう15年以上のお付き合い。久々にあのつかず離れず、一般客には非常にスマート、常連客にはサディスティック? とも言える独特のサービスを楽しみにしていたのに、本人はオフで不在。
オーストリアワイン大使の篠原さんもつい先頃お店を辞めてしまい、寂しい限り。
その代わり、マネージャーの丹下さんとお話ができたし、ソムリエールの高木さんがシノワらしい、出過ぎず、それでいて行き届いたサービスをして下さいました。

さて、ワイン会のテーマは、お城ワイナリーのご近所きっての銘醸畑"Heiligensteinハイリゲンシュタイン"と"Gaisbergガイスベアク"。ふたつの畑をともに所有するご近所同士であるお城ワイナリーSchloss GobelsburgとヒルシュHirschの両畑を4つ並べて味わう、という趣向です。

最初にブリュドゥルマイヤーのゼクト ブリュット 07。マグナム瓶で参加者を“おおっ”と言わせてからのサーブです。かねがねプリンセスはここのゼクトをオーストリアいち、と喧伝していますが、この年はちょっと酸がダレ気味。
因みにオーストリアのゼクトには、瓶内二次発酵はしていても、ブドウ産地と瓶詰め場所に何ら関係のない、どーでもいいモノが多い。でも、勿論ちゃんと造っているところもあります。

代表選手として、まずこのブリュンドゥルマイヤーが最もシャンパーニュに近いスタイル(オートリシス、ブルゴーニュ品種主体…)。正反対に、ゼクトを主に造るシュタイニンガーの場合、グリューナーやリースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ムスカテラー、トラミーナーといったブドウ品種そのもののアロマを楽しむフレッシュなゼクト(ツヴァイゲルトやピノ・ノワールからの赤ゼクト、カベルネを使ったロゼ、なんて珍しいものもあり)。うちはブリュンドゥルマイヤー寄りで澱との接触は大切にしながら、品種的にはグリューナーやリースリングの割合が比較的多い、いわば両者の中間スタイル。

さて、メインのワインは、左から;
1) Hirsch Riesling Heiligenstein 2010
2) Schloss Gobelsburg Riesling Heiligenstein 2010
3) Hirsch Riesling Gaisberg 2010
4) Schloss Gobelsburg Riesling Gaisberg 2010
5) Schloss Gobelsburg Pinot Noir Alte Heide 2009
4つのリースリングを少しずつ、一度に味わいます。
最初は畑の違いより生産者の違い、つまり、収穫時期の差(ヒルシュは中間、ウチは非常に遅い)貴腐を混ぜるか、廃するか(因みにヒルシュは一切貴腐は排除、ウチはほとんど排除するものの、いい貴腐は多少残す)、或いは培養酵母を使うか使わないか(ヒルシュは自発的発酵のみ。ウチは自発的発酵主体だが、必要なら酵母を加える。おっとこれは味わいからはわかりません)、発酵熟成はステンレスか大樽か(ヒルシュは半々、ウチは全て何らかのカタチで大樽を使用)といった栽培&醸造の技法の違いがよりはっきり味わいに現れていました。
ヒルシュの直截なミネラル感とウチのワインの若いのに角がなく、複雑さのあるスタイルの対比ですね。
私はメインに黒鯛をチョイス。鴨や豚、鶏を選んでも、力強い白はしっかりお食事を引き立てたはず。
ところが時間とともに、両畑の土の違い(ハイリゲンシュタインは色の明るい火成岩主体。石灰分も多い。ガイスベアクは黒っぽい原成岩主体。石灰分はずっと少なめ)による味わいの差が、どんどんハッキリして来ました。
おそらくもっと寝かせると、さらに畑による差の方が大きくなったことと想像できます。

10年は比較的涼しく、酸とミネラル主体の年なので、こういう年には緻密なテクスチャーとしっかりとした骨格を誇るハイリゲンシュタインがとてもいい(09年や06年など暑い年には、若いうちは特にプリンセス的にはtoo muchな感じになりがちです:レベルでなく趣味の問題)。
汁気の多いガイスベアクは、暑く乾いた年には場合によっては、特に若いうちはハイリゲンシュタインより魅力的なこともよくありますが、こういう涼しい年になると、やはり多少控えめというか、地味な印象になります。
ハチミツと練乳のアイスにペドロヒメネスがけ
いずれにしても、畑による違いをしっかり出してくる生産者は、スタイルによる好みの差を乗り越えて、スゴイ人たちだ、ということをお忘れなく

最後のピノも09年という暖かい年、ということもあり、プロ参加者からも「いいワインだ」という声が聞かれました。実はオーストリアのピノって、中世から植わっている、いわば半地場品種ですから、レベルはとっても高いんです。

いつもワイン会に来てくれる生徒さん、大学時代の親友の先輩達やリアルで初対面の方、久々に旧交を温めた業界の古い友人、仏独のツアー通訳で出会った他のワインスクールの生徒さん達、鮓とワインの相性を見るワイン会に来てくださった方…などなど、ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました!
最後にプライベートな友人達と合流し、店主お手製の酢橘チェッロをいただきました。
皮のグリーンが外見にも味わいにもピリっとしたエッジを与える傑作! 昇天できます : )

2011年11月20日日曜日

エアステラーゲはスキャンダルですか?

おとといのブログでお約束した真面目な話題。

ニューヨークで行なわれた"オーストリア アンプラグド"イベントでシュタイヤーマークの生産者(おそらくサットラーホーフかテメントかポルツの誰か)が"エアステラーゲはオーストリアのグラン・クリュ”と観客に解説。
ところが次に壇上に立ったテルメンレギオンのシュタードゥルマン(横道に逸れますが、このヒトのツィアファンドラー"マンデルヘー"は、オーストリアワイン好きなら、必ず飲んでおくべき逸品)が“彼は嘘つきだ。エアステラーゲなんて公的に認可もされていないし、何の根拠もない”と公然と批判。

以上は15日の会議の席上、オーストリアワインマーケティング協会会長が紹介したエピソードです。
おそらく彼の意図は、メディア関係者に対し、現在ニーダーエスタライヒのトラディツィオンスヴァインギューターTraditionsweingüterと、シュタイヤーマークのシュタイリッシェ・テロワール ウント クラシークヴァインギューターSteirische Terroir- und Klassikweingüter(略称STK)が導入しようとしているエアステラーゲ(STKの場合はグローセ・ラーゲとエアステ・ラーゲの2本立)のシステムについて、情報の扱い方に細心の注意をして欲しい、という警鐘を鳴らしたかったのでしょう。
つまり、エアステ・ラーゲの制度は、今のところ何の法的根拠もないので、安易にそれをメディア上で『オーストリアのグラン・クリュ』のような紹介の仕方をすると、『嘘つき』呼ばわりされる危険が大きく、また下手をすると、オーストリアワインの新たなスキャンダルとなりかねない、という現状をメディア関係者に周知徹底したかったのだと思います。


ところでこの『エアステ・ラーゲ』システム。お城ワイナリーの当主ミッヒが、システムを主導しているトラディツィオンスヴァインギューターの現会長であることもあり、プリンセスにとっては非常に馴染み深い制度。それに、客観的にも、オーストリアの銘醸畑をブルゴーニュのGrand cru & 1 er cruになぞらえ得る、とても明快でわかり易い等級付けです
勿論、等級付けの科学的根拠他、格付過程の妥当性にいくつもの問題点はありますが、オーストリアワインの国際市場における地位向上を望むサポーターなら、このシステムが一日も早く法的認可につながることを望んでいると思います。


え? 同国イチの有名産地、ヴァッハウはエアステ・ラーゲのシステムに消極的?


うーん、エアステ・ラーゲだけではなく、ヴァッハウはDACシステムに加入する予定も今のところないようで、プリンセスは個人的には、ヴァハウのそうした方針を、オーストリアワイン業界全体の国際市場における競争力強化の観点から見て、非常に残念だと思っています。
こうした有名産地の振る舞いは、ドイツにおけるラインガウの振る舞いと、ドイツワイン全体の階級&スタイル名称とコミュニケーションの混乱を思い浮かべていただければ想像がつくように、その国一番の有名産地が新システムに加わらない、或いは足並みを揃えないことで、新システムの一貫性や信用度は著しく損ねられるからです
平たく言えば、ヴァッハウが加入しないDACシステムはなんとなくチャチく見えるし、ヴァッハウが参加しないエアステ・ラーゲ制度は、どうしてもインチキ臭く見えてしまう――まで行かなくとも、少なくとも信頼性を下げてしまうものなのです。
そしてそれは、「その他のより知名度の劣る産地の地位向上」機会の芽を摘むばかりか、その国のワイン全体のコミュニケーションの一貫性&有効性を損ね、最終的には、"最有名産地である自分達が、新等級システムの最上位に位置することで、国際市場に対する更なる説得力を得るチャンス"を、自ら潰している、という側面にも目を向けて欲しいと思っています。


ただし、それぞれの産地にはそれぞれの歴史とそれぞれの市場背景&事情というものがあることは言うまでもありません
なので、この問題については、現地滞在中にじっくり時間をかけて、様々な産地の個々の生産者と真摯に対話を重ね、オーストリアの生産者にとって何が一番大切か、一方で日本市場&消費者にとって何が一番望ましいか、両方の視点から様々な意見をご紹介して行きたいと思っています。


尚、エアステ・ラーゲについての参考リンクは以下の通り。
http://www.traditionsweingueter.com/news_201004.html
http://www.stk-wein.at/lagen.html

2011年11月19日土曜日

本場より美味しい?k. u. k.で謎の逢引

今日はプリンセスうん十年ぶりのデート? るんるん。
場所は、本場より本格的、本場より美味しい、と評判のk u. k。
日本人初のキュッヘンマイスター、神田真吾さんがシェフを勤めるお店です。
ミットタークエッセン(ランチ)のコースとは言え、もちろん全く手抜きはありません。
アミューズ
梅山豚の熟成ハム。因みにこれはコース外。
マスタードが添えられます。
ここまで、合わせたワインは、私がハウスワインのユルチッチGV 08。連れはツァーヘルのホイリゲ。どちらもグラスでいただきましたが、相性的にはどちらもベストマッチとは言えなかったなぁ。
GVならもっとフレッシュなものの方が良かったような気がしますし、ホイリゲではハムの旨みやマスタードの強さに太刀打ちできません。
多少残糖のあるリースリング、或いはお店お勧めのロゼ あたりが当たり、のはずです。
フォアシュパイゼ(前菜)の盛り合わせ。こういう繊細な盛り付け&コンビネーションは本場ではまず有り得ません!
クレン(西洋わさび)のシャウムズッペ(泡のスープ)。大変美味しゅうございました!
ボトルで頼んだワインは、ヨハネスホーフ・ライニッシュのグンポルツキアヒナー・トラディツィオン。ウィーンのすぐ南に位置する伝統的産地の名物ワインは、ツィアファンドラーとロートギプフラーという面妖な名前のブドウ2種のブレンド。
ツィアファンドラーの酸とミネラル、軽いナッティーさとロートギプフラーの円やかなオレンジのような果実味が相俟って、幅広い料理をブライトに引き立てます。このお店で6千8百円という超お飲み得ワイン!
連れの雪鱒。皮目の焦げ目がツィアファンドラーの香ばしさにピッタリ。
私の梅山豚の煮込み。旨みが上品に凝縮しています。
ランチとは別に連れの頼んだシュニッツェルを半分取り分けていただきました。
軽重、魚肉を問わず幅広く料理を引き立てるワインではありますが、ではメインの何に1番合ったか、と言えば……鱒も良かったですが、何と言ってもシュニッツェル! キリっと硬質な酸が脂を切って実にいい塩梅。
梅山豚の煮込みには、もう少し複雑さと重量感のあるリースリング・スマラクトの方が良かったでしょう。もちろんしなやかな赤でもOK。
デザートのアプフェルシュトゥルードゥル。ヴァニラ・ソースのコクとリンゴの酸味が絶妙のハーモニー。
デザートにはクラッハーのアウスレーゼ(連れ)とTBA(私)をオーダー。リンゴの酸と果実味に合わせるならアウスレーゼでしょうが、ソースのコクまで包み込んでくれるのはTBA。実際のところ、ブルゴーニュ品種のBAキュヴェあたりがあれば、それにしたかった…。

ところで、このお店。お料理の質の高さ、研究熱心さを反映したお料理のメニューに対し、ワインリストのヴァラエティーとコンセプトの明確さがちょっと物足りない、というのがプリンセスの本心。
でもしばらく訪ねていなかった間に、ワインリストも少し充実していました。

こうしたレベルの高いオーストリア料理店がもっと日本に増えて欲しいし、一流店のワインリストは、やっぱりオーストリアのトップワイン&ワイナリーのショーケースであって欲しい、と切に切に願うプリンセスであります。

Mッチーご馳走様!!

2011年11月18日金曜日

独語会議初デビュー

ゾンビです : )
今朝東京に着き、早速友人の店でお蕎麦を食べて来ました。

ところで、プリンスがまだお城でプリンセスをしていた15日。ウィーンはベルヴェデーレ宮殿近くにある、オーストリアワインマーケティグ協会のオフィスで、オーストリアを拠点に活動する主要女性ジャーナリスト、PRエージェント、マーケティング・コンサルタントを集め、協会の今年の活動のブリーフィングと、市場が抱える問題点と展望などについての討論が行なわれました。
面々の真剣な表情をご覧あれ。この頃プリンセスは写真を撮りながら、食べ物を物色 : )
どういう訳かプリンセスにも召集命令がかかりましたが、何せ会議は全て独語。
どんなに神経を集中させて聞いたところで、大して理解できるはずがありません。
なので、討論よりも出されたお菓子に集中していたプリンセス
…しかし、それを気取られてか、会長のヴィリーがときどき「新興アジア市場の重要性に鑑み、この会議にも新しいメンバーが加わっている。ゆかり、今言ったことわかったか?」とか、「インターネット、ソーシャルメディアの重要性は益々増している。ゆかりも最近ブログを始めたんだろう?」と言って、私に話題を振ってきます。
参加者はおそらく全員英語も解しますから、英語でちゃんと大人の受け答えをすればいいものを、妙なところで素直なプリンセスは、ドイツ語で聞かれると反射的にドイツ語で答えてしまいます。当然答えは1語か2語。「はい、少しだけ」とか「はい、はじめました」くらいがセキの山…知能程度を疑われたと思う、きっと…

それはさておき、討論の大きなテーマのひとつが、DACのラベル表示上の問題点、そしてワインリスト表示上の可能性
DAC或いはDAC Reserveの認定を受けていながら、きちんと表示されていない、悪例見本が次々に紹介されます。
向かって左より;DACの文字がない、産地名を図案化してしまっている、産地名=Weinviertel自体が抜け落ちている。
お品のいいのが取り得のはずのオーストリアワインが、ど、どうしてしまったのでしょう?
ここまで悪趣味だと逆に微笑ましい? : ) 緑色のグリューナーヴァージョンも有り。
セレクションならぬスケルトン ブランドの裏ラベルはなんと英語!
因みに我がお城ワイナリーシュロス・ゴベルスブルクは、模範例として登場。さすがはトラディツィオンスヴァインギューター会長のワイナリー! 
ただ、このトラディツィオンスヴァインギューターが音頭を取って進めているエアステラーゲErste Lageのシステムが、下手をするとジエチレングリコール以来の、オーストリアワインのスキャンダルに成りかねない、というヴィリーの指摘にちょっとびっくり
この問題はとても重要なので、明日改めてお伝えしますね。

いやあこの会議、ドイツ語理解力のおぼつかないプリンセスにとってすら、実に有意義!
メディア関係のプロが、実際に市場で使用されているラベルや雑誌、レストランのリストなどの表現を皆でチェックし、問題点を洗い出し、解決方法を討論する――、という画期的なものでした。
欧州ワインメディアの質の高さを支える理由のひとつを見たような気がします

2011年11月17日木曜日

黄泉の国?へ

では皆さん、しばらくお城を離れます。
お城体験まだまだご報告できていないことが山積みだし、黄泉の国でもテイスティングやら取材旅行やらイベント目白押し。
お楽しみに!

2011年11月16日水曜日

崩御前夜 霧に包まれたゴベルスブルク

プリンセス、明日早朝をもって一時崩御します。

思えば、お城に到着したとき、部屋の窓から望む胡桃の木は、まだ葉がついていませんでした。

一日一日小さな黄緑の葉を増やし、緑の濃さを深め、やがて緑が褪せ、実をつけ、葉を落とし、最初の状態に戻った木を眺めながら、同じように芽を出し、どんどん大きくなり、今まさにワインに変身中のブドウの一生に思いを馳せ、季節が巡る不思議を思いました。
丁度木々が芽を出す時期にお城ワイナリーに住み着き、丸裸になる時期に崩御するプリンセスの運命の不思議もアタマをかすめました。
何か自分が宇宙の片隅でぽっかりと一人、けれど大きな生命のうねりの波間に浮かぶ揺り篭に抱かれているような、奇妙な気分になりました。

最近この辺りはいつも霧に煙っています。
昨日、今朝と「雪が降ったか」と思うくらい、畑一面&木々の小枝が小さな白い花をつけたか、と思うくらい、派手に霜も下りています。
両者相まって、なんだかとても幻想的な景色です。

7ヶ月半の間に、このブログにはとても書ききれないくらい、沢山のヒトにお世話になり、沢山の汗を、涙を流しました。ショックで丸一日身体中の震えが止まらないこともありました。眠れないくらい嬉しいこともありました。
不思議なことに悲しいことはあっても、寂しいと思ったことは一度もありません。ブログを読んでくれているヒトが沢山いると思うだけでも、力をいただきました。
お礼をさせて下さい。ぺこり。

ブログの方は黄泉の国 : )?から変わらず続けて行きますので、これからも応援よろしく!
そうそう、昨日のブログに解説ちゃんと加えました。

2011年11月15日火曜日

さてこれは何をしてるところでしょう?

下の写真、何をしているところかわかりますか?

結構ギッシリ固められていますが、ホールバンチなため、梗が緩衝材の役割をしており、プレス自体はとても柔らかい。
ほぐすのに結構ちからが要りそう。
しっかりほぐします。
実はこれ、お城ワイナリーの貴腐ワインの1回目のプレスの滓。
貴腐のプレスにヴァーティカルプレスを使っているワイナリーは、この辺りでも少ないので、ちょっと作業の様子を見まてみましょう。
まだ水分を結構含んでいるので、かなり重い。
カーナーさんは何をするにも状態をチェックするのを忘れません。

ひとつの作業が終わると、即清掃。
何度も書きましたが、こういう努力がきれいな味わい、そしてSO2減にもつながります。
ここまでの作業は朝7時半頃。
1回目の搾りかすを大きなバスケットに入れ、再度プレスに入れて、昼過ぎまでフリーラン(まだ出るんです)を取って、更に2回目のプレスを行ないます。

今日はプリンセスは崩御前最後のウィーン。都で3つのミーティングとプレス・イベントをこなして来ます。

なので、とりあえず土曜にハイリゲンシュタイン畑で収穫した貴腐ブドウが昨日どんな様子になっていたか、写真達を時系列に公開しておきます。

まず、午前中。一回目のプレスとその搾りかすの処理、つまり上の写真の前に起こった出来ごとから。
土曜に収穫した貴腐ブドウは月曜の朝までプレスに入れたまま、フリーランが流れるようにしておきます。
ホースを伝って下の階の小型発酵タンクに果汁がたまるようになっています。
プレスをマニュアル操作にして、ゆっくりゆっくり、状態を確認しながら絞ります。



ブドウをひとバスケット(大)入れるごとに、青い網網のマットを敷いていきます。

完全に搾りかすが出たら、フォークリフトで運びます。

それを再びバスケットに入れます
こんな感じ。
で、ここからが最初にご紹介した、ほぐしてバスケットに入れる作業。
さらにバスケットの中の搾りかすをプレスに入れて、朝の作業は終了。
ここからが午後です。
2度目のフリーランはかなり色は濃いですが、透明度は高い。
こんな感じ。
ここでちょっと、先週訪ねたヒードラーの貴腐の搾りかす(といってもこちらはネウマティックプレス)の様子をご覧いただきましょう。

にごり方、不純物の混ざり方がずっと重篤でしょう? 
だからこちらは、これをフィルターにかけてから発酵させる必要があります。
再びここから、お城ワイナリーのヴァーティカルプレスに戻ります。
2度目のプレスが始まり、果汁が流れ出る様子。

2度目のプレスもここに加えられます。TBAはこれだけしかできません。
詳しい解説は、また明日、今日のブログに書き足します!

ということで、後は酵母を加えて発酵させます。全てTBAになるようです。
「何故貴腐にヴァーティカルプレスを使うの?」と、聞いてみました。
「絞る時には手間がかかるけど、後の果汁の処理が楽だから」というのが答え。
なるほど、ヒードラーでは搾りかすはフィルターにかけてから発酵に廻すし、フィルターも色々試行錯誤して選んでいるようでした。
そうなんです。ヴァーティカルでは梗がプレス圧の緩衝材の役割をしてプレスが柔らかくなるだけでなく、梗が一種のフィルターとしての役割も果たしており、だからうちのトラディションや貴腐は清澄作業を必要としません。

と、昨日のブログに律儀に書き足しをしている私。
果たして何人が読み返してくれるのかしら?????