2012年1月31日火曜日

ライタベアクとパノービレ その1 ピットナウアー  @パノービレ

先週の月曜、23日にウィーン在住13年の清水さんの運転でゴルスGols &ヨイスJoisのワイナリーを訪ねて来ました。

オーストリアのワイン産地を認知する標準的過程は恐らく、大きな括りで言えば、ヴァッハウを中心としたドナウ一帯(GV & Riesling)⇒ウィーン(Gemischter Satz)⇒シュタイヤーマーク(Sauvignon Blanc & aromatic)⇒ノイジードラーゼーの東西湖畔(貴腐)⇒ミッテルブルゲンラント(BF)⇒そして最後に残るのが、カルヌントゥムとノイジードラーゼーの北方、ゴルス&ヨイス近辺なのではないでしょうか。
つまりある程度オーストリアワインを知っているヒトでも、一番産地として『なんだかよくわからない』のがこの辺りなのではないか、とプリンセスは見ています。かつては白中心の産地でありながら、ここ20年ほどで赤白比率が逆転を見せているのもこの辺りで、それがますます産地としてのアイデンティティを訳のわからないものにしています

ということで、白のお宝をヴァインフィアテルで探すのと同じ理由で、赤のお宝はないか、とこれまで訪ねたことのないワイナリーや、質は高いのに日本未輸入のワイナリーを訪ねてみました。

ただし、ゴルス近辺は、ワイン畑が散在するヴァインフィアテルとは大きく異なり、カンプタールのランゲンロイスと並んでワイナリー集積度の高い町。しかも中世に修道士が最初にブルゴーニュ品種を持ち込んだのもこの辺りらしく、ピノ・ノワール、ザンクト・ラウレント(ピノのハーフ)、ツヴァイゲルト(ピノのクオーター)、といったブルゴーニュ系ブの産地として知られています。
それに、白の適地と赤の適地の交わる辺り――特に石灰&シスト由来のミネラル感溢れるワインを生むライタベアクは、プリンセスがデイヴィッド・シルクネヒト(ワイン・アドヴォケイトでオーストリアやブルゴーニュを担当するヒト)より早く注目していた(?  :)「エレガント・ブラウフレンキッシュ」の産地として、シュドブルゲンラントのアイゼンベアクとともに一挙に世界のワイン通の耳目を集めつつある場所です。

ヨイスから東に向かって湖のほぼ北から北東を走る丘の連なりがパノービレ。こちらは産地としてはノイジードラーゼー。一方でヨイスの西側、プルバッハを通ってドネアスキアヒェン、シュッツェンと湖の北西を斜めに走る丘陵地帯がライタベアク。こちらは産地的にはノイジードラーゼー=ヒューゲルラントとなります。
丘陵地としてこのふたつは連なって見えるのですが、土壌がはっきり異なります。東側は場所によって重さは異なりますが、石灰と鉄分、小石を多く含む砂地主体。西側は貝殻石灰とシスト主体です。で、東の有名生産者としてハインリッヒやペクル、ウマトゥム、西にはプリーラーやモリッツ(この人の最も有名な畑はミッテルブルゲンラントやシュドブルゲンラントにありますが、ワイナリーはこちらにあり、ブドウの調達元もこちらに増やしたい意向のよう)、コルヴェンツがいます。
なのですが、なにせ丘が連なっているため、両方に畑を持つA & H ニットナウスやウマトゥム、シュロス・ハルプトゥルンのような例が多く、これがまた混乱に輪をかけています。

以上、タダの講義はよそう、よそう、と思いながらもついやってしまう、オーストリアワイン講座でした : )。

では、最初の生産者ピットナウアーPittnauerから簡単に振り返ります。パノービレのビオディナ=ロジック(或いはバイオダイナ=ロジック;ビオディナミの手法を採るが、デメター認証を受けない。プリンセスの造語)の生産者です。
つい先ごろタスマニアからステファノ・ルビアナが来ていたらしく、「自分達のスタイルは日本人の嗜好に合うのではないか」と日本市場に興味を持っていたところへプリンセスが訪問。welcome気分満載のポジティヴ・オーラが楽しいテイスティングでした。
当主ゲアハルトとブリギッテ。「自分達のやっていることを分かって欲しい」
という真摯な思いがヒシヒシと伝わりました。
2009年に有機認証を受けたビオディナ=ロジックの効果か、
畑にモグラの穴が沢山見られます。土が生きている証拠。
緩斜面の下方は粘土の多い黒い土に小石。
上に行くほど石灰分が増え、土が白っぽくなります。
丘の下方はハイデボーデン。更に南にノイジードル湖が光ります。

ブリギッテお手製のザルツ・シュタンゲルの美味しかったこと!
風邪で咳込みながらも、熱心に説明してくれるゲアハルト
ポップなエティケットのワイン達。
最初のワインを除いて全部赤でしたが、飲み疲れなし。旨味の乗った果実味が心地良い、好ましいワイン達。
果実味の熟度はこの辺りとしては控えめでエレガントなのに旨味の十分に乗った、とても素直で暖かいワイン達。
光っていたのはSt. ラウレント。聞けばお城ワイナリーのSt. ラウレントも大好きだとか。
ツヴァイゲルトもピノも、その深みと透明感を両立した果実味と、適度なタンニンは心地いいのですが、プリンセス的には、特にピノは今少し酸が足りない…。そしてストラクチャーがちょっと緩い。
「うーんでも、一般受け、という意味ではこの両者の方がいいのかも知れない…。」と思いつつも、自身の尺度に忠実に、ザンクトラウレントのサンプルをいただいて来ました。

これも運のいい方、プリンセスの次回帰国時にご一緒しましょう!

2012年1月30日月曜日

ライタベアクの女王 シルヴィア・プリーラー 通人向けワイン

随分時間が経ってしまいましたが、110日、ハイディ・シュレックのオウチで行われた女子会に、今をときめくライタベアクの女王シルヴィア・プリーラーが、隣町シュッツェンからバレルサンプルやら現行ヴィンテージやらを携えて参加してくれました。
ライタベアクDAC制定をリードしたシルヴィア
試飲ワインは以下の通り;*(P)はグレーピンク・ラベル=軽快クラシックタイプ、(B)は黒ラベル=長熟タイプ
「ちょっとちょっと、バレルサンプルは恰好悪いからいらないでしょ?」というシルヴィアの制止を振り切っての撮影 : )
Pinot Blanc Seeberg (P) 2011 Barrel Sample:樹齢5070年の古木からのピノ・ブランは、お値ごろな価格ながら通を唸らせる素晴らしいバランスとミネラル感。
Leithaberg (B) 2011 Barrel Sample:まだ赤ちゃんで評価が難しいが、ミネラルの超密さで前のワインとの格の差を見せつける。「熱波のあった11年にも酸はそれほど下がらなかった。」とシルヴィアが語る通り、冷涼さ溢れる味わい。
Johanneshöhe Blaufränkisch 2009:酸と果実味、タンニンとアルコールのバランスが見事なベスト・ヴァリュー ブラウフレンキッシュ!
Schützner Stein2009:キュヴェ嫌いのプリンセスを唸らせる、絶妙のメルロ遣い。今の時点では上のクラスよりよく開いて魅力的なほど。
Leithaberg Blaufränkisch 2009:シストとシェル・ライムストーン土壌由来のミネラルが核の硬派なワイン。タンニンがこなれてから真価を発揮しそう。
Goldberg Blaufränkisch 2009:シスト土壌。西向のためブドウの成熟がゆっくり。ワインの成熟もゆっくり。タンニンがライタベアクより更に厚いのにむしろ柔らかく感じるのはさすが。

ところで、彼女とプリンセスのお付き合いは既に恐らく9年近くになります。

2003年、最初にオーストリアのワイン産地を訪れ、「この国の赤は絶望的」(抽出は強い、新樽は強い、垢抜けない、の三重苦で、白が魅力抜群なのと正反対)と思った中、彼女の赤は頭抜けて素晴らしく、特にブラウフレンキッシュ ゴルトベアクの緻密さと、この国のカベルネとしては唯一まともにタンニンが熟しているウンガーベアク、そして穏やかでありながら焦点の合ったヴァイスブルグンダーが印象的でした。

そして翌年、ブルゲンラントのプレミアム・クラスの生産者の赤としては、アラホンやヴェーニンガーに続いて比較的早い時期に日本に紹介されました。…が、いつの間にか消えてしまいます。モリッツやヴェンツゼル、ウヴェ・シーファーやドルリ・ムーアらの”エレガント・ブラウフレンキッシュ“の潮流がまだ見えて来ない頃の話です。

その間、彼女のポートフォリオからStラウレントが消え、ライタベアク赤白が加わり、少なくともゲルマン圏を除くインターナショナル市場においては、かつてのガッツガッツ&コッテコテのバリック・キュヴェや筋骨隆々のブラウフレンキッシュは“アウト”を宣告されます(ドイツや国内市場、スカンディナヴィア諸国ではまだまだ人気が高いようですが)。
そうなってみると、彼女やETの位置づけが非常に難しくなってきます。間違いなくエレガント・ブラウフレンキッシュの先駆けなのですが、今時の"エレガント派の中に入ると、抽出も決して弱くはない…
しかも彼女のワインのヴィジュアル・プレゼンテーションは、ワインのスタイルを簡潔に体現しているでしょうか? 市場に対して十分に説得力があるでしょうか? ピンクラベルが軽快なクラシックタイプ、黒が長期熟成タイプを意味する、というところまではいいでしょう。けれど同じブラウフレンキッシュ100%のワインのあるものはボルドー瓶に、あるものはブルゴーニュ瓶に入っているのに十分な理由は、今でもあるでしょうか?

どう転んでもオーストリアの赤の生産者の頂点のひとつなのに、日本市場に定着しなかった理由は、彼女のワインが一般受けというより通人に評価されるスタイルだという点も去ることながら、そんなコミュニケーションベタも大きな理由のような気がしてなりません。
元マーケティング・プランナーのプリンセスとしては、このワイナリーには質以外のところで、そういう工夫のしようが色々あるように思えてなりません。

2012年1月29日日曜日

マークス・フーバー ひと味違う、石灰土壌の魅力

先日お城で行われたMW教育セミナーで、あらためて彼のRiesling Bergの素晴らしさに驚かされ、その場でワイナリー訪問の約束を取り付けたプリンセス。
午前中の訪問先ヒードラーでテイスティングを済ませ、マリア・ヒードラーが用事のついでに私をランゲンロイスの町で落としてくれ、カンプタール一帯のワイン情報センターとも呼ぶべきワイン・カフェ併設のUrsinhausウルジンハウスで、マークスの弟、ミヒャエルが私をピックアップしてくれる、という段取り。
プリンセスが免許取得不能(網膜の病気あり)なので、ワイナリー訪問は、このようにワイナリー関係者に迷惑をかけっ放し。本当にいつも申し訳なく思っています

マークスを訪ねるのはおそらくこれで4回目くらいになるのですが、看板畑Bergベアクを見せてもらうのは今回が初めて。
どことなくブルゴーニュを思わせる斜面。ただし畑は段状。
彼の畑は、ワイナリーの正面に南北に走る、トライゼンタールの西側にある東向き斜面に散在しています。ワイナリーから向かって南側にEngelreichエンゲルライヒとBergベアクの畑があり、「土壌のフォーメーションがよくわかる場所がある」ということで、まずエンゲルライヒの裏手にある洞窟へ。ほんの1-2m四方に、様々な要素があります
小石、化石、砂などなど様々なものが固まったコングロマリット
小石の多い部分。
白っぽい石灰
砂の部分
こうした赤い鉄分の部分が多いのがBerg畑。
続いてベアクの畑からトライゼンタールを見渡し、谷の底、フラットな部分は霜の害がひどいためブドウは植えていないこと、「風&水はけの良い土壌」のため貴腐が非常につきにくいこと、など、他のドナウ周辺産地との違いを確認。
これがベアク畑。石組の段ではありません。
30年以上の樹齢の部分。当時のmixed culture用トラクター向けで、畝間3mほど。
「planting densityよりyield/hadの方が重要」とMarkus。仕立てが高いのは鹿に食べられないようにするため。
ベアクの若木。右手がタールの部分。
テイスティングしたのは以下のワイン;
HUGO 2011: 周辺のベーシック・クラスの中でも最もドライな部類で、キレ抜群。
Oberesteigen GV 2011:レスon石灰の土壌。変わらぬ超ハイ・コスパ。
Engelreich Riesling 2011:「今の時点でアロマティック&開いた風味は、11年の特徴」とマークス。
Engelreich Riesling 2010:既に軽いペトロール&フィニッシュに軽いはちみつのタッチ=熟成の兆候。
Terrassen Riesling 2006:白い花のアロマが豊か&カリっとしたミネラル。「06は11に似た年」とか。
Berg GV 2010:カマンベールの皮的風味。ミネラルとスパイス。そんなに余韻は長くない。
Alte Setzen GV 2005:レス on 石灰。GVは透明感があってBergよりこちらが好み。

全体的に非常にプリサイスで透明感溢れる、典型的モダン派の味わい。その理由はしっかりとした澱下げ、ラッキング時期の適切な見極めなど細かな作業を適切&確実に行うことの積み重ねにあるよう。彼ににとってはどうやら「確実に」という点が大切らしい。
「ミニマル・インターヴェンションと言って、ワインに対して何も手を加えない、何の管理もしないのはナンセンス」だというのが彼の意見。全く同感。
ただし、ニューワールドの生産者の大半が主張する「培養酵母も天然酵母も変わりわない」という意見には「同意できない、確かに違いはある」と語る。
結果的に、HUGOは完全な辛口に仕上げたいので必ず培養酵母を使用する。プレミアム・クラスにしても、最も良い区画の果汁を自然発酵でスタートさせ、問題がなければ、その発酵中マストを他のバッチ(同じ区画の果汁の入った大きなタンク・大樽や異なる区画の果汁の入ったタンク・大樽)に加えて発酵をスタートさせる、という用心深い方法(プラーガーなどと同様)を採る。
また、健全果の適切な熟度での収穫が前提なのは言うまでもありませんが、醸造過程におけるグロス・リー(=マザー・リー:発酵させたままの澱)とファイン・リー(ラッキング後の細かな澱)それぞれの適切な接触期間やその間の酸素の必要量や酸素と触れさせる頻度などの「ジャスト」なサジ加減の積み重ねが、こうした透明感溢れるワイン造りには欠かせないことを確認。
真っ白いセラーの庭には真っ赤なリンゴのなる木。
さらにセラーでは彼の才能と研究熱心さを再確認
例えばプリンセスを感動させたリースリング・ベアクの場合――普通最適な熟度とされる、アロマが丁度成熟に達した時点での果実と、貴腐がつく前のギリギリのタイミングの遅摘みを別々に発酵させ、後者を適量ブレンドする秘技が存在。また、全てのタンク&樽に対し、マストに施した作業を時系列で綿密に記録し、後から過去の結果を総合的・多面的に検討することで、毎年新たな果汁をどうワインに仕上げるかをイメージし、対処作業を組み立てる、という、彼のやり方を知ることができました。
アカシアの樽の下に置かれた清澄用のベントナイト
タンクヘの作業は綿密に記入
そして、アルテセッツェンではアカシアの大樽とステンレスタンクを半量ずつ熟成させ、ベアクは全量アカシアの大樽で熟成する理由も、その大樽に眠るワインを味わってみれば明白! ベアクのゴツゴツしたミネラルは、滑らかなアルテセッツェンのそれより、空気に触れさせて円やかにする必要があるのです。
アルテセッツェンの眠るアカシアの大樽
家業を継いですぐに頭角を現した天才肌のマークスではありますが、その後の更なる飛躍は、こうした綿密でロジカルな思考と実践に支えられていることが、再訪問して実によく理解できました。

そして最後に、マークスに彼の2011ヴィンテージについて語ってもらいました!

マークス、そしてワイナリーへの送り迎えをしてくれたミヒャエル、本当に有難う!

2012年1月27日金曜日

"ウィーンフィルのバル使用ワイン"続報

前のブログでお知らせした、お城ワイナリーのワインがウィーフィルのバルでイクスクルーシヴで使用されたお話の続編。「当主ミッヒは参加できない」と書きましたが、ガセでした : )
MW studentの教育セミナーをこなしたその足で、ちゃんと速攻で正装し会場へ。バルで談笑する姿が、こちらのNHKにあたるORFのニュースにちゃんと登場してますので、ご覧下さい。02:02あたりだったと思います。残念ながら夫人エファは隠れて見えません。
http://tvthek.orf.at/programs/1360-Seitenblicke/episodes/3466191-Seitenblicke

ミッヒとエファは最後のダンス(朝5時頃だったとか)を踊り、当然飲酒運転摘発が厳しいので、ウィーンにホテルを取って、午後遅くに戻って来ました。
驚いたのはその後。舞踏会の余韻にゆったり浸るとばかり思っていましたが、二人揃ってクレムスまで、夕方の映画に子供3人を連れて行くではありませんか!!!

プリンセスはこの夫妻の、一家の、そしてワイナリーの、なんともクールで地に足の着いたこういう暮らしぶりを、本当に畏敬の念を持っていつも眺めています。

2012年1月25日水曜日

東西伝統食、驚愕の相性!!

本当はPrieler, Wenzel, そして月曜に回ったゴルスのPittnaus, A & H Nittnaus, Claus Preisinger、ヨイスのArutenburgerのワイナリー訪問報告をしたいのですが、とにかく色々仕事がたまっていて、月曜訪問のワイナリーに至っては写真整理すら果たせません…。

なので、簡単にできるご報告を今日もさせていただきます。
でも、なかなか驚きのご報告

クリスマスに開けたワインのうちの1本、お城ワイナリーのTradition 2009が、半分くらい開いた状態で部屋においてありました。室温は大体、常にヒーターが入っているので、21度前後です。
で、時々チビチビ寝酒に飲んでいたのですが、ほんの2杯ほど残してほぼ1ヶ月間忘れていました

月曜の8時過ぎにワイナリー訪問から家に戻り、小腹が空いているものの、わざわざ台所(別棟)まで鍵を開けて入るほどでもなかったので、これまた部屋に置いてあった、金沢から持ち帰った巻鰤を食べることに。

一緒に1ヶ月経ったお城ワイナリーのリースリング・トラディシオンRiesling Traditionを、おっかなビックリ飲んで、本当にビックリ!

まず、トラディションが全く劣化していません。ワインを造る過程で十分酸素に触れさせる、ってそういうことなんですね。

そしてもうひとつの驚き。鰤が全く生臭くなりません! 
普通コノテの魚系保存食ほどワインと合わせて魚臭く、生臭く感じるものはありませんよねぇ。

さて、鰤が良かったのか、トラディションが特殊なのか、それとも両者の相性が抜群だったのか…。

2012年1月24日火曜日

安い女

プリペイドフォンの残額をチャージしに、隣町のスーパーに行ったついでにお買い物。
ある日の戦利品。
左よりリンゴのチョコ包み、キャンティ・クラシコ2008、ナッツ・カクテル。映ってませんが、ハンドクリームも買いました。レシートを拡大すると…

甘く煮たリンゴをブラックチョコでコーティングしたお菓子は、SPARのPremiumラインの商品。都内のおしゃれなお菓子屋で買えば1000円してもおかしくないお値打ち品が、こちらで言うところのAction、つまり値引き中で€1.99。
キャンティも値引きで€3.99。どうせキャンティか何かわからないような、収量の多いワイン独特の不味いやつだろう、と覚悟の上の買い物でしたが、なんのなんの! ちゃんといかにも並級キャンティらしいサラリとした濃さ: ) だし、2008年ということで熟成感もほどよく、十分飲料として許容範囲。
そして右側のナッツのアソートは、いくつかあるミックスナッツの中でも一番安いもの。実はプリンセス、安いものほどヘーゼルナッツ率が高いことを発見。アーモンドやカシューナッツはもっと暖かいところでしか採れないので割高ですが、この辺にもふんだんにあるヘーゼルナッツやウォールナッツは安い! しかも酸化してなくて一番おいしい!

…という訳で、極小の出費ですっかり豊かな気持ちになる世話のないプリンセスでありました : )。

2012年1月22日日曜日

本当のお宝は内緒 : )

土曜日、またまたWeinviertelヴァインフィアテルに行って来ました。

今回もヴァインフィアテルの西部を訪ねました。
プリンセスは正直、ヴァインフィアテルで大したモノが見つかるとは思っていなかったんです。「超廉価で、結構いけるグリューナーが見つかればいいな」とか「有名産地のベーシック・クラスの質をもう一歩安い価格で探せないだろうか」とか、そういう方向性の期待だったんです。
先週訪ねたゼーハーの機械収穫後の畑。房の梗の残る木々は『残骸」といったイメージ。
ヴァインファイアテルのブドウの6割は機械収穫ですが、昨日訪ねた2人は全て手摘み。
ところがスゴイお宝を見つけてしまいました! 

そこそこ良くって格安、みたいなレベルでなく、真正銘一級品!! 
スタイルこそプリンセス好みの透明感溢れる押し付けがましくない(この良さを凡庸と勘違いしてしまうヒトも多い)オーストリアらしいものですが、味わいの核に決してブレない、彼らしさと各々の畑らしさがひっそり、しかし毅然と控えている感じ。

人間って不思議なものですねお宝が凄すぎると秘密にしておきたい、という気持ちになってしまいます: )。
彼、ノベアトがお宝の主。
セラーに眠っていた99のSBとGVを開けてくれました!
これらがまた、驚きのフレッシュさ…


弁護士のお兄ちゃんルドルフが趣味で造るGV süß(500ml)は
ある意味ノベアトのワインよりさらに凄かった!!!
なのでこの生産者については、次回帰国時に数本(例によって私が「買わせてくれ」と頼んでいるのに「友達になったから、持って行ってくれ」と太っ腹で下さったもの)を携え、運の良い方々とのみ、ひっそり共有したいと思います。
お楽しみに!

そして午後はツェレルンドーフのプレヒトゥルへ。
このヒトはGVのスペシャリスト。ダブルギイヨの剪定指南を畑でしてくれました。
この辺りには右に見える花崗岩土壌が多い。
夫人ペートラはヴァインアカデミカー。周辺の地質を詳しく説明してくれました。
プレヒトゥルのGVは、クラス別、土壌別に6種類あります。
ヴァインフィアテルを集中して回ってわかったことは、
1)ヴァインフィアテルは広い。全体で捉えずに、主要な村の塊で個性を捉えるべき
2)DACの普及で一層"Weinviertel=GV"的イメージが定着しつつあるが、GVがここを席巻したのはハイカルチャー以降のこと。Weinviertel本来の地ブドウ(i.e., Brauner Veltliner)は全て絶滅してしまっている中、GV以外の品種にも光を当てなければ、この産地の本当の可能性は見えて来ない
3)大別して、レス~ローム(重さ様々)、原成岩、ムシェルカルク、の3種の土壌があるが、石灰含有量が多い畑も多く、意外にピノ・ノワールのダーク・ホース的産地になる可能性がある。
4)風の強い冷涼な気候+灌漑不能の環境は、上手く生かすとbioに適合する。また、同環境は風味の凝縮に最適なので、土壌を上手く選べば、シュタイヤーマーク同様、クール・アロマ系のワインを造るのに最高の環境

夕方、小雪のちらつき始める中、ウィーンに向かうシュネルバーンに飛び乗って、ウィーン在住13年の清水夫妻とイタリアン・ホスピタリティー溢れる、陽気なAl Borgoでビジネス・ディナー。

いつものようにプリンセスは何の遠慮もなく、よく飲みよく食べ、していたのですが…。ご馳走していただいた上、奥様にタクシーでホテルまで送っていただきました。大変恐縮…。
〆ワイン@al Borgoはシチリアのネロ・ダーヴォラ。この品種のイメージを覆す、とてもエレガントなワイン。
おっと、リモンチェッロをグイっと出掛けに頂いたが本当の〆でした。
清水夫妻、ノベアト&ルドルフ、フランツ&ペートラ、そしてミッヒ。色々お世話になりました有難うございました


さて、明日はゴルスで3つ、ヨイスでひとつ、ワイナリーを訪ねます。

2012年1月20日金曜日

MW教育プログラムでプルーニング実習@シュロス・ゴベルスブルク

なんだかプリンセス、情報のインプットが凄すぎて全くアウトプットが追いつきません…嬉しい悲鳴…
しかもこれから日本に帰るまでに、オーストリア全土を駆け巡りできるだけ多くのワイナリーを訪ね、11ヴィンテージの取材をせねばならないし、色々仕込まねばならないイベント案件なども目白押し…。
畑の作業を監督することはあっても、実作業をしているのは見たことがありませんが、
ミッヒったら、やらせるととっても堂に入っています!
なので、簡潔にお伝え…したいところですが、とにかく情報盛りだくさん…プリンセス困ってしまいます…。


昨日はオーストリア最初のMWであり、プリンセスの通うルストのヴァインアカデミーの校長であるペピ・シューラーPepi Schuler MW、カルロ・マウワーCaro Mauer MW他数人のMW率いる50人あまりのMW 1st year studentsがお城ワイナリーを訪れました。
1年目教育セミナーの一環として行なわれたのは;
1)ニーダーエスタライヒを代表する5人の生産者(Willi Bründlmazer, Josef Mantler, Markus Huber, Roman Pfaffl, そして我らがMichael Moosbrugger)直々の指導を受け、お城ワイナリーのトップ・リースリング畑であるHeiligensteinハイリゲンシュタインで剪定実習
2)Domäne Wachauドメーネ・ヴァッハウの役員であるローマン・ホーファートRoman Horvath MWを加えた6ワイナリーのガイデット・テイスティング
3)セラー内での雰囲気抜群のセッティングでのランチ




ラムの麓でバスを降り、歩いてハイリゲンシュタインへ。
剪定が行なわれたのは、南北にヴァーティカルにブドウの植えられたグリューナーの畑ラムと、東西にホリゾンタルに木の植えられたリースリングの畑ハイリゲンシュタインが、丁度交差する地点。ハイリゲンシュタインの最下部分です。
こちらリラ仕立のGVラム畑
ラムの上部が、ハイリゲンシュタインですが、ここだけ東西に並んでいます。
では早速剪定の手順と要点を写真付きで解説します。
今年ブドウをつけた梢の中から来年の新梢をつけさせる枝と予備枝の二本を選び、他を切り落とすのが基本。
で、長い枝をワイヤーに沿わせるのですが…
その長い枝は、新しい芽が7,8芽出るようにするのですが、予備も含め10芽分数えて残します。
芽数を数えたら、先っちょをこうしてはさみで切り落として。
長い枝をワイヤーに沿わせ、予備枝は2芽ほど残して短く切って完了。
なるべく低いところの梢を選ぶのが基本。
で、枝をワイヤーに沿わせて…。日本でも大人気のイケメン、マークスも渾身の指導!
リースリングはこうして弓状にして枝元の樹勢を抑えます。
セップ・マントラーが解説している相手はドイツ人のカーロ・マウワーMW
あらら、セップったら可愛いお姉ちゃん専門で個人教授?
生徒も真剣、先生(ローマン・ファッフルJr)も真剣!
「そうね、こっちの枝を選ぶっていう選択も有り得るよね」とローマン。
何故か信者が神父に懺悔する図に見えるのはプリンセスだけ?
太い枝が必ずしもいいとは限らない。太い枝は却って折れやすい。
「この木の去年の剪定方法だと、どんどん木が高くなってしまう」と、堂々と他人の畑にケチをつけるヴぃりー:)
プルーニングの要点を記したパウチ・シートが配られました。
これ、お城ワイナリーで言葉の通じない東欧からの新米労働者にも使うのかなぁ?
ペピ・シュラーMW。私の校長先生!
向かって左が日本人/英国在住MWの田中麻衣さん。右は英国のMW(お名前失念)。
お城へ入る壁の地図で、この辺りの土壌の解説を始めるヴィリー。
ピンクの柱の前に中腰でいるのがドメーネ・ヴァッハウのローマン・ホーファートMW
本当に伝統的な考え方で、今造ったワインがどういう味がするか実験したワインがTradition。
新樽熟成、バトナージュ、MLFは、実は全部近現代の発明さ」と我がミッヒは熱弁。
若手のホープ、マ-クス・フーバー。彼の06 Riesling Bergの素晴らしさに会場からため息が。
「僕はMWだけど剪定の専門家ではないので」と、テイスティングから参加したローマン。
セラーで蝋燭を灯しての、なんとも雰囲気のあるランチ。ミッヒとヴィリーの顔が見えます。
身を乗り出して話しこむ生徒とマークス。
樽に入っているのは10年と11年の赤。
雰囲気溢れるセッティングの建物が溢れるオーストリアでは、そういう場所にこうしてケータリングを頼んでパーティーをすることが日常茶飯事です。 




各ワイナリーが持参した新旧ヴィンテージの銘穣畑もの。一番古い物は81年。
ワインの詳細はまたの機会にでも。
それにしても、なんとも豪華なMW教育セミナー
何よりスゴイと思ったのは、自分のフラッグシップ畑を他の生産者に公開するミッヒの度量に加え、しかも他の生産者が堂々と「この剪定は良くない例」などと、はっきり生徒に解説していたこと。

剪定の解説や、ガイデット・テイスティングの様子はビデオに収めたので、機会があれば公開の許可は得ていますが、何せプリンセスはMW studentとしてではなく、お城付見習フォトグラファーとしての参加だったので、やれ「資料が足りない」だの、やれ「そこのドアを閉めてくれ」だの、始終邪魔がはいる中、しかも自分もおこぼれのワインをテイスティングし、メモを取る、というアクロバットをしながらの撮影でしたので、とても見苦しいモノであることはご了承下さい。

日本でこれを読んで下さっている全てのワインのプロ、そして愛好家の皆さん。
やっぱりワイン商人の本場イギリスの教育レベルはとっても高いし、その教育とワイン生産地での実習を組み合わせたプログラムは、タメになるなんてものではありません
MWや生産者に自由に質問のできる(そして彼らの間で議論が始まったりする)フランクな雰囲気は、何モノにも替え難いと改めて感じ入ったプリンセスであります。

※すみません、今日はフォント背景の色が病気ですぅ…