2012年3月31日土曜日

エラちゃんと感激の邂逅

昨晩ようやくお城に戻りました。

日本からの大荷物(大小のスーツケース、バックパックにウェストポーチ)とともにそのままルストの学校に直行し、大荷物とともにド田舎からド田舎へ、バスからローカル電車、急行、シュトラーセンバーン、急行、ローカルと乗り継いでの大移動…。
前回はお城ふたつ手前の電車にウェストポーチを置き忘れる、という大ポカをやらかしたので、今回はポーチをバックパックに押し込んで、忘れ物をしないよう万全を期しました

学校が終わって、バスに乗ったのは4時半前ですが、お城近くの無人駅に着いたのは夜の8時頃。お城正門に向かう坂道を二つのスーツケースを引きずりながら登ると、ドッと疲れが吹き出します。
気を取り直して、門を前に全ての荷物&鍵がちゃんとあることを確認。…と、この時間正門脇の鉄扉から庭を通り抜けて入城せねばならぬはずなのに、正門が開いています。「ラッキー!」と、お城中庭に足を踏み入れると、予想通りエラちゃんが吠えています。前回はここで、襲われそうになりました
エラちゃんはバカでかいけど可愛い女の子なのですが、外敵からお城を守るスイッチが入ると完璧野生モードどんなに慣れたヒトでもかなり危険なのです。
なので、今回は遠くから「エラ、シェーネス・メートヒェン、ドゥ シャッツィー」とか、適当な言葉を叫びながら、外敵ではないことをアピールしつつ近づいて行きます。

…どうやら中庭へのドアは閉まっているらしく、エラちゃん出てきません。けれど、そのドアを開けないことには、プリンセスの部屋に辿り着きません…。
意を決し、足元或いは肩口に一発ガブリくらいは覚悟の上で「エ~ラちゃん」と呼びかけながら、恐る恐るドアを開けました

するとエラちゃん、ブンブン尻尾を振り回してお出迎えしてくれるではありませんか!!!
おまけに私が頭を撫でると、コロっと寝転がって「もっと全身撫でて頂戴」のポーズ!

いやぁ、プリンセス、本当に嬉しかった! 
大荷物&長旅の疲れが一挙に飛びました。

2012年3月30日金曜日

“これでもプロか?”の笑える結果@スピリッツのミニ・テスト

写真をよーくご覧下さい。スピリッツの名前が左端縦に並んでいますね。

これが何かと言えば、昨日から始まった3日間のスピリッツとフォーティファイドの授業のひとコマ。
スピリッツ・セッションの途中、3つのスピリッツを実戦形式でブラインドさせられました。そして、提出した答案の結論部分の要、つまり「グラスの中のスピリッツが何であるか」を下の写真のように、私の隣に座るチェコ人醸造家のペーターがどんどん書き出していった、その結果です。
で、横軸の①②③は、順に味わったスピリッツ。
どれを取っても、ダーク・スピリッツ、ホワイト・スピリッツの範疇で「ないものはない」というくらい、あらゆる解答が出ていて笑えます

我々一応一人を除いて全員プロ。それも、それぞれの母国では一線級のソムリエやら醸造家、ジャーナリスト、ワイン商等が混ざっている模様。
にもかかわらず、これだけデタラメな答えが出てしまうところに、そして多数決と正答が必ずしも一致していないところにも、ワインのプロのスピリッツに対する全世界的無知無関心が浮き彫りに。

因みにに2番の正解はピスコ…そんなもん、わかるはずがないでしょう! 
スピリッツは年に数度カルヴァドスやグラッパを飲む以外全くと言っていいほど嗜まないプリンセス。結果は華の全問玉砕…。
あーあ、先が思い遣られますぅ。

2012年3月29日木曜日

キャトルクラスの正しい過ごし方

その身分に似つかわしくなく、プリンセス、飛行機はいつもキャトル(=エコノミー)・クラス。こんなに何度もオーストリア=日本を行き来しているのに、Miles & MoreのSilver Cardも持っていたのに(昨年何度もLuftに浮気したためか、激安チケットしか買わなかったためか、今年はノーマルい降格)過去ビジネスへのアップグレード経験は一度だけ。
いきおいオーストリアン・エア 東京⇔ウィーン“キャトル・クラスの達人”と相成りました。

という訳で、今日はキャトル・クラス利用の極意をお知らせしましょう。

Tip1:チェックインはウェブで済ますべし⇒チェックイン・カウンターで並ぶ無意味な時間が省けます。その分、自宅でゆったり朝食が摂れます。
Tip2:ハイ・シーズンや週末など混み合う時期のウェブ・チェックインの際の座席指定は、壁に向かった最前列の窓側にすべし⇒前に座席がないため、足を伸ばすスペースの確保可。トイレに立つ場合も通路側にいちいち「済みません」と断らずに出られます。ただし多くの場合壁面にはベビーベッドが配備されているので、赤ん坊がフライト中泣きわめくという大リスクを抱えていることをお忘れなく。
Tip3:年末年始、大型連休など超ハイ・シーズンには、逆にウェブ・チェックインをせず、ギリギリにカウンターに駆け込むという裏技もあり⇒特にMiles & Moreのシルバーやゴールドカード保持者等には、ダブルブッキングによるアップグレードの可能性があります。
Tip4:ベジタリアンでなくてもベジタリアンメニューを活用すべし⇒檻の中状態ではあまりカロリーも必要としませんし、食欲も出ません。それに、通常メニューより先に食事がサーブされるので、小市民的優越感に浸れます。ただしなにかとワイン等飲み物のサーブとのタイムラグが大きくなりがち。
Tip5:早めに空港に着いたら、搭乗は真っ先にできるよう、搭乗口のいい場所にとっとと席を確保し、キャトル・クラス搭乗案内のアナウンスとともに搭乗できるよう、列に並んでおくべし⇒日英独で新聞をゲット! 旅先でも楽しめます: )
ベイリーズ片手に小画面の映画…
正しくキャトル・クラス的至福
Tip6:よく友人から「ワインジャーナリストなんだから、ファースト(or ビジネス)クラスのワイン・リストを見せてもらって、試させてくれ、って言えば持ってきてもらえるよ」と勧められるのですが、おかしなところに気弱なプリンセスはそういうことはしたことがないし、できません。ならば、キャトル・クラスのどーでもいいワインばかり飲み続けるよりは、「食前はビール(オーストリアはビールも美味しい)、食事中に白ワイン、コーヒー(キャトル・クラスでもちゃんと濃い)を挟んで食後にベイリーズ(安物コニャックやウィスキーより割り切ったお味)」と、変化をつけた方が楽しく過ごせます。
Tip7: 機上シネマや音楽プログラム(OR1がお勧め)に浸るためにはノイズキャンセリング付イアホンと機内用プラグアダプタを常備しておくと快適。

2012年3月27日火曜日

それでは、お城に戻ります!

お昼前の飛行機でオーストリアに戻ります!(…実は昨日朝、アップしてから旅立つ予定が、ノイジードルのホテルに着く今まで果たせず、一日遅れでお送りしています。)

同日夕方ウィーンに着き、翌朝8時からルストで学校。
本当はその日のうちにルストに入りたいのですが、大荷物なので、長旅の後にバスと電車をいくつも乗り継いでの移動はあまりにも重労働。それに前回乗り継ぎが悪く、酷い目にあったので、この大荷物であんなことは真っ平御免、という訳で、バス1本で直行できるノイジードル・アム・ゼーに一泊し、翌朝遅刻ギリギリに学校に入ろう、という算段。(で。…予定通り今ノイジードルのホテルに入ったところです。明日朝何時起きしたら学校に遅刻せずに入れることやら…)
プリンセスの東京の自宅近くの清澄庭園は、梅が満開
 今回の滞在では、実に多くのセミナーやディナーを通し、沢山のオーストリアワインに興味をお持ちのプロや愛好家の皆さんと出会うことができました。
次回帰国時に向けた仕込みも頑張ってやりました。
これまでに増して、日本の美しい自然と人々の温かい心に触れる滞在となりました。
幕張で、北新地で、代官山で、目黒で、西麻布で、京都で、銀座で、恵比寿で、月島で、曙橋で、日本橋で、小伝馬町で、大手町で、湯島で、新川で、神保町で、渋谷で、中目黒で、人形町で、清澄白河で…時間を作ってプリンセスと会って下さった方々、一緒にワインを飲んで下さった方々、本当に有難うございました!
6月末から7月にかけて、また戻ってきますので、よろしくお付き合い下さいね。

2012年3月25日日曜日

クリスタル、ドンペリ、ドゥーツ アムール、ボランジェ グラン・ダネ、ポール・バラ@暗闇ワイン会

恐らく一年以上ぶりに、プロとその辺のプロが恐れをなして逃げ出しそうなスーパー愛好家の勉強会である“暗闇ワイン会”に参加しました。
その名の通り暗闇で、なんのヒントもなしにブラインドでワインを味わい、テーマを推測するのですが、今回は6種の中からテーマから外れる1種を言い当てるというオマケもつきました。
さて、本日のお題は泡
何の泡が注がれているのかすら告げられませんが、全てプレステージ・クラスのシャンパーニュであることは、ひと嗅ぎして予想がつきます。
が、結論として、シャンパーニュはやはり、スティルワイン的思考で推論を進めることは難しい!
例えばナッティなロースト香のようなニュアンスがあったとき、それをオートリシスが強いと見るのか、熟成が進んでいると見るのか、ベース・ワインを木樽熟成していると見るのか…
炭酸に弱く泡をあまり飲めない、そのくせ最初のシャンパーニュをいつもあまり意識せずにゴクゴクと飲み干してしまうプリンセスは、いまだにその辺の要因を取り違えることが多いのです。
ブラン・ド・ブランは端正でブラン・ド・ノワールは赤いベリーのニュアンス…と思っていたのですが、そして実際その通りだったにもかかわらず、ドサージュ由来の甘さをベリーの果実味と勘違いするという間違いを犯してしまったプリンセス。PNの骨格や体躯への影響度についてもあまり考えが及びませんでした。
結局、Bollinger Grande Aneeの甘いカラメルを思わせるトースト香を熟成香と取り違え、他の5本より明らかに旧いと推測し、しかもPaul Baraの妙にストレートな生生しい味わいをヴィンテージが新しいと読んだことで、テーマの『水平(2002)』を見抜くことができませんでした
from left: Dom Perignon 03, Crystal, Duetz Amour, Bollinger Grande Anee, Paul Bara Special Club, Dom Perignon (all 02)
実際のブラインド・テイスティング順に並んでいます。
仲間外れ探しも難航
Paul Baraの妙に高く太い酸や果実味(やや青さと生姜のようなスパイシーさ、薬草臭さ)のニュアンスが、他と違いやや一面的で複雑さを欠く印象があり、これだけNon MLFかと思いました。結果的には、グラン・メゾンに混じった唯一のRMということで、ある意味正解とも言えますが、vintageがひとつ03であるDom Perignonや、唯一のBlanc de BlancであるAmour de Deutz を、そう言い当てることはできませんでしたDeutzはあまりにバランスが良く教科書的であったため、3品種(或いは少なくともChardonnay & PN)ブレンドの典型的ヴィンテージ・ジャンパーニュだと踏んでしまったのです。
おまけに最初(03)と最後(02)のドンペリだけがウェブショップから購入したモノ(ただし正規輸入品)だったのですが、この2本のコンディションは明らかに他の4本より悪く、確かにドンペリ特有の強いイースト香はあるものの、1番はそこに缶詰のような熱を食ったニュアンスがあり(しかもこれが暑い年03の低めの酸と相俟って)、6番はそのイースト香が妙に木質的に重たく感じられ、ドンペリならではの高級な爽快感とでも言うべき端正な味わいを覆い隠してしまっており、推論を更に難しくしていました。
〆はプリンセスの手土産、お城ワイナリー リースリング TBA2009年
シャンパーニュは、同じ冷涼産地のワインとは言うものの、単一畑、単一品種、マロなし、新樽なし、の、ストレートに素材勝負的お城ワイナリー周辺のオーストリアのプレミアム辛口白とは対照的に、原料ブドウ畑&品種も色々、発酵容器も発酵形態も色々、ドサージュ他添加酵素なども色々、アッサンブラージュも縦横色々…と、考慮要素がとにかく多い…。だから結局、こうしたテイスティングで正しい推論ができるようになるためには、結果としてのハウススタイルを舌に叩き込むしか他に方法はないのかも知れません。
別の言い方をすれば、ニーダーエスタライヒの辛口白がソロ演奏なら、シャンパーニュは間違いなくオーケストラソリストの個性にいくら習熟してもオケ全体のスタイルには到達し得ないものなのです。さらに言うなら、グラン・メゾンとRMの違いは、大編成オケと編成の小さな室内楽アンサンブルみたいなものなのだ、と、RMの強みとある種の限界にも思い至りました。

いやあ、いつものことながら、大変に勉強になります!
帰国時にはやはり必ずこの勉強会には参加したいと思うプリンセスでありました。

2012年3月22日木曜日

拙著重版ならず。う~ん、残念!

2009年秋出版の拙著「オーストリアワインの魅力 新自然派ワインを求めて」は、版元柴田書店側の在庫がもう少しで切れる、と聞いておりました。
それで単純なプリンセスは「もうすぐ重版、ルンルン」と浮かれておりました。重版の際には「単純な誤植は勿論、現状に合わない記述、そして何より、プリンセスの美学的には許せなかった表紙デザインなども変更できる!」と、やる気満々でもおりました。もっと本当のことを言えば、印税率も初版と重版では%が大違いなので「ようやくこれから、かけた労力が少しは金銭的にも回収できるか」と、取らぬ狸の皮算用すらしていた能天気なプリンセス
ところが昨日編集者のI本さんから「重版しないと正式決定された」旨メールが入りました。
がっくし…
けれど嬉しいことに電子化のお話しをいただきました。価格的にできるだけこなれたモノとなり、それをきっかけにあの本がより沢山のプロや愛好家から手軽に利用していただけるなら、本の性格上、それも却っていいことかも、と気持ちを切り替えました。ついでに、経費がほとんどかからない電子化なのですから、しっかり印税は高めに設定していただき : )プリンセスが少しでもプリンセスに似つかわしい暮らし向きになる一助となるなら、どんなに素晴らしいことでしょう : )(その交渉はこれからですが…)
このブログを読んで下さっている皆様、どうぞ一家に一台ならぬ、一家に一冊(一ファイル?)よろしくお願い致します!
ちまちま訂正箇所を書き込んだこの本も電子化で無駄にならずに済むのか?
正直プリンセスの頭の中は、昨年4月以来のお城滞在体験を経て、あの本の執筆時から大きく進化&深化しています。その成果をカタチにすべく、来年から再来年にかけて、ガイドブックとは全く異なる本が書きたい、と常々思っていますので、旧著絶版はかわいい我が子の成長を止められてしまうようで残念ではありますが、今後は次のプロジェクトに向かって、新たな出会いや発見を大切に、書くことでより一層深い真実に近づけるよう、毎日を大切にして行きたいと思っています、

2012年3月18日日曜日

大阪初のテイスティング会             @キュイジーヌ・フランセーズきよた

本当は13日のシノワでの深夜の業界テイスティングの模様を先にご報告したいのですが、カメラにSDカードを入れ忘れ、写真が入手できていないため、15日の大阪での業界向けテイスティング&消費者向けお食事会の様子から行きます。
とにかく大阪の右も左もわからないプリンセス。場所のセッティングから集客まで、全て大阪在住の若きワイン・ジャーナリスト、K井さんにお任せしていました。直前に予定していたお好み焼きの“パセミア”から、ミシュラン星付フレンチ“きよた”へ会場変更せねばならなかったというアクシデントもあり、正直プリンセスは不安一杯で大阪に乗り込みました。

業界向けテイスティグは当初20人前後のコジンマリしたものになる予定でしたが、予想以上に沢山の方にお越しいただき、また東京人と異なり、はっきりご自分の意見を口にして下さる大阪の業界人からは、オーストリア・ワインが紛れもなく飲食シーンに定着しつつあるという「確かな手ごたえ」を得ることができました
東京との比較で気づいた点は;
1)大阪人はコスト感覚が一層シビアだと懸念していましたが、「安さ命」の時流に盲目的に絡め取られているのはむしろ東京の業界人の方。大阪では高価格であっても、価格に対して本当に品質が高ければ or 個性があれば評価する、という姿勢を感じました
2)いい意味でも悪い意味でも、プロの間ですらオーストリア・ワインの知名度は低い。メジャーな品種、産地などもほとんど知られていない状況を確認しました。
3)反面、オーストリア=グリューナー、オーストリア=地場品種による非インターナショナル・スタイル…といった固定概念も東京より薄く、あらゆるスタイル&価格帯に対し、より開かれている印象を受けました。
4)ワイン業界人の世界が狭いのは東京も変わりありませんが、大阪ではそれに輪をかけて濃密かつ閉鎖的な人間関係が存在している模様。おいそれとプリンセスのような人間が入り込めそうにはありません…

そして、感動の消費者のお食事会の部。
パセミアでの開催ならず、楽しみだったキャベツとグリューナーの抜群の相性を堪能することはできませんでしたが、怪我の功名とでも言うのでしょうか。非常に繊細でピュアな清田さんのお料理は、プリンセス的には『まるでオーストリアワインのためにあるかの如き味わい! 
手前左のオマールのブランマンジェはリースリングと。右の人参ムースにはGV
がよく合いました。奥の雲丹はシルヒャーで。

炙り鰆にはツィアファンドラーのスモーキーさがズバリ
白&緑のアスパラ。緑はやはりGVが合う

烏賊にはリースリングが、ホウレンソウのソースにはGVがマッチ

タラのアメリケーヌ・ソースは少し樽のかかったクリーミーなヴァイスブルグンダーで
ラム(肉)にはSt Laurentだけでなく、GVラム(畑)もしっかり合いました : )
デセールにはハイディ・シュレックのBA
特にシグナチャー・ディシュ“オマール海老のブランマンジュ”には、残糖高めのアウスレーゼクラス or 貴腐率高めのリースリングがピタリと合います。この日は合わせませんでしたが、質の高いローターヴェルトリーナーやフルミントとも素敵なマッチングを見せてくれたはずです。
「正統派のフレンチにここまで合うなんて…」と、集まって下さったお客様は勿論、プリンセスすらビックリ!
K井さん、行き届いたセッティンとサービスをありがとう!
感動の料理を作って下さった清田シェフ
モリッツのネッケンマークト アルテ・レーベンを持ち込み、仏伊の並み居る銘酒とともに味わった2次会を終えると、連日のテイスティング会やらセミナーやらの疲れがドっと出たプリンセス。ホテルに戻るとベッドに倒れこみましたとさ。

2012年3月14日水曜日

お城ワイナリーを鮓&和食と楽しむ会@壮石

思い返せば丁度1年と2週間ほど前、プリンセスはお城ワイナリーの当主ミヒャエルを関空まで迎えに行き、翌日から大阪&東京を駆け足でプロモーション・ツアーをしていたのでした。そして東京ではこの壮石でもワインメーカーズ・ディナーを行い、お寿司大好きのお城当主本人にとっては、来日中最も印象に残るディナーとなったようです。翌朝紅林板長に案内していただいた 築地魚市場も大のお気に入り。
そして1週間後、震災&原発事故が起こり、それがキッカケとなってプリンセスは、それまで全く考えもしていなかったお城住まいをすることになるのですから、人生本当に何が起こるかわかりません離日前、最後のワイン会を行ったのも、まだ不安と混乱の渦巻く、灯りの消えた銀座の真ん中にあるこの壮石ででした。…そんな訳でプリンセスにとっては何かとご縁の深いお店です。
向かって左より:Reiterer Schilcher Frizzante 11, Domaene Gobelburg GV 10, Gobelsburger Urgestein Riesling 11, Domaene Gobelsburg Zweigelt 10, Schloss Gobelsburg Zweigelt 09, Prieler Weissburgunder Laithaberg 10, Hirsch Riesling Gaisberg 09, Schloss Gobelsburg Riesling TBA 09
以後帰国の度にお鮓&和食とオーストリアワインを合わせる会を行っており、今回のポイントは、2011年のお披露目をすることと、赤ではオーストリア最大の栽培面積をもつツヴァイゲルトと和食の相性を見ることでした。

2011年は、オーストリア全土で、質的にも量的にも生産者を喜ばせた年。8月末~9月初めの熱波も、7月に気温が下がっていたためブドウに大きな負担はかけずに済み、朝晩まで気温の下がらない期間はそう長くなかったため、ゼクト用のブドウなどは猛スピードで収穫する必要がありましたが、他のブドウは酸の著しい低下からは免れ、若くしてよく開く柔和でチャーミングな個性のヴィンテージとなりました。何より素晴らしいのは収穫が始まってからほとんど雨らしい雨は降らなかったため、ブドウが非常に健康な状態で収穫でき、そのため畑でもセラーでも問題の少ない実にハッピーな年でした。
左の筍、ウド、帆立の木の芽和えはGVに、右の塩雲丹の生ハム巻はシルヒャーを意識。
刺身はリースリングで。薬味を添えてグリューナーと。
そんな年を代表するのがお城ワイナリーの未輸入ブランドであるGobelsburger ゴベルスブルガーのRiesling Urgesteinリースリング ウルゲシュタインハイリゲンシュタインとガイスベアクに植えられた若木のブドウが中心のこのワインは、お日様を十分に浴び、リースリングならではの白い花のアロマ全開2千円台前半のリースリングとしては出色の出来となっています。
 
一方のZweigelt ツヴァイゲルトは、St Laurentザンクト・ラウレントとBlaufränkischブラウフレンキッシュの交配品種。St Laurentの片親はピノですから、要はツヴァイゲルトはピノ・ノアールのクオーター、ということになります。言わばピノ・ファミリーの末っ子ですね。
シトー派修道院のワイン造りの文化を継承することを自らの務めと任ずるミヒャエルにとって、ですからピノ・ファミリー赤品種(ピノ、St. ラウレント&ツヴァイゲルト)ワインはとても重要。カンプタールの他ワイナリーよりかなり力を入れて、しかもピノ系らしいフィネスを重視して造っています。
烏賊によって、 チャーミングなツヴァイゲルトを逆に 引き立てられました。
さて、お鮓&和食に合わせての今晩の発見は、
1)ざっくり緩いテクスチャーと熟したダークチェリー、軽くアーシーな風味が魅力のツヴァイゲルトは、モツ煮など内臓ものや多少ハーティーな旨味とよく合うため、今回は烏賊のワタ合えとマリアージュしました。が、結論としてウチのツヴァイゲルトは思ったよりずっと上品で土臭さが殆どないため「ピノ同様に扱った方が賢い」ということが判明。
 
軽快なDomaeneドメーネはBourgogne Rouge的にパスタや魚肉を使ったサラダ&揚げ物、コールド・ミート&パテなどに、SchlossラインのZweigelt Haideハイデは1 er Cru的に家禽類のメインと合わせてマル、です。或いはブフ・ブルギニヨンならぬブフ・ゴベルスブルクなんてものも美味しそう! 
2)一般的に和食と抜群の相性を見せるグリューナーやリースリングながら、赤だしなど出汁風味が前面に出る料理には、シャンパーニュのオートリシス風味の方がよく合います。そして想像もしませんでしたが、意外な美味しさに驚いたのが赤出汁とRiesling TBA異次元の味覚体験をさせてくれました。洋食の最後にデミタスカップで赤出汁を貴腐ワインとともに供する、なんて裏技もありかも、と思ったほど。
TBAと赤出汁。ちょっとない組み合わせ。
3)では何の料理と合わせるのがオーストリアの辛口白の独壇場かと言えば、①リースリングには生の白身魚魚の香りの高さや薬味に合わせて品種を選ぶと楽しい握る場合はご飯のウェイトが加わりますので、ワインをスマラクトやDACリザーヴなど、刺身より一段階重量感を増すワインを選びましょう。②グリューナーには木の芽やそれをアクセントにした揚げ物か野菜料理。今の季節タラの芽やフキなどの揚げ物が最高。③多少残糖が多め、或いは貴腐率の高いリースリングには甘海老や烏賊など濃厚な甘旨系の魚介を。
因みにWeissburgunder (=Pinot Blanc)は穏やかな風味でとても和食に合うのですが、この日のLaithaberg DACは新樽&マロ風味があって、ちょっと和食には辛かったかも。


帰国時の毎度のお楽しみと化しつつある壮石のワイン会。いつも様々な出会いがありますが、今回もプリンセスが駆け出し講師だった頃の生徒さんと久々の再会を果たす等、素晴らしい時間を過ごすことができました。

ご参加下さった皆様、紅林さん、岡田さん&お母様&叔母様、有難うございました!

2012年3月12日月曜日

オーストリアの多面性を味わう@プロヴィナージュ

プリンセス、帰国してから本当に超多忙。イベント報告もなかなかままなりません。
しかし頑張らねば…。

土曜は西麻布プロヴィナージュで午後7時から消費者向け、23時半から業界対象、とふたつのワイン・パーティーを企画。田中ソムリエの人気&当日はディアンドゥル着用で張り切って下さったJALの板屋さんのお蔭もあって、消費者の部40人満席。業界の部も田中ソムリエの人脈が生き、20名満席。

消費者の部では、かなりスシ詰め状態ではありましたが、それが逆にいい熱気を生み、とても楽しい会になりました。
ワインに対する反応は、お城ワイナリーのリースリング ウルゲシュタイン2011が好評なのは予想通り。また、これも予想通りというか、悲しいことに、というか、やはり特に赤になると、『濃い』『強い』ワインを『凄い!』と思ってしまう傾向は依然としてとても強い。…またMoric Blaufränkisch Alte RebenとWeninger Blaufränkisch Dürrauというスタイルの異なる2つの最高峰ブラウフレンキッシュを比較したかったところが、前者を2段階格落ちのクラスにしてしまったため、比較のしようもなく、プリンセス的にはちょっと不完全燃焼(…って自分のミスだろうに! でもモリッツは、09というヴィンテージもあって、最もベーシックなクラスとは思えないバランスと緻密さでプリンセスを驚かせました)。






何より、会場を埋めるみなさんがあーだこーだと言いながらオーストリアワインを楽しみ、斉藤シェフ(勿論本当はフレンチのシェフ)が研究して下さったターフェルシュピッツやグーラーシュなどのオーストリア料理に舌鼓を打つ姿を見て、「ああ、オーストリアワインはここまで愛されるようになったか」と、プリンセスは本当に感無量。会の後半、日本酒啓蒙に賭ける平出さんもサプライズでお越し下さり、プリンセスの喜びは一層高まります。

業界向けは、まず「本当にお店の引けた後の深夜にヒトが集まるのか?」という危惧をしっかり払拭できただけで、大きな前進。そして既にしっかり活躍し、今後を担う30代とおぼしきソムリエさん達が、供されたワインについてあれこれ議論を交わす姿を見ただけで、プリンセスは心の中で感涙にむせんでいました。
土壌別、タイプ別のリースリングの飲み比べや、日本未輸入のトップ生産者のワイン、日本輸出を望む新進生産者のワイン…などなど、プロにも新しい発見は沢山あったと自負しますが、何よりプリンセスにとっては、各々のワインに対する反応を肌で感じられたのが、大きな収穫。加えて、同一インポーターに対する評価や、最重視価格帯に対する考え方が、同じソムリエさんという立場、或いは酒販店という立場でも、お店のキャラや立ち位置で正反対に変わることがわかり、これも大変勉強になりました。

参加者の皆さん、田中ソムリエ、斉藤シェフ、有難うございました!











13日にもまた業界テイスティングを開催するので、市場の問題点や課題については、それを待って、改めて考察したいと思います。