2012年4月29日日曜日

プロイドゥル、本物、太鼓判 その4? 超急斜面

お客様のアテンドでずっと時間が取れませんでした。

では、つべこべ言わずに今日はその、プリンセスの惚れ込んだグリューナーとリースリングを産むエーレンフェルスEhrenfels畑をご覧いただきます。
>>因みにあの日は重い土にタイヤが嵌ってしまい、畑には入れず、小さなの2枚はウェブサイトより拝借。

現在の遠景
急斜度がよくわかるカット
第一次世界大戦前のエーレンフェルス。もの凄く細かい段と超密植。
お父さんの頃。斜度のキツイ右手前(=南東)の畑が森林になっているだけでなく、
南向斜面も石段がなくなって妙なことに。
アングルと接近度が多少違いますが、現在。フランツが復活させた段状畑。段の幅は昔より広い。
廃墟から見下ろしたところ。畑はこの真下急過ぎて見えません…。
下方の赤レンガのコの字型の建物がニグル。
さて、もう1枚、驚きの写真をお見せしましょう。
フランツが手にするパネルで、一番濃い緑の部分は森林ですが、ブドウ畑の中で周囲より緑色が濃い区画は、全部彼の畑です。百聞は一見にしかず、とはこのこと!

因みに彼はビオディナミでもオーガニックでもありません

2012年4月25日水曜日

プロイドゥル、本物、太鼓判 その3 テイスティング 辛口編

プロイドゥルを訪ねたのは土曜。
当主のフランツは、セラードアでの試飲目当ての客を相手しているので、プリンセスは窓側のテーブルに座って、奥さんのアンドレアにワインを注いでもらいます。
…おっと…息子達は英語が上手かったのに、彼らはあまりできない模様。仕方ない、プリンセスの下手なドイツ語で質問するしかありません。以下、テイスィング・コメント。☆はプリンセスの感激度。

最初のワインはGV "Freiheit" 2011 ☆(以降断りのない限り全てvintageは2011)
実はこのワイナリー、畑名ではないワイン名にはスペイン語の吹き出しのように左下と右上にチョンチョンのつく“”を付けています。“”付はこちらで言うところのSites Cuvee、つまり色々な畑の若木や最初の収穫のブレンドだと思って下さい。
セラードアでたったの€5.40のワインにもかかわらず、しかも熱波のあった11年にもかかわらず、とてもフレッシュな酸、適度なミネラルと果実味。余韻こそ長くはないものの、見事! 

ところで、お断りしておきますが、テイスティングを始めた時点で、プリンセスは高原台地状の畑しか見せてもらっておらず、このヒトの看板畑が、ニグルからいつも見上げていた超急斜面であることも、その名前がエーレンフェルスであることも、全く知りません
また、各畑の土壌も、あえてテイスティング前には聞かず、コメントを書いてから聞くようにしました。知識を先に入れると、ワインをそれらしい味に捉えてしまうからです。

2番目はGV Rameln ☆☆:原成岩と小石
ハネデューメロンとミネラルを予想されるコンパクトな香り。これだってたったの€6.70だけれど、はるかにシリアスなミネラル感とよく締まったテクスチャー、スパイス。抜群のコスパ。

3番目はGV "Burg" :砂、砂がちのレス
Pellingen畑の若木(5-10yrs)より。優しい個性。粉砂糖風味とやや焼けた感じの果実味最もパワフル。その余韻の長さからもRamelnより遥かにクラスが上なのはわかるが、多少苦みもあり、私の好みではない。

ここで、グラスを大振りのものに変えて、ここからはFassprobe(=barrel sample)

GV Pellingen Alte Reben (30yrs +):砂、砂がちのレス
黄色の花と熟れた果実の香り。カモミール、ボリューム感、酸はやや低めで鈍いが、余韻は非常に長い。このワインのみ、発酵が終わって1か月後に大樽へ移して熟成。他は発酵&熟成ともにステンレスタンクのみ。

GV Ehrenfels ☆☆☆ 1989-90にかけて植えた畑:Gクナイス on 花崗岩
ずっとタイトで内に秘めた香り。伸びのいい酸石果風味がとてもピュアフランツは塩辛いミネラルと言うけれど、プリンセス的にはスパイシーなミネラル(注:前者はプリンセスにとっては石灰土壌のミネラル。後者はやや酸性に傾く岩土壌のミネラル)。リニアで長い余韻

ここでフランツと、ワインを味わいに来ていたフェルディナンド・マイヤー氏(ヴァインアカデミーの講師。プロイドゥルで自分のワインを造っている)を巻き込んで、エクストラクトの話になりましたが、それはまた別の機会に。
そして、小さなグラスに戻って、リースリングへ

Riesling "Steilheit" ☆
白い小ぶりの花ジャスミン。能弁でやわらかい酸。余韻は長くないが、多少の残糖と酸のバランスも抜群€7.65のリースリングとは思えない出来の良さ

Riesling Rameln
ちょっと内気な、締まった香り。スパイシーなミネラルと多少の苦み。熱さと強さ。長い余韻

ここでプリンセス、同ヴィンテージの2つのベーシックなリースリングの、土壌、樹齢、収量差などから出る微妙な差とは異なる、あまりにあからさまなキャラの違いに、「何か醸造方法に決定的な差はありませんか?」と質問。
果たしてフランツの答えは「最初のはMLFしてるんだ。万人向けにね」
ガビーンンン!ここで初めて、プリンセスは、最初の本の取材候補に挙がっていながら取り上げなかった経緯を、まざまざと思い出しました!

気を取り直してGelber MuskatellerとMercaz Roseへ。コメントは省略。そして再び大きなグラスでRieslingのバレルサンプルへ

Riesling Pfeningberg ☆ 南西向き、片岩の上に砂とレス
青っぽさを伴うシトラスと焼けたニュアンスが混ざる香り。湧き出るようなエネルギー感はないが、良質の酸。ミネラルと熟した果実味バランス良い。長い余韻

Riesling Ehrenfels ☆☆ 89, 90年に植えた畑
閉じた香り湧き出る酸抜群の透明感かなりスパイシーとても長い余韻大好きなタイプながら、まだワインとして未熟

Riesling Hochäcker Gクナイス on 花崗岩 南と西
深く柔らか味のある黄色い花の香り。酸はEhrenfelsほど高くない。力強く腰が据わった印象。余韻も十分

長々とお付き合いいただきましたが、ここまで読んでいただいて、プリンセスのが、テイスティング中から“エーレンフェルス”畑に集中していることがおわかりいただけるか、と。ただし、試飲の順番からしても、それがワイナリーで最も高価だったり、最も力強いワインでないことは明らか。しかも、バレルサンプルのリースリングはGVより全体的にまだ未熟で、特にこの畑のものは内気で閉じた印象。でも、両品種を貫くその勢いのある酸とコンパクトなミネラル感、凛とした佇まいに、プリンセスは心底惚れ込みました。

さて、この辺りでフランツが合流。そして手にしていたのは…

2012年4月24日火曜日

プロイドゥル、本物、太鼓判          その2 センフテンベアク=寒冷限界栽培地

今日は超急斜面のお話しをする予定でしたが、その前段階として、プロイドゥルのあるSenftenbergセンフテンベアクという町について、書いておきたいと思います。

更にその前に、オーストリアワインファンの皆さんが、Wachauヴァッハウ、Kremstalクレムスタール、Kamptalカンプタール、と、ドナウの流れに沿って西から東に並ぶ3大銘醸地のキャラをどう捉えているのか、が、ちょっと気になります。
プリンセスは最初の頃、「ヴァッハウ=原成岩によりスパイシーなミネラル感」、「クレムスタール=レスによる豊かな果実味と円やかさ」、「カンプタール=土壌は色々だけど寒暖の差が激しいので酸が綺麗で果実味がブライト」と把握しており、高い酸とスパイシーなミネラルに憑りつかれたプリンセスとしては、3つの中でクレムスタールという産地は一番魅力の無い産地でした

一方で私は2001年のニグルのリースリング Privatプリヴァートに惚れ込んでおり、それがクレムスタール産であることが不思議でたまりませんでした。本当にオーストリアワインを飲み始めた頃のお話です。

そしてほどなく、ヴァッハウと地続きの、例えばニコライホーフのフント、シュタットクレムスのグリレンパルツやクノルのプァッフェンベアク、といったクレムスタールにあるドナウ川北岸の原成岩土壌の畑の存在を知ります。ここは要はヴァッハウ最東部と同じ生育環境。従ってワインのキャラもロイベンとほぼ同じ。だから、FXピヒラー、クノル、アルツィンガー、ニコライホーフ(フントとクラウスベアクだけで、他はドナウ南岸だけど)、サロモン、シュタット・クレムスあたりのリースリングの銘醸畑は、全てヴァッハウで最も温暖な地区の味わいとして、類型的に捉えられるのです。

さて、そこまで理解しても、プリンセスの大好きなニグルの味わいは「ロイベン周辺よりも更に透明感が高い。ミネラルもよりタイトでコンパクトな風味」と思っていました。

果たして、訪ねてみれば、ニグルはクレムスタールとは言っても、クレムスの町からドナウの支流クレムス川を5km以上北上した(プロイドゥルと同じ)センフィテンベアクにあります5kmを馬鹿にしてはいけません。クレムス市街とセンフテンベアクでは、夏に同じ時間の気温が4度程度まで差が出るのは普通だと言います。北だから寒いのではありません。夏の熱気はパノニア平原に対して直接開かれた地点から、川が形作る谷(これがタールTal=valley)に沿って伝わります。谷間の狭いクレムス川の6,7kmは、熱気の伝搬効率的に、幅の広いドナウ川の優に10km以上に相当。つまり、ニグルとプロイドゥルのあるセンフテンベアクは、ドナウ最上流、ヴァッハウでも最も冷涼(=オーストリアで最も冷涼=ブドウ栽培の限界地)なシュピッツとほぼ同じ気温ということになります。

そして土壌&地勢。花崗岩の上にGföler Gneis(「クフェーラー=地名の片麻岩」の意ですが、実際には花崗岩の一種)が乗った原成岩の急斜面。それも半端でない超急斜面の断崖絶壁が連なります。現在54を数えるエアステ・ラーゲの中で、断トツの平均斜度41度を誇る畑Ehrenfelsエーレンフェルスがその代表。
つい最近訪れたニグルから見上げたエーレンフェルス畑。平均斜度41度は全エアステ・ラーゲ中最も急。
この時はこれがプロイドゥルの看板畑とはツユ知りませんでした、彼の所有部分の最大斜度は60度。
で、毎回ニグルを訪ねる度に、ワイナリーから見上げていた、廃墟下に広がる超急斜面の畑こそ、そのEhrenfelsエーレンフェルス畑だったのです。
それがニグルの看板Piriピリ畑なのか、と最初プリンセスは思いましたが、マーティン・ニグルに尋ねると、「いや、あれは他人の畑」と素っ気ない。以来なんとなくその畑の存在は気になってはいました。南から南東向きのウルトラ急斜面。どこから見ても超ド級の威容があったからです。

では、次回こそ、その超急斜面の畑の数々と、そこでワインを造るフランツ・プロイドゥル、そしてテイスティングの様子をご紹介します。

2012年4月23日月曜日

号外! ミンキー、9日ぶりに戻りました!

プリンセス、今日は泣きたいくらい嬉しい!!!!
ミンキーが戻ってきたのです!
そして、第一発見者は、この私です。
痩せ細ってはいますが、怪我もなく元気な模様。
相変わらずチョロチョロしていて、写真を撮る隙もなかなか与えてくれませんが…
ジャジャーン、本日のスター、ミンキーちゃんでーす!!!

2012年4月22日日曜日

プロイドゥル、本物、太鼓判! その1

プリンセス、今日は懺悔せねばなりません
2冊もオーストリアワインに関するガイドブックを書いておきながら、こんなに素晴らしいワイナリーをピックアップできていなかったなんて…。

昨日土曜の午後、クレムスタールはゼンフテンベアクに1600年代からワイナリーを営むプロイドゥルProidlを訪ね、その素晴らしいワインの数々にノックアウトされた、という嬉しい懺悔ではありますが。
門に使われているのがこの辺りの名物岩=クフェーラー・クナイス(一種の花崗岩)
言い訳をお許しいただくなら、最初の本の取材候補に挙がっていたのです。その直後とある試飲会で、生産者本人とともにベーシック・クラスのワインを試す機会があり、製法を尋ねると、なんとその最も廉価なリースリングに「飲みやすくするためMLFをしている」と言うではありませんか!
当時のプリンセスは未熟で、「新樽なし、MLFなし」こそオーストリア辛口白の王道だと頑迷に信じ込んでおり、生産者のこの言葉を「邪道」と断じてしまったのです。

最近声を大にして「ラベリングの弊害」について書いているプリンセスですが、これは自らがその罠に嵌ってしまった恥ずかしい好例。以来このワイナリーを「邪道」の色眼鏡で見続け、真剣にワインをテイスティングしようとすらしませんでした。
大反省…。

そんな私を今一度振り向かせたのが、Falstaff誌から発行部数では大きく水を開けられているらしいものの、「読ませる」という意味でははるかにプリンセス的には気に入っているVinaria誌の記事と、各ワイナリーの全所有畑に対するエアステラーゲ比率を自分でチマチマ聞き歩き始めたところに浮上した、このワイナリーの所有畑の質の高さ
早速ワイナリー訪問を打診し、ようやく昨日念願叶った、という訳です。

「電車とバスを乗り継いで伺います」というプリンセスのメールに何度も「シュルス・ゴベルスブルクまで迎えに行くから」と返事をくれ、おまけに携帯に確認のメッセージまでくれた親切な奥さんのアンドレア。そして迎えに来てくれたのは、バイオテクノロジー研究機関勤務の長男フィリップ。
ワイナリーに向かう途中、「畑を見たいのだけれど、一旦ワイナリーまで行った方がいい? それとも、ワイナリーまでの道すがら見せてもらった方が効率的?」と尋ねると、父フランツに早速電話。一部の畑を通ってワイナリーへ向かうことと相成る。
レーヴェンツァーンの下草が満開。
標高400mあまりの頂上台地。右奥手に見える丘陵地がハイリゲンシュタインなどカンプタールの銘醸地帯
そこでまず驚いたのが、カンプタールとセンフテンベアクの丁度間の高原台地の畑の存在。
インターナショナルなオーストリア・ワインファン的には、ゼンフテンベアクと言えばニグル。ニグルと言えば廃墟下断崖絶壁に代表される、クレムスタール(=クレムス川の作る峡谷)の断崖絶壁畑注:ただしニグルから見えるあの畑こそ、このプロイドゥルの看板畑エーレンフェルスであることを、プリンセスも昨日初めて知りました…
なので、ウチからほんの7,8kmの距離にありながら、銘醸畑のないこの辺り、その存在すら意識したことがありませんでした
そして2度驚かされたのは、頂上台地の土壌
谷は上に行けば行くほど土壌が痩せているのが普通ですが、この頂上台地の土壌は非常に重い!
実は、ある坂に車を寄せて降りようとしたところ、ぬかるみにタイヤがはまり込んでしまい、2度と脱出不能となってしまう、というアクシデントがあり、この一件からも、この頂上台地の土壌がどれだけ重いか、がわかろうというものです。
手前の土壌、いかにも重そうでしょう?
車はこの左側の坂に嵌ってしまいました。
天気は快晴。涼やかな風が流れ、レーヴェンツァーンの下草が咲き誇る高原台地の畑は、快適そのものでしたが、実はプロイドゥル家のワインにとって、この辺りの畑は「一番どーでもいい場所(その証拠にブドウを抜いてしまったままの場所もあります)」。その本領は、やはりクレムス川峡谷の超急斜面、特に南から南東向きのクフェーラー・クナイス(花崗岩の一種だが所謂花崗岩ほど固くない)土壌の畑にあります

では明日はそうした斜面のお話を。

2012年4月20日金曜日

ブリュンドゥルマイヤー 03 リースリング ハイリゲンシュタインの教え

昨日のブログと前後しますが、一昨日のディナーは昨日のお客様達とともに隣町ランゲンロイスにあるブリュンドゥルマイヤーのホイリゲでご馳走になりました。
因みにこのホイリゲ、ホイリゲという名が嘘のようにクオリティの高い洗練されたお料理を出してくれます。
左よりヴィリー、27歳の若きシェフ(名前失念)、塩田怪鳥
プリンセスの交通手段はチャリ。通常15分程度で着く道のりですが、途中道路工事中で通行止め。ランゲンロイスの町の外側を大きく北側に迂回するハメに陥り、かなり遅刻してしまい、息を弾ませテーブルに着くと…、なんとそこにはヴィリー・ブリュンドゥルマイヤー御大ご本人が!
すっかりプライヴェートの飲みモードであったにも関わらず、御大が横にいると、ついまた質問魔の悪い癖が頭をもたげます














サーヴされた酷暑2003年のRiesling Heiligenstein Lyraの味わいに、確かに酸はリースリングとしてはかなり低いですが、この年特有の暑苦しさがないことと、早期収穫ブドウのワインにありがちな薄っぺらさとは無縁の深みと、落ちついた調和の取れた味わいに感心。思わず「収穫は何日でしたか?」と、またまた質問。
すると、Williがとてもいい話をしてくれました。

Willi: 収穫は10月30日。ブドウの糖度は8月半ばにはとっくにピークに達していたけれど、味は良くなかった。良くなるまで待っていたら、10月末になってしまったんだ。実は03年は、酷暑の夏と対照的に、10月は記録上最も低温だった。収穫は雪の中でしたんだよ。













ここでまた質問…Princess: 待っている間に酸は下がりますよね?
Willi: たしかに下がるから、このワインも酸は低いけれど、待っている間に他の香味成分がしっかり出た注:ただし酸が急激に下がったのはむしろ糖が急上昇していた8月中のことと思われます。

ここでプリンセスの頭を掠めたのがWachauのRudi Pichlerが、03の翌年、今度は記録的に収穫が遅れた04年のワインを前に語った言葉;
R: 03も04も、天候は正反対だったけど、ちゃんと待ったヒトが勝ち。03は身体だけ早く大きくなったティーンエイジャーみたいな段階で、糖度が上がる、酸が下がる、って慌てて収穫して皆失敗してる背丈や体重がどうあろうが、ちゃんと大人になるまで待たなければいけなかったんだ。04は今度は逆に実際に物理的糖度が上がるのをじっくり待つ必要があったけれど、一番肝心なのは、香味成分が完熟する間にどれだけ完璧な仕事(=除葉、グリーンハーヴェスト、貴腐落とし、選果)をしたか、ということ。ウチではひとつの木を最大10回収穫したよ。
なにげにセシル ピノ 97はマグナム!
プリンセス、ブドウから色々重要な教訓を学んでいますが、またひとつ大切なことに気付きました。
物理的な成長と成熟が終わってからの寒暖と光の蓄積こそ、ブドウの風味にとっては、即ちワインの性格と質にとっては、決定的に重要だ、ということです。注:ここらあたりが、フェノールが熟したら即収穫をしなければならない、或いはそれをも待つことが許されない、温暖 or 多雨産地とは大きく異なるところです。

勿論酷暑で下がった酸は、その後いくら低温に晒しても値を増すことはありません。だから03年は、新弟子検査では撥ねられるし、一定以上の背丈が要求されるミス・ユニバースにはなれない年ではあります。
けれど、ブドウに含まれる何千とも言われる香味物質は、糖度上昇が止まり、果皮、茎や梗、種のフェノールが成熟した後も変化を続けます。…まるで人格が身体の成長&成熟後も死ぬまで変化を続けるのと同じように。
そして、身体的成長&成熟が終わると人格的成長もオシマイな人間になるか、その後の成長の方が大きな人間になれるか、で、恐らくそのヒトの人生の味わい深さに格段の差がつくことでしょう

だから成熟も終わったと自認するご同胞の皆さん、歩みを止めてはいけません! 自分の中で自分の持てる味わいが調和するまで、まだまだ待つ価値はあると信じて

2012年4月19日木曜日

日本より謎の一団来訪…エアステラーゲ・ワインの日本輸入も近し?

今日は午前中は日本から、午後はあのシュタット・クレムスの技術陣が、お城ワイナリーを訪れました。
午後の訪問は、ウチの醸造栽培長のカーナーさんが、シュタットクレムスのフリッツ・ミースバウアーを迎えるという、謂わば花形ヴィンツァーから花形ヴィンツァーへのテクニカルな説明がどういうものか興味深々でしたが、独語の方言で醸造機器動作詳細について解説されても、プリンセスの理解度は心もとない限り。情報量極小なので、午前中の訪問客について書きま~す!
週に一度のtop up作業を見学。週に500ml/樽も減る、との説明に驚く我々。
しかし後からカーナーさんに聞くと、そこまで減るものはまずない、とのこと。
日本からのお客様は、アンドラ・モンターニュのS怪鳥、すみや亀峰菴のY女史&I野氏、プリンセスの旧い友人で蕎麦流石のChちゃん、そして謎のオーストリア人インポーターT氏、という濃い面々: )
生憎ミヒャエルが海外出張中であったため、夫人Eva方の継父ペーターとプリンセスの二人でお相手。お城とセラーを見ていただき、ロゼなど一部を除いてほぼ全てのワインを味わっていただきました。
楽しかったのがペーターお得意の、オーストリアの歴史とワインに合う料理の話。歴史はプロはだしだし、食へのこだわりにはIBMのプロマネとして世界中を飛び回り、世界中のソウルフードから美食まで食べ尽くした経験が生きます。と言っても正調ワインテイスティング的には、ハッキリ言ってムダ話 : )…でも、これが深くて熱いんです! ワインオタクには歓迎されないでしょうが、今日のメンバーは、ペーターの“熱さ”に触発されて逆にどんどん“濃さ”を倍増。もう、うるさい、うるさい! 

和食とワインの話になると、I野氏がお土産に持参してくれた"イカ墨まぶしのスルメ"をご開帳。

>>>前にプリンセスが金沢の巻鰤とリースリング・トラディツィオンの驚きの相性(全然生臭さが出ない)について書いたのを覚えてくれている読者はいるかなぁ?

で、今日はそのイカ墨まぶしの真っ黒なスルメ(かなり臭しGV Traditionトラディツィオンを合わせてみました。
果たして、GV Grubグループでは後味に生臭味が出るのに、トラディツィオンでは全く気になりません。

>>>これも前のブログに書いた、鯖鮨にHirschヒルシュのRiesling Gaisbergガイスベアクはバッチリ合ったのに、次にうちのGV Rennerレンナーを合わせたら、悲しいことに生臭みがドドーン、と出てしまった話も覚えてくれていますか?

次にリースリングに移ると、クオリティー的には最もベーシックなRiesling Urgesteinウルゲシュタインですら、GV Traditionよりさらに格段上等の、と言うよりは、あまりに自然にスンナリと、イカ墨スルメにリースリングが合うことに、我々は驚きを禁じ得ませんでした。

そして赤。プリンセスが「新樽&抽出が強い」とカーナーさんに堂々とイチャモンをつけて顰蹙を買った、けれどオーストリアではとても評判の高いSt Laurentザンクト・ラウレント、そして〆にGV EisweinとRiesling TBAを飲んでいただき、「日本にオーストリアワインだけの寿司屋を作ろう」だの、「エアステラーゲものワンパレット即インデント輸入」などと盛り上がるだけ盛り上がったところで、テイスティングは終了。
「あんなにオープンで楽しい日本人グループは初めてだ。日本人は変わったのか? 
それともゆかりの友達だからか?」と後から尋ねられました : )
今現在お城住まいのプリンセスとしては、別に普通のことと言えば普通のことですが、かつて日本に居てこの国のワインとワインを造る人々に、遠くから大きな敬意(これは今も変わりません)と畏れに近い憧れを持っていた頃を思い出すと、こうしてこの国のトップワイナリーの家族とともに、日本からの大切なお客様にワインを振る舞い解説している立場に居る自分が、なんだかとっても不思議
もう夕方になろうという今になっても、その静かな、けれどひたひたとハートの深い部分に浸りくる感謝と感動の気持ちに満たされています。

ペーターありがとう! 訪れてくれた皆さんありがとう!

2012年4月18日水曜日

ミンキー、帰っておいで!

お城ワイナリーには、お馴染みの魔犬エラちゃん、老賢猫ヘアマン、そしてヤンチャなチビトラ猫ミンキーの3匹のペットがいます。

ところが、そのチビトラ…ミンキーが姿を見せなくなって今日で5日目。

まだ赤ん坊の頃、畑で震えているところをお城ワイナリー家族に拾われたミンキーは、いつもチョロチョロ悪さばかりし、エラちゃんを挑発しては九死に一生を得、オフィスのコードをいじくり回しては従業員に怒鳴られ…という調子のイタズラ坊主。
とことん野生児なため、1,2日家を空けることは多く、週明けくらいまでは誰も心配もしていませんでした。
ただ、土曜以来ミンキーを見たヒトはいない…。
昨日には家族は既に諦めモード。結構淡々としたものです。

…でもプリンセスは、まだ望みが捨て切れません。

思えば、存在感のあり過ぎるくらいのエラちゃんの写真は沢山あるし、ドアの取っ手に飛びついて自在に開けてしまう、でも煩いのが大嫌いで子供達には寄り付かない賢猫ヘアマンも、プリンセスにはいいポーズを沢山とってくれました。
なのに、イタズラ坊主ミンキーだけは、パソコンのキーボードには乗ってくるは、コードにジャレまくるは…で、いつも追い払ってばかりで、その軽やかで茶目っ気たっぷりな身のこなしをカメラに収めようとすらしていませんでした。

帰っておいで、ミンキー!
暖かいパソコンの上で寝ても、もう怒らないから…

2012年4月16日月曜日

やっぱりゲミシュター・サッツは軽やかでなくっちゃ!

久々に都ウィーンに上って参りました。

お昼にひとつウィーン有数のヴィルツハウス(=所謂居酒屋)ヴァイベルス Weibel’s(といってもここはちょっとしたワイン・バー、というよりちゃんとしたワイン・レストラン。お勧めできます!)で打ち合わせランチを済ませ、Citibankを探してケアントナー・リンクをうろうろした後、3時からのWein Weinプレゼンテーションの会場である、Wein & Coのカフェ&バー・スペース(食事もできます)へ。
Wien Weinプレゼンテーション会場の、ここがWein & CO Mariahilfer Strasse店。オーストリア版やまやか、成城石井か、といった感じ。
品揃えは全然マニアックではありませんが、ツボを押さえた人気&有名どころがおそらくウィーンイチ安く買えます
シュテファンスドーム脇の馬車達。

ケルントナー・リンクの古本屋。雰囲気抜群。

古本屋のショーウィンドーには、プリンセスの隠れアイドルの一人、シュタイナー様が : )
何度も書いていますが、プリンセスは人混みが死ぬほど嫌い。こういう中でテイスティングに集中などゼーンゼンできません。また、これも何度も書いていますが、そういう環境の中で色々質問を浴びせるほど根性も座っていません(早く言えば気弱)
なので、2011年の傾向&各ワイナリーのスタイルがわかれば十分、という感じてササ、っと参加5ワイナリーのゲミシュターサッツとグリューナー、リースリングだけをテイスティング。
最初はこんな感じで余裕がありましたが…

1時間も経つと、文字通りの芋洗い状態。

①さて、後姿はWein Weinの誰でしょう?
②真ん中と右は? 答えは最後に。

はい、これはクリストさんです!
今日はまだまだ一仕事も二仕事もあるので、本当に簡単に印象を記しておきますね。

1)やっぱりウィーンと言えばゲミシュター・サッツ。貝殻石灰土壌の生み出す塩辛いミネラルある意味薄いのに長い余韻は、世界広しと言えどもここだけの持ち味!
2)ただし、同ヴィンテージの最もベーシックなヴィエナー・ゲミシュターサッツひとつ取っても、5ワイナリー間でかなり質の差がある!
3)2011年はニーダーエスタライヒよりウィーンの方が熱波が軽かったのか? それとも土壌(川向うでもウィーンはNÖほど深いレスは少ないはず)の影響か? グリューナーの酸はNÖのレス土壌のベーシッククラスよりむしろ綺麗
4)銘醸畑のゲミシュター・サッツの中には新樽をかけたりして、高級感を出そうとして、逆にゲミシュター・サッツの美質を殺してしまっているものも多い。また、主要品種(25%以上を占める)がある場合、例え5種類を超える品種が混醸されていても、プリンセス的には、そこにゲミシュターサッツの味わいはない
蛇足ながら、白ワイシャツにダーク・ジャケットで統一した5人のイデタチはなかなか素敵

プリンセスは、“軽さ”と“長さ”を両立してこその、ゲミシュター・サッツだと思っており、重かったり、妙に凝縮感のあるものは、“らしく”ない、と思うのです。新樽なんてもっての他!
勿論凝縮感は、通常はワインの長所ですが、ウィーン“らしさ”は、絶対にdensity, intensityより軽やかさです!
ウィンナ・コーヒーのホイップみたいに、ウィンナ・ワルツの3拍子みたいに、ニューイヤー・コンサートのラデツキー・マーチみたいに“軽やか”でなければ、プリンセスはいやです!! 軽薄とギリギリ境目の本物感をこそゲミシュター・サッツには求めたいと思うのです。

解答:①Gerhard Lobner (=Mayer am Pfarrplatz) ②中 Edlmoser, 右 Fritz Wieninger

それにしても、Wien WeinにZahelが入っていないのは何故???

2012年4月13日金曜日

ゆかり、それは物理的理由に過ぎないんだよ

プリンセス、子供の頃からよく質問をする子でした。
この年になってもやってます。お昼に栽培醸造長のカーナーさんと一緒になると、食後に必ず、と言っていいくらい、何か聞いてます。
"Ich habe eine Frage(質問があるんですけど)"と切り出すと、「またか」とばかり、カーナーさんは苦笑い。

さて、今日の今さっきの会話…こういうの、典型的なので書いておきます。因みに今日はミッヒも一緒。

P(プリンセス):うちの白ワインで、除梗するものはあるの?
K(カーナーさん):ゼロ。除梗は一切なし。
P:それって、この辺りでは普通のこと?
M(ミヒャエル):いや。オットなんかは全部除梗。100%ホールバンチは少ないと思う。
P:それはホールバンチだと梗まで完全に健康な房でないとダメだから?
K:(ほらほら、来たぞ、いかにもワインジャーナリスト的質問、という顔で含み笑いをしています)
M:ゆかり、多くのワイナリーにとって、それは物理的理由に過ぎないんだよ。
P:???
M:全部のブドウをホールバンチプレスするほどプレス機を置けない。時間も足りない。
P:ホールバンチの方がエレガントで柔らかい果汁が得られる、のよね。
M:確かに酸はより高く、フェノールはより低い。でも、本当に小さな差さ。
K:本を沢山読み過ぎるとよくないよ(笑い)。

こちらに来て、こういう遣り取りが何度あったことか…。
その度に、我々ワインジャーナリスト或いはワイン愛好家という人種が、いかに現場にとっては「見当違い」な質問(その多くが、ワイナリーの実際的事情を全く理解せず、勝手に頭でっかちに、ある特定のコンセプトなり専門用語を振り回す類)をしているか、に気付かされます。
しかもその現場にとって見当外れな質問に対して、明確な回答が得られないと「こいつらわかってない」と、自分の無知を恥じる前に生産者側を見下すような厚顔無恥な同胞すら多い。そのためか、多くの生産者は(ジャーナリストの評価が売れ行きに影響を与える可能性を理解しているためアカラサマには言いませんが)、ワイン・ジャーナリスト一般に対して、実は敵意とまでは行かずともかなりネガティヴな感情を持っているのが、日々の会話の、言葉の端々に顔を出します。
※ワインジャーナリストという人種の、無知無理解を通り越した、あまりに恥知らずな行為については、プリンセス自身、最近呆れ果てた話を聞かされているので、それについては、また改めて。

プリンセスは、自分が大好きなワインの素晴らしさの理由が知りたくて、遂にオーストリアに住み着いてしまっています。自分で言うのもナンですが、その真摯な探究心だけは、特に素晴らしいワインを造っている生産者達には、せめて通じて欲しい、と切に切に願うのみ。

では、良い週末を!

2012年4月12日木曜日

ORF1 Radioの凄さ…ああ、一日中聴いていたい!

プリンセス、望ましくは朝5時起きをし、エクセサイズ後、プライヴェートなひと仕事(新聞や気になる大著を少しずつ読んだり)をラジオを聴きながら済ませ、朝食を摂って8時半にはオフィスに入る、というのが理想的平日の日課です。(意志が弱いので、その通りにできるのは週に1,2日…)

因みにオーディオセットなどは全て東京の自宅に置いたまま。音楽大好きプリンセスがどうやって凌いでいるのかと言えば、携帯に付いたFMラジオにドイツ製(? Amazon.deにて購入)のミニ・スピーカー(これがオモチャみたいなサイズと値段の割にはなかなかの優れもの)を繋げて聴いています。http://store.x-mini.com/

そしてお気に入りの局は断然ORF1 Radio。クラシック大国オーストリアのこと、所謂ロマン派のクラシック・ファンやオペラ・ファンにはたまらない演奏が湯水のごとく流れてくるのは勿論、プリンセスのような古楽好きや、スイングしない渋いジャズ好き、現代音楽好きなどにも堪らないプログラム構成です。
http://oe1.orf.at/programm ※音楽好きの皆さん、サイトでライブも聞けますよ。

で、何が困るかと言えば、朝8時15分からPastisccoパスティッチョという番組があって、丁度部屋を出ようとする8時半前後に、プリンセスを捉えて離さない音楽達が続くことが多いことです…。

因みに下に添えたのが、昨日の朝のパスティッチョの2曲目、丁度8時20分頃から最後までの曲目一覧…。

まず、Fatima Sparのドイツ語だか英語だかわかんない掠れた囁きvoiceがたまらなく勤労意欲を削ぐんですよねー : )… 
で、気を取り直して部屋を出よう、出ようと思っていると、ファティマのブッ飛んだサラバンドの後は、正統派。大好きなシフのバッハ、パルティータのサラバンドだぁ…
憎い選曲シフトではありませんか!!
今度こそ、と意を決してラジオを落とそうとすると、畳み掛けるようにプリンセスの死ぬほど好きなヒンデミットのラグタイムで脳の髄まで攪乱されます… : )。

結局最後のマイケル・ナイマン バンドを聴き終えるまで、部屋を出ることはできませんでした。

因みに、この後8:55amからは、ここのところVom Leben der Natur(自然の生命から)という、女性生物学者が語る5分間の、これまた滅茶苦茶興味深い番組をやっていて…。本当はそれも聞きたいのですが、一度聞いてパっと内容ができるほどプリンセスのドイツ語は残念ながら上達していませんので、後からサイトでシリーズをまとめて聞くことができるこちらは、週末にでもゆっくり聞き返すことにしました。
ふふふ、大人でしょ?

ね、それにしても素晴らしいプログラム。…って感激してるのは、なにかと好みに偏りの多いプリンセスだけ?

Komponist/Komponistin: Andrej Prozorov
Textdichter/Textdichterin, Textquelle: Fatima Spar
Titel: Sarabande
Ausführende: Fatima Spar & The Freedom Fries
Länge: 04:10 min
Label: Hoanzl H-550-2

Komponist/Komponistin: Johann Sebastian Bach
Titel: Partita c-Moll, BWV 826
* Sarabande
Solist/Solistin: András Schiff/Klavier
Länge: 03:01 min
Label: ECM             476 6991    

Komponist/Komponistin: Paul Hindemith
Titel: Suite 1922. Ragtime
Solist/Solistin: Sviatoslav Richter/Klavier
Länge: 03:03 min
Label: Decca 436 451-2

Komponist/Komponistin: William Boyce
Titel: 1. Satz aus der Symphonie Nr. 4 F-Dur
Orchester: The English Concert
Leitung: Trevor Pinnock
Länge: 03:14 min
Label: Archiv 419 631-2

Komponist/Komponistin: Ernest Chausson
Titel: 3. Satz aus dem Klavierquartett A-Dur op. 30
Ausführende: Quatuor Schumann
Länge: 04:04 min
Label: Aeon AECD 0540

Komponist/Komponistin: Aram Khatschaturian
Titel: Adagio
Orchester: Staatliches St. Petersburger Symphonieorchester
Leitung: André Anichanov
Länge: 08:37 min
Label: Naxos 8.554054

Komponist/Komponistin: Michael Nyman
Titel: Sheep and Tides
Ausführende: The Michael Nyman Band
Länge: 01:45 min
Label: CDVE 23 0 777 7 87399 2 0

2012年4月11日水曜日

オーストリアはグリューナーだけじゃありません!

Facebookを見ていたら、最近リースリング・リンクが東京で開催されたらしく、ドイツの情報は色々入って来たのですが、オーストリアのリースリングについては誰からも報告がないので、寂しく思っているプリンセス。

そこで今日はオーストリアのリースリングのお話を。

オーストリアで有名な品種と言えばもちろんGrüner Veltlinerグリューナー・ヴェルトリーナー。栽培面積全体の1/3近く、13,518haを占める、量的にはなんと言っても最右翼です。
一方のRieslingの栽培面積は、GV、Zweigelt, Welschriesling, Weissburgunder & Chardonay, Blaufränkisch, Müller Thurgauに続いての7位、全体の4%を占めるに過ぎません。
※「Weissburgunder & CHAとは何ぞや」と思われるかも知れませんが、1999年の時点で、この2品種は統計上区別されていませんでした。昔から、特にGemischter Satzとして植えられているブルゴーニュ系品種は、この国ではそんな扱いだったのですね。

…おっと脱線!  リースリングでした
ここら辺、オーストリアのリースリングの位置づけはイタリアにおけるネビオロの位置づけと同じだと思っていただければいいです。つまり、「量的にはメジャーとは言えないが、質的&個性の表現力的にはピカイチ」ということです。

ただ、実は量的にも面白いことが起こっています
1999年から2009年までの10年間で一番栽培面積の減った品種は何だと思います? 
はい、実はグリューナー・ヴェルトリーナーで22,7%減
一番増えた品種は? (あ、白の中で、です)
リースリングなんです(13.4%増)。
主要白品種の中で唯一栽培面積を増やしているのが、このリースリングということで、ワインの「高品質化」とリンクしてリースリングが重用される傾向がわかります。勿論この栽培面積の拡大には灌漑の普及も大きく関連していることは言うまでもありません。


さて、オーストリアのリースリングの魅力って何でしょう?
ドイツ、アルザス、ニューワールド(豪、NZ、ワシントン等)との比較でお話ししますね(話者に注意。依怙贔屓予想 : )。

まずニューワールドは「土地からのミネラルを味わう」というプリンセスにとっては、リースリング最大の魅力を表現できていないモノが多い。どうしても熟した果実味が前面に出てしまうのです。勿論少数の例外はありますし、また逆にそういうスタイルの方が好き、というヒトも多いはずです。特に比較的廉価なタスマニアやNZのリースリングは、“酸&ミネラルフェチ”(=ワインオタク)ではない、普通のワイン好きにもアピールする魅力に溢れるような気がします。

そしてドイツ&アルザスは、クラスを上げて行くとどうしても残糖が高くなります。いえ、悪いと言っている訳ではありません。ドイツなどは酸が本当にracyなので、完全な(つまり4g/l以下の)ボーンドライより、多少の残糖の高めな方が素直に美味しい。実はプリンセス、アルコールがやや低めでため息が出るほど酸の美しいドイツのリースリングも大好きなんです。ワイン単体で味わうなら、ドイツの方が好みのスタイルが多いかも知れない、とすら思います。

ただ、あれこれの皿やら素材やらを味わうお食事に1本、となると最高レベルにも完全なドライの範疇のワインが多いオーストリアの方が使い出があるような。糖も酸も風味も高いドイツリースリングは、やはり料理の合わせ方には多少神経を使う必要がありますからね。
ドイツのリースリングがなんと言ってもその酸に一番の魅力があるとすれば、オーストリアは、高過ぎる酸や残糖に邪魔されることのない、そのピュアなミネラル感が魅力でしょう。そしてこのミネラル感は、適度のアルコールと相まって、野菜、魚、肉…食材の旨味を見事に支えます
※ヴァッハウのスマラクトがアメリカでトレンディーだった頃、アルコールが高すぎてオイリーなワインも散見しましたが、どちらかと言えばそういうスタイルはGVに多く、またブームも一段落し、そのテのスマラクトはとんと少なくなりました。良かった、良かった。

アルザスの場合、オーストリアより重めの土壌と日照の多さが相まって(これも良し悪しではなく、むしろスタイルの違いなのですが)、軽快なタイプははっきり言って可もなく不可もなくの薄いものが多い。そしてクラスを上げると、アルコール、残糖ともに高く、酸もやや線の太い、ドッシリと腰の据わったリースリングとなります。

豪が誇るEden ValleyやClare Valleyのリースリングの場合も、ミネラル感は十分あるのですが、補酸をしても、どうしても酸がやや鈍く太くなり、レモンドロップのような果実味が出ます。暑さと乾燥ストレスの影響か、若いうちから強いペトロール香を発するワインも多い。でもあのHill of Graceを造るHenschkeや、Victoriaの南端HentyにあるCrawford Riverのリースリングは、プリンセスも大好き。

まあ、オーストリアに目茶目茶ポジティヴバイアスかかってますが、大切なのは、どこのリースリングがいいか、ではなく、リースリングというのが、テロワールの表現という点において頭抜けてポテンシャルの高いブドウだということを知っていただき、各自好みのスタイルを探して、ドンドン飲んでいただくことだと思います。

という訳で、オーストリア・リースリング講座、終わります。今晩はリースリング飲みながら読書して寝まーす!

2012年4月9日月曜日

イースターの情景

プリンセス、オーストリアで過ごすイースターは2回目のはずなのですが、昨日(日曜)がイースターで、今日月曜からは平日だとばかり思っていました

本当は、今日までれっきとしたBank holidayなんですよね。そういうこと、すーぐ忘れちゃうんです。昔からプリンセス、母親に「鳥さん」って呼ばれてました。友人にも「イワシ(学生時代のプリンセスのあだ名)はボケても昔からだから、全然困らないよねー」なんで言われています。


で、今日は「一日儲けた」とばかりに、掃除をしたり洗濯をしたり、散歩に行って畑の様子を見たり。畑は今剪定と最初の誘引が終わり、今まさに揚水と発芽を待つばかり。仕立てのカタチを見るには一番いい時期です。葉が茂ってしまうと何が何だかわからなくなりますからね。









こちらでも桜=Kirschが満開。

ほぼ白いし、花も小さい。

お城前のSchloss Strasse(=お城通り)は二手に分かれ、
こちらはその名もWeinstrasse(=ワイン通り).目立つ尖塔は教会。お城はその左側。
中にはコルドンにしたいんだかギイヨにしたいんだか、「やりたいことがわからーん」という区画があったり、台地のテッペンは普通のギイヨなのに、北側へなだらかな傾斜を描く部分だけリラにして日照を稼ぐという実によく考えられた仕立分けをしていたり、小高い丘のテッペンに大昔は川底であったに違いない小石ゴロゴロの区画が出現したり、遠くから眺めるとほとんど一続きの丘に見えるハイリゲンシュタインとガイスベアクの土壌が、ゼーンゼン別であることに改めて驚きを感じたり…と、もう何度も歩いているはずの道なのに、次々と色々な不可思議が目に飛び込むのをワクワク眺めていました。
変な仕立てその1


変な仕立てその2。実は他にも色々ありました。












どう見たってひとつながりのハイリゲンシュタインとガイスベアク。でも…

お日様をたっぷり浴びて、そこここに咲く花や動き回る虫たち、そして死者を弔う十字架や聖人の像達に、すっかり元気づけられたプリンセス
その余力で夕方には、ここ数日の食べ残しでウルママとお手伝いさん、その息子に炒飯まで作ってしまいました。4人分くらいだとプリンセスも「たまにはやろうかな」という気になるのです。…ただこれにミッヒ家族5人+おじいちゃん&おばあちゃんが加わるともうお手上げ…。
今晩の炒飯は、お昼の余りの鶏のスープを使ったせいか、なかなかまろやかなお味。お米も細長い元々パサパサのものなので、火力が多少弱くても、パラパラとまでは行かずともビシャビシャのグチャグチャにはならず、結構イケました。



さあ、明日からはまた色々なワイナリーへの連絡ゴトがたまっています。4月後半からは再びワイナリー行脚の予定。報告しますのでお楽しみに!
そうそう、訳のわからない仕立ての畑はウチのものではありませんでしたが、今度まとめて栽培&醸造長のカーナーさんに写真を見せて、どういうことになっているのか説明してもらおうと思っていますので、そちらもどうぞご期待下さい。