2013年3月17日日曜日

河岸を変えました! 今後はヴィノローグを御贔屓に!


「お城ワイナリー滞在記」の読者の皆様、今日から滞在記は"vinologue ヴィノローグ”として生まれ変わります!

怒涛のロードを切り抜けたプリンセス。一昨晩は帰国後初めて、旧友とプライヴェートの夕食を楽しみました。東京で、大阪で、名古屋で様々なイベント、試飲会、セミナー、ディナーにご参加いただいた皆様と関係者の方々にお礼を申し上げたいと思います。

さて、予告通り、ご愛読いただいたプリンセス・アラフィフのお城ワイナリー滞在記は今日から“vinologue ヴィノローグとして新装開店。今後とも一層のご愛顧をよろしくお願い致します!

http://www.vinologue.jp/






ところで、Vinologueは従来のお城ワイナリー滞在記のような、単なるブログではありません。
何が違うかと言うと
1.  これまでのブログが全て産地別、ブドウ別、ワイナリー別にアーカイヴされています。
2.  フリーワード検索もできます。
2.  おまけにオーストリアワインを買える&飲めるお店をご紹介。今後はワイナリーお勧めのオーストリア国内ショップやレストラン情報も充実させます。
3. 単なるe文字媒体としてではなく、オーストリアワイン・ファンの集うe交差点として、様々なアクション&イベントの媒体としても機能します。
4. メンバー特典や優待サービスを充実させる予定です。登録費や年会費などは未来永劫一切かかりませんので、安心してメンバー=仲間になって下さい。

ええ、つまり新サイトvinologueは、オーストリアワインを応援して下さる愛好家、飲食店、そして酒販店の皆さんを、プリンセス自信が情報面で支援してしまおう、という目的で企画運営されています。

とは言うものの、その中心コンテンツは勿論従来通りプリンセスのブログ。今までのように最新アップデートを読むだけでなく、特定ワイナリーのエビソードが知りたい、各産地の傾向が知りたい、直近のイベントが知りたいそんな時に気軽に覗いて使い倒していただけたら、と思っています。

明日からは早速、帰国してから続いていた試飲会、セミナー、ディナーなどのご報告や関連ワイナリー情報などを中心にご紹介して参ります。
お楽しみに!

2013年3月12日火曜日

プリンセスの人生を変えたワイナリー、ヒルシュ

Foodex~大阪~名古屋と続いた鬼のロードもあとひと息。プリンセス東京に戻って参りました。
そこここのセミナーやらワイン会に来て下さった皆さん、本当に有難うございます!

さて。初めてパーティーなどでお目にかかる方によく聞かれる質問があります。「オーストリアに嵌ったキッカケは?」

その度にお答えしてきたことですが、今一度このブログにも書いておきたいと思います。

それは2002年のおそらく初夏。当時勤めていたカリフォルニアワイン輸入会社恒例月一ブラインド勉強会でのこと。白のフライトに20前後のワインが並んでいました。いつもメインはカリフォルニアで、そこに仏、伊、スペイン、チリ他様々な国のワインが何の脈絡もなく少数混ざります。

その日の白ワインの中で3つ気に入ったワインがありました。2つは辛口。ひとつは極甘の貴腐。なんとなくその3つには共通点があり…カリフォルニアより果実味がずっと締まってエレガント。アルザスのようで、なんとなく違い、もっと筋肉質。綺麗な酸はちょっとドイツ的なところもあるけれど、完全な辛口で全くプロポーションが異なる…。さて、一体どこのワイン達? と、思っていました。

ブラインドを解くと、なんと3つ全てオーストリア産!!

当時のプリンセスは既にスクールで教え始めていたのですが、「オーストリア」というワイン産地はプリンセスの辞書になかった、と言うか…。いや、あるにはありましたが、「オーストリア=グリューナー・ヴェルトリーナー=薄甘くて青っぽいミュラー=トゥルガウ的なものだったのです。「Mxxxxx」という“安ワインの味なのにそんなに安くない:)”困ったチャンなワインのイメージしかありませんでした。

そして、そのお気に入り3つのうちのひとつがヒルシュのグリューナー・ヴェルトリーナー Lammラムでした(残りのふたつはクノルのリースリング、恐らくロイベンベアクかシュットとリースリングTBA)。

衝撃でした!

以来ヨーロッパ在住の友人達に、ことあるごとにメールを出してはオーストリアのプレミアムワインの入手方法を尋ねたり、関連図書を送ってもらったり…その熱いラブemailsのひとつが当時のオーストリアワインマーケティング協会会長に転送され、さらにアルバイトて通訳をしたガヤの広報氏がオーストリア人と判明。プリンセスの質問攻めにあった彼は、やはり同人物に私を紹介しました。

そして翌2003年秋。プリンセスは初めてオーストリアのワイン産地を訪れますが、当時の私を捉えて離さなかったのが、ヒルシュのGV ラム 2001とクノルの同年のリースリング シュット&プァッァヘンベアク…。

まさかその7年半後、自分がヒルシュとご近所同士なるとは夢にも思わなかったし、最初の訪墺以来、何度もこの2つのワイナリーを訪れていたのに、ヨハネス・ヒルシュとエメリッヒ・クノルJrが大親友同士である、ということを知ったのは、やはりオーストリアに移り住んでからのことです。

それはそうと、プリンセス…そんなヒルシュの看板畑3つを全て――GV ラム 08、リースリング ハイリゲンシュタイン 03&ガイスベアク, 04, 07, 09――しかもバックヴィンテージとともにコース・ディナーを楽しもう、というメチャクチャ贅沢な企画を14日(木)夜7時から渋谷シノワで行います(ディナー&ワイン込1.5万円)。

まだお席に余裕があるようですので、インヴィテーション代わりにハネスが絶景テイスティング・ルームの前でハイリゲンシュタインとガイスベアクについて語っているビデオをお届けします。因みにこの日気温は-20℃に達していました…ブルルルル
ご興味のある方、即シノワ渋谷店 tel 03-5457-2412まで連絡してみて下さい。
こんな機会、なかなかありませんよ!

2013年3月4日月曜日

ピットナウアー訪問記 エピローグ ゲアハルトの見出したテロワール

先月27日の晩から発症したインフルエンザもようやく平熱に落ち着き、後は咳と気管支炎が収まってくれるのを待つのみ。…怒涛のイベントラッシュにはギリギリセーフとなりますように。

さて、永らく間を置いてしまいましたが、ピットナウアーの最終回です。
実は今回の訪問の重要な目的のひとつが、ピットナウアーの単一畑ものの個性を見極めることでした。…大抵の場合、畑の力はヒトからより畑自体から伝わる割合が大きい。百聞は一見に如かず、の場合が多いのです。けれどこのヒトに限り、ちょっと違いました。
小樽の向こうには空気圧プレスと小ロットのステンレス発酵タンク
12.2%しかないローゼンベアクのStラウレント 2010を味わいながら、ゲアハルトは言います。「これこそ僕のメッセージだ。Stラウレントは決して過熟にしたり、ジャミーになったりしてはいけないんだと。また、2000年に植えたこの畑が、2006年の有機転換1年目に、とても素晴らしいワインになったので、その翌年から、まだ樹齢が若いにもかかわらず、単一畑ものとして売り出すことにした経緯も話してくれました。
熟成する小樽にも細かく区画と処置が書き込んであります
ずらりと並んだ小樽…ですが現在は中樽比率が急激増加中
今セラーを建て直すなら、大樽とコンクリート
の発酵桶をもっと増やしたい、とゲアハルト
そしてStラウレント アルテ・レーベン 08を味わいながら、こんな話を聞かせてくれました。

彼は18歳のとき父親を亡くし、若くしてワイナリーを継ぎます。当初母親と姉とともに仕事をしていましたが、8年後に独立。その時点で4haに満たない畑、ワイナリー周辺の平地の畑しか持っていなかったそうです。その中にアルテ・レーベンの区画も含まれます。

お父さんがゲアハルトの生まれた年に記念に植えたブドウがこのアルテ・レーベン。今丁度48歳です。彼が独立した当時、この辺りではブドウは20年くらいで抜くのが習わしだったそう。収量は落ちるし、ウィルスにやられるものも多かったし、というのが理由。けれど植え替えるには、苗木はもちろん、垣根を新しくし、ワイヤーを張り替えるのが普通。お金がかかります。
また彼は、収量が劇的に減る半面、ブドウの質は少しずつ向上することもちゃんと観察していました。結局ゲアハルトはその区画を残すことを決心。細心の手間と手入れでワインを造り続けました。そしてそのワインによって「僕はプレミアムワイン生産者の仲間入りをすることができた」と述懐します。
!!! 
2つのStラウレントをエビソード付きで味わい、プリンセスようやくわかりました!
やっぱりゲアハルトはプリンセスに意図的にゴルスより西側の、川の運んだ小石と海の底由来の石灰土壌の、風の強い頂上台地の畑を見せてくれたのです!
大切に大切に育ててきた平地の古木が醸し出す、ある種フラワリーで少し青い植物的な香り――ビオディナミ農法に見事に反応し、若くしてその持ち味を表現したローゼンベアク畑に、ゲアハルトは“テロワール”を発見したのです。

誰にでもわかる銘醸サイト、或いは土壌からテロワールを表現したワインを造ることは、簡単とは言いませんが、そういう畑を所有する生産者のある種義務だとプリンセスは思います。
けれど、こうした一見地味な立地の、しかも平地の畑だけからスタートし、4半世紀の時間と労力をかけて見つけた、かけがえのない"テロワール"というものは、もしかしたら予め与えられた銘醸畑より、貴重なものかも知れません。。こうした畑やワインは、それが派手に目立つ訳ではないからこそ、我々ワインのプロを自称する人間や、心のこもったワイン愛好家がしっかり見出し、応援して行きたい、とプリンセスは思うのです。
木製開放発酵&熟成桶がない訳を問うと「高いから」と明快
そんな訳で、ピットナウアーはベーシックはロゼとキュベ。ミドルクラスはピノ。クラスを上げるなら、彼の神髄とテロワールを味わうのなら、Stラウレント、に決まり!!!

※尚ピットナウアーのワインは、3月11日の日本グランドチャンパーニュでの業界向け試飲会@名古屋、そして4月7日に予定しているサンパ@荻窪の愛好家向けワインディナーにお目見えの予定です。

2013年3月2日土曜日

プリンセス絶体絶命…神様、どうかお助けを!

帰国当日は哀れなスタバ難民。
翌日はブログでもお知らせした通り、インポーターVortexさんの春の試飲会に参上したプリンセス。(その嬉しいご報告はまた別の機会に:)

試飲会の後、PC買い換え調査のため、友人を伴ってアキバへ。…この辺りからです。妙に体がダルくなり、咳やくしゃみが出るようになり…PCなんかどうでもよくなり、そそくさと家路につきました。そして夕食を摂りますが、ますます節々やら腰が痛くなってきます。

着いた日から気管支の辺りがイガイガ痒かったのですが、「花粉だろう」と思っていました。オーストリアを発つ前は、とにかくあらゆることが集中して起こっており、超多忙だったので、ダルいのも当然、と思っていました。引っ越しのための荷物の総片付けをし、沢山のゴミの整理もしてきたし、重いトランクをズリズリ運んで来たので、筋肉痛も当たり前、…と意にも介しませんでした。

ところがその晩、咳は酷い、ただものではない頭痛と節々の痛み…で、プリンセス、ほとんど寝たのだか寝なかったのだか、という時を過ごし、翌朝体温を測ると、起き抜けで8度7分…
母親に「さっさと病院へ行っていらっしゃい」と言われるも、あまりに辛くて体が動かせないような有様…。そして昼にはついに体温が9度を突破…
このままでは、今後のスケジュールに差し障るだろう、ということで、痛み軋む身体にムチ打って、近所の病院へ。

なんと…インフルエンザ…しかも今年日本ではほとんど見れらないB型…ということで、ほぼ間違いなくオーストリアからの有難くもないお土産であることが判明。
その場でタミフル5日分に相当するとかいう点滴を打ってもらい、自宅に戻って来ました。
にもかかわらず、翌日もまだ8度前後熱があり、「背に腹は代えられぬ」と、再び点滴。
今日になって、ようやく7度前後まで体温は下がりました。でも咳と喉の痛みは一向に治まりません。いやあ、参った…

お城当主ミッヒは4日に来日。その日から様々なイベントが怒涛の如く組まれています。
けれど、27日夜の発症とすれば、4日までは自宅待機が望ましい…。

うーん、どうするんだプリンセス??
しかもこのインフルエンザ騒動…コトは意外な展開を見せます…

2013年2月27日水曜日

ただいまー! の途端にスタバ難民…iPhone依存もほどほどに

日本の皆さん、ただいま~! 昨日戻って参りました。

貧乏暇なしを絵に描いたようなスケジュールのプリンセスは、自宅に戻って早速午後3時から打ち合わせの予定が入っていました。それなのに朝9時過ぎに東京へ入るリムジンバスが渋滞。

しかも、日本で使うiPhone用のSIMの手配をオーストリアでしておくのを失念…いや、失念ではなく、前回慌てて手配したSIMが、1GB定額制で、1GBなんてすーぐなくなってしまうし、速度はノロイし、と散々な目にあったので、今度はちゃんと自分の使用形態に適ったプランをゆっくり時間をかけて選ぼう、と決心。帰国した日に落ち着いて手配しよう、と決めていたのでした。
ところが日本通信のヘルプデスクへの電話はなかなかつながらないし…、やっとつながればSIMの種類を選ばないと電話がつながらない仕組みだし(数か月も前に購入したSIMの種類にまでプリンセスの乏しい脳メモリは回りません…)、飛行機の中では寝られないため、昼までとにかく身体をちゃんと横たえて仮眠を取るのがいつものパターンなのに、渋滞のため自宅に着くと11時近いし…。
ああ、いつもの暗雲が立ち込めて来ました…?

H氏との打ち合わせの場所は東京駅近くのスタバ。ちゃんと場所のリンクを張ったメールをいただいていたので、それを開きながら、アタフタと自宅を出ます。
出がけに「3時からで大丈夫でしょうか?」と確認のスカイプ・チャット。
P: はい、大丈夫です。
H: 場所は東京駅の新幹線の…
同時に私が帰宅してスカイプにサイン・インしたことを察知してか、色々チャットやらコールやらが飛び込みます。
悪いけど今それに応答している暇はありません。シカトを決め込み、バス停へ。
プリンセスの東京のウサギ小屋から東京駅は、電車でもバスでもdoor to doorで30分かかりません。いただいた地図では永代通り沿いのようだったので、バスを選択。…ところが、バスがなかなか来ません(学習しろ! って。空港からの帰り道は渋滞だったろうに、とデヴィルが私をせせら笑います)。

東京駅に降り立った時点で5分近く遅刻。
P: さて、どのスタバだったっけ? 
…とiPhoneを見るも…Wifiがないので、メールのリンクが開けないばかりか、さっきもらったスカイプのチャット内容にもアクセス不能…
ええ? どのスタバだったんだぁ???

iPhoneにすべて入っているから、とプリンセス、店名をメモるどころか、しっかり見てもいませんでした…。うーん、困った…と唸りながらOASOなど永代通りに近いめぼしいビルのテナントのスタバを探しますが…
…ない。見つかりません。

そのうちなんとなく店名に「新」がついていたような気がし、新丸ビルへ。スタバ店内を覗くもH氏の姿はなし。
P: この辺りにスタバはここだけでしょうか?
店員:ああ、隣の丸ビルにもありますよ。
プリンセス、家を出る直前にチラリと覗き見た地図とは逆方向に向かっているのは知りつつ、藁をもすがる気持ちで丸ビルのスタバへ。
…もちろんここにもH氏の姿はありません。

どこかで電話を掛けたいのですが、なにせ私のiPhoneはWifiがなければ通じない状況です…。
ウロウロしながら公衆電話を探すも、昨今公衆電話は壊滅的に減っており、歩けども歩けども見つかりませんマジで通りすがりの兄ちゃんの携帯を強奪したろか、とも思いました…

ようやく公衆電話が見つかった時点で、時間は既に3時半を回っていました。

H氏大変申し訳ありません…。

そして帰国早々、打ち合わせは6時半過ぎまで続きましたとさ。
はい、皆さんご一緒に とっほほのほぉ~

2013年2月25日月曜日

プリンセス退位の辞

読者の皆さん、
今日は”ピットナウアー訪問記 その5”をお送りする予定でしたが、重大発表がありますので、お知らせします。
私、本日をもって、プリンセスを退位することとなりました! 
はい、お城を出て独り立ちします。
全員集合…2年近くにわたって、本当にお世話になりました。
お城で過ごしたこの2年間、色々なことがありました。
予期しなかった出会いや驚きに満ちた日々でした。
オーストリアを代表する生産者達を訪ね、畑を見せてもらい、対話をし…それが日常になる、という夢の中を、生き続けています。50歳を過ぎてこんなに刺激に満ちた生活を送っていることを、本当に奇遇だと、そして幸せだと思います。

もちろん、元々計画した訳でも、食い扶持の宛てがある訳でもないままの移住だったが故に、いいことばかりではありませんでした。トラブルは当たり前。なんとか見えた希望が、目の前で崩れ去るような事件も数知れず…。
プリンセスのため?に日曜の昼は当主ミッヒのお手製
そして旅立ちの朝、ゴーベルスブルクは雪景色。
ここ数週間、あまりに忙しくて感傷的になっている暇もなかったのですが、さすがに今になって何か胸に迫るものがあります。

震災と原発事故の影響を心配し、「こっちへおいで」と声をかけてくれた数多くのワイナリーや業界の友人、中でも「いつまでも好きなだけいてもいいから」と言ってくれ、本当に今日まで足かけ2年近い日々を家族として私を遇してくれた”お城ワイナリー”ことシュロス・ゴーベルスブルクの当主ミッヒ&エファ・モースブルッガー夫妻、子供たちヨハネス、アナ、ルイーゼ、そしてエファの両親のペーターとイルゼ、ワイナリーのカーナーさんとエレーナ、オフィスのヴォルフガング、フレディ、エヴェリン、ビアギット、バーバラ、ウェアハウスのユルゲン、畑のクリスティーネ、使用人のアナ、エラちゃん、ヘアマン、ミンキー…ああ、きりがない…に対し、心から感謝の気持ちを捧げたいと思います。Vielen Dank!!
そしてテーブルの下にはエラちゃん:)
”ヴィンツァー達の頭の中が覗きたい、心の襞に寄り添いたい、と願いつつ決行したオーストリア住まい…。数ミリでも目標に近づいたのでしょうか? …いいえ、まだ何もできていないような気がします。
だから私は、お城を出てもこの旅を続けることを決心しました。ただ、この”お城ワイナリー滞在記”は、当然今日でお仕舞です。

…ああ、でもこのプリンセスの肩書き…手放すには惜し過ぎます。そこで、今日からは”キャラ”として、プリンセスを演じ続けることをお許し下さい。

そしてこのブログも、3月半ばをメドに、更にパワーアップして新装お目見えする予定です。

それまで引き続きこの滞在記を御贔屓に!
それでは皆さん、日本でお目にかかりましょう。

2013年2月22日金曜日

ピットナウアー訪問記 その3 スルスルっと入って、もう一杯!

ワイナリーは10~15年前に建設ラッシュだった、所謂超モダンな造り。ピットナウアーの場合、ガラスを多用したサンルームのように明るく見晴のいいテイスティング・ルームは、白と蛍光黄緑の壁にポップなエティケットがとてもしっくり溶け込んで、ウキウキするような心地よい気で満たされています。

さあ、テイスティング。はプリンセスのトキメキ度です。

最初に出て来たのはプリンセスも知らなかったロゼの2012 ♥♥♥
綺麗な淡いサーモンピンク。軽やかなオレンジやローズ・ウォーターの香り。フレッシュな酸にやさしい辛口。スキっと軽快な余韻。いや、これ、こういう晴れた日の戸外やブランチには堪えられない爽快さ! ラベルは可愛いし、セラードアで€7という価格も可愛いし、いきなりの「買い!」
実はこのロゼ、どうしても収量過多になりがちな買ブドウのセニエ果汁で造ったという、今シーズンのニューフェース。造りの上手さが光ります。
次はPitti ピッティ 2011 
格下や樹齢の若い畑のツヴァイゲルトとブラウフレンキッシュのブレンドです。10年より熟度が高く、甘やかな果実味。酸はおだやかで余韻は中-。タンニンもやわらかで障るところがなく、全体として実にいいバランス。世界的不況を受けての市場の変化に対応するため2年前に投入した"bread & butter wine"とゲアハルトは説明していましたが、十分ワイン好きも納得させられる育ちの良さのようなものを感じます。

そしてZweigeltツヴァイゲルト 2011 
ややナマナマしい、青さを感じるノーズの後にこの品種特有のダークチェリーの香り。酸はピッティよりしっかり。多少ペパリーな風味で、中位のストラクチャーと余韻。過熟を避けて少し収穫ポイントを前に持って来た印象。聞けば、暑い年の畑の扱いや高いアルコールと高いphの果汁の扱いに、ここ数年で遥かに習熟した、とのこと。

ゲアハルト曰く「ツヴァイゲルトは若いうち楽しむワインを造るのに向いているし、収量を押さえれば“パノービレ”のブレンド・パートナーとして柔かさやジューシーさに寄与するけれど、単体では多少ストラクチャーが緩く、熟成能力もStラウレントやピノ、ブラウフレンキッシュには及ばないと僕は思う。」とのこと。プリンセスも全面賛成。特にリリース直後は下手なブラウフレンキッシュより、よほどチャーミングで好ましく思えるワインが多いのですが、10年以上熟成したツヴァイゲルトに感動したことはこれまで皆無と言っていいかも知れません。

Pinot Noir Dorflagen ドーフラーゲン2011 
よく熟した、多少ジャミーな印象。プリンセス的には酸はやや物足りないけれど、モタモタしたところや暑苦しさは全くなく、それでいて余韻は結構長い。市場ウケはいいかも。

Pinot Noir Dorflagen ドーフラーゲン2009 
ノーズに少し色気のあるチェリー・コンフィ。より締まったストラクチャー。余韻は中+程度だけれど、とってもいい熟成香が出始めていて魅力的。ゲアアルトは「ブルゴーニュともニューワールドとも異なる、ドイツ、スイス、オーストリア、アルト=アディジェあたりも含んだのドイツ語圏ならではのピノの個性を感じてもらえれば」と表現。確かに、ブルゴーニュほど官能的でもなく、ニューワールドほどグラマラスでもなく…。ドイツ語圏云々はさておき、ワインがスルっと喉に入り込むサラサラしたテクスチャーは、いかにもいい意味で砂地のピノだと感じました。
St Laurent Dorflagen 2011 (2月末にボトリング予定) 
ピノと正反対のフレッシュで涼しげなスミレや桜餅の葉を思わせるノーズ。ピノよりフレッシュな酸、締まったストラクチャー、中+の余韻。ゲアハルト曰く、Stラウレントのこの涼しげで植物的なニュアンスは、ビオディナミを採用してから感じられるようになった、とのこと。

St Laurent Dorflagen 2012 ♥♥ (当然また樽の中のベイビーちゃん)
少しゲイミーで還元的ノーズ。11より更にフレッシュな酸。果実味はより生き生きし、ブライト。余韻も長め。11から12の味わいの変化は、意図して狙ったところで、クラッシュに用いる樹脂パットの間隔を少し広げ、3割程度をホールベリーで残し、そのため結果的に一部カーボニック・マセレーション状態になっていることが原因なのだそう。

Pinot Noir Baumgarten 2010
埃っぽい、多少官能的ノーズ。うーん、10年は涼しい年のはずなのに、酸が物足りない…。結果軽やかさに乏しく、ストラクチャーも多少緩い。やはりこの辺りはピノの最適地とは言えないのかなぁ…。味わいに凹凸とかストーリーがあまり感じられません。

St Laurent Rosenberg 2010 ♥♥
深い、やや沈んだヴァイオレット、ダークチェリーのノーズ。しっかりとした酸。風味が固めだけれど、贅肉を削ぎ落としたプリンセス好みのSt Laurentの味わい。余韻も長い。
涼しく日照の少なかったこの年のアルコール分はなんと12.2%。複雑さや余韻の長さ(=ワインの美質)に高いアルコールは必要ないことのよい見本。

St Laurent Alte Reben 2010 ♥♥♥
Resenbergより更に深みがありながら生命力溢れる上質でフレッシュなローズウォーターのノーズ。更に植物的。酸は高めながらよりしなやか。非常に柔かい、ほとんど存在を感じさせないタンニン。静かな凝縮感。とても長い余韻。素晴らしい!

St Laurent Alte Reben 2009 ♥♥
ノーズはより野趣に富む。10よりマッシヴでストラクチャーに富む。暖かく長い余韻。プリンセス的には10の方が好みではあるけれど、これも素晴らしいワイン。

St Laurent Alte Reben 2008 
より慎み深いスミレの香り。09よりアーシー。空気に触れてじわじわ味が出る感じ。長い余韻。09より強い新樽の焦げ香。

Blaufränkisch Rosenberg 2007 
ブラウフレンキッシュらしい高い酸、豊かなタンニン、アルコールも過不足なく、余韻も長い。けれど、いかにもこのヒトらしいサラサラとエレガントなブラウフレンキッシュ。

そしていつものごとく、電車の時間が近づいたので、試せなかったBlaufränkisch UngaerbergとSt Laurent Altenbergを持ち帰り、これは帰国後にラッキーな皆さんと分かち合いたいと思っています。
初回訪問時もそうでしたが、何よりピットナウアーのワインでプリンセスが好ましいと思うのは、タンニンの柔かさ&質の良さ。ベーシックなピッティからアルテレーベンまで、勿論量や複雑さは異なるのですが、絶対障るようなことのない、絶妙にコントロールされたタンニンです。さらに熟度も凝縮感もあるのに出過ぎない楚々とした果実味サラっと喉に流れ込むテクスチャー。…こうした全てが相まって、これだけ赤ばかり飲み続けても全く飲み疲れない、クラスを問わず「もうひと口、もう一杯」と杯の進むワインとなっています。

ところで、傑出したワインは傑出したテロワールと確固としたイマジネーション、そしてそのイマジネーションを実現するための技量によって造られます。3つの要素は、どれひとつとして欠けてはいけませんが、実はそれぞれの占めるバランスはワイナリーそれぞれです。

そしてピットナウアーの場合、畑の傑出度よりは、畑仕事とセラーワークを日々誠実に積み重ねた結果としての、揺るぎないイメージング能力と全ての作業工程における過不足のない絶妙なサジ加減――そちらの占める割合がずっと大きい。ゲアハルトのヴィンツァーとしての誠実さと力量の高さこそ、このワイナリーの強みと魅力だと、プリンセスは改めて確認したのでありました。