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2012年9月5日水曜日

ヒルシュさんちでチャリティー・コンサート

一昨日9月3日の夜、昨年のファルスタッフ”ワイナリー・オヴ・ザ・イヤー”に輝いたヨハネス・ヒルシュのワイナリーで、クリーヴランド響のコンサート・マスターや首席ヴァイオリン奏者等による、超豪華だけれども実にアットホームなチャリティー・コンサートが行われました。
http://www.weingut-hirsch.at/show_content.php?sid=77

集められた寄金は、ペーター・シャハナー博士(写真中央)による、東南アジア諸国におけるミツクチの子供たちの手術資金に充てられます。
この€14000で、200人の子供たちの手術ができるそうです。

GV TrinkvergnügenやGV Heiligensteinを飲みながら開始を待ちます。
背後に見えるのは、ご存じハイリゲンシュタイン。
演奏の前にヒルシュのマグナムボトルが2本、オーストリアの人気スポーツキャスターの手でオークションにかけられました。
会を主催するのはハネスと奥さんのサンドラ
最初のワインは確か€400で落とされました。
2本目はどんどん競りあがって€1200に。
さて、コンサート。
まずはコンサートマスター、William Preucil氏とAlexsandra Preucil(奥さん? 娘さん?)によるバルトークのヴァイオリン・デュオ(44 Duos für 2Violines, Sz.98より8曲)。実はプリンセス、好きな作曲家の名前を問われたら、バッハがダントツ1番ですが、バルトークも間違いなく5本の指に入ります。でも、ヴァイオリンのデュオを生で聴くのは初めてかも。ルーテニア、ハンガリアン、スロヴァック、ルーマニアン、と様々な民謡が、彼独自の現代的解釈で再構築された、ご存じバルトーク音楽の精髄を、短い時間ながら堪能。
次はシューベルトの三重奏 B-Dur, D.471。最後がヒルシュとクリーヴランド響のつなぎ役となったとみられる、オーストリア生まれ、アメリカ育ちのクラリネット奏者オーエン・コトラーを迎えての、モーツアルトの5重奏 A-Dur , K.581。
そしてアンコールにベニー・グッドマンのためにAlan Shulman?とか言う、ヨーロッパから米への亡命ユダヤ人作曲家の書いたというクラリネット5重奏。聴いたこともない曲でしたが、これが、ジャズのイディオムを巧みに取り入れたり、ちょっとバルトークのコントラスツを彷彿とさせる部分もあったりで、クラリネットが水を得た魚のように洒脱に響きわたり、素晴らしかった!

さすが米の演奏者、…ってほど単純な問題ではないんでしょうけれど、やっぱりシューベルトやモーツアルトよりずっと音楽が「自分のもの」に聞こえたのはプリンセスだけでしょうか? プリンセス、音楽にもテロワールがある、というか、テロワール(=文化・風俗も含む風土)を感じさせてくれる音楽や演奏が好きなんですね。

実はこのチャリティー、前日近隣のグラーフェネッグでコンサートを行ったクリーヴランド響に属さない演奏者が二人も入っており、しかもレンタルしたチェロは3億円相当の楽器、とか。彼らの旅費やら楽器レンタル料が入場料に含まれるならチャリティーとしてフェアではない、とか、なんとかかんとか、田舎のことで、周囲では色々雑音も聞かれていたのですが、実際に素晴らしい音楽をこんなに身近にリラックスして聴ける貴重な機会を与えてくれ、経緯はどうあれ、€14000の寄付金を作り出した主催者のヒルシュ夫妻と、協力した演奏家、食材を提供した地場の生産者達、ボランティアでワイン&おつまみのサービスを担った親友クノル夫妻をはじめとする友人達の尽力を讃えたいと思います!

ところで、面白かったのは、クラシック音楽の本場オーストリアで、しかもこうしたイベントに集まる人々というのは、当然クラシックに明るい人ばかりだと思っていたのですが、さに非ず。楽章の変わるたびに拍手は起こってしまうは、4楽章が終わると「ブラボー」を叫ぶヒトやら…。でも、それがヒルシュのワイナリーの倉庫の、日暮れのハイリゲンシュタインが演奏者の背後に望めるような状況だと、何故か微笑ましい光景に映ります。東京のホールだったら、正統派クラシックファンの刺すような視線を集めるんでしょうけれど : )

微笑ましい話題をもうひとつ。
コンサート終了後、テイスティング・ルームではヒルシュの2011エアステ・ラーゲのワインが供され、ボイルしたソーセージやこの辺りのグルメに知らぬヒトのいないベチェットさんちの素晴らしく美味しいチーズが並べられています。
ワインも入りちょっと一杯機嫌になっていると、子育てが終わったらディプロマの勉強をして、もっとお城ワインのプロモーションを助けたい、と常々言っているエファが、私とミッヒに「どうしよう、リースリングかグリューナーかもわからない、私…」とため息をつきます。
するとミッヒが「我々ワインメーカーだって、ブラインドで出されたら、自分のワインはともかく、品種なんかみんな簡単に外すよ。熟成の容器だったり、畑の違いはわかってもね」と言うのです。

ね、そんな訳ですから、ワインを勉強中の皆さん、くれぐれも品種当てにあまり精を出されませぬよう。
美味しいワイン、美味しい肴で夜はふけて行きます。
※このブログを書いている最中にハネスから最終寄付金は€16000に上ったとメールがありました。

2012年8月31日金曜日

トーマス・ハンプソン リートコンサート@グラーフェネック

今年は収穫が早めで、ブルゲンラントからはどんどん収穫を始めたというニュースが入っていますが、プリンセスの住むドナウ一帯では今、着々と収穫の準備をしつつ、去りゆく夏を楽しみ尽くすイベントが目白押し。

29日にはプリンセス、シェーンベアガーのディナーでのショーとは対照的に、実にお行儀の良いというか、非常に文化の香り高いイベントに行って参りました!
和気藹々と日の高いうちから、コンサート前のディナー

ニーダーエスタライヒ州の文化局長パウル
によるお施設と音楽祭についての説明。
白いテーブルが緑に映えます。
トニによるテーブルセッティングは本当に上品

車でゴベルスブルクからほんの15分ほどのグラーフェネック城は、お城の敷地内にコンサートホールや屋外オーディトリアム、レストラン(メーヴァルト)などを擁する、ニーダーエステライヒの誇る一大カルチャー拠点です。
エファとドルリ・ムア。彼女のワインもこの秋から日本にお目見え。
メーヴァルト夫人の手にするのは
リースリング トラディション2010 マグナム

そこで行われる様々なイベントにお城ワイナリーが協賛している関係で、リンツの歌劇場などの創立者らに交じって、お城ワイナリー関係者がコンサートとディナーに招待されました。4席分のご招待、ということで当主夫妻に混ざって私とムア=ファン・デア・ニーポートのドルリもご一緒させていただいた、という訳。



クルミの入ったソースがとても美味しかった蒸豚
何気にデザートは2種(右上と手前)出るのが
スイーツの国オーストリアの基本!
トニの料理(初夏に日本からお城を訪れてくれた皆さん! お昼にコック服を着て腕を振るってくれていて、プリンセスを驚かせたのはこのヒトですよ~!)は相変わらず洗練されていて、とても美味しい。そこで供出されたのは我々が持ち込んだ2010 Riesling Tradition とPinot Noirの両者マグナム。

さて、昨晩のプロはピアノ伴奏だけのリート・コンサート、というプリンセス好みの地味な趣向。しかも前半は大好きなサミュエル・バーバー。日本ではバカのひとつ覚えのように“弦楽のためのアダージョ”ばかり聞かされるような気がしますが、プリンセスがこちらに来て最初に行ったムジークフェラインのコンサートもバーバーのオルガンをフィーチャーした交響曲だったし、こういう洒脱なリートも書いているし、実はとても多彩な作曲家なんですね。

ハンプソンの歌を生で聴くのは初めてですが、前半はむしろ、歌のちょっとユーモラスだったり皮肉な表情に自在に寄り添うピアノのヴォルフラム・リーガーが光っていました。さすがは故フィッシャー・ディスカウら偉大な歌い手の伴奏をしてきたキャリアを持つ人です。
けれど後半のシューマンとなると、やはりドイツリートは十八番なのでしょうか。ハンプソンがどんどん乗ってくるのがわかります。
アンコールになるとさらに声に艶が乗って、観客も大喜び。既に一部の観客が席を立ち始める中「オーストリア人らしくマーラーを歌います」と言って…、済みません、プリンセス曲名までわかりませんが…本当に伸びやかな声を聴かせてくれました。
はい、もちろんスタンディング・オベーションです。
そして、コンサート前にたっぷり飲み食いしているにもかかわらず、コンサート後には、更にトニ・メーヴァルトのレストランで、シュペックとチーズ・アソートを肴に、お城ワイナリーのメルロやシュロスハルプトゥルンのピノ・ノワールを楽しみながら、夏の終わりの夜はふけるのでありました。
いやぁ、それにしてもこっちのヒトって体力ありますよね。

今日もフォントがご病気で済みません。シェーンベアガーの〆も忘れてません。週末に落とし前つけますので、お楽しみに。

2012年8月28日火曜日

シェーンベアガー創立20周年記念イベント その3 ディナー@Andrea Casarda

のっけからイキナリ物凄い写真で恐縮です : )
そうなんです、そういうディナーだったんですよ…って、いえいえ(…と、書きながらも狼狽するプリンセス)…

最初は粛々と始まりました。ギュンターの挨拶、ビュッフェスタイルの前菜とワイン…。
ノイジードラーゼー名物葦で葺いた屋根が牧歌的なレストランで行われました。
南(=左側)にあと数百メートルでハンガリー

右奥のアヒルのフォアグラに左手間のフルーツソースが美味

ギュンターを支えてきた家族達。イベント中も大忙し。
前菜もそろそろ食べ終わろうか、という頃、家族紹介があり、しつらえられた小さなステージで寸劇というか、クラシック軽音楽のようなピアノ伴奏で夫婦を演じる男女が歌います。Kabarettとでも言うんでしょうか?

実はプリンセス、ステージにエレピが置いてあるのを最初から見逃しませんでした。ひょっとして、20年プロのサックス奏者だったギュンターの演奏が聴けるのでは? …という期待が高まります。
…でも、3人の歌う音楽は、ゼーンゼン趣が違うし、第一、クラシック音楽の本場オーストリアとしてはちょっといただけないハモり具合。音楽プロパーのプロとしては悪いけれど失格!

…残念ながらプリンセスには歌詞が一部しか理解できないのですが、ときどき笑いをとっています。そして模様眺めをしていると、どんどん様子が際どくなって行きます。喘ぐ、腰を振る、…もうプリンセスにも言葉は必要ありません : )。


この叔父さんの歌はなかなか味がありました
船の上では「あれだけよく飲んでいるにしては実にお上品」と感心していたゲスト達ですが、考えてみればもうこの時点で6時間余り、途中1時間ほどの休憩をおいて飲みっぱなし。そろそろ理性が麻痺状態に突入しているのか、舞台がお下劣になればなるほどドッと大きく客席も沸く。


ハイネやゲーテの詩が替え歌になっていたり、政治ネタもあったりと、意外に文化度高し。
そして休憩を挟んで、メインはシェーンベアガーのシンボルであるアヒル。当然ブラウフレンキッシュがすすみます。因みにプリンセスがこの辺りでどのくらい酔っ払っていたかというと、同席したアイゼンシュタットから来たグループと堂々流暢な : ) ドイツ語で会話を楽しめるくらい (=危険信号)!

ブドウの実の沢山入ったシュトゥルードゥル

メインがサーヴされると、さっきまでビュッフェの料理が並べられていたテーブルに、今度はシェーンベアガーのオールドヴィンテージやら、ディナー開始後にポツポツと集まってきた親交の深い生産者のワインが並びます。こちらは最初はセルフサービスでした。

まずピノ・ノワール97を飲んでいると、エルマーに「そんな小さなグラスで飲んでちゃダメだ。バーカウンターで大きいのをもらっておいで」と言われ、その通りにすると、しっかりワインをたっぷり注ぎ直されます。長男ヤーコブも大分ワインが回ってきているのか、「君はこれも飲まなくちゃ」「次はこれ」と、プリンセスに選ぶ余地も与えず、その大きなグラスに次々にナミナミとワインを注いでくれます。

そんな訳で、もうただの酔っ払いに成り下がっていたプリンセスではありますが、ちゃんとここに来た問題意識だけは持ち続けていました。
ブラウフレンキッシュ レームグルーベ 97は、熟成して確かに円やかにはなっていますが、取材時に「せっかくのいい果実味を殺している」と思った重いタンニンは健在です。「赤はやっぱり最近の方がいい」と再確認。

一方で白は2000年のグリューナーが美味しいのにビックリ! 実はプリンセス、新樽のタップリかかったグリューナーにも殆ど興味がありませんでした。というより、むしろアンチと言ってよかったでしょう。ところがこのGVは、12年を経た今でも、新樽の痕跡はしっかりありますが、それが見事に果実味&ミネラルに溶け込み、磨き込まれた本当に素晴らしいワインになっています。
「こんなに樽がかかっているのに、こんなに美味しいってどういうこと?」…と、プリンセス、酔いの回った頭でぼんやりと考えていました。そしてまた、このグリューナーが「あるワインに似ている」と、「それが何だったか」と、やはりピンク色に染まった脳みそで幸せな思考を巡らせていました。

---とその時、プリンセスは思わぬヒトと出くわします。ヒント:そのヒトは実はこれまでの写真に登場しています。
…to be continued

シェーンベアガー創立20周年記念イベント その2@ノイジードラーゼー テイスティング・クルーズ

シェーンベアガー創立20周年イベントの第一部は、テイスティング・クルーズ。
2時間あまりかけて、ノイジードラーゼーをゆっくり一周します。
この船に乗り込んで2時間余りのクルーズ
波止場を後にしたところ
その間、一家の庭や畑で獲れたフルーツやナッツ、骨付き足1本のハムにパン、そして勿論ワイン、ビールが飲み放題! しかもワインはカレント・ヴィンテージ全種(20種近い)を、何杯でもお代わり可。


家族4人でサービスに大忙し。
語りはご挨拶のみ。ワインについての細かい説明などは一切なし。

何せ周囲は家族、仲間同士かカップル。単独参加のプリンセスは最初ちょっと寂しい思いをしましたが、天気はいいし、ワインは美味しいし、私をバス停まで迎えに来てくれた、ギュンターの親友エルマーと、彼が何度も仕事で訪れた池袋の話で盛り上がり…本当に気持ちのいい時間を過ごしました。
メアビッシュ名物の肉粒を練りこんだパン。
畑のブドウ、洋ナシ、奥がマンデル
マンデル=アーモンドの生。食べたことありますか?
こうして殻と皮を剥いて食べます。上質の杏仁豆
腐やマジパンが持つ、魅惑的な香りが口中に。
ただ、ひとつだけ困ったことが…。
業界向けイベントと異なり、ここには吐器がありません。皆どんどん豪快にお気に入りのワインを楽しそうに空けて行く中、予備のグラスをひとつもらってペッペと吐き出す、などという不調法は憚られます。
プリンセス、それでも当然全種試したい訳ですが、いくら「ほんの少し」と言っても、普通のテイスティング量の2倍以上は注がれますから、全種制覇してしまったら、ディナーの前に立てなくなることは必須。そこで、白はスタンダードなキュヴェと、取材時に良かったブルゴーニュ系に狙いを定め、赤のプレミアム・クラスはディナーでのお楽しみとし、クラシッククラスからを試すことにしました。この作戦、実はディナーに現行ヴィンテージはクラシック・クラスしか出されず、裏目に出ることにります。
シュタイヤーマーク産ハムに西洋ワサビを
たっぷり添えて。実に美味。
最初は自動的に注がれたグリューナー。面白いことにこの辺りのGVは全然スパイシーでもペパリーでもない。個性がなくてつまらないとも言えますが、こういう暑い日、戸外で冷やしたのを出されると、思わずゴクっと一息に飲んでしまいます。美味しい!
ピノ・ブランは前回の取材同様、ミネラルがキリっとしていながらカリカリ硬いところは全くなく、「ああライタベアクの味だな」と、プリーラーあたりとの共通点を感じていました。とても魅力的です。シャルドネも、ピノ・ブランより一歩ブライトで、一歩ストラクチャーも大きく、オーストリアならではのシャルドネに仕上がっていました。これもなかなかいい。

赤に移って、ハムを食べながらブルゲンラント・ロートのツヴァイゲルトからブラウフレンキッシュ、ブラウフレンキッシュ クラシーク、ブラウフレンキッシュ クレーフテン、と試して行きました。普通一番ベーシックな赤は、ツヴァイゲルトの方が飲めたりする場合が多いのですが、ここのベーシック・クラスのブルゲンラント・ロート ブラウフレンキッシュは、攻撃的なところの一切ない、なかなか包容力のある味わい。けれどクラシックには、ブルゲンラント・ロートにはない、官能的で複雑な風味が混ざり、余韻も長い。格の差を見せつけます。

そして船を下りる直前に単一畑であるBFクレーフテンを所望。やはりVieVinumで感じた通り、果実味を覆い隠すような過剰で重いタンニンはなく、キチっとミネラル感もあるので、味わいがダレません。このワイナリーの赤は、fine tunedという感じとは正反対の、よく言えばナチュラル、悪く言えばちょっと風味に垢抜けないところがあります。全赤ワインに共通する、フィニッシュに出る蒸した小豆のようなニュアンスが、そう感じさせるのでしょう。このほかほかしたニュアンスが大好き、というヒトも結構多いはず。所謂ビオ臭と称される不快な還元香では全くありません。


帰りはキャナルを通って。周辺は公園のようになっています。
なんだかんだ言って、クルーズ中にほぼ1本くらいのワインを体に入れてしまいました : )
西に傾いた陽を浴びて、プリンセスがとっても幸せな気持ちになっていたのは言うまでもありません。
これまでも数回ルスト=イルミッツ間のクルーズを経験しているプリンセスですが、細長いノイジードル湖を東西に突っ切るだけより、メアビッシュ発着でグルリ一周の方が、沢山ワインも飲めるし、景色も多彩に変わるし、より楽しいことを発見。
三々五々船を降りる参加客。
飲み放題でも騒いだり、乱れるヒトが皆無なのは立派。
さて、明日は船を降りて町に戻り、小一時間後に始まったディナーの様子です。