昨日はシノワ銀座店を開店前にお借りし、Muhr van der Niepoortムアー・ファン・デア・ニーポート, Pittnauerピットナウアー、 Prielerプリーラーという、これから日本に是非根付いて欲しい、赤を得意とする造り手を3つ並べてテイスティング。
そうそう、これにUwe Schiefeウヴェ・シーファーと Moric=Jaginiモリッツ=ヤギーニ、Schloss Harbtrunシュロス・ハルプトゥルンあたりが加われば,日本未輸入オーストリア・トップ赤生産者そろい踏み、といった風情。
今日は18日(水)にリカーショップ愛で行われる試飲会の前哨戦として、上記3人のベーシックから中価格帯のワインを飲み較べてみましたが、実に三者三様で面白い。
ブラウフレンキッシュからまるでピノ・ノワールのような繊細さを引き出すのがM・ニーポートなら、ピノの優しさとStラウレントの野趣を陽性に謡い上げるのがピットナウアー。プリーラーは、ロゼ、ピノ・ブラン、ベーシックなブランフレンキッシュと異なる個性を、地味ながら実に良質にまとめて来ます。
さて、もし3つからひとつ日本に輸入するワイナリーを決めるとしたら???
美意識の高さを評価すればニーポートでしょう。ワイン専門PR会社の社長としての方が現地では有名なドルリ。彼女の幸運は、南アフリカから元Eben Sadieの片腕だったCraig Hawkinsをワインメーカーとして得たこと。南アに自分のワイナリーも持つクレイグですが、収穫からセラーワークの最も忙しい時期が南北半球では逆転するのを利用し、クリティカルな時期には常駐することができるのです。中核ワインであるブラウフレンキッシュ カルヌゥントゥム 08は、抜栓直後こそやや土臭く華やかさに欠けましたが、極端に柔らかな抽出にもかかわらず、時間とともにどんどん風味に深みを増して…。実はプリンセス、余ったワインを自宅に持ち帰りましたが、テイスティング中よりその晩、さらに翌日(今日)の方が果実味に複雑さと立体感が出て、今ではフラッグシップのシュピッツァーベアクを彷彿とさせる味わいになっています。ドルリのワインとしては最も廉価なSt LaurentとSyrahのCuvee”Cuvee vom Berg"ですら、そこらのベーシックな赤とは大違いの品格を漂わせているには恐れ入ります。
造りのテクニックの確かさならプリーラーです。ロゼもピノ・ブラン ゼーベアクも、ブラウフレンキッシュ ヨハネスヘーエも、どれも廉価ながらシリアスなワイン飲みにも訴える、至極真っ当で飽きの来ない味わいに仕立てるあたり、さすが。ただし、ロゼにはブレンドされたメルロに起因するボルドー系特有の金臭さが多少あり、抜群のコスパのヨハネスヘーエは、クレーム・ド・カシスのような深く甘いベリーとアーシーな複雑さ溢れるトップ・ノーズが魅力ながら、余韻に透明感がなく苦味も多少気になりました。逆に第一印象があまりに地味なピノ・ブランは、石灰とシスト両方のミネラル感が淡く透明な果実味を支え、飲み疲れることが一切ありません。ピノ・ブランって全世界的に過小評価されていますが、仄かな苦味を伴う蛋白な果実味を持つこの品種くらい、普段のお惣菜に万能で合う品種も少ないのではないか、とプリンセスは高く評価しています。
最も広い層から好かれそうなのがピットナウアー。いえいえ、決してチャラチャラした、万人におもねるような造り手ではありません。むしろ逆。有機認証を持ち、ビオディナミの手法でブドウを育てるゲアハルトのワインは、ドルリ辺りと比較すると、素朴で朴訥とした印象もあるのですが、果実味にエネルギー感があり、味わいが明るくまろやかで、しかもラベル・デザインはポップでオフ・ビート。お上品なエティケットの多いオーストリアワインとしてはかなりユニークです。特にこのヒトはピノとそのハーフであるザンクト・ラウレントがとても魅力的。プリンセス的には、ピノはどうしてもブルゴーニュと比較してしまうので、オーストリア独自のStラウレントの、ピノよりやや濃さもパワーもあり、多少野趣に富むSt.ラウレントをお勧めしたい。でも、「いや、ピノだから、よく知っている品種だから安心して飲める、というヒトも多いと思いますよ」という銀座店のマネージャーSさんの意見にも一理ありますね。両品種ともサイト・キュベであるドアフ・ラーゲンにもしっかりとした飲みでがあり、(昨日はピノしか試しませんでしが)一段階上げた単一畑のベーシックものフクセンフェルトになると、ピノには香りの深さと強さが、そしてStラウレントには風味の複雑さと重層感が加わります。
それにしても、この3人に限らず、オーストリアの赤の進歩は目覚しい。
ところで、3生産者の上級キュヴェや、カンプタール&クレムスタールからのトップ・ワイナリーの主要ワイン50アイテム強を、18日@リカーショップ愛のテイスティング会でお試しいただけます。参加を希望される方は岩城までご連絡下さい(業界対象とさせていただきます)。
ところで、インポーターのU氏がピットナウアーを気に入ってくれていたようですので、近々日本市場にお目見えするかも知れません。ご期待下さい!
※実はプリンセスのPCはまだまだ不調で、何もしていないのに一部の行が白抜けしたり、突然日本語入力が不能になったり、を繰り返しています。見苦しいですがお許し下さい&改善方法をご存知の方、教えて下さい。