日本の皆さん、ただいま~! 昨日戻って参りました。
貧乏暇なしを絵に描いたようなスケジュールのプリンセスは、自宅に戻って早速午後3時から打ち合わせの予定が入っていました。それなのに朝9時過ぎに東京へ入るリムジンバスが渋滞。
しかも、日本で使うiPhone用のSIMの手配をオーストリアでしておくのを失念…いや、失念ではなく、前回慌てて手配したSIMが、1GB定額制で、1GBなんてすーぐなくなってしまうし、速度はノロイし、と散々な目にあったので、今度はちゃんと自分の使用形態に適ったプランをゆっくり時間をかけて選ぼう、と決心。帰国した日に落ち着いて手配しよう、と決めていたのでした。
ところが日本通信のヘルプデスクへの電話はなかなかつながらないし…、やっとつながればSIMの種類を選ばないと電話がつながらない仕組みだし(数か月も前に購入したSIMの種類にまでプリンセスの乏しい脳メモリは回りません…)、飛行機の中では寝られないため、昼までとにかく身体をちゃんと横たえて仮眠を取るのがいつものパターンなのに、渋滞のため自宅に着くと11時近いし…。
ああ、いつもの暗雲が立ち込めて来ました…?
H氏との打ち合わせの場所は東京駅近くのスタバ。ちゃんと場所のリンクを張ったメールをいただいていたので、それを開きながら、アタフタと自宅を出ます。
出がけに「3時からで大丈夫でしょうか?」と確認のスカイプ・チャット。
P: はい、大丈夫です。
H: 場所は東京駅の新幹線の…
同時に私が帰宅してスカイプにサイン・インしたことを察知してか、色々チャットやらコールやらが飛び込みます。
悪いけど今それに応答している暇はありません。シカトを決め込み、バス停へ。
プリンセスの東京のウサギ小屋から東京駅は、電車でもバスでもdoor to doorで30分かかりません。いただいた地図では永代通り沿いのようだったので、バスを選択。…ところが、バスがなかなか来ません(学習しろ! って。空港からの帰り道は渋滞だったろうに、とデヴィルが私をせせら笑います)。
東京駅に降り立った時点で5分近く遅刻。
P: さて、どのスタバだったっけ?
…とiPhoneを見るも…Wifiがないので、メールのリンクが開けないばかりか、さっきもらったスカイプのチャット内容にもアクセス不能…
ええ? どのスタバだったんだぁ???
iPhoneにすべて入っているから、とプリンセス、店名をメモるどころか、しっかり見てもいませんでした…。うーん、困った…と唸りながらOASOなど永代通りに近いめぼしいビルのテナントのスタバを探しますが…
…ない。見つかりません。
そのうちなんとなく店名に「新」がついていたような気がし、新丸ビルへ。スタバ店内を覗くもH氏の姿はなし。
P: この辺りにスタバはここだけでしょうか?
店員:ああ、隣の丸ビルにもありますよ。
プリンセス、家を出る直前にチラリと覗き見た地図とは逆方向に向かっているのは知りつつ、藁をもすがる気持ちで丸ビルのスタバへ。
…もちろんここにもH氏の姿はありません。
どこかで電話を掛けたいのですが、なにせ私のiPhoneはWifiがなければ通じない状況です…。
ウロウロしながら公衆電話を探すも、昨今公衆電話は壊滅的に減っており、歩けども歩けども見つかりません。マジで通りすがりの兄ちゃんの携帯を強奪したろか、とも思いました…
ようやく公衆電話が見つかった時点で、時間は既に3時半を回っていました。
H氏大変申し訳ありません…。
そして帰国早々、打ち合わせは6時半過ぎまで続きましたとさ。
はい、皆さんご一緒に ♪とっほほのほぉ~♪
©Yukari Iwashiro オーストリアワイン好きが嵩じて、ウィーンの北西カンプタールはゴベルスブルクのお城ワイナリーに住み着いてしまったワインジャーナリストによる、お城暮らしとワインを巡る日々の記録。 All rights reserved.(不許複製・禁無断転載)
ラベル
- Grüner Veltliner (1)
- Hirsch (1)
- Kamptal (2)
- Knoll (1)
- Neusiedlersee (3)
- Pinot Noir (2)
- Pittnauer (4)
- Riesling (1)
- Schloss Gobelsburg (1)
- St Laurent、Blaufränkisch (3)
- Tokyo (2)
- イベント (9)
- オーストリアの食 (5)
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- カルチャー (11)
- ワイン (15)
- 学校 (9)
- 日常 (48)
- 旅 (1)
- 和食とワイン (2)
2013年2月27日水曜日
2013年2月25日月曜日
プリンセス退位の辞
読者の皆さん、
今日は”ピットナウアー訪問記 その5”をお送りする予定でしたが、重大発表がありますので、お知らせします。
私、本日をもって、プリンセスを退位することとなりました!
はい、お城を出て独り立ちします。
お城で過ごしたこの2年間、色々なことがありました。
予期しなかった出会いや驚きに満ちた日々でした。
オーストリアを代表する生産者達を訪ね、畑を見せてもらい、対話をし…それが日常になる、という夢の中を、生き続けています。50歳を過ぎてこんなに刺激に満ちた生活を送っていることを、本当に奇遇だと、そして幸せだと思います。
もちろん、元々計画した訳でも、食い扶持の宛てがある訳でもないままの移住だったが故に、いいことばかりではありませんでした。トラブルは当たり前。なんとか見えた希望が、目の前で崩れ去るような事件も数知れず…。
そして旅立ちの朝、ゴーベルスブルクは雪景色。
ここ数週間、あまりに忙しくて感傷的になっている暇もなかったのですが、さすがに今になって何か胸に迫るものがあります。
震災と原発事故の影響を心配し、「こっちへおいで」と声をかけてくれた数多くのワイナリーや業界の友人、中でも「いつまでも好きなだけいてもいいから」と言ってくれ、本当に今日まで足かけ2年近い日々を家族として私を遇してくれた”お城ワイナリー”ことシュロス・ゴーベルスブルクの当主ミッヒ&エファ・モースブルッガー夫妻、子供たちヨハネス、アナ、ルイーゼ、そしてエファの両親のペーターとイルゼ、ワイナリーのカーナーさんとエレーナ、オフィスのヴォルフガング、フレディ、エヴェリン、ビアギット、バーバラ、ウェアハウスのユルゲン、畑のクリスティーネ、使用人のアナ、エラちゃん、ヘアマン、ミンキー…ああ、きりがない…に対し、心から感謝の気持ちを捧げたいと思います。Vielen Dank!!
”ヴィンツァー達の頭の中が覗きたい、心の襞に寄り添いたい、と願いつつ決行したオーストリア住まい…。数ミリでも目標に近づいたのでしょうか? …いいえ、まだ何もできていないような気がします。
だから私は、お城を出てもこの旅を続けることを決心しました。ただ、この”お城ワイナリー滞在記”は、当然今日でお仕舞です。
…ああ、でもこのプリンセスの肩書き…手放すには惜し過ぎます。そこで、今日からは”キャラ”として、プリンセスを演じ続けることをお許し下さい。
そしてこのブログも、3月半ばをメドに、更にパワーアップして新装お目見えする予定です。
それまで引き続きこの滞在記を御贔屓に!
それでは皆さん、日本でお目にかかりましょう。
今日は”ピットナウアー訪問記 その5”をお送りする予定でしたが、重大発表がありますので、お知らせします。
私、本日をもって、プリンセスを退位することとなりました!
はい、お城を出て独り立ちします。
全員集合…2年近くにわたって、本当にお世話になりました。 |
予期しなかった出会いや驚きに満ちた日々でした。
オーストリアを代表する生産者達を訪ね、畑を見せてもらい、対話をし…それが日常になる、という夢の中を、生き続けています。50歳を過ぎてこんなに刺激に満ちた生活を送っていることを、本当に奇遇だと、そして幸せだと思います。
もちろん、元々計画した訳でも、食い扶持の宛てがある訳でもないままの移住だったが故に、いいことばかりではありませんでした。トラブルは当たり前。なんとか見えた希望が、目の前で崩れ去るような事件も数知れず…。
プリンセスのため?に日曜の昼は当主ミッヒのお手製 |
ここ数週間、あまりに忙しくて感傷的になっている暇もなかったのですが、さすがに今になって何か胸に迫るものがあります。
震災と原発事故の影響を心配し、「こっちへおいで」と声をかけてくれた数多くのワイナリーや業界の友人、中でも「いつまでも好きなだけいてもいいから」と言ってくれ、本当に今日まで足かけ2年近い日々を家族として私を遇してくれた”お城ワイナリー”ことシュロス・ゴーベルスブルクの当主ミッヒ&エファ・モースブルッガー夫妻、子供たちヨハネス、アナ、ルイーゼ、そしてエファの両親のペーターとイルゼ、ワイナリーのカーナーさんとエレーナ、オフィスのヴォルフガング、フレディ、エヴェリン、ビアギット、バーバラ、ウェアハウスのユルゲン、畑のクリスティーネ、使用人のアナ、エラちゃん、ヘアマン、ミンキー…ああ、きりがない…に対し、心から感謝の気持ちを捧げたいと思います。Vielen Dank!!
そしてテーブルの下にはエラちゃん:) |
だから私は、お城を出てもこの旅を続けることを決心しました。ただ、この”お城ワイナリー滞在記”は、当然今日でお仕舞です。
…ああ、でもこのプリンセスの肩書き…手放すには惜し過ぎます。そこで、今日からは”キャラ”として、プリンセスを演じ続けることをお許し下さい。
そしてこのブログも、3月半ばをメドに、更にパワーアップして新装お目見えする予定です。
それまで引き続きこの滞在記を御贔屓に!
それでは皆さん、日本でお目にかかりましょう。
ラベル:
Kamptal,
Schloss Gobelsburg
2013年2月22日金曜日
ピットナウアー訪問記 その3 スルスルっと入って、もう一杯!
ワイナリーは10~15年前に建設ラッシュだった、所謂超モダンな造り。ピットナウアーの場合、ガラスを多用したサンルームのように明るく見晴のいいテイスティング・ルームは、白と蛍光黄緑の壁にポップなエティケットがとてもしっくり溶け込んで、ウキウキするような心地よい気で満たされています。
さあ、テイスティング。♥はプリンセスのトキメキ度です。
最初に出て来たのはプリンセスも知らなかったロゼの2012 ♥♥♥
綺麗な淡いサーモンピンク。軽やかなオレンジやローズ・ウォーターの香り。フレッシュな酸にやさしい辛口。スキっと軽快な余韻。いや、これ、こういう晴れた日の戸外やブランチには堪えられない爽快さ! ラベルは可愛いし、セラードアで€7という価格も可愛いし、いきなりの「買い!」
実はこのロゼ、どうしても収量過多になりがちな買ブドウのセニエ果汁で造ったという、今シーズンのニューフェース。造りの上手さが光ります。
次はPitti ピッティ 2011 ♥
格下や樹齢の若い畑のツヴァイゲルトとブラウフレンキッシュのブレンドです。10年より熟度が高く、甘やかな果実味。酸はおだやかで余韻は中-。タンニンもやわらかで障るところがなく、全体として実にいいバランス。世界的不況を受けての市場の変化に対応するため2年前に投入した"bread & butter wine"とゲアハルトは説明していましたが、十分ワイン好きも納得させられる育ちの良さのようなものを感じます。
そしてZweigeltツヴァイゲルト 2011
ややナマナマしい、青さを感じるノーズの後にこの品種特有のダークチェリーの香り。酸はピッティよりしっかり。多少ペパリーな風味で、中位のストラクチャーと余韻。過熟を避けて少し収穫ポイントを前に持って来た印象。聞けば、暑い年の畑の扱いや高いアルコールと高いphの果汁の扱いに、ここ数年で遥かに習熟した、とのこと。
ゲアハルト曰く「ツヴァイゲルトは若いうち楽しむワインを造るのに向いているし、収量を押さえれば“パノービレ”のブレンド・パートナーとして柔かさやジューシーさに寄与するけれど、単体では多少ストラクチャーが緩く、熟成能力もStラウレントやピノ、ブラウフレンキッシュには及ばないと僕は思う。」とのこと。プリンセスも全面賛成。特にリリース直後は下手なブラウフレンキッシュより、よほどチャーミングで好ましく思えるワインが多いのですが、10年以上熟成したツヴァイゲルトに感動したことはこれまで皆無と言っていいかも知れません。
Pinot Noir Dorflagen ドーフラーゲン2011
よく熟した、多少ジャミーな印象。プリンセス的には酸はやや物足りないけれど、モタモタしたところや暑苦しさは全くなく、それでいて余韻は結構長い。市場ウケはいいかも。
Pinot Noir Dorflagen ドーフラーゲン2009 ♥
ノーズに少し色気のあるチェリー・コンフィ。より締まったストラクチャー。余韻は中+程度だけれど、とってもいい熟成香が出始めていて魅力的。ゲアアルトは「ブルゴーニュともニューワールドとも異なる、ドイツ、スイス、オーストリア、アルト=アディジェあたりも含んだのドイツ語圏ならではのピノの個性を感じてもらえれば」と表現。確かに、ブルゴーニュほど官能的でもなく、ニューワールドほどグラマラスでもなく…。ドイツ語圏云々はさておき、ワインがスルっと喉に入り込むサラサラしたテクスチャーは、いかにもいい意味で砂地のピノだと感じました。
St Laurent Dorflagen 2011 (2月末にボトリング予定) ♥
ピノと正反対のフレッシュで涼しげなスミレや桜餅の葉を思わせるノーズ。ピノよりフレッシュな酸、締まったストラクチャー、中+の余韻。ゲアハルト曰く、Stラウレントのこの涼しげで植物的なニュアンスは、ビオディナミを採用してから感じられるようになった、とのこと。
St Laurent Dorflagen 2012 ♥♥ (当然また樽の中のベイビーちゃん)
少しゲイミーで還元的ノーズ。11より更にフレッシュな酸。果実味はより生き生きし、ブライト。余韻も長め。11から12の味わいの変化は、意図して狙ったところで、クラッシュに用いる樹脂パットの間隔を少し広げ、3割程度をホールベリーで残し、そのため結果的に一部カーボニック・マセレーション状態になっていることが原因なのだそう。
Pinot Noir Baumgarten 2010
埃っぽい、多少官能的ノーズ。うーん、10年は涼しい年のはずなのに、酸が物足りない…。結果軽やかさに乏しく、ストラクチャーも多少緩い。やはりこの辺りはピノの最適地とは言えないのかなぁ…。味わいに凹凸とかストーリーがあまり感じられません。
St Laurent Rosenberg 2010 ♥♥
深い、やや沈んだヴァイオレット、ダークチェリーのノーズ。しっかりとした酸。風味が固めだけれど、贅肉を削ぎ落としたプリンセス好みのSt Laurentの味わい。余韻も長い。
涼しく日照の少なかったこの年のアルコール分はなんと12.2%。複雑さや余韻の長さ(=ワインの美質)に高いアルコールは必要ないことのよい見本。
St Laurent Alte Reben 2010 ♥♥♥
Resenbergより更に深みがありながら生命力溢れる上質でフレッシュなローズウォーターのノーズ。更に植物的。酸は高めながらよりしなやか。非常に柔かい、ほとんど存在を感じさせないタンニン。静かな凝縮感。とても長い余韻。素晴らしい!
St Laurent Alte Reben 2009 ♥♥
ノーズはより野趣に富む。10よりマッシヴでストラクチャーに富む。暖かく長い余韻。プリンセス的には10の方が好みではあるけれど、これも素晴らしいワイン。
St Laurent Alte Reben 2008 ♥
より慎み深いスミレの香り。09よりアーシー。空気に触れてじわじわ味が出る感じ。長い余韻。09より強い新樽の焦げ香。
Blaufränkisch Rosenberg 2007 ♥
ブラウフレンキッシュらしい高い酸、豊かなタンニン、アルコールも過不足なく、余韻も長い。けれど、いかにもこのヒトらしいサラサラとエレガントなブラウフレンキッシュ。
そしていつものごとく、電車の時間が近づいたので、試せなかったBlaufränkisch UngaerbergとSt Laurent Altenbergを持ち帰り、これは帰国後にラッキーな皆さんと分かち合いたいと思っています。
初回訪問時もそうでしたが、何よりピットナウアーのワインでプリンセスが好ましいと思うのは、タンニンの柔かさ&質の良さ。ベーシックなピッティからアルテレーベンまで、勿論量や複雑さは異なるのですが、絶対障るようなことのない、絶妙にコントロールされたタンニンです。さらに熟度も凝縮感もあるのに出過ぎない楚々とした果実味。サラっと喉に流れ込むテクスチャー。…こうした全てが相まって、これだけ赤ばかり飲み続けても全く飲み疲れない、クラスを問わず「もうひと口、もう一杯」と杯の進むワインとなっています。
ところで、傑出したワインは傑出したテロワールと確固としたイマジネーション、そしてそのイマジネーションを実現するための技量によって造られます。3つの要素は、どれひとつとして欠けてはいけませんが、実はそれぞれの占めるバランスはワイナリーそれぞれです。
そしてピットナウアーの場合、畑の傑出度よりは、畑仕事とセラーワークを日々誠実に積み重ねた結果としての、揺るぎないイメージング能力と全ての作業工程における過不足のない絶妙なサジ加減――そちらの占める割合がずっと大きい。ゲアハルトのヴィンツァーとしての誠実さと力量の高さこそ、このワイナリーの強みと魅力だと、プリンセスは改めて確認したのでありました。
さあ、テイスティング。♥はプリンセスのトキメキ度です。
最初に出て来たのはプリンセスも知らなかったロゼの2012 ♥♥♥
綺麗な淡いサーモンピンク。軽やかなオレンジやローズ・ウォーターの香り。フレッシュな酸にやさしい辛口。スキっと軽快な余韻。いや、これ、こういう晴れた日の戸外やブランチには堪えられない爽快さ! ラベルは可愛いし、セラードアで€7という価格も可愛いし、いきなりの「買い!」
実はこのロゼ、どうしても収量過多になりがちな買ブドウのセニエ果汁で造ったという、今シーズンのニューフェース。造りの上手さが光ります。
次はPitti ピッティ 2011 ♥
格下や樹齢の若い畑のツヴァイゲルトとブラウフレンキッシュのブレンドです。10年より熟度が高く、甘やかな果実味。酸はおだやかで余韻は中-。タンニンもやわらかで障るところがなく、全体として実にいいバランス。世界的不況を受けての市場の変化に対応するため2年前に投入した"bread & butter wine"とゲアハルトは説明していましたが、十分ワイン好きも納得させられる育ちの良さのようなものを感じます。
そしてZweigeltツヴァイゲルト 2011
ややナマナマしい、青さを感じるノーズの後にこの品種特有のダークチェリーの香り。酸はピッティよりしっかり。多少ペパリーな風味で、中位のストラクチャーと余韻。過熟を避けて少し収穫ポイントを前に持って来た印象。聞けば、暑い年の畑の扱いや高いアルコールと高いphの果汁の扱いに、ここ数年で遥かに習熟した、とのこと。
ゲアハルト曰く「ツヴァイゲルトは若いうち楽しむワインを造るのに向いているし、収量を押さえれば“パノービレ”のブレンド・パートナーとして柔かさやジューシーさに寄与するけれど、単体では多少ストラクチャーが緩く、熟成能力もStラウレントやピノ、ブラウフレンキッシュには及ばないと僕は思う。」とのこと。プリンセスも全面賛成。特にリリース直後は下手なブラウフレンキッシュより、よほどチャーミングで好ましく思えるワインが多いのですが、10年以上熟成したツヴァイゲルトに感動したことはこれまで皆無と言っていいかも知れません。
よく熟した、多少ジャミーな印象。プリンセス的には酸はやや物足りないけれど、モタモタしたところや暑苦しさは全くなく、それでいて余韻は結構長い。市場ウケはいいかも。
Pinot Noir Dorflagen ドーフラーゲン2009 ♥
ノーズに少し色気のあるチェリー・コンフィ。より締まったストラクチャー。余韻は中+程度だけれど、とってもいい熟成香が出始めていて魅力的。ゲアアルトは「ブルゴーニュともニューワールドとも異なる、ドイツ、スイス、オーストリア、アルト=アディジェあたりも含んだのドイツ語圏ならではのピノの個性を感じてもらえれば」と表現。確かに、ブルゴーニュほど官能的でもなく、ニューワールドほどグラマラスでもなく…。ドイツ語圏云々はさておき、ワインがスルっと喉に入り込むサラサラしたテクスチャーは、いかにもいい意味で砂地のピノだと感じました。
St Laurent Dorflagen 2011 (2月末にボトリング予定) ♥
ピノと正反対のフレッシュで涼しげなスミレや桜餅の葉を思わせるノーズ。ピノよりフレッシュな酸、締まったストラクチャー、中+の余韻。ゲアハルト曰く、Stラウレントのこの涼しげで植物的なニュアンスは、ビオディナミを採用してから感じられるようになった、とのこと。
St Laurent Dorflagen 2012 ♥♥ (当然また樽の中のベイビーちゃん)
少しゲイミーで還元的ノーズ。11より更にフレッシュな酸。果実味はより生き生きし、ブライト。余韻も長め。11から12の味わいの変化は、意図して狙ったところで、クラッシュに用いる樹脂パットの間隔を少し広げ、3割程度をホールベリーで残し、そのため結果的に一部カーボニック・マセレーション状態になっていることが原因なのだそう。
Pinot Noir Baumgarten 2010
埃っぽい、多少官能的ノーズ。うーん、10年は涼しい年のはずなのに、酸が物足りない…。結果軽やかさに乏しく、ストラクチャーも多少緩い。やはりこの辺りはピノの最適地とは言えないのかなぁ…。味わいに凹凸とかストーリーがあまり感じられません。
St Laurent Rosenberg 2010 ♥♥
深い、やや沈んだヴァイオレット、ダークチェリーのノーズ。しっかりとした酸。風味が固めだけれど、贅肉を削ぎ落としたプリンセス好みのSt Laurentの味わい。余韻も長い。
涼しく日照の少なかったこの年のアルコール分はなんと12.2%。複雑さや余韻の長さ(=ワインの美質)に高いアルコールは必要ないことのよい見本。
St Laurent Alte Reben 2010 ♥♥♥
Resenbergより更に深みがありながら生命力溢れる上質でフレッシュなローズウォーターのノーズ。更に植物的。酸は高めながらよりしなやか。非常に柔かい、ほとんど存在を感じさせないタンニン。静かな凝縮感。とても長い余韻。素晴らしい!
St Laurent Alte Reben 2009 ♥♥
ノーズはより野趣に富む。10よりマッシヴでストラクチャーに富む。暖かく長い余韻。プリンセス的には10の方が好みではあるけれど、これも素晴らしいワイン。
St Laurent Alte Reben 2008 ♥
より慎み深いスミレの香り。09よりアーシー。空気に触れてじわじわ味が出る感じ。長い余韻。09より強い新樽の焦げ香。
Blaufränkisch Rosenberg 2007 ♥
ブラウフレンキッシュらしい高い酸、豊かなタンニン、アルコールも過不足なく、余韻も長い。けれど、いかにもこのヒトらしいサラサラとエレガントなブラウフレンキッシュ。
そしていつものごとく、電車の時間が近づいたので、試せなかったBlaufränkisch UngaerbergとSt Laurent Altenbergを持ち帰り、これは帰国後にラッキーな皆さんと分かち合いたいと思っています。
初回訪問時もそうでしたが、何よりピットナウアーのワインでプリンセスが好ましいと思うのは、タンニンの柔かさ&質の良さ。ベーシックなピッティからアルテレーベンまで、勿論量や複雑さは異なるのですが、絶対障るようなことのない、絶妙にコントロールされたタンニンです。さらに熟度も凝縮感もあるのに出過ぎない楚々とした果実味。サラっと喉に流れ込むテクスチャー。…こうした全てが相まって、これだけ赤ばかり飲み続けても全く飲み疲れない、クラスを問わず「もうひと口、もう一杯」と杯の進むワインとなっています。
ところで、傑出したワインは傑出したテロワールと確固としたイマジネーション、そしてそのイマジネーションを実現するための技量によって造られます。3つの要素は、どれひとつとして欠けてはいけませんが、実はそれぞれの占めるバランスはワイナリーそれぞれです。
そしてピットナウアーの場合、畑の傑出度よりは、畑仕事とセラーワークを日々誠実に積み重ねた結果としての、揺るぎないイメージング能力と全ての作業工程における過不足のない絶妙なサジ加減――そちらの占める割合がずっと大きい。ゲアハルトのヴィンツァーとしての誠実さと力量の高さこそ、このワイナリーの強みと魅力だと、プリンセスは改めて確認したのでありました。
2013年2月21日木曜日
ピットナウアー訪問記 その2 ゴルスにワイナリーが集積する訳は?
ピットナウアーのあるノイジードラーゼーという生産地は、墺ワインオタクを自認するプリンセスにとってすら、最もその個性を捕まえ難い産地です。
南にはクラッハーやチダで有名なゼーヴィンケルと呼ばれるノイジードラー湖東岸の湿地帯=貴腐ワインの産地があり、これはある意味簡単明瞭。
そして北部に、オーストリア一、ニでワイナリーの沢山集まる町Golsゴルスがある訳です。このゴルス周辺…西はヨイスから東はフラウエンキアヒェンにまたがる辺り…プリンセスも随分色々なワイナリーを訪ねました――ゲルノート u.ハイケ・ハインリッヒ、A u. Hニットナウス、ペクル、ユーリス、シュロス・ハルプトゥルン、ウマトゥム、パウル・アクス、マークス・アルテンブルガー、クラウス・プライジンガー――、いずれもオーストリアのワイン業界では高く評価され、その多くが非常にレベルの高いワインを造っているのですが、何故かプリンセスの心をわしづかみ♥するに至っていない…。
それにプリンセスのモットーに「独自の景色のあるところに独自のワインあり」というのがありますが、どうもこの辺り、ヴァッハウやシュタイヤーマークのように「息を飲む」程印象的景色がありません。“Parndorferplatte=パーンドーフ平地”やら“Heideboden=荒地”というくらいで、殺風景な平地ととても緩い丘陵地が続き、なんとも迫力に欠けるのです。周囲から峻別され、誰の目にも明らかな銘醸畑、例えばハイリゲンシュタインとかシュピッツァーベアクとか…そういう山もありません。
ところが昨年偶然立ち寄ったピットナウアーが!!!
…よく考えてみれば、あれだけワイナリーがゴルス周辺に集積している、というにはそれなりの訳があるはずなのです。その訳をこの訪問では解き明かしたいと思っていました。
ところで、この辺りの生産者がよく使う、HeidebodenハイデボーデンとかDorflagenドーフラーゲンとか、それは一体何なの、どこなの? …と思っている方も多いことでしょう。
ハイデボーデンは湖を囲む一番低地の畑です。大概グリューナーかツヴァイゲルトが植えられています。そしてドーフラーゲンは緩斜面の中腹の畑。ゲアハルトはピノとStラウレントを主体に植えています。彼は両者を「ブルゴーニュに喩えたらvillage」と説明してくれましたが、プリンセス的にはハイデボーデンがブルゴーニュAOCで、ドーフラーゲンこそ村名に相当すると考えます。
さて、ゴルスのヴィノテークで落ち合うと、ゲアハルトは車を西側の隣町Weidenヴァイデンに走らせます。「ヴァイデンの町にはゴルスと同じか、或いはそれ以上に可能性の高い畑があると僕は思っている」と、ゲアハルト。「でもね、ヴァイデンの人はなにかとのんびりしていて、あんまりそれを誇示しないから、まだ畑にできる空地があるんだよ。一方ゴルスはオーストリアでは珍しいプロテスタントの町。皆勤勉なので、町としてはそちらの方が有名だけどね」と言いながら降り立ったのは、彼のSt ラウレント St Laurentの未来の看板畑Rosenbergローゼンベアク。
ノイジードラー湖を遠くに見渡せる緩斜面を上り切ったテッペンにある平地の、ゴロゴロと丸石の転がる堆積土壌は、聞けば旧ドナウの底だった名残とか。「へえ、それじゃあ遥々お城ワイナリーのシュタインセッツと同じ土壌かぁ…」と、プリンセスが感慨に浸っていると、「でも、この辺りは海の底だったこともあって、だから石ころの下は石灰の多い砂の地層なんだよ」とのこと。なるほど。そして北西に風力発電機が沢山立っているところを見ると、常に風が強い場所であることが伺えます。
この、水捌けの良さと風が、カビに冒されやすいピノ・ノアールやSt ラウレントにとっては大きなアドヴァンテージとなります。加えて石灰分が風味に若干の色気と膨らみ、余韻の伸びを与えます。※因みに南西のライタベアクは頂上部はアルプスの原成岩ですが、この辺りに原成岩土壌は存在しません。
ヴァイデンからゴルスへ向かう途中、プリンセス尋ねてみました。「あなたにとって良い畑と樹齢のどちらが重要?」と。ゲアハルトは「うーん、むつかしいね。両者揃って初めて素晴らしいワインになるんだけど…。でも、僕の最も高価なSt Laurent Alte Reben アルテ・レーベンは、実は頂上の畑のブドウではなく、ハイデボーデンのものなんだ。ローゼンベアクが最初の頃は、もちろん悪いワインではなかったけれど、今ほどの個性もストラクチャーもなかったことを考えると、やっぱり樹齢かなぁ。それに僕は灌漑しないから、地中深くに根を張った樹齢の高い木の方が、11年や12年のような乾燥した年には特にメリットが大きい、とも言えるね。」とのこと。
そしてブラウフレンキッシュの畑Ungerbergウンガーベアクに差し掛かります。緩斜面の中腹あたりにあるこの畑、明らかに土が黒いし少し重いことが見てとれます。「重い土壌はこの辺は少ないんだけれどポツポツと局地的に存在していて、そこにはブラウフレンキッシュを植えるのさ。ブラウフレンキッシュにはローミーな土が必要だからね」。こういうところでヴィンツァーの言葉をそのまま鵜呑みにしてはいけません。確かに彼の畑の中では、そしてゴルス周辺においては重い土壌なのでしょうが、ホリチョンに代表されるミッテルブルゲンラントの土のような重さでは全くありません。
そして前回訪問時に見せていただいたワイナリー裏手、もうひとつのStラウレントの看板畑Altenbergアルテンベアクは、今回はワイナリーから覗き観るのみ。テイスティング・ルームにある土壌プロファイルを見る限り、ここは川の堆積土壌ではなく、海の堆積土壌。腐葉土の下はすぐ白い砂状の石灰です。
ワイナリーよりさらに東側にあるピノノワールの畑FuchsenfeldフクセンフェルトとBaumgartenバウムガーテンについては今回は時間の関係で割愛しましたが、土壌的にも局地気候的にもアルテンベアクに近いもののようです(ただしフクセンフェエルトは東向の畑)。
訪問に当たりプリンセスが奥さんのビアギットに伝えておいたのは、今回は3時間以上時間が取れるので、畑とセラーをしっかり見たいこと、前回時間をかけて味わえなかったピノとStラウレントの上級クラスを味わいたいこと、そしてヴィンテージが入れ替わったベーシック・クラスを味わいたいこと、の3点を伝えただけで、その時間内でどの畑を見せて欲しいか、までは指定しませんでした…、と言うか、初めて見る畑だし、ワインもそんなに何度も味わった訳ではないので、指定できなかったという方が正確かも知れません。
その結果、ゲアハルトは私にワイナリーから西の畑ばかりを見せてくれました。
これは単にプリンセスにノイジードラー湖を望める畑を見せて上げよう、というサービス精神からか、或いは彼の気持ちが西側に向いているのか…。
その推論はテイスティングの結果をご報告した後にしてみたいと思います。
南にはクラッハーやチダで有名なゼーヴィンケルと呼ばれるノイジードラー湖東岸の湿地帯=貴腐ワインの産地があり、これはある意味簡単明瞭。
そして北部に、オーストリア一、ニでワイナリーの沢山集まる町Golsゴルスがある訳です。このゴルス周辺…西はヨイスから東はフラウエンキアヒェンにまたがる辺り…プリンセスも随分色々なワイナリーを訪ねました――ゲルノート u.ハイケ・ハインリッヒ、A u. Hニットナウス、ペクル、ユーリス、シュロス・ハルプトゥルン、ウマトゥム、パウル・アクス、マークス・アルテンブルガー、クラウス・プライジンガー――、いずれもオーストリアのワイン業界では高く評価され、その多くが非常にレベルの高いワインを造っているのですが、何故かプリンセスの心をわしづかみ♥するに至っていない…。
それにプリンセスのモットーに「独自の景色のあるところに独自のワインあり」というのがありますが、どうもこの辺り、ヴァッハウやシュタイヤーマークのように「息を飲む」程印象的景色がありません。“Parndorferplatte=パーンドーフ平地”やら“Heideboden=荒地”というくらいで、殺風景な平地ととても緩い丘陵地が続き、なんとも迫力に欠けるのです。周囲から峻別され、誰の目にも明らかな銘醸畑、例えばハイリゲンシュタインとかシュピッツァーベアクとか…そういう山もありません。
ところが昨年偶然立ち寄ったピットナウアーが!!!
…よく考えてみれば、あれだけワイナリーがゴルス周辺に集積している、というにはそれなりの訳があるはずなのです。その訳をこの訪問では解き明かしたいと思っていました。
ところで、この辺りの生産者がよく使う、HeidebodenハイデボーデンとかDorflagenドーフラーゲンとか、それは一体何なの、どこなの? …と思っている方も多いことでしょう。
ハイデボーデンは湖を囲む一番低地の畑です。大概グリューナーかツヴァイゲルトが植えられています。そしてドーフラーゲンは緩斜面の中腹の畑。ゲアハルトはピノとStラウレントを主体に植えています。彼は両者を「ブルゴーニュに喩えたらvillage」と説明してくれましたが、プリンセス的にはハイデボーデンがブルゴーニュAOCで、ドーフラーゲンこそ村名に相当すると考えます。
こういう丸石が砂地に混ざってゴロゴロ。 |
Rosenbergの隣の畝で剪定をするオジサン。 そうそう、写真をくれ、ってせがまれてたんでしたっけ。 |
遠くに風力発電機が並ぶ、ほぼ平地というか、緩い緩い斜面と言うか… |
Pittnauerの剪定後のSt Laurent |
Weidenの町、そしてノイジードラー湖越しにライタベアクが望めます |
車窓から、UngerbergのBlaufränkischの畑。 |
小石はなく、よりローミー…とはいっても砂がちの土壌 |
セラーの窓から望むアルテンベアク |
かなりマッ白な土壌プロファイル |
訪問に当たりプリンセスが奥さんのビアギットに伝えておいたのは、今回は3時間以上時間が取れるので、畑とセラーをしっかり見たいこと、前回時間をかけて味わえなかったピノとStラウレントの上級クラスを味わいたいこと、そしてヴィンテージが入れ替わったベーシック・クラスを味わいたいこと、の3点を伝えただけで、その時間内でどの畑を見せて欲しいか、までは指定しませんでした…、と言うか、初めて見る畑だし、ワインもそんなに何度も味わった訳ではないので、指定できなかったという方が正確かも知れません。
その結果、ゲアハルトは私にワイナリーから西の畑ばかりを見せてくれました。
これは単にプリンセスにノイジードラー湖を望める畑を見せて上げよう、というサービス精神からか、或いは彼の気持ちが西側に向いているのか…。
その推論はテイスティングの結果をご報告した後にしてみたいと思います。
2013年2月17日日曜日
ピットナウアー訪問記 その1 ゴルスへ
プリンセス、オーストリアワインを日本にご紹介する立場になって、今年で9年目になります。
思い返せば結構な数のワイナリーを日本市場に橋渡しして来ました。
そんな中、おそらくワイナリーを訪れてから最短速度&最少インフォメーションで日本のパートナーを見つけることができたのが、このPittnauerピットナウアーです。
何せワイナリーを訪れたのは一度切り。しかも別のワイナリーを訪ねる途中に立ち寄っただけで、滞在時間は畑見学とテイスティングを含め1時間程度。
…でもプリンセス、3つ目か4つ目のワインを味わいながら既に確信していました。「このワイナリーは買いだ」と。なので初対面から1時間と置かず、アタフタとお暇しながら日本での試飲会向けのワインを手配していたのを思い出します。
ワインを市場に橋渡しするのに何が一番大切か、と言えば――勿論質は基本ですが――、その上で要は、ワインが「売れるか、売れないか」を見抜くこと。そしてそのワインが「誰を喜ばせられそうか」を具体的に想定すること。いいワインと売れるワインって、実は同じではありません。
また、そのワインを造っている人物が、今後長きにわたってワインの「品質とキャラクターを安定的に維持向上させて行く能力があるかどうか」&「取引上降りかかる様々なトラブルや困難を一緒に切り抜けて行けそうな人物かどうか」を、会話から見抜くこと、…でしょうか。
ピットナウアーの場合、とっても自然に、全てに楽にYESが出たが故に、プリンセスの心づもりが固まるにも、パートナーを見つけるにも時間を要しませんでした。
けれどそれ故、プリンセスのデータベースはがらんがらん:) これではいかん…
…という訳で、初回訪問時にはワイナリーの後ろをチョロっと歩いただけの畑と、全く覗く時間もなかったセラーをちゃんと見せていただだき、またヴィンテージの入れ替わったワインと、今後どの辺りの上級クラスを日本に持ってくるかの見極めのためのテイスティングをして来ることにしました。午後をフルに使ってワイナリーの全貌を捉える予定です。
中途半端な時間にゴルス駅に着いてしまったため、町のどこかで簡単に昼食を取れる場所を探します。何の事前調査もしていませんが、ゴルスはランゲンロイスと並んでワイナリーの集積する町ですから、昼くらいは食べられるでしょう。まあ、オーストリアの田舎町の場合、教会の尖塔を目当てに歩いて行けば、必ず町の中心部に出ますから、そこら辺りをぶらつけば何か見つかるだろう、という読み。
案の状、教会の立つ大通りに出ると、ちゃんとしたレストランからカフェ、自然食屋風…結構色々並んでいます。一人ですから、一番簡素に見えた肉屋併設のイートインへ入って日替わり定食をいただくことに決定。Gebratene Schwein、その名も焼き豚!に、ライスかサラダが付く構成。サラダは5-6種類の中から2種選べるという嬉しい計らい。例によって盛り付けられた時には、そのヴォリュームに辟易としましたが、食べてみると「さすが肉屋!」な美味しい肉で、プリンセス完食:)。
まだ少し時間があったので、町歩きを楽しみます。…すると、Szigettiシゲティ、Jurisユーリスなどお馴染みのワイナリーが次々に目に入り…そして、一帯のワインがバックヴィンテージも含めて揃うヴィノテークを発見! ここを冷やかしながらピットナウアー夫人ビアギットに連絡し、このヴィノテークでゲアハルトと落ち合うことになりました。
では、次回は待望の畑巡りの様子をお届けします。お楽しみに!
思い返せば結構な数のワイナリーを日本市場に橋渡しして来ました。
そんな中、おそらくワイナリーを訪れてから最短速度&最少インフォメーションで日本のパートナーを見つけることができたのが、このPittnauerピットナウアーです。
何せワイナリーを訪れたのは一度切り。しかも別のワイナリーを訪ねる途中に立ち寄っただけで、滞在時間は畑見学とテイスティングを含め1時間程度。
…でもプリンセス、3つ目か4つ目のワインを味わいながら既に確信していました。「このワイナリーは買いだ」と。なので初対面から1時間と置かず、アタフタとお暇しながら日本での試飲会向けのワインを手配していたのを思い出します。
今ウィーン中の基幹駅がこのようにモダンにリニューアル中 |
また、そのワインを造っている人物が、今後長きにわたってワインの「品質とキャラクターを安定的に維持向上させて行く能力があるかどうか」&「取引上降りかかる様々なトラブルや困難を一緒に切り抜けて行けそうな人物かどうか」を、会話から見抜くこと、…でしょうか。
ピットナウアーの場合、とっても自然に、全てに楽にYESが出たが故に、プリンセスの心づもりが固まるにも、パートナーを見つけるにも時間を要しませんでした。
けれどそれ故、プリンセスのデータベースはがらんがらん:) これではいかん…
…という訳で、初回訪問時にはワイナリーの後ろをチョロっと歩いただけの畑と、全く覗く時間もなかったセラーをちゃんと見せていただだき、またヴィンテージの入れ替わったワインと、今後どの辺りの上級クラスを日本に持ってくるかの見極めのためのテイスティングをして来ることにしました。午後をフルに使ってワイナリーの全貌を捉える予定です。
中途半端な時間にゴルス駅に着いてしまったため、町のどこかで簡単に昼食を取れる場所を探します。何の事前調査もしていませんが、ゴルスはランゲンロイスと並んでワイナリーの集積する町ですから、昼くらいは食べられるでしょう。まあ、オーストリアの田舎町の場合、教会の尖塔を目当てに歩いて行けば、必ず町の中心部に出ますから、そこら辺りをぶらつけば何か見つかるだろう、という読み。
案の状、教会の立つ大通りに出ると、ちゃんとしたレストランからカフェ、自然食屋風…結構色々並んでいます。一人ですから、一番簡素に見えた肉屋併設のイートインへ入って日替わり定食をいただくことに決定。Gebratene Schwein、その名も焼き豚!に、ライスかサラダが付く構成。サラダは5-6種類の中から2種選べるという嬉しい計らい。例によって盛り付けられた時には、そのヴォリュームに辟易としましたが、食べてみると「さすが肉屋!」な美味しい肉で、プリンセス完食:)。
焼豚というより、煮豚って感じでしたが、 サラダ2種ついて€6かそこら! |
ドイツ語圏のソーセージのヴァラエティの豊かさと美味しさは♥ |
何気に町屋風情。いかにも職人の集う町の趣 |
なんとパン屋と郵便局が共存…不思議な業態だ:) |
このヴィノテークで待ち合わせ |
これは地下。1階ではテイスティングができます。 |
ワイナリー訪問の前後に立ち寄ってみては? |
ラベル:
Neusiedlersee,
Pittnauer
2013年2月15日金曜日
大発見! 長年の謎が解けました?
今日のお城ワイナリーの昼食は、野菜たっぷりのリントズッペの後に、ヌードル。まあ、所謂スパゲティー・ミートソースみたいなやつでした。
そこでプリンセス、積年の謎を解決したのです!
大学時代の親友の一人はイタリアで中高を過ごした身。その彼女に「スパゲティーにスプーンなんか添えて食べるのは日本人だけだよ」と、言われ、何故日本人だけがそんなことをするのか、ずっと不思議に思っていたのです。
そうしたらなんと、今日の食卓で…、
皆やってる、やってる! スープのスプーンを下げず、左手に持ったものを添えて、右手のフォークでクルクル巻いています!
そしてドイツ民族の家系である当主ミッヒだけは左手にフォーク、右手にナイフを持って、ヌードルを切り分けながら食べているではありませんか…。
思えば日本の洋食って――まあ150年も前のことですから――日本以外の国の料理一般全てなのでしょうが、あえて西洋のどこの国の料理に一番近いか、と問われれば、プリンセスはオーストリアに一番近いのではないか、と密かに思っています。そして、文明開化期にオーストリアを訪れた日本人の誰かが、この国から左手に持ったスプーンを添えて麺類をクルクルする風習を持ち帰ったのではないでしょうか。
ことの真相はさておき、なんだか大発見をしたようで、とっても気持ちのいい、他愛ないプリンセスであります:)
そこでプリンセス、積年の謎を解決したのです!
大学時代の親友の一人はイタリアで中高を過ごした身。その彼女に「スパゲティーにスプーンなんか添えて食べるのは日本人だけだよ」と、言われ、何故日本人だけがそんなことをするのか、ずっと不思議に思っていたのです。
昼食に向かう途中で、当主を仰ぎ見る健気なミンキー発見! |
皆やってる、やってる! スープのスプーンを下げず、左手に持ったものを添えて、右手のフォークでクルクル巻いています!
そしてドイツ民族の家系である当主ミッヒだけは左手にフォーク、右手にナイフを持って、ヌードルを切り分けながら食べているではありませんか…。
思えば日本の洋食って――まあ150年も前のことですから――日本以外の国の料理一般全てなのでしょうが、あえて西洋のどこの国の料理に一番近いか、と問われれば、プリンセスはオーストリアに一番近いのではないか、と密かに思っています。そして、文明開化期にオーストリアを訪れた日本人の誰かが、この国から左手に持ったスプーンを添えて麺類をクルクルする風習を持ち帰ったのではないでしょうか。
ことの真相はさておき、なんだか大発見をしたようで、とっても気持ちのいい、他愛ないプリンセスであります:)
2013年2月14日木曜日
帰国時イベントのお知らせ 中半:3月11~15日――ディープなテイスティングもあります!
3月4日から14日まで、真から怒涛のロードです。ここに書けない内緒のワインを持参している可能性もあり:) ※例によって青字は業界対象です。
「オーストリアワインの今」業界向けセミナー in 名古屋
日時: 3月11日(月) 14:00~17:00
場所: ㈱日本グランドシャンパーニュ:名古屋市東出来町3-20-15
料金: 無料
申込受付: 日本グランドシャンパーニュ tel 052-711-9761 まで
概要: ロイマー、ライテラー、ピットナウアー及び新顔ハイシャン・ノイマンを試飲しながらの、オーストリアワイン主要産地の特徴及び最新動向についての、プリンセスによるセミナー。
場所: ㈱日本グランドシャンパーニュ:名古屋市東出来町3-20-15
料金: 無料
申込受付: 日本グランドシャンパーニュ tel 052-711-9761 まで
概要: ロイマー、ライテラー、ピットナウアー及び新顔ハイシャン・ノイマンを試飲しながらの、オーストリアワイン主要産地の特徴及び最新動向についての、プリンセスによるセミナー。
主催: ㈱日本グランドシャンパーニュ
協賛: オーストリアワインマーケティング協会、オーストリア大使館商務部
オーストリアワイン・ディナー@ツァ・ディーレ in 名古屋
日時: 3月11日(月)
19:00~
場所: ツァ・ディーレ 〒467-0806 名古屋市瑞穂区瑞穂通6-15
場所: ツァ・ディーレ 〒467-0806 名古屋市瑞穂区瑞穂通6-15
TEL:052-842-2223 FAX:052-852-5235 http://www.zurdeele.co.jp/
会費: 6,500円
定員: 60名
共同主催: ドイツ料理レストラン「ツァ・ディーレ」
㈱日本グランドシャンパーニュ
協賛: wine&cheese-shop
Lapin-ラパン
申込&問合:ツァ・ディーレ TEL:052-842-2223
wine&cheese-shop Lapin-ラパン- TEL:052-725-82
㈱日本グランドシャンパーニュ TEL
052-711-9761
ヒルシュ リースリング ハイリゲンシュタイン バックヴィンテージ業界向け試飲会
日時: 3月14日(木) 14:00~16:30
場所: シノワ渋谷店
料金: 無料 ただし3月7日以降空席があれば、一般参加(3,000円)も受け付けます。
場所: シノワ渋谷店
料金: 無料 ただし3月7日以降空席があれば、一般参加(3,000円)も受け付けます。
定員: 28名セミナー形式
申込受付: 小寺 email<ykotera26@gmail.com>まで
申込受付: 小寺 email<ykotera26@gmail.com>まで
締切: 3月7日
概要: プリンセスをオーストリアワインに導くきっかけのひとつとなった、ヴァイングート・ヒルシュのリースリングの看板畑“ハイリゲンシュタイン”を02まで遡り、さらに直近3ヴィンテージは隣り合った土壌違いのエアステラーゲ“ガイスベアク”と比較します。
概要: プリンセスをオーストリアワインに導くきっかけのひとつとなった、ヴァイングート・ヒルシュのリースリングの看板畑“ハイリゲンシュタイン”を02まで遡り、さらに直近3ヴィンテージは隣り合った土壌違いのエアステラーゲ“ガイスベアク”と比較します。
ワイン: Riesling Heiligenstein 02, 03, 06,
07, 09, 10, 11
Riesling Gaisberg 09, 10, 11
主催: 岩城ゆかり
協賛: ヴァイングート ヒルシュ、エステート・ワインズ
ヒルシュ リースリング ガイスベアク バックヴィンテージ・ディナー
日時: 3月14日(木) 19:00~
場所: シノワ渋谷店
料金: 15,000円
料金: 15,000円
定員:
11名
申込受付: シノワ tel 03-5457-2412まで
申込受付: シノワ tel 03-5457-2412まで
締切: 3月11日(月)
概要: ヴァイングート・ヒルシュ、リースリングの銘醸畑“ガイスベアク”の04, 07, 09を岩城のプライヴェート・セラーより。更にリースリング ハイリゲンシュタイン03とグリューナー・ヴェルトリーナー ラム 06 マグナム&当日のお楽しみワインを加えたオール・ヒルシュ6種を、お食事と合わせてゆっくり楽しんでいただきます。
概要: ヴァイングート・ヒルシュ、リースリングの銘醸畑“ガイスベアク”の04, 07, 09を岩城のプライヴェート・セラーより。更にリースリング ハイリゲンシュタイン03とグリューナー・ヴェルトリーナー ラム 06 マグナム&当日のお楽しみワインを加えたオール・ヒルシュ6種を、お食事と合わせてゆっくり楽しんでいただきます。
主催: 岩城ゆかり
協賛: ヴァイングート ヒルシュ、エステート・ワインズ
2013年2月12日火曜日
アラフィフに新たな外国語は習得できるのか?
プリンセス、オーストリア移住を計画的に進めた訳では全くありません。
原発事故の影響を心配し、あまりに多くのオーストリアのワイナリーや友人が「しばらくこっちにおいで」と言ってくれた、その言葉を真に受けて本当に来てしまった、という能天気の見本。
言葉のことも、当初あまり真剣に考えてはいませんでした。
だってこれまで取材は極々一部を除いて英語でとりあえず問題なかったし、一応大学で多少ドイツ語はかじっているし、高校生の頃交換留学プログラムで実質9か月アメリカに住んだ時も、3か月を過ぎる辺りからとりあえず日常会話には困らなかったような気がするし…。まぁ、現地に住めば大した苦労もなく言葉くらいは覚えるのだろう、と、タカをくくってました。
しかーし!!!
残念なことにアラフィフの運動神経(言語習得能力はこれに尽きる、とプリンセスは思っています)の衰えと言ったら…。我ながら言語習得の遅さに愕然とします。
しかも、仕事は依然、あんまり相手をじらしても迷惑だろう、と、こちらから英語で話してしまうし、オフィスでも込み入った話は全部英語だし、お爺ちゃんお婆ちゃんに至っては、私を英会話練習のいい相手、くらいに思っているよう…。しかも当然、公私にわたってこうやって日本語でコミュニケートしている時間が圧倒的に長い…。
結局、自分でも嫌になるくらいにドイツ語が自分のものになりません。
昨日も、お婆ちゃんがアセアセと昼食を取り分けながら"Yukari, gib mir einen großen Löffel"(大きいスプーン取って頂戴)と、叫んでいるのに、一瞬頭の中で「レッフェルとガーベル、ガーベルがフォークでレッフェルは…、ああ、スプーンだったわね」と、スパっと反応できない自分がいるのです。そう反芻している自分がつくづく悲しくなりました。※英語とドイツ語って、もっと似てるのかと思っていましたが、こういう基本的な単語からして、憎らしいくらいに違うのですよ。
その後お婆ちゃんが家族全員に向けて「このサラダは5人で取り分けて…」と、そこまではわかったのですが、「もっと沢山あるのだけれど、それは夜にうんたらかんたら…」。最終的に何が言いたいのかが霧の中…。結局今目の前にあるサラダを、自分が今どのくらい食べていいのか、それが夜のサラダとどういう関係にあるのか…」そういうことが俄かにすんなり理解できない訳です。死ぬほどイライラします。アホか? もう実質滞在1年半近くにもなるのに…、と。
こちらに来た当初は、仕事は英語。ドイツ語は情報を仕入れられればいい(=読めれば十分)、と思っていました。ところが実際には、片田舎での生活は、切符を買うにも、銀行口座を開くにも、携帯を持つにも、コトがちょっと込み入ると、ドイツ語ができないと話になりません。ワイナリーの仕事だって、畑でもセラーでも、ぜーんぶドイツ語。あたり前のことですが、その国の言葉をちゃんと解さないうちはお客さん、或いはよそ者に過ぎません。ヴィンツァーから本音を聞き出そうと思ったら、やはりドイツ語を自由に操れた方がいいに決まっています。
それに、プリンセスにはアメリカ人社長の下で働いた経験がありますが、元証券会社日本支社長の彼は、日本に10年以上いるのに、簡単な挨拶と数字くらいしか日本語を解さないし、覚えようともしなかったことを思い出しました。そして知能は十分に高いのに、日本語が使えないことを意に介さないばかりか、それでいて日本文化通を自認する彼に対して、ある種の欺瞞を見ていたことも頭を過りました。そんなこともあり、
これではいかん!!
と、一念発起。独語会話のCDを聞いたり、帰国時に文法書や問題集を買って持ち帰り、毎日昼食後に少しずつ解いてみたり…、と、学生時代の不勉強の因果応報、なのか、この歳で何故??? なことをしてみたりもしているのです。うーん、でも自分から話す機会があまりないからでしょう。情けないくらい使えるようにならないんです。
ところでプリンセス、この2月でお城を出ます。今まではまがりなりにも、オフィスでもキッチンでも、社員や家族がドイツ語を話すのを毎日聞いていました。東欧諸国から来ている使用人や畑労働者達との共通言語もドイツ語しかありませんから、互いに全くのブロークンとは言え、ドイツ語で話す機会が皆無ではありませんでした。が、今後一人暮らしになると、ドイツ語をコンパルソリーで使う時間も聞く時間もおそらく著しく減ってしまうなぁ、と。そうなるとやはりドイツ語習得は一層遠い道のりかぁ、と、ちょっと寂しい気持ちになります。
この後牛の歩みでも少しずつドイツ語上達のための努力をするのか、もうここでスッパリ諦めあくまでエイリアンとしてオーストリアに居つくのか…。
最近随分ラジオや周囲の会話が、特にお題が音楽や芸術、ワイン関連だったりすると理解できるようになって来ただけに、かなり未練たっぷりなプリンセスであります。
原発事故の影響を心配し、あまりに多くのオーストリアのワイナリーや友人が「しばらくこっちにおいで」と言ってくれた、その言葉を真に受けて本当に来てしまった、という能天気の見本。
言葉のことも、当初あまり真剣に考えてはいませんでした。
だってこれまで取材は極々一部を除いて英語でとりあえず問題なかったし、一応大学で多少ドイツ語はかじっているし、高校生の頃交換留学プログラムで実質9か月アメリカに住んだ時も、3か月を過ぎる辺りからとりあえず日常会話には困らなかったような気がするし…。まぁ、現地に住めば大した苦労もなく言葉くらいは覚えるのだろう、と、タカをくくってました。
しかーし!!!
残念なことにアラフィフの運動神経(言語習得能力はこれに尽きる、とプリンセスは思っています)の衰えと言ったら…。我ながら言語習得の遅さに愕然とします。
しかも、仕事は依然、あんまり相手をじらしても迷惑だろう、と、こちらから英語で話してしまうし、オフィスでも込み入った話は全部英語だし、お爺ちゃんお婆ちゃんに至っては、私を英会話練習のいい相手、くらいに思っているよう…。しかも当然、公私にわたってこうやって日本語でコミュニケートしている時間が圧倒的に長い…。
結局、自分でも嫌になるくらいにドイツ語が自分のものになりません。
昨日も、お婆ちゃんがアセアセと昼食を取り分けながら"Yukari, gib mir einen großen Löffel"(大きいスプーン取って頂戴)と、叫んでいるのに、一瞬頭の中で「レッフェルとガーベル、ガーベルがフォークでレッフェルは…、ああ、スプーンだったわね」と、スパっと反応できない自分がいるのです。そう反芻している自分がつくづく悲しくなりました。※英語とドイツ語って、もっと似てるのかと思っていましたが、こういう基本的な単語からして、憎らしいくらいに違うのですよ。
その後お婆ちゃんが家族全員に向けて「このサラダは5人で取り分けて…」と、そこまではわかったのですが、「もっと沢山あるのだけれど、それは夜にうんたらかんたら…」。最終的に何が言いたいのかが霧の中…。結局今目の前にあるサラダを、自分が今どのくらい食べていいのか、それが夜のサラダとどういう関係にあるのか…」そういうことが俄かにすんなり理解できない訳です。死ぬほどイライラします。アホか? もう実質滞在1年半近くにもなるのに…、と。
こちらに来た当初は、仕事は英語。ドイツ語は情報を仕入れられればいい(=読めれば十分)、と思っていました。ところが実際には、片田舎での生活は、切符を買うにも、銀行口座を開くにも、携帯を持つにも、コトがちょっと込み入ると、ドイツ語ができないと話になりません。ワイナリーの仕事だって、畑でもセラーでも、ぜーんぶドイツ語。あたり前のことですが、その国の言葉をちゃんと解さないうちはお客さん、或いはよそ者に過ぎません。ヴィンツァーから本音を聞き出そうと思ったら、やはりドイツ語を自由に操れた方がいいに決まっています。
それに、プリンセスにはアメリカ人社長の下で働いた経験がありますが、元証券会社日本支社長の彼は、日本に10年以上いるのに、簡単な挨拶と数字くらいしか日本語を解さないし、覚えようともしなかったことを思い出しました。そして知能は十分に高いのに、日本語が使えないことを意に介さないばかりか、それでいて日本文化通を自認する彼に対して、ある種の欺瞞を見ていたことも頭を過りました。そんなこともあり、
これではいかん!!
と、一念発起。独語会話のCDを聞いたり、帰国時に文法書や問題集を買って持ち帰り、毎日昼食後に少しずつ解いてみたり…、と、学生時代の不勉強の因果応報、なのか、この歳で何故??? なことをしてみたりもしているのです。うーん、でも自分から話す機会があまりないからでしょう。情けないくらい使えるようにならないんです。
ところでプリンセス、この2月でお城を出ます。今まではまがりなりにも、オフィスでもキッチンでも、社員や家族がドイツ語を話すのを毎日聞いていました。東欧諸国から来ている使用人や畑労働者達との共通言語もドイツ語しかありませんから、互いに全くのブロークンとは言え、ドイツ語で話す機会が皆無ではありませんでした。が、今後一人暮らしになると、ドイツ語をコンパルソリーで使う時間も聞く時間もおそらく著しく減ってしまうなぁ、と。そうなるとやはりドイツ語習得は一層遠い道のりかぁ、と、ちょっと寂しい気持ちになります。
この後牛の歩みでも少しずつドイツ語上達のための努力をするのか、もうここでスッパリ諦めあくまでエイリアンとしてオーストリアに居つくのか…。
最近随分ラジオや周囲の会話が、特にお題が音楽や芸術、ワイン関連だったりすると理解できるようになって来ただけに、かなり未練たっぷりなプリンセスであります。
2013年2月10日日曜日
冷涼ワイン原理主義者達よ、額づくべし!!――ウヴェ・シーファー訪問記 エピローグ
そしてプリンセス、50ml程度しか注いでいない4本のワインと購入したReihburg 08が1本入った6入段ボール箱を片手に抱え、お城へ乗り継ぎ、乗り継ぎ帰途につきました。荷物がひとつ増えると必ず何か置いてきてしまう困った習性を持つプリンセス。帰り道はとにかく財布といただいたワインを持ち帰ることだけに集中:)しました。
お城に着くと時間は既に夜8時を回っています。昼をたっぷりいただいたので、わざわざ鍵を開けて母屋のキッチンへ入り夕食を食べるまでもありません。
かなり疲れてはいましたが、ウヴェの指示通り、いただいたワインを自室で今一度テイスティングすべくグラスを用意。こんな感じとなりました。
左からWeisser Schiefer, 同 S, BF Südburgenland, BF Pala. All 2011. |
セラーでの超特急テイスティングの際感激したヴァイサー・シーファー以外の3つが、それぞれとっても魅力的に香っているではありませんか!!!
改めて心ゆくまでテイスティングです(今度は飲みながら:)
最初がWeisser Schiefer ヴァイサー・シーファー11
11年とは思えないフレッシュで勢いのある酸。けれども酸に尖ったところが一切なく、ひたすら清らか。本当に綺麗なミネラル。量は膨大ながら、カリカリキシキシしたところが全くありません。このワイン、本当に素晴らしい♥ 一生飲んでいたい:)
次は遅摘&小樽熟成のWeisser Schiefer S ヴァイサー・シーファー S 11
なるほど。空気とこうして十分触れた後は、樽(古樽)のもたらすヌガーのような複雑味が、よりオレンジやアプリコットと一体になって、ずっと魅力が増します。とは言うものの、やはりブルゴーニュと言うよりは…ヴヴレに近いイメージかなぁ…。いや、それも違うなぁ。粘土石灰土壌のもたらす膨らみと中心から放射されるような伸びのある余韻とは逆の、インパクトの華やかさと、収束に向かう透明感はスレートならではの持ち味。敢えて喩えるならアルザスの上質なヴァンダンジュ・タルティヴのオーセロワとピノ・グリを足して2で割ったような感じ?? うーん、でもアルザスみたいな重量感、腰回りの太さは一切なく、特に余韻に残るのは辛口のヴァイサー・シーファーと全く同じ軽やかに昇華するが如きミネラルなのです。
そしてブラウフレンキッシュ ズュドブルゲンラント Blaufränkisch Südburgenland 11
テイスティングルームでは閉じまくっていたこのワイン、5時間ほどの時間を経て、すっかり別のワインになっています。黒々としたチェリー、細かくネットリとしたマジカル・タンニンも、ライーブルクやサパリほど端正ではないにしろ、はっきり感じられます。ウヴェのワインとしては一番横幅を感じるのは、より標高が低く、底土にスレートを共有するものの、ロームの割合が遥かに高く肥沃なドイチェシュッツェン(ウヴェはこの辺りですらアイゼンベアクDACに含めてしまうのが許せない模様)や、石灰土壌のクーニッヒスベアクのブドウも含んでいるからでしょう。次のパラと味わいを対比してみると、それが実によくわかります。透明感では遥かに後者に劣るものの、こちらの方が人懐っこく幅があり、懐の深い感じ。
最後にブラウフレンキッシュ パラ Blaufränkisch Pala 11
頑なに籠っていたこの子もしっかり化けてくれました! ああ、ようやくセラーで味わった12年のバレルサンプルに感じた東向きの畑らしい清冽さ、アプリコットやオレンジの透明感溢れる果実味、背後のウヴェ・ミネラルがはっきりと感じられます。正真正銘クオーツ&グリーン・スレートのワインです。そしてウヴェがサパリとライーブルクをひとつの類型として捉え、このパラは仲間に入れない理由もよくわかりました。あの、マジカル・タンニンと、ダーク・チェリーの風味はあまりありません。
全てのワインに共通するのは磨き込まれた、量は多いのにワインを固く感じさせない、軽やかなミネラル感。プリンセスがオーストリア全土のプレミアムワインに求めて止まないものです。そしてワインを思わず呑み込んでしまう自然なドライヴ感。…気が付けばプリンセス、あれこれ比較したり考えたりしながら、全てのボトルを半分近くづつ飲んでしまっていたくらいです:)
ウヴェのワインはもの凄い勢いで進化しています。
けれど、前にも書いたように、より人を選ぶ方向に、より分かる人にしか分からない方向へ、です。
モリッツのワインが、パーカーのブルゴーニュ始め冷涼ワイン部門:)の採点者であるDavid Schildknechtに見いだされ、急速にインターナショナル・スターダムを駆け上ったのとは対照的に、ウヴェはより求道者の道を深めた、と言ったらいいでしょうか。
最初は一緒にカマロンしていたのが、気が付いたらモリッツはパコ・デ・ルシアに、ウヴェはアグヘータになっていた…。って、我ながらフラメンコ・ファン以外には訳のわからない喩えですね:)。別の喩えをするなら、村の民謡神童が長じて片や美空ひばりに、片や正調民謡歌いになっていた、と言ったらいいのか。或いは、最初はともにセセッションの急先鋒で、後に袂を分かったクリムトとシーレに喩えたら、もう少しわかり易いでしょうか。
シーレの絵が持つ、ヒリヒリするような情熱を私はウヴェのトップ・ワインに感じます。一方で、シーレにはそうした一連のヒリヒリするような表現意欲の塊のような有名作品とは別の、母方の故郷チェスキー・クルムロフ(現チェコ)の牧歌的風景を描いた沢山のあまり知られていない絵があるのですが、私はウヴェの白ワインには、シーレの一連の風景画に喩え得る、彼の地の一面、もっとずっとリラックスした一面を見る思いがします。
狭義のアイゼンベアクの藪(プシュタ=かつてのブドウ畑)を、現在残る優良セレクションのブラウフレンキッシュで再び蘇らせるのが彼の夢。そのために「資金がないのが僕の問題」と彼は公言します。通常ワイナリーの運転資金を稼ぐためには、ベーシックなワイン、所謂“ブレッド&バターワイン”を増やすのが手っ取り早い方法です。けれどウヴェは、リースを含めこれ以上生産量を段階的に増やす積りはありません。買いブドウで大衆の向こう受けを狙った、飲みやすいワインを造る積りもありません。
そんなウヴェのワインは、その最もベーシックなズュドブルゲンラントとヴァイサー・シーファーですら、通人を唸らせるに十分な質を持っています。一方で彼のワインは、そのレベルであっても、特に赤は、抜栓後超還元的でなかなか開かないは、一見わかり易い媚びるような果実味はないは…。サービスをする人間と、飲む人間を著しく選ぶワイン、と言ってもいいと思います。
だからこそプリンセスは、一体どれくらいの日本のプロと愛好家が、ウヴェのワインの素晴らしさをきちんと評価し、その美質を最大限引き出して楽しんで下さるか、とってもとっても期待しながら、これを書いています。
3月の帰国時にほんの少しワインを手配しました。ラッキーな皆さんは味わうチャンスがあるかも知れません。
そうしたら、是非、プリンセスに感想をお聞かせ下さい!
2013年2月8日金曜日
あは! 見破られてました:)―― ウヴェ・シーファー訪問記 第5章
セラーでの驚きからプリンセスが回復し、テイスティング・ルームへの移動を促されつつ、ウヴェがプリンセスに尋ねます。「帰りのバスの時間は?」
ひえ! あと30分しかないではありませんか!!! …ということは、ここを15分後には出なければなりません。味わえるのは3種? 4種? 幸い現行ワインはそんなに多くはありません。
…プリンセスが時間及び金銭管理能力に致命的欠陥を抱えていることは、長く、或いは深くお付き合いいただいた方の間では有名な話(自慢できることではありませんが)。こうして畑、セラー訪問やテイスティング に夢中になっていると、いつも帰りの時間を心配してくれるのはヴィンツァーの方…済みません、毎度お手間かけますぅ:)
さて、そんな訳で無駄口一切なしのテイスティング。当然写真もなし:)
最初のワインはブラウフレンキッシュ ズュドブルゲンラント Blaufränkisch Südburgenand 2011
非常に還元的に閉じたノーズ。白コショウや樟脳のようなやや神経質なミネラル。11年としてはとてもフレッシュないい酸。原成岩の白ワインのような弾けるようなミネラル感とかなりのタンニン。長い余韻。
小売現地価格€13-14くらいのワインとしては恐ろしいくらいのハイ・コスパとも言えるけれど、逆に、このクラスのワインが一般的に持つ、親しみやすさとか可愛気とかとは無縁。
次はブランフレンキッシュ パラ Blaufränkisch Pala 2011
透明感溢れるチェリーとアプリコット。非常にフレッシュな酸。細かい質の高いタンニン。…でも、開かない。可愛気はないなぁ…。新しいウチの抜栓直後はちょっと辛いかなぁ…。
なんだかズュドブルゲンラントもパラも、ボトリングされたものの方が、さっきセラーで試した未ボトリングのバレルサンプルより、さらに固く閉じてしまった感じがします。所謂ボトルショックというやつでしょうか…。
そして白に移り、ヴァイサー・シーファー Weisser Schiefer 2011
え? 前回取材時にその安さと美味しさに感服したGrüner Schiefer(GV)は? …2011は売り切れで、12からはもう止めてしまったのだそうです。残念…
気を取り直してWeisser Schiefer に戻ります。Welsch Rieslingが大半で、Weissburgunderが多少、場合によってはGVもブレンドされるというワイン。
キリッと締りのある、けれど角のない、高く軽やかないい酸。アプリコットの風味。グリーン・スレートそのものの"ウヴェ・ミネラル"。カリカリしたところがなく、本当に石清水のように清冽。
セラードア価格€7かそこらのグリューナー・シーファーのコスパにも驚きでしたが、それでもグリューナーはあくまでも「お買い得の超良質ワイン」というレベル。
対するこちらは、セラードア価格で€2高いとは言え、純然たる通好み。ミネラルが美しい! 素晴らしい! 絶対に「買い」!
そして最後にヴァイサー・シーファーS Weisser Schiefer S 2011
ウヴェはヴァイサー・シーファーにノーマル、S、Mの3種持っていて、Sはセレクションの意味。遅摘みブドウを小樽(4年目)熟成。オレンジ、ヌガーの複雑な風味。背後に膨大なウヴェ・ミネラル。 ウヴェはブルゴーニュと比肩し得るワイン、と言ったけれど、ブルゴーニュとはかなり違った趣…。質も申し分ないし、個性的で面白いワインだけれど…プリンセス的には、ノーマルのヴァイサー・シーファーの方が、俄然「らしい」という点で、価格はより安いけれども、「すごいワイン」だと思うのです。
因みにもうひとつのMはマイシェ(果皮)の略で、ご想像通り、果皮とともに醸した、所謂オレンジワイン。これは2011年が来年にならないとリリースされません。
ということで、もうバスに駆け込むのにギリギリの時間。ウヴェにライーブルクの08を1本買えないか、とお願いし、車に乗ろうとすると…、
…ふふふ、見透かされていました:)
プリンセス、ワインの評価が正直に表情に出てしまうのですよ。
ボトルからの試飲で一番感動したのはヴァイサー・シーファー。目当てのブラウフレンキッシュ ズュトブルゲンラントとパラが、あまりに固く閉じていて、なんだか評価のしようもなく、諸手を挙げて絶賛する、という感じにはならなかったんですよね。
「開けたワイン、全部家に持って帰って、ゆっくり楽しんでくれ」とウヴェ。「今晩から明日の方がずっと良くなるはずだから」
プリンセス、ここから5時間ほどかけて、バスと電車を乗り継ぎお城に帰ります。アラフィフ女に5本のワインは決して軽くはありません。
しかーし!
30代後半になって、日々ワインの木箱ケースを一日何十箱と品出ししていた体力は、腐っても鯛:) こういうときにモノを言います。
…ということで、有難くウヴェの申し出を受けさせていただき、片手にワイン5本入りの段ボール箱を抱え、プリンセスはお城への長い長い帰途につきました。
訪問記のエピローグはまた次回。
ひえ! あと30分しかないではありませんか!!! …ということは、ここを15分後には出なければなりません。味わえるのは3種? 4種? 幸い現行ワインはそんなに多くはありません。
…プリンセスが時間及び金銭管理能力に致命的欠陥を抱えていることは、長く、或いは深くお付き合いいただいた方の間では有名な話(自慢できることではありませんが)。こうして畑、セラー訪問やテイスティング に夢中になっていると、いつも帰りの時間を心配してくれるのはヴィンツァーの方…済みません、毎度お手間かけますぅ:)
最初のワインはブラウフレンキッシュ ズュドブルゲンラント Blaufränkisch Südburgenand 2011
非常に還元的に閉じたノーズ。白コショウや樟脳のようなやや神経質なミネラル。11年としてはとてもフレッシュないい酸。原成岩の白ワインのような弾けるようなミネラル感とかなりのタンニン。長い余韻。
小売現地価格€13-14くらいのワインとしては恐ろしいくらいのハイ・コスパとも言えるけれど、逆に、このクラスのワインが一般的に持つ、親しみやすさとか可愛気とかとは無縁。
次はブランフレンキッシュ パラ Blaufränkisch Pala 2011
透明感溢れるチェリーとアプリコット。非常にフレッシュな酸。細かい質の高いタンニン。…でも、開かない。可愛気はないなぁ…。新しいウチの抜栓直後はちょっと辛いかなぁ…。
なんだかズュドブルゲンラントもパラも、ボトリングされたものの方が、さっきセラーで試した未ボトリングのバレルサンプルより、さらに固く閉じてしまった感じがします。所謂ボトルショックというやつでしょうか…。
そして白に移り、ヴァイサー・シーファー Weisser Schiefer 2011
え? 前回取材時にその安さと美味しさに感服したGrüner Schiefer(GV)は? …2011は売り切れで、12からはもう止めてしまったのだそうです。残念…
気を取り直してWeisser Schiefer に戻ります。Welsch Rieslingが大半で、Weissburgunderが多少、場合によってはGVもブレンドされるというワイン。
キリッと締りのある、けれど角のない、高く軽やかないい酸。アプリコットの風味。グリーン・スレートそのものの"ウヴェ・ミネラル"。カリカリしたところがなく、本当に石清水のように清冽。
セラードア価格€7かそこらのグリューナー・シーファーのコスパにも驚きでしたが、それでもグリューナーはあくまでも「お買い得の超良質ワイン」というレベル。
対するこちらは、セラードア価格で€2高いとは言え、純然たる通好み。ミネラルが美しい! 素晴らしい! 絶対に「買い」!
そして最後にヴァイサー・シーファーS Weisser Schiefer S 2011
ウヴェはヴァイサー・シーファーにノーマル、S、Mの3種持っていて、Sはセレクションの意味。遅摘みブドウを小樽(4年目)熟成。オレンジ、ヌガーの複雑な風味。背後に膨大なウヴェ・ミネラル。 ウヴェはブルゴーニュと比肩し得るワイン、と言ったけれど、ブルゴーニュとはかなり違った趣…。質も申し分ないし、個性的で面白いワインだけれど…プリンセス的には、ノーマルのヴァイサー・シーファーの方が、俄然「らしい」という点で、価格はより安いけれども、「すごいワイン」だと思うのです。
因みにもうひとつのMはマイシェ(果皮)の略で、ご想像通り、果皮とともに醸した、所謂オレンジワイン。これは2011年が来年にならないとリリースされません。
ということで、もうバスに駆け込むのにギリギリの時間。ウヴェにライーブルクの08を1本買えないか、とお願いし、車に乗ろうとすると…、
…ふふふ、見透かされていました:)
プリンセス、ワインの評価が正直に表情に出てしまうのですよ。
ボトルからの試飲で一番感動したのはヴァイサー・シーファー。目当てのブラウフレンキッシュ ズュトブルゲンラントとパラが、あまりに固く閉じていて、なんだか評価のしようもなく、諸手を挙げて絶賛する、という感じにはならなかったんですよね。
「開けたワイン、全部家に持って帰って、ゆっくり楽しんでくれ」とウヴェ。「今晩から明日の方がずっと良くなるはずだから」
プリンセス、ここから5時間ほどかけて、バスと電車を乗り継ぎお城に帰ります。アラフィフ女に5本のワインは決して軽くはありません。
しかーし!
30代後半になって、日々ワインの木箱ケースを一日何十箱と品出ししていた体力は、腐っても鯛:) こういうときにモノを言います。
…ということで、有難くウヴェの申し出を受けさせていただき、片手にワイン5本入りの段ボール箱を抱え、プリンセスはお城への長い長い帰途につきました。
訪問記のエピローグはまた次回。
2013年2月6日水曜日
ウヴェ・シーファー訪問記 第4章 バレル・テイスティング
ウヴェを訪ねたのは1月の10日。この時点で、秋にボトリング予定の赤看板畑の2011年のメインブレンドは既に終わっていました。つまり、2,3の特殊な樽を除いてほぼブレンドが完了した状態です。
この状態の2011年の赤と、まだマロを終えて間もない2012年の赤を樽から味わいます。ちょっとややこしいのですが、この後テイスティングルームで、既に2011年ヴィンテージがリリースされているワインについてはボトルから、未リリースのワインについてはセラーでバレルサンプルを味わう、という手続き。
まず、Blaufränkisch Südburgenlandブラウフレンキッシュ ズュドブルゲンラント 2012になる樽から。
香りに、まるで原成岩の白ワインのようなやや神経質な白胡椒のようなニュアンスがあります。まだ若過ぎて品質を判断する段階ではありませんが、タンニンの質の良さはこのクラスのワインとしては出色です。
次はBlaufränkisch Palaパラ 2012。
かなり閉じていますが、香りを嗅いただけで、透明な光の差すイメージ。酸が爽やかで、いかにも東向き畑のワインに成長してくれました。口に含むと柔らかで軽やかなアプリコットやオレンジの果実味が実に上品。
そして、ウヴェが我が子のように扱う畑、Blaufränkisch Szapariサパリ 2011。
28日間と33日間の醸しのバッチのブレンド。ああ、ブラウフレンキッシュならではのダークな果実味とミネラル! そしてネットリと細かいタンニンは、拙著にプリンセスが「マジカル・タンニン」と書いた、それそのもの! あの当時はこのタンニン、ライーブルクだけが表現していた個性だったように思います。成程、ウヴェが「サパリは益々ライーブルクに似て来た」と話す訳だ。酸の印象はパラの方が際立つのですが、実測値はこちらの方が0.4g/l高い…。それだけ様々な味の要素がより凝縮されて、高い酸をストレートに感じさせないのでしょう。
最後に看板畑Blaufränkisch Reihburgライーブルク 2011。
これは500ℓの開放樽で5週間マセラシオンしたバッチと、開放桶で3週間マセラシオンしたバッチのブレンド。
ああ、これはやはり…役者が違う! …というのか、パラの品の良い透明な果実味と、サパリの深みとマジカル・タンニンが、より高次元に“アウフヘーベン”、なーんて言葉を思い出すような感じに、合体&展開しています。リリース前のこんなに早い時期から、既に威厳とか品格、というものを感じさせるからさすがです。
プリンセスが感心していると、ウヴェがイタズラっぽい顔をして、「ちょっと面白いものがあるから」と小樽から赤ワインを注いでくれます。ライーブルクの3つめのバッチだそう。
プリンセス驚愕! とても同じライーブルクとは思えません!!! タンニンの量も格段に多いし、ワインがなんだか青っぽく感じられるのです。
「なんなの、これ?」という顔をするプリンセスに対するウヴェの説明は、「除梗せずに、クラッシュもなして、フットストンピングで5日間醸したものを、新樽へ。」
P: 何故そんなことを?
Uwe: 単なるロジスティック・リーズンさ。おかしなタイミングで搬入されたブドウがあって、その量の果実に合う樽がそれしかなかったので、ちょっと色々試してみたんだ。
P: …フットストンピングだし、醸し期間も短いし。…ということは、この膨大に加わっているタンニンは、茎と新樽由来かぁ…。青っぽく感じるのは、それが茎からのものだから? それとも新樽のタンニンには果実味をそういうニュアンスに感じさせる作用があるの?
Uwe; うーん、まあ、その全てが合体した、ってところだろうね。
同じブドウから、どれだけかけ離れたスタイルのワインが造れるかの、極端な見本を見せられた思いです。また別の視点から見れば、「フットストンピング」などという単一のテクニカルな言葉にだけ惑わされると、いかにその用語が喚起するイメージと、実際のワインの味わいがかけ離れたことになり得るかの見本、と言っていいかも知れません。
あんまり驚いてプリンセス、この新樽の中のママ子ライーブルクを、2012年ライーブルクにブレンドする積りかどうか、という重大な質問をするのを忘れてしまいました…。
プリンセスなら、ブレンドしないか、或いはするにしても、試験管でゼロ→5%→10%と混入量を増やして、タンニンがマジカルでなくなる辺りを見極めて、他はズュドブルゲンラントに格下げブレンドします。あくまでも印象ですが、1割以上混ぜると、かなりライーブルクの個性(と少なくともプリンセスが思っているもの)を損ねるような気がします。
※でも、ブレンドって1+1が2でないところがあるので、ブレンドでライーブルクの意外な側面が引き出される、ってことだってないとは限りません:)
また、プリンセスが苦手な木の香りプンプンの所謂新樽香や、焦がしを感じさせるコーヒーやココアなどの香りは皆無でしたが、その理由がライーブルクの果実味の凝縮感が樽風味に勝っているためか、或いは新樽と言っても一切焦がしのない樽のためか、これもはっきり事実を確かめておくべきでした。
ところで、プリンセスは最初にオーストリアの産地を訪ねた頃、ローラント・フェリッヒ(モリッツ)とウヴェ・シーファーのワインは「似ている」と思っていました。それも道理で、ローラントがモリッツ・プロジェクトを立ち上げる前後、彼らはコラボの可能性を探っていたようなのです。
けれど今は、特にそのトップ・キュヴェは随分違うディレクションにあるように思います。
モリッツのワインは、ネッケンマークトの土壌の主体がグリマー・シーファー主体とは言え、どこかに石灰的膨らみがあり、コントロールが効いているとは言え、新樽風味も一定量は肯定的に働くし、製造過程で果汁を空気に触れさせることを恐れない、そんな方向性です。そしてその方向性はこの10年、そんなに大きく変わっていません。
一方のウヴェは、「スタート当初と今と、醸造は何を変えたの?」というプリンセスのオバカな質問に「全部」と答えるくらい、ワインのスタイルが、少しずつなのですが、長期的には随分変化しています。
まず当初は格の高いワインほど、新小樽を多用。段々新樽比率も小樽比率も少なくなって、「そのうち小樽は全部廃棄し、全てのワインを12~35hℓの大樽で熟成させる積り」というところまで来ました。
また当初はワインをボルドーワインのように扱い、ラッキングももっと頻繁にしていましたが、現在ではラッキングは1回のみ。従ってかなり極端に還元的なスタイルとなります。
還元的、というと何か自然派特有の汚い香りを伴う印象があるのですが、ウヴェの場合それは全くありません。ただ、リリース直後、特に抜栓直後は酸とミネラルが固く閉じ、神経質なニュアンスが出るのです。膨らみとは無縁の、無愛想で恐ろしくストイックなワイン、とでも表現しましょうか…。
そして、そのようにスタイルを変えた結果、彼のこだわるアイゼンベアク一帯の土壌―グリーン・スレート―の個性は、更に磨きをかけられ、精錬・昇華したカタチでワインに封じ込められることになりました。
ただし別の言い方をするなら、良くも悪くも、よりヒトを選ぶワインとなりました…。
それでは最終章、現行ヴィンテージのテイスティングの様子は、また次回に。
この状態の2011年の赤と、まだマロを終えて間もない2012年の赤を樽から味わいます。ちょっとややこしいのですが、この後テイスティングルームで、既に2011年ヴィンテージがリリースされているワインについてはボトルから、未リリースのワインについてはセラーでバレルサンプルを味わう、という手続き。
まず、Blaufränkisch Südburgenlandブラウフレンキッシュ ズュドブルゲンラント 2012になる樽から。
香りに、まるで原成岩の白ワインのようなやや神経質な白胡椒のようなニュアンスがあります。まだ若過ぎて品質を判断する段階ではありませんが、タンニンの質の良さはこのクラスのワインとしては出色です。
次はBlaufränkisch Palaパラ 2012。
かなり閉じていますが、香りを嗅いただけで、透明な光の差すイメージ。酸が爽やかで、いかにも東向き畑のワインに成長してくれました。口に含むと柔らかで軽やかなアプリコットやオレンジの果実味が実に上品。
大樽はPauschaとStockingerの2種。前者はストラクチャー、 後者はフィネスと余韻に寄与する、とのこと。 |
28日間と33日間の醸しのバッチのブレンド。ああ、ブラウフレンキッシュならではのダークな果実味とミネラル! そしてネットリと細かいタンニンは、拙著にプリンセスが「マジカル・タンニン」と書いた、それそのもの! あの当時はこのタンニン、ライーブルクだけが表現していた個性だったように思います。成程、ウヴェが「サパリは益々ライーブルクに似て来た」と話す訳だ。酸の印象はパラの方が際立つのですが、実測値はこちらの方が0.4g/l高い…。それだけ様々な味の要素がより凝縮されて、高い酸をストレートに感じさせないのでしょう。
最後に看板畑Blaufränkisch Reihburgライーブルク 2011。
これは500ℓの開放樽で5週間マセラシオンしたバッチと、開放桶で3週間マセラシオンしたバッチのブレンド。
ああ、これはやはり…役者が違う! …というのか、パラの品の良い透明な果実味と、サパリの深みとマジカル・タンニンが、より高次元に“アウフヘーベン”、なーんて言葉を思い出すような感じに、合体&展開しています。リリース前のこんなに早い時期から、既に威厳とか品格、というものを感じさせるからさすがです。
さてと何を試してもらおうか…。プリンセスほとんど実験台:) |
プリンセス驚愕! とても同じライーブルクとは思えません!!! タンニンの量も格段に多いし、ワインがなんだか青っぽく感じられるのです。
「なんなの、これ?」という顔をするプリンセスに対するウヴェの説明は、「除梗せずに、クラッシュもなして、フットストンピングで5日間醸したものを、新樽へ。」
P: 何故そんなことを?
Uwe: 単なるロジスティック・リーズンさ。おかしなタイミングで搬入されたブドウがあって、その量の果実に合う樽がそれしかなかったので、ちょっと色々試してみたんだ。
P: …フットストンピングだし、醸し期間も短いし。…ということは、この膨大に加わっているタンニンは、茎と新樽由来かぁ…。青っぽく感じるのは、それが茎からのものだから? それとも新樽のタンニンには果実味をそういうニュアンスに感じさせる作用があるの?
Uwe; うーん、まあ、その全てが合体した、ってところだろうね。
樽メーカーは、タランソー、セガン・モローなど様々ですが |
あんまり驚いてプリンセス、この新樽の中のママ子ライーブルクを、2012年ライーブルクにブレンドする積りかどうか、という重大な質問をするのを忘れてしまいました…。
プリンセスなら、ブレンドしないか、或いはするにしても、試験管でゼロ→5%→10%と混入量を増やして、タンニンがマジカルでなくなる辺りを見極めて、他はズュドブルゲンラントに格下げブレンドします。あくまでも印象ですが、1割以上混ぜると、かなりライーブルクの個性(と少なくともプリンセスが思っているもの)を損ねるような気がします。
※でも、ブレンドって1+1が2でないところがあるので、ブレンドでライーブルクの意外な側面が引き出される、ってことだってないとは限りません:)
また、プリンセスが苦手な木の香りプンプンの所謂新樽香や、焦がしを感じさせるコーヒーやココアなどの香りは皆無でしたが、その理由がライーブルクの果実味の凝縮感が樽風味に勝っているためか、或いは新樽と言っても一切焦がしのない樽のためか、これもはっきり事実を確かめておくべきでした。
Uweが自分でお金を出して買う樽はこのDarnajouと |
けれど今は、特にそのトップ・キュヴェは随分違うディレクションにあるように思います。
モリッツのワインは、ネッケンマークトの土壌の主体がグリマー・シーファー主体とは言え、どこかに石灰的膨らみがあり、コントロールが効いているとは言え、新樽風味も一定量は肯定的に働くし、製造過程で果汁を空気に触れさせることを恐れない、そんな方向性です。そしてその方向性はこの10年、そんなに大きく変わっていません。
それから、このberthomieuの2種のみ。あとは他ワイナリーのセコハン |
まず当初は格の高いワインほど、新小樽を多用。段々新樽比率も小樽比率も少なくなって、「そのうち小樽は全部廃棄し、全てのワインを12~35hℓの大樽で熟成させる積り」というところまで来ました。
また当初はワインをボルドーワインのように扱い、ラッキングももっと頻繁にしていましたが、現在ではラッキングは1回のみ。従ってかなり極端に還元的なスタイルとなります。
還元的、というと何か自然派特有の汚い香りを伴う印象があるのですが、ウヴェの場合それは全くありません。ただ、リリース直後、特に抜栓直後は酸とミネラルが固く閉じ、神経質なニュアンスが出るのです。膨らみとは無縁の、無愛想で恐ろしくストイックなワイン、とでも表現しましょうか…。
そして、そのようにスタイルを変えた結果、彼のこだわるアイゼンベアク一帯の土壌―グリーン・スレート―の個性は、更に磨きをかけられ、精錬・昇華したカタチでワインに封じ込められることになりました。
ただし別の言い方をするなら、良くも悪くも、よりヒトを選ぶワインとなりました…。
それでは最終章、現行ヴィンテージのテイスティングの様子は、また次回に。
2013年2月5日火曜日
帰国時イベントのお知らせ 前半:3月10日まで――ほぼミッヒのお供
早いもので、次の帰国まであと1カ月を切ってしまいました。恒例の帰国時イベントのお知らせをさせて下さい。尚青字は業界対象です。
VORTEX春の試飲会
日時: 2月27日(水) 14:30~17:00
場所: レストラン オザミ トーキョー
趣向: フランスの自然派を中心に筋の通った品揃えで高い評価を得るヴォルテックスの春の試飲会。お馴染み、硬質なミネラルが魅力のルーディ・ヒピラーは勿論、3つの赤の新顔ワイナリー(Muhr-van der Niepoort, Hannes Schuster, Jagini)にもご期待下さい! プリンセスもワイン注ぎのお手伝いで参上します。
料金: 無料
申込受付: ヴォルテックス 高橋まで tel 03-5541-3223 email info@vortex-wine.com
FOODEX SEMINAR
日時: 3月5日(火) 13:00~
場所: 幕張メッセ Foodex会場 セミナールームC
テーマ: オーストリアワイン、各産地&DACに何を求めるべきか
趣向: Foodex参加ワイナリーのワインを試飲しながら、オーストリア各産地の特徴に触れ、DAC制度ついての最新情報をお届けします。
料金: 無料
申込受付: オーストリア大使館商務部 松本まで
定員: 50名
主催: オーストリアワインマーケティング協会
シュロス・ゴーベルスブルクのオーナーに日本の食文化の素晴らしさを教えてあげる集い
日時: 3月5日(火) 19:00~
場所: 日本橋 仁行 http://www.nigyou.sakura.ne.jp/omakase.html
料金: 1万5千円
定員: 15人
申込受付: 平田 email<jordan21th@hotmail.com>まで
趣向: 表向きお城ワイナリー当主を迎えてのワインメーカーズ・ディナー。実際には、蕎麦の名店仁行で、素晴らしいお食事にオーストリアワインを合わせつつ、比較対照し面白そうなドイツ他各国ワインや日本酒も揃え、参加者の皆さんが、ミッヒに日本の食文化の素晴らしさを教えてあげる集い。
ワイン: Schloss Gobelsburg Grüner Veltliner Renner 11, SG Riesling Gaisberg 11, SG Riesling Heiligenstein 11, SG Riesling Tradition 10
主催; プリンセス&平田耕治
協賛: オーストリアワインマーケティング協会、オーストリア大使館商務部、シュロス・ゴーベルスブルク 以下全てのイベントで同様。
シュロス・ゴーベルスブルク ワインメーカーカーズ・ディナー 兼 アンドラ・モンターニュ火災被害支援チャリティー
日時: 3月6日(水) 19:00~
場所: マルゴ・ルナ・ソラ(丸の内 新東京ビルB1) http://www.marugo-s.com/lunasola/
料金: 5千円
申込受付: マルゴの岩井まで tel 03-6273-4605
趣向: プリンセスがお世話になっているお城ワイナリーのワインメーカーズディナーと、プリンセスとお城ワイナリーをいつも応援してくれている塩田怪鳥の支援チャリティーを一度にやってしまおう、というプリンセスならではの荒業:)かつ関係各方面のご理解ご協力で実現した超お得企画。ビュッフェ形式ながら、通常9千~1万円相当のディナーを、義捐金千円込5千円で実現。この価格設定も計算のできないプリンセスならでは?
できればオーストリアファン、アンドラモンターニュファンを自認する皆さまに、オーストリアワインは初めて、というお友達も連れ立っていらしていただきたい!
主催; プリンセス
オーガナイズ:平田耕治
シュロス・ゴーベルスブルク&AWA扱いオーストリアワインの業界向け試飲会 in 大阪 ミッヒによるオーストリアワイン・セミナー付
日時: 3月9日(土) 14:00~17:00
場所: 川と山 北新地本店 http://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27004507/
料金: 無料
申込受付: 上井 email<rel-eru@gaia.eonet.ne.jp>まで
趣向: お城ワイナリーと、その2つ目の輸入元であるAWA、さらに酒販店トムギャルソンとのコラボでお送りする、オール・オーストリアンの試飲会。ミッヒのセミナーもあります。
オーガナイズ: 上井俊直
シュロス・ゴーベルスブルク ワインメーカーカーズ・ディナー in 大阪
日時: 3月9日(土) 19:00~
場所: 川と山 北新地本店 http://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27004507/
料金: 16,000円
申込受付: 上井 email<rel-eru@gaia.eonet.ne.jp>まで
趣向: お城ワイナリーの多彩な白ワイン達を創作串揚げとともにお楽しみいただきます。
ワイン: ゼクト NV、リースリング ウルゲシュタイン 2011、グリューナー・ヴェルトリーナー レンナー 2011、リースリング ハイリゲンシュタイン 2007、リースリング アウスレーゼ 2011
オーガナイズ: 上井俊直
VORTEX春の試飲会
日時: 2月27日(水) 14:30~17:00
場所: レストラン オザミ トーキョー
趣向: フランスの自然派を中心に筋の通った品揃えで高い評価を得るヴォルテックスの春の試飲会。お馴染み、硬質なミネラルが魅力のルーディ・ヒピラーは勿論、3つの赤の新顔ワイナリー(Muhr-van der Niepoort, Hannes Schuster, Jagini)にもご期待下さい! プリンセスもワイン注ぎのお手伝いで参上します。
料金: 無料
申込受付: ヴォルテックス 高橋まで tel 03-5541-3223 email info@vortex-wine.com
FOODEX SEMINAR
日時: 3月5日(火) 13:00~
場所: 幕張メッセ Foodex会場 セミナールームC
テーマ: オーストリアワイン、各産地&DACに何を求めるべきか
趣向: Foodex参加ワイナリーのワインを試飲しながら、オーストリア各産地の特徴に触れ、DAC制度ついての最新情報をお届けします。
料金: 無料
申込受付: オーストリア大使館商務部 松本まで
定員: 50名
主催: オーストリアワインマーケティング協会
シュロス・ゴーベルスブルクのオーナーに日本の食文化の素晴らしさを教えてあげる集い
日時: 3月5日(火) 19:00~
場所: 日本橋 仁行 http://www.nigyou.sakura.ne.jp/omakase.html
料金: 1万5千円
定員: 15人
申込受付: 平田 email
趣向: 表向きお城ワイナリー当主を迎えてのワインメーカーズ・ディナー。実際には、蕎麦の名店仁行で、素晴らしいお食事にオーストリアワインを合わせつつ、比較対照し面白そうなドイツ他各国ワインや日本酒も揃え、参加者の皆さんが、ミッヒに日本の食文化の素晴らしさを教えてあげる集い。
ワイン: Schloss Gobelsburg Grüner Veltliner Renner 11, SG Riesling Gaisberg 11, SG Riesling Heiligenstein 11, SG Riesling Tradition 10
主催; プリンセス&平田耕治
協賛: オーストリアワインマーケティング協会、オーストリア大使館商務部、シュロス・ゴーベルスブルク 以下全てのイベントで同様。
シュロス・ゴーベルスブルク ワインメーカーカーズ・ディナー 兼 アンドラ・モンターニュ火災被害支援チャリティー
日時: 3月6日(水) 19:00~
場所: マルゴ・ルナ・ソラ(丸の内 新東京ビルB1) http://www.marugo-s.com/lunasola/
料金: 5千円
申込受付: マルゴの岩井まで tel 03-6273-4605
趣向: プリンセスがお世話になっているお城ワイナリーのワインメーカーズディナーと、プリンセスとお城ワイナリーをいつも応援してくれている塩田怪鳥の支援チャリティーを一度にやってしまおう、というプリンセスならではの荒業:)かつ関係各方面のご理解ご協力で実現した超お得企画。ビュッフェ形式ながら、通常9千~1万円相当のディナーを、義捐金千円込5千円で実現。この価格設定も計算のできないプリンセスならでは?
できればオーストリアファン、アンドラモンターニュファンを自認する皆さまに、オーストリアワインは初めて、というお友達も連れ立っていらしていただきたい!
主催; プリンセス
オーガナイズ:平田耕治
シュロス・ゴーベルスブルク&AWA扱いオーストリアワインの業界向け試飲会 in 大阪 ミッヒによるオーストリアワイン・セミナー付
日時: 3月9日(土) 14:00~17:00
場所: 川と山 北新地本店 http://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27004507/
料金: 無料
申込受付: 上井 email<rel-eru@gaia.eonet.ne.jp>まで
趣向: お城ワイナリーと、その2つ目の輸入元であるAWA、さらに酒販店トムギャルソンとのコラボでお送りする、オール・オーストリアンの試飲会。ミッヒのセミナーもあります。
オーガナイズ: 上井俊直
シュロス・ゴーベルスブルク ワインメーカーカーズ・ディナー in 大阪
日時: 3月9日(土) 19:00~
場所: 川と山 北新地本店 http://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27004507/
料金: 16,000円
申込受付: 上井 email
趣向: お城ワイナリーの多彩な白ワイン達を創作串揚げとともにお楽しみいただきます。
ワイン: ゼクト NV、リースリング ウルゲシュタイン 2011、グリューナー・ヴェルトリーナー レンナー 2011、リースリング ハイリゲンシュタイン 2007、リースリング アウスレーゼ 2011
オーガナイズ: 上井俊直
2013年2月2日土曜日
こんなとき、あなたなら?――ウヴェ・シーファー訪問記 第3章
サパリの土霊?に力づけられたのか、ウヴェは、ヘル(綴りはHöllですが)という町を通り抜けながら、「ヘルの町長の名前はデヴィルだったんだよ。」などという軽口まで叩きながら、「2012年は2011年同様暖かい年だけれど、よりアルコールと酸とのバランスの取れたグレートヴィンテージだ」と嬉しそうに語ります。
そしてハーミッシュといういかにも"middle of nowhere"な感じの閑散とした村のレストラン、"Gasthaus Csencsitsガストハウス・チェンチッチ"で車を降りました。
中に入ると「へえ? こんなところに?」と驚く、ちゃんとしたレストラン。しかも料理が美味しい!
最初に出てきた野菜のスープは滋味溢れる優しい、けれどそれだけではない、根菜類のテクスチャーの変化の楽しい一品。
そしてメインのパンパンに詰め物をした鶉は、供されたサイズを見て「いけません、そんなに食べられるはずないでしょう」と思いましたが、軽やかかつ旨味たっぷりな詰め物のお味が素晴らしく、見事に完食:)
道理で、聞けば、オーナーシェフのユルゲン・チェンチッチは、あのラントハウス・バッハーのトーマス・ドーファーやシュタイラ・ヴィルトのリヒャルト・ラウホとともに、JEUNES RESTAURATEURS D'EUROPEのメンバー。将来を嘱望されるヨーロッパを代表する若手トップシェフの一人、という訳です。
そういえば、拙著取材の4年前。プリンセスはほとんど食事を取る間もなかったのですが、ほんの一口いただいたウヴェの奥様手作りの肉料理が抜群に美味しく、しかも皿、銀器、コーヒーカップ、テーブルセッティングの全てが完璧なセンスの良さだったことが思い起こされます。
当然のことかも知れませんが、いいワインを造る人は、美味しいものが大好きだし、美味しいものを食べる時間や空間を大切にします。
さて、ワイン。これからワイナリーに行ってセラーを見学し、最後にワインをテイスティングする訳ですから、ここでワインをじっくり楽しんでいる暇は残念ながらありません。
そんな中、ウヴェがレストランのリストから選んでくれたのは、05 Eisenberg(2010が最後のヴィンテージで、11からはBurgenlandに改称)のボルドー型ハーフボトルと、07 Szapari。
ええ? ボルドー・ボトルのアイゼンベアク??? …と口には出しませんでしたが、怪訝な顔をするプリンセスに、「いや、ハーフを最初に造ったので、肩の落ちたボトルが用意できなかったんだ」と、ウヴェの説明。
その味わいには、のっけから♥! 深みと力のある赤い果実の香り。美しいテンション溢れる酸。おそらく今より抽出の強い、たっぷりとしたタンニンは、とても柔らかく余韻も長い。これが小売価格せいぜい€7-8かそこら(フルボトル)で売られていたワインでしょうか?
当時からこのクラスも全て12-32hℓの開放桶&大樽で発酵&熟成。ただし当時は8ヵ月、現在は約1年、将来的にはあと半年熟成期間を延ばす積り、とのこと。
プリンセスが「あなたのワインのこの酸が大好きだ」と言うと、ニヤっと皮肉っぽい笑みを浮かべ、「2001年が特に素晴らしい酸だった。大抵の人は、酸が高過ぎる、って嫌な顔をしたものさ。でも今飲むとこんなに素晴らしい酸はない、と思うよ」と、ウヴェは酸フェチ仲間であることを認めてくれたよう:)
そしてサパリの07年。最初小樽で熟成していたこのワインを、初めて全て大樽熟成した年。
…
アイゼンベアク05ほど開きません。
…???
プリンセス自身、Szapari 07を味わうのはたったの2回目…けれど、これ、何かがおかしい…。ミネラル感はあるけれど、果実味が足りない…ウヴェのワインのピュアさが感じられない…おそらく極々微小なブショネである可能性が高い。けれど、なにせ本人のウヴェは酷い風邪で全く匂いも味もわからない状態…。
もちろんここで私が「ブショネでは?」と言えば、すぐに次のワインを開けてくれるのはわかっています。
こういう時、大袈裟ではなく、プリンセスは職業として希少なワインを振る舞われている自分が、どういう行動を取るべきか、倫理的にとーっても迷ってしまいます…。
はい、そのセラー&テイスティングの様子はまた次回。
そしてハーミッシュといういかにも"middle of nowhere"な感じの閑散とした村のレストラン、"Gasthaus Csencsitsガストハウス・チェンチッチ"で車を降りました。
中に入ると「へえ? こんなところに?」と驚く、ちゃんとしたレストラン。しかも料理が美味しい!
最初に出てきた野菜のスープは滋味溢れる優しい、けれどそれだけではない、根菜類のテクスチャーの変化の楽しい一品。
そしてメインのパンパンに詰め物をした鶉は、供されたサイズを見て「いけません、そんなに食べられるはずないでしょう」と思いましたが、軽やかかつ旨味たっぷりな詰め物のお味が素晴らしく、見事に完食:)
道理で、聞けば、オーナーシェフのユルゲン・チェンチッチは、あのラントハウス・バッハーのトーマス・ドーファーやシュタイラ・ヴィルトのリヒャルト・ラウホとともに、JEUNES RESTAURATEURS D'EUROPEのメンバー。将来を嘱望されるヨーロッパを代表する若手トップシェフの一人、という訳です。
そういえば、拙著取材の4年前。プリンセスはほとんど食事を取る間もなかったのですが、ほんの一口いただいたウヴェの奥様手作りの肉料理が抜群に美味しく、しかも皿、銀器、コーヒーカップ、テーブルセッティングの全てが完璧なセンスの良さだったことが思い起こされます。
当然のことかも知れませんが、いいワインを造る人は、美味しいものが大好きだし、美味しいものを食べる時間や空間を大切にします。
そんな中、ウヴェがレストランのリストから選んでくれたのは、05 Eisenberg(2010が最後のヴィンテージで、11からはBurgenlandに改称)のボルドー型ハーフボトルと、07 Szapari。
ええ? ボルドー・ボトルのアイゼンベアク??? …と口には出しませんでしたが、怪訝な顔をするプリンセスに、「いや、ハーフを最初に造ったので、肩の落ちたボトルが用意できなかったんだ」と、ウヴェの説明。
05 Eisenberg half bottle ボトルの形状にも、味わいにも驚き:) |
当時からこのクラスも全て12-32hℓの開放桶&大樽で発酵&熟成。ただし当時は8ヵ月、現在は約1年、将来的にはあと半年熟成期間を延ばす積り、とのこと。
プリンセスが「あなたのワインのこの酸が大好きだ」と言うと、ニヤっと皮肉っぽい笑みを浮かべ、「2001年が特に素晴らしい酸だった。大抵の人は、酸が高過ぎる、って嫌な顔をしたものさ。でも今飲むとこんなに素晴らしい酸はない、と思うよ」と、ウヴェは酸フェチ仲間であることを認めてくれたよう:)
そしてサパリの07年。最初小樽で熟成していたこのワインを、初めて全て大樽熟成した年。
…
アイゼンベアク05ほど開きません。
…???
プリンセス自身、Szapari 07を味わうのはたったの2回目…けれど、これ、何かがおかしい…。ミネラル感はあるけれど、果実味が足りない…ウヴェのワインのピュアさが感じられない…おそらく極々微小なブショネである可能性が高い。けれど、なにせ本人のウヴェは酷い風邪で全く匂いも味もわからない状態…。
もちろんここで私が「ブショネでは?」と言えば、すぐに次のワインを開けてくれるのはわかっています。
こういう時、大袈裟ではなく、プリンセスは職業として希少なワインを振る舞われている自分が、どういう行動を取るべきか、倫理的にとーっても迷ってしまいます…。
もしこのワインをプリンセスが今評価せねばならぬ立場なら、このワインについて記事を書かねばならぬ立場なら、或いはこれからゆっくりワインとお食事を味わう時間があるなら、もう1本開けてもらったでしょう。
けれど、今この貴重なワインをもう1本開けてもらっても、ここで味わえるのはたったのひとクチ…。
時間も押し迫っているのをいいことに、プリンセス。「05ほど開きませんね。」とだけコメントし、お茶を濁してしまいました:)。健全なボトルはちゃんとお金を払ってこのワインを頼むお客様のために残しておいた方がいい、という判断です。
そしてそそくさとレストランを後にし、セラーで2012の赤のマスターブレンドと、2011の未リリースワインを樽から試飲し、最後にテイスティング・ルームで現行ヴィンテージを味わいます。
はい、そのセラー&テイスティングの様子はまた次回。
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