南にはクラッハーやチダで有名なゼーヴィンケルと呼ばれるノイジードラー湖東岸の湿地帯=貴腐ワインの産地があり、これはある意味簡単明瞭。
そして北部に、オーストリア一、ニでワイナリーの沢山集まる町Golsゴルスがある訳です。このゴルス周辺…西はヨイスから東はフラウエンキアヒェンにまたがる辺り…プリンセスも随分色々なワイナリーを訪ねました――ゲルノート u.ハイケ・ハインリッヒ、A u. Hニットナウス、ペクル、ユーリス、シュロス・ハルプトゥルン、ウマトゥム、パウル・アクス、マークス・アルテンブルガー、クラウス・プライジンガー――、いずれもオーストリアのワイン業界では高く評価され、その多くが非常にレベルの高いワインを造っているのですが、何故かプリンセスの心をわしづかみ♥するに至っていない…。
それにプリンセスのモットーに「独自の景色のあるところに独自のワインあり」というのがありますが、どうもこの辺り、ヴァッハウやシュタイヤーマークのように「息を飲む」程印象的景色がありません。“Parndorferplatte=パーンドーフ平地”やら“Heideboden=荒地”というくらいで、殺風景な平地ととても緩い丘陵地が続き、なんとも迫力に欠けるのです。周囲から峻別され、誰の目にも明らかな銘醸畑、例えばハイリゲンシュタインとかシュピッツァーベアクとか…そういう山もありません。
ところが昨年偶然立ち寄ったピットナウアーが!!!
…よく考えてみれば、あれだけワイナリーがゴルス周辺に集積している、というにはそれなりの訳があるはずなのです。その訳をこの訪問では解き明かしたいと思っていました。
ところで、この辺りの生産者がよく使う、HeidebodenハイデボーデンとかDorflagenドーフラーゲンとか、それは一体何なの、どこなの? …と思っている方も多いことでしょう。
ハイデボーデンは湖を囲む一番低地の畑です。大概グリューナーかツヴァイゲルトが植えられています。そしてドーフラーゲンは緩斜面の中腹の畑。ゲアハルトはピノとStラウレントを主体に植えています。彼は両者を「ブルゴーニュに喩えたらvillage」と説明してくれましたが、プリンセス的にはハイデボーデンがブルゴーニュAOCで、ドーフラーゲンこそ村名に相当すると考えます。
こういう丸石が砂地に混ざってゴロゴロ。 |
Rosenbergの隣の畝で剪定をするオジサン。 そうそう、写真をくれ、ってせがまれてたんでしたっけ。 |
遠くに風力発電機が並ぶ、ほぼ平地というか、緩い緩い斜面と言うか… |
Pittnauerの剪定後のSt Laurent |
Weidenの町、そしてノイジードラー湖越しにライタベアクが望めます |
車窓から、UngerbergのBlaufränkischの畑。 |
小石はなく、よりローミー…とはいっても砂がちの土壌 |
セラーの窓から望むアルテンベアク |
かなりマッ白な土壌プロファイル |
訪問に当たりプリンセスが奥さんのビアギットに伝えておいたのは、今回は3時間以上時間が取れるので、畑とセラーをしっかり見たいこと、前回時間をかけて味わえなかったピノとStラウレントの上級クラスを味わいたいこと、そしてヴィンテージが入れ替わったベーシック・クラスを味わいたいこと、の3点を伝えただけで、その時間内でどの畑を見せて欲しいか、までは指定しませんでした…、と言うか、初めて見る畑だし、ワインもそんなに何度も味わった訳ではないので、指定できなかったという方が正確かも知れません。
その結果、ゲアハルトは私にワイナリーから西の畑ばかりを見せてくれました。
これは単にプリンセスにノイジードラー湖を望める畑を見せて上げよう、というサービス精神からか、或いは彼の気持ちが西側に向いているのか…。
その推論はテイスティングの結果をご報告した後にしてみたいと思います。