Facebookを見ていたら、最近リースリング・リンクが東京で開催されたらしく、ドイツの情報は色々入って来たのですが、オーストリアのリースリングについては誰からも報告がないので、寂しく思っているプリンセス。
そこで今日はオーストリアのリースリングのお話を。
オーストリアで有名な品種と言えばもちろんGrüner Veltlinerグリューナー・ヴェルトリーナー。栽培面積全体の1/3近く、13,518haを占める、量的にはなんと言っても最右翼です。
一方のRieslingの栽培面積は、GV、Zweigelt, Welschriesling, Weissburgunder & Chardonay, Blaufränkisch, Müller Thurgauに続いての7位、全体の4%を占めるに過ぎません。
※「Weissburgunder & CHAとは何ぞや」と思われるかも知れませんが、1999年の時点で、この2品種は統計上区別されていませんでした。昔から、特にGemischter Satzとして植えられているブルゴーニュ系品種は、この国ではそんな扱いだったのですね。
…おっと脱線! リースリングでした。
ここら辺、オーストリアのリースリングの位置づけはイタリアにおけるネビオロの位置づけと同じだと思っていただければいいです。つまり、「量的にはメジャーとは言えないが、質的&個性の表現力的にはピカイチ」ということです。
ただ、実は量的にも面白いことが起こっています。
1999年から2009年までの10年間で一番栽培面積の減った品種は何だと思います?
はい、実はグリューナー・ヴェルトリーナーで22,7%減。
一番増えた品種は? (あ、白の中で、です)
リースリングなんです(13.4%増)。
主要白品種の中で唯一栽培面積を増やしているのが、このリースリングということで、ワインの「高品質化」とリンクしてリースリングが重用される傾向がわかります。勿論この栽培面積の拡大には灌漑の普及も大きく関連していることは言うまでもありません。
さて、オーストリアのリースリングの魅力って何でしょう?
ドイツ、アルザス、ニューワールド(豪、NZ、ワシントン等)との比較でお話ししますね(話者に注意。依怙贔屓予想 : )。
まずニューワールドは「土地からのミネラルを味わう」というプリンセスにとっては、リースリング最大の魅力を表現できていないモノが多い。どうしても熟した果実味が前面に出てしまうのです。勿論少数の例外はありますし、また逆にそういうスタイルの方が好き、というヒトも多いはずです。特に比較的廉価なタスマニアやNZのリースリングは、“酸&ミネラルフェチ”(=ワインオタク)ではない、普通のワイン好きにもアピールする魅力に溢れるような気がします。
そしてドイツ&アルザスは、クラスを上げて行くとどうしても残糖が高くなります。いえ、悪いと言っている訳ではありません。ドイツなどは酸が本当にracyなので、完全な(つまり4g/l以下の)ボーンドライより、多少の残糖の高めな方が素直に美味しい。実はプリンセス、アルコールがやや低めでため息が出るほど酸の美しいドイツのリースリングも大好きなんです。ワイン単体で味わうなら、ドイツの方が好みのスタイルが多いかも知れない、とすら思います。
ただ、あれこれの皿やら素材やらを味わうお食事に1本、となると最高レベルにも完全なドライの範疇のワインが多いオーストリアの方が使い出があるような。糖も酸も風味も高いドイツリースリングは、やはり料理の合わせ方には多少神経を使う必要がありますからね。
ドイツのリースリングがなんと言ってもその酸に一番の魅力があるとすれば、オーストリアは、高過ぎる酸や残糖に邪魔されることのない、そのピュアなミネラル感が魅力でしょう。そしてこのミネラル感は、適度のアルコールと相まって、野菜、魚、肉…食材の旨味を見事に支えます。
※ヴァッハウのスマラクトがアメリカでトレンディーだった頃、アルコールが高すぎてオイリーなワインも散見しましたが、どちらかと言えばそういうスタイルはGVに多く、またブームも一段落し、そのテのスマラクトはとんと少なくなりました。良かった、良かった。
アルザスの場合、オーストリアより重めの土壌と日照の多さが相まって(これも良し悪しではなく、むしろスタイルの違いなのですが)、軽快なタイプははっきり言って可もなく不可もなくの薄いものが多い。そしてクラスを上げると、アルコール、残糖ともに高く、酸もやや線の太い、ドッシリと腰の据わったリースリングとなります。
豪が誇るEden ValleyやClare Valleyのリースリングの場合も、ミネラル感は十分あるのですが、補酸をしても、どうしても酸がやや鈍く太くなり、レモンドロップのような果実味が出ます。暑さと乾燥ストレスの影響か、若いうちから強いペトロール香を発するワインも多い。でもあのHill of Graceを造るHenschkeや、Victoriaの南端HentyにあるCrawford Riverのリースリングは、プリンセスも大好き。
まあ、オーストリアに目茶目茶ポジティヴバイアスかかってますが、大切なのは、どこのリースリングがいいか、ではなく、リースリングというのが、テロワールの表現という点において頭抜けてポテンシャルの高いブドウだということを知っていただき、各自好みのスタイルを探して、ドンドン飲んでいただくことだと思います。
という訳で、オーストリア・リースリング講座、終わります。今晩はリースリング飲みながら読書して寝まーす!