当主のフランツは、セラードアでの試飲目当ての客を相手しているので、プリンセスは窓側のテーブルに座って、奥さんのアンドレアにワインを注いでもらいます。
…おっと…息子達は英語が上手かったのに、彼らはあまりできない模様。仕方ない、プリンセスの下手なドイツ語で質問するしかありません。以下、テイスィング・コメント。☆はプリンセスの感激度。
最初のワインはGV "Freiheit" 2011 ☆(以降断りのない限り全てvintageは2011)
実はこのワイナリー、畑名ではないワイン名にはスペイン語の吹き出しのように左下と右上にチョンチョンのつく“”を付けています。“”付はこちらで言うところのSites Cuvee、つまり色々な畑の若木や最初の収穫のブレンドだと思って下さい。
セラードアでたったの€5.40のワインにもかかわらず、しかも熱波のあった11年にもかかわらず、とてもフレッシュな酸、適度なミネラルと果実味。余韻こそ長くはないものの、見事!
ところで、お断りしておきますが、テイスティングを始めた時点で、プリンセスは高原台地状の畑しか見せてもらっておらず、このヒトの看板畑が、ニグルからいつも見上げていた超急斜面であることも、その名前がエーレンフェルスであることも、全く知りません。
また、各畑の土壌も、あえてテイスティング前には聞かず、コメントを書いてから聞くようにしました。知識を先に入れると、ワインをそれらしい味に捉えてしまうからです。
2番目はGV Rameln ☆☆:原成岩と小石
ハネデューメロンとミネラルを予想されるコンパクトな香り。これだってたったの€6.70だけれど、はるかにシリアスなミネラル感とよく締まったテクスチャー、スパイス。抜群のコスパ。
3番目はGV "Burg" :砂、砂がちのレス
Pellingen畑の若木(5-10yrs)より。優しい個性。粉砂糖風味とやや焼けた感じの果実味。最もパワフル。その余韻の長さからもRamelnより遥かにクラスが上なのはわかるが、多少苦みもあり、私の好みではない。
ここで、グラスを大振りのものに変えて、ここからはFassprobe(=barrel sample)
GV Pellingen Alte Reben (30yrs +):砂、砂がちのレス
黄色の花と熟れた果実の香り。カモミール、ボリューム感、酸はやや低めで鈍いが、余韻は非常に長い。このワインのみ、発酵が終わって1か月後に大樽へ移して熟成。他は発酵&熟成ともにステンレスタンクのみ。
GV Ehrenfels ☆☆☆ 1989-90にかけて植えた畑:Gクナイス on 花崗岩
ずっとタイトで内に秘めた香り。伸びのいい酸。石果風味がとてもピュア。フランツは塩辛いミネラルと言うけれど、プリンセス的にはスパイシーなミネラル(注:前者はプリンセスにとっては石灰土壌のミネラル。後者はやや酸性に傾く岩土壌のミネラル)。リニアで長い余韻。
ここでフランツと、ワインを味わいに来ていたフェルディナンド・マイヤー氏(ヴァインアカデミーの講師。プロイドゥルで自分のワインを造っている)を巻き込んで、エクストラクトの話になりましたが、それはまた別の機会に。
そして、小さなグラスに戻って、リースリングへ。
Riesling "Steilheit" ☆
白い小ぶりの花、ジャスミン。能弁でやわらかい酸。余韻は長くないが、多少の残糖と酸のバランスも抜群。€7.65のリースリングとは思えない出来の良さ。
Riesling Rameln
ちょっと内気な、締まった香り。スパイシーなミネラルと多少の苦み。熱さと強さ。長い余韻。
ここでプリンセス、同ヴィンテージの2つのベーシックなリースリングの、土壌、樹齢、収量差などから出る微妙な差とは異なる、あまりにあからさまなキャラの違いに、「何か醸造方法に決定的な差はありませんか?」と質問。
果たしてフランツの答えは「最初のはMLFしてるんだ。万人向けにね」
「ガビーンンン!」…ここで初めて、プリンセスは、最初の本の取材候補に挙がっていながら取り上げなかった経緯を、まざまざと思い出しました!
気を取り直してGelber MuskatellerとMercaz Roseへ。コメントは省略。そして再び大きなグラスでRieslingのバレルサンプルへ。
Riesling Pfeningberg ☆ 南西向き、片岩の上に砂とレス
青っぽさを伴うシトラスと焼けたニュアンスが混ざる香り。湧き出るようなエネルギー感はないが、良質の酸。ミネラルと熟した果実味。バランス良い。長い余韻。
Riesling Ehrenfels ☆☆ 89, 90年に植えた畑
閉じた香り。湧き出る酸。抜群の透明感。かなりスパイシー。とても長い余韻。大好きなタイプながら、まだワインとして未熟。
Riesling Hochäcker Gクナイス on 花崗岩 南と西
深く柔らか味のある黄色い花の香り。酸はEhrenfelsほど高くない。力強く腰が据わった印象。余韻も十分。
長々とお付き合いいただきましたが、ここまで読んでいただいて、プリンセスの♥が、テイスティング中から“エーレンフェルス”畑に集中していることがおわかりいただけるか、と。ただし、試飲の順番からしても、それがワイナリーで最も高価だったり、最も力強いワインでないことは明らか。しかも、バレルサンプルのリースリングはGVより全体的にまだ未熟で、特にこの畑のものは内気で閉じた印象。でも、両品種を貫くその勢いのある酸とコンパクトなミネラル感、凛とした佇まいに、プリンセスは心底惚れ込みました。
さて、この辺りでフランツが合流。そして手にしていたのは…
さて、この辺りでフランツが合流。そして手にしていたのは…