けれど素材さえ新鮮ならとても美味しくいただける、ということは皆さんもご存知の通り。
「素材さえ新鮮なら」と、そうプリンセスも固く信じておりました。…前回帰国時に蕎麦の仁行で、鯖寿司にふたつのオーストリアワインを同時に合わせてみるまでは…。
その晩、鯖寿司はHirsch Riesling Gaisberg 08がもうなくなろうか、という頃に出てきました。ピタっと決まった塩と鯖の脂、酢飯の渾然一体となった寿司。磨き抜かれたミネラル、キリリと引き締まった酸と高めの残糖のバランスの素晴らしいワイン。このふたつは見事に合体。生臭さのかけらも感じさせませんでした。
「いやあ、鯖でも新鮮だとこうなのね」とプリンセスは悦に入っておりました。
どうしてでしょう?
因みにこの2つの畑、実は同じガイスベアクの丘にあります。中腹より上がガイスベアクで麓がレナー。土壌もベッドロックは同じ片麻岩。ただし麓のレナーにはロームやらレスが片麻岩の上に積もっています。お隣の丘ハイリゲンシュタインの麓ラムより結構サラサラの軽い土です。
一番妥当性の高い推論として、リースリングの高い酸と残糖のどちらか、或いは両方が生臭みを消す効果がある、ということが考えられます。日本酒も残糖がかなりあるものが多いところを見ても後者が有力。
或いはリースリング&グリューナー、それぞれのブドウ品種に固有の成分が生臭みを強調するか消すかする働きを持っているのかも知れません。
そして、原成岩 vs ローム&レスの土壌成分の違いが、両ワインに反映した、という可能性も捨てられません。
因みに魚の生臭みの主成分はhttp://www.kirinholdings.co.jp/rd/result/closeup/02.htmlによれば(E,Z)-2,4-ヘプタジエナールだそうで、ワインの中の「二価鉄イオン」こそが生臭みを増長する元凶だということ。
今回のマッチングで生臭みを強調したのも、この物質の仕業だったと仮定するにして、ではその二価鉄イオン含有量の差を生み出す原因が、品種にあるのか、土壌にあるのか、ヴィンテージにあるのか、熟成度にあるのか…またまた次回帰国時の宿題が増えてしまいました。「青魚とワイン…生臭さ消しワークショップ」を次回は必ずやりますから、怖いモノ見たさ : ) で、こぞってご参加下さい!
日本でこのブログを読んで下さっている皆さん、何か参考になりそうな情報があればご連絡下さい。また、プリンセスに先駆けての様々な実地比較報告もお待ちしております!