2012年10月18日木曜日

ローラント・フェリヒ“モリッツ”――クオリティーの秘密に迫る その1

10月16日(火)。月曜は電車不通によりクラッハーさんちからのお呼ばれを断念。この日はオーストリア最高峰の赤を造るローラント・フェリッヒを訪問予定になっていましたが、朝から全国的な大雨…
プリンセスなんだかバッドラックに付きまとわれているかしら? 

さて、このヒトを訪ねようとした方なら、その訪問の難しさがわかると思うのですが、難しい理由も実はひと筋縄では説明しづらいものです。またそれ故に、このワイナリーの実態を輸入元すらきちんと捉え難いという状況。
ローラント・フェリッヒ@ネッケンマークトの古木の畑
とにかく、まずそのややこしさの背景から説明させて下さい。

1)畑がライタベアク(St Georgen, Zagersdorf, St Margareten他)ネッケンマークトルッツマンスブルク付近という互いに数十キロ以上離れた3か所に分散している。

2)しかも彼自慢の古木の畑には、いまだに契約農家の所有する区画も多い
注:最初は全て契約農家からの買いブドウで始まったプロジェクト。次第に自己所有畑を増やしてはいますが、ブドウ農家の伝統的生活を保護する意味でも、きちんとした栽培者が存在する限り、彼は畑を買収せず、ブドウを買い取り続ける方針

3)ワイナリーは公的には自宅のあるグロースヘーフライン(ノイジードラーゼー=ヒューゲルラント北部)となっており、テイスティングやインタヴューは普通ここで行われますが、本当の生産拠点はネッケンマークト(ミッテルブルゲンラント)にあります。

4)以上の理由により、彼はブドウの必要に応じてあちこちを移動しており、自然が相手故、いつ、どこに居るかを事前に約束することはできません。

)ネッケンマークトの生産拠点をメディアや一般顧客に明かすことをローラントは好みません。
その理由としては、あくまでプリンセスの観察する限りの予測、ですが、
a)正真正銘の掘立小屋セラー(ドルリ・ムアのより更に極端)であり、設備でヒトを圧倒するようなモノは一切存在しないばかりか、逆にワイン造りへの造詣が深くないヒトには、ネガティヴな誤解を与える可能性大。 
b)Wine Advocateが彼のNeckenmarkt Alte Rebenにオーストリアの赤としては最高点をつける前、オーストリアワイン業界、メディアや評論家が彼のワインやプロジェクトを冷遇したことを、ローラントが快く思っていないのは、当然と言うもの。

そんな裏事情山積み難関中の難関自ら、「いつでも歓迎するよ」と、最近直々に2度も声をかけてもらい、しかもこの朝、「雨が酷いから畑はあまり見れないかも知れないけれど、自宅に近いミュレンドーフ駅までなら喜んで迎えに行くから」という嬉しいメール。

狙っていた収穫中の訪問は、約束していた先週の土曜、今後続きそうな悪天予報により、収穫のラストスパートを急がれたため一日遅れで果たせず。当日土曜も、ローラントの携帯に奥さんのダグマーを出させるてんてこ舞振りにプリンセスの方から訪問を辞退。
そして迎えた当日ですから、どんなにドシャ降りだろうと、行かない訳にはいきません!!! 

Today is the day!!!

という訳でプリンセス、天候とは真逆にウキウキ気分一杯で、ミュレンドーフ駅に向かいました。