そして1週間後、震災&原発事故が起こり、それがキッカケとなってプリンセスは、それまで全く考えもしていなかったお城住まいをすることになるのですから、人生本当に何が起こるかわかりません。離日前、最後のワイン会を行ったのも、まだ不安と混乱の渦巻く、灯りの消えた銀座の真ん中にあるこの壮石ででした。…そんな訳でプリンセスにとっては何かとご縁の深いお店です。
2011年は、オーストリア全土で、質的にも量的にも生産者を喜ばせた年。8月末~9月初めの熱波も、7月に気温が下がっていたためブドウに大きな負担はかけずに済み、朝晩まで気温の下がらない期間はそう長くなかったため、ゼクト用のブドウなどは猛スピードで収穫する必要がありましたが、他のブドウは酸の著しい低下からは免れ、若くしてよく開く柔和でチャーミングな個性のヴィンテージとなりました。何より素晴らしいのは収穫が始まってからほとんど雨らしい雨は降らなかったため、ブドウが非常に健康な状態で収穫でき、そのため畑でもセラーでも問題の少ない実にハッピーな年でした。
左の筍、ウド、帆立の木の芽和えはGVに、右の塩雲丹の生ハム巻はシルヒャーを意識。 |
刺身はリースリングで。薬味を添えてグリューナーと。 |
一方のZweigelt ツヴァイゲルトは、St Laurentザンクト・ラウレントとBlaufränkischブラウフレンキッシュの交配品種。St Laurentの片親はピノですから、要はツヴァイゲルトはピノ・ノアールのクオーター、ということになります。言わばピノ・ファミリーの末っ子ですね。
シトー派修道院のワイン造りの文化を継承することを自らの務めと任ずるミヒャエルにとって、ですからピノ・ファミリー赤品種(ピノ、St. ラウレント&ツヴァイゲルト)ワインはとても重要。カンプタールの他ワイナリーよりかなり力を入れて、しかもピノ系らしいフィネスを重視して造っています。
烏賊によって、 チャーミングなツヴァイゲルトを逆に 引き立てられました。 |
1)ざっくり緩いテクスチャーと熟したダークチェリー、軽くアーシーな風味が魅力のツヴァイゲルトは、モツ煮など内臓ものや多少ハーティーな旨味とよく合うため、今回は烏賊のワタ合えとマリアージュしました。が、結論としてウチのツヴァイゲルトは思ったよりずっと上品で土臭さが殆どないため「ピノ同様に扱った方が賢い」ということが判明。
軽快なDomaeneドメーネはBourgogne Rouge的にパスタや魚肉を使ったサラダ&揚げ物、コールド・ミート&パテなどに、SchlossラインのZweigelt Haideハイデは1 er Cru的に家禽類のメインと合わせてマル、です。或いはブフ・ブルギニヨンならぬブフ・ゴベルスブルクなんてものも美味しそう!
2)一般的に和食と抜群の相性を見せるグリューナーやリースリングながら、赤だしなど出汁風味が前面に出る料理には、シャンパーニュのオートリシス風味の方がよく合います。そして想像もしませんでしたが、意外な美味しさに驚いたのが赤出汁とRiesling TBA。異次元の味覚体験をさせてくれました。洋食の最後にデミタスカップで赤出汁を貴腐ワインとともに供する、なんて裏技もありかも、と思ったほど。
TBAと赤出汁。ちょっとない組み合わせ。 |
因みにWeissburgunder (=Pinot Blanc)は穏やかな風味でとても和食に合うのですが、この日のLaithaberg DACは新樽&マロ風味があって、ちょっと和食には辛かったかも。
ご参加下さった皆様、紅林さん、岡田さん&お母様&叔母様、有難うございました!