2012年5月28日月曜日

ビアギット・ブラウンシュタイン vol.2 石灰至上主義はオーストリアでは通用しない?

ここがその、秘密の場所。おそらく石材を切り出した跡でしょう。見事なムシェルカルク(貝殻石灰)!
このちょっとシェルターのような場所で、真夜中に若者が集うパーティーなども行われるそう。
このような貝殻がいたるところに隠れています。
ほら、ここにも。
こちらは雨風に晒されて風化した部分。
ところで「ライタベアクDACと言えば石灰土壌」と思っていませんか? …先日のブログにも書いたように、ライタベアクは下部に石灰が多く、斜面上部は原成岩なのが普通です。
それから土壌の優劣として、なんとなく「石灰が一番」と思っている節ありませんか?
けれど考えてみて下さい。
ドイツやオーストリアのピカイチの銘醸畑に石灰の畑なんか幾つあるでしょう?
プリンセスが思うに、石灰土壌というのは透明感やクールさをワインに与えます。だから最北の地のワインにそれ以上のクールさは必要ない、というのがドイツやオーストリアに石灰の銘醸畑が少ない理由ではないか、と踏んでいるのですが。最北の産地に、スレート、片麻岩、花崗岩、片岩などの銘醸畑が多いのは、反対にこれらの土壌がワインにホットでスパイシーなミネラル感を与えるからではないでしょうか。

別の視点から見てみましょう。ライタベアクDACに認可されている品種は、白はピノ・ブラン、シャルドネ、ノイブルガー、グリューナー・ヴェルトリーナーの単体かブレンド、赤はブラウフレンキッシュのみ(15%以下のブレンド用としてツヴァイゲルト、St ラウレントとピノ・ノワール)です。赤の単体品種として、石灰土壌を好むピノ・ノワール、St.ラウレント、ツヴァイゲルトというピノ一族が認められていない、というのはいささか不自然に思えますが、下部のロームが多いやや重い土壌が白のブルゴーニュ系に重用されるとは言え、赤の最上サイトとしては、石灰よりシストを重要視しているのが、この認可品種からも伺えます。

「シストにはブラウフレンキッシュ、石灰にはピノやSt.ラウレント」と何故植え分けをしないか、という意見もよく耳にします。でも、ブラウフレンキッシュは実は石灰も大好き。また、シストに植えられたピノ・ノワールは、ブルゴーニュとは全く異なるけれど、一流の生産者(例えばヴェンツェル)の手にかかれば、これまた別個性の素晴らしいワインを造ります。何もフランスにおける品種土壌適性を、そのままオーストリアへ盲信的に持ち込む必要もないのです。

ライタベアクはアイゼンベアクと並び、オーストリアで初めて土壌特性によって範囲を決めたDACです。その特性はだから石灰と原成岩という、このミクスチャーにこそあります。さらに、特定土壌に特定品種を結びつけるより、複数品種から土壌個性が透けて見えることも、このDACの重要なポイントなのかも知れません。
それはそうと、彼女はガイヤーホーフのイルゼ・マイヤーとともに、畑の一部を自然に還す、Wild Wuxというプロジェクトを立ち上げており、このムシェルカルク土壌周辺の畑7000㎡をこうした野草地に戻しています(world heritageに寄贈)。まさか、自分の持つ最上の区画を手放したりはしませんよね。…そこら辺りにも、この純粋な貝殻石灰土壌が、畑として必ずしも最高のパフォーマンスを発揮する訳ではないことが想像されます。
以上全てプリンセスの想像なので、次回訪ねたときに、真相がどうなのか、確かめてみたいと思っています、

さて、畑を後にしセラーに向かいます。プルバッハ旧市街の外壁に接して住居兼セラーを持つビアギット。独特のセラーも興味深いのですが、プリンセスを興奮させたのは、そのセラーを見た後、戸外に出てからです…。