何せ先週頭まで暖冬で、「気温マイナス7度以下」という法的条件にまでなかなか達せず、一挙に寒くなった(最高気温が零度に届かない)先週の木曜から、日曜を除き(土曜も!)毎朝4時とか4時半に待機命令が出ており、いくらなんでも夜11時前にはなかなか寝付けないプリンセスは圧倒的に寝不足!
それでも、こうした待機は住んでいなければ不可能なので、「一生に一度の体験だから」と、日々あくびをかみ殺して仕事に励んでおりました : )
アイスヴァインの収穫は、やってみると「極度に寒い」以外は非常に単純。丹念な選果が必須な遅摘みや貴腐ブドウの収穫とは対照的にサクサク進みます。まあ選果しようにも、トラクターに付けた灯りが頼りですから、場所によってはブドウの存在すらよく見えないので、まず不可能。
困ることと言えばブドウがほとんどフリーズ・ドライ状に凍っているので、切るべき梗がどこにあるのかわからずに、房をこねまわしていると、瞬時にはかなくホロホロと実や房が落ちてしまうこと。拾おうと思っても暗くて見えないので、貴重な実を随分無駄にしてしまったような気もします。
作業は黙々&サクサク進められます。 |
手許を照らすこういう賢い装備をするヒトも。 |
サーモ手袋。ゴムが厚くて、これをした ままだとシャッターが切れません(涙) |
貴腐果混じり。ワイナリーによっては 貴腐果が混ざるのを嫌う場合も。 |
夫人エファも労いに訪れます。 労働者に 大切なブドウを収穫していることに気づかせる 有効なやり方 |
2時間半で300kgコンテイナーで12箱。ここから1000リットルしか果汁が取れなかったそうです。うちのEisweinの価格がアップホーフAbhof価格(ワイナリーで個人客に販売する価格)ハーフで€28ですから、小売りが大体€30前後。ということは、昨日2.5時間程度で8万円分の生産。私を入れて12人で収穫していましたから、あんなにサクサク効率的に収穫できていても、一人時間当たり2,700~2,800円分しか収穫できていないんですね。
さらに圧倒的に収穫に時間のかかる貴腐や遅摘みワインのことを考えると、やはりこうしたワイン達はよほど高い値段で買ってもらわないと、とてもではないけれど経営的にやっていられない、というのがよくわかります。
ブドウは凍っているので服や手袋は汁で汚れないし、地面は霜で凍っているので、靴も汚れません。 |
夜明け前。寒さが一層募ります。 |
また、アイスヴァインの場合、気温が丁度良く下がってくれなければ収穫できない、という別の問題があります。そういう天候に恵まれるかどうかは天のみぞ知る。しかも、そうなるまで畑に放置する訳ですから、鳥や動物に食べられるリスクと常に隣り合わせです。なので、収量の少ない2010年のような年には、広い区画にアイスヴァイン用ブドウを残しておくことは、普通許されません。
ですから、収穫作業自体は条件さえ折り合えば貴腐や遅摘より高効率と言えますが、貴腐ワインと並び超希少であることに変わりはありません。
次に質的側面を見ます。
アイスヴァインも、もちろんソーティング・テーブルである程度の選果はできるとは言え、木に残っているものをすべて用いることになるのが基本ですから、結局木に残しておくブドウがいかにいい状態であるか、がその質を決定します。
また、凍結により果汁糖度・酸度・エクストラクトが高まるのは当然ですが、要は元のブドウの味わいのバランスや風味の良し悪しが、そのまま凝縮される訳です。
さらに、昨日のブログに書いた通り、理論的には気温が低くなればなるほど凝縮度の高い果汁が得られるのですが、現実的にはそれはほとんどの果汁が凍ったままでワインが取れない! ことを意味します。普通より凝縮度の高い果汁だけが融解する程度の低温が望ましい。
極度の低温にはまた別の側面もあります。当然氷結によって果汁の風味は変わります。このちょっと青エグさ(フレッシュさ、とも言える)を感じさせる独特の凍結風味を「真のアイスヴァインの風味」として肯定的に捉えるか、凍結風味を感じさせるところまでやるのは「失敗」と捉えるかは、各ワイナリーで異なるようですし、またプロや愛好家の間でも意見の分かれるところです。
以上、実際に収穫作業を通しての『アイスヴァインの真実』でした。
明日はアイスヴァインのプレス作業をご紹介します。
あ、そうそう昨晩のオペラはシュターツオーパーでグノーのファウスト。ウィーンフィルによる演奏が素晴らしかったことは勿論、舞台美術の色使いが非常に微妙で、オペラは苦手科目のプリンセスにも十分楽しめました。