その中でGrossグロースと言えば、最初にシュタイヤーマークを訪れた時からプリンセスを虜にしたワイナリー。木とガラスと金属を巧みに配したワイナリーは、自然に溶け込む冷た過ぎないモダンさが絶妙で、樽やワイン箱の並ぶ様まで整然と美しく、ため息を誘いました。
ワイン自体も、周囲のテメントなどが「濃い果実味、高いアルコール、強い新樽」というプリンセスの逆鱗に触れるような姿勢を取っていた頃 : ) も、このワイナリーは大樽で寝かせた品の良いワインが中心でした。
この辺りでは珍しい段状畑。上部には局地的火山性土壌の部分があり、 そこにはゲヴュルツが植えられています。TBAはワイナリーの隠れた逸品 |
そこで今回は「ワインを味わう前に、この一帯の土壌と地質学的背景について、ちょっと話してもらえないかなぁ」とミヒャエルに切り出してみました。すると「その話なら僕より父が詳しいから」と、既に若くしてブドウ造りやワイン醸造は息子達に任せてしまったアロイスが登場。
以下、アロイスの話をまとめてみました。※カッコ内のワイナリー&畑名はプリンセスによる追加
上の写真と併せ、この辺りの典型的石灰岩。 |
2)一帯の斜面のほとんどが(GrossのNussbergやTementのZiereggなども)海の堆積物が層になった後の大陥没によってできている。…なので、霧が谷を埋めるようにかかると、大陥没前=千2百万年前の景色を想像することができる。…ここら辺のすり鉢状の斜面の成り立ちを不思議に思っていましたが、そういうことだったんですね!
3)一部標高の最も高い場所(WohlmuthのあるSausal, Kitzeck)は、一度も海の底に沈んでいない。⇒原成岩を残す(最も古い土壌)。
4)標高により石灰の質が異なり、貝殻やサンゴが沢山出るのは、海の浅かった部分=現在では比較的標高の高い限られた部分のみ(TementのZiereggやGrassnitzberg)。
5)海と陸地の境界(=ビーチ)周辺は砂(Sernauber, Kranachbergなどサットラーホーフの畑、GrossのPerz、など)。沖に行くにつれて砂粒は細かくなる。
6)標高の比較的低い場所は海底堆積物のシルトが固まったオポック土壌(MusterやEwald Tscheppe、GrossのNussbergの下部)
7)アルプスの隆起後、そこから流れ込む川(ミシシッピ川並みの大河が確認されている)の堆積物(小石や砂礫)土壌が存在:TschermoeggのLubekogelなど
8)さらにズュドオストシュタイヤーマークに存在した活火山の火山灰が風で運ばれて堆積し、海や川の作用でも流されずに残った局地的火山性土壌も存在(Gross Nussbergの一部)。
ヌースベアクの下部はマール(オポック)。上に行くほど石灰が強くなりますが、 貝殻やサンゴの化石はテメントの畑ほど多くはありません。 |
では、明日はグロースのワインを振り返ります。