そして、逆に添加の問題点は、身体や味わいへの悪影響だとしか、考えたことがありませんでした。
ところが生産者と亜硫酸の話をしていると、特に亜硫酸添加をなるべく減らそう、という自然派の生産者の話を聞いていると、彼らが「亜硫酸はワインをフィックスする」、或いは「ワインが閉じてしまう」という言い方をしばしばすることに気付きました。
先日訪ねたエーヴァルト・チェッペは「2007年以来ずっとサン・スーフルに興味を持っており、いつかは実践したい、と思いながら、一方で1年の労働の賜物を劣化状態にはしたくないので、やりたいのはヤマヤマだけれど、まだ決行できない」と言っていました。現時点では「亜硫酸を添加しつつ、いかにワインをオープンな状態に保てるか」が課題だと、そう言うのです。理由は「亜硫酸はワインにシェイプを与え、フィックスする。同時に閉じた状態にする」からなのだそうです。
実際のワイン造りには様々な物質が用いられます。 これは珪藻土フィルタリングの様子。 |
どうやら、良かれ悪しかれ、亜硫酸がワインを「固定する」というのは間違いないようです。
つまり、殺菌・除菌・抗酸化剤としての働きの他に、"fix & catpure"⇒ワインにあるシェイプを与え、その姿を固定する、という、教科書では教わらなかった働きが亜硫酸にはあり、亜硫酸添加に神経質な生産者は、そうすることでワインが柔軟性をなくしたり、あるひとつの殻に固定されてしまったり、状況に呼応する開放的な性格を失ったりすることが、嫌なようなのです。
上の装置の横に置かれた珪藻土濾過剤。 |
ある意味コントラストを強調した方が、インパクトの強い写真になる。適度に調節すれば、写真にメリハリがつく。上手に使えば、味わいの透明感やミネラル感といった、好ましい要素をサポートすることだって可能。
けれどやりすぎると、本来の姿と別の図像になるし、いずれにしても何らかのカタチで、程度の差こそあれ、ワイン本来の持つ色合いやテクスチャーを隠したり潰してしている訳です。だから、ニュートラルなオリジナル画像からは、色々なニュアンスが引き出せますが、一旦コントラストを強調してしまった画像は、その固定的・断定的イメージから二度と逃れられません。
別の比喩をするなら、「カタチのないものや崩れたものに好ましいカタチを与える」亜硫酸添加は、つまり、ワインにとってのブラジャーみたいなもの???
正&盛装をする際に、或いは身体の線のはっきり出る装い(ワインに敷衍するなら、焦点の定まった、ピュアでリニアなスタイル?)のとき、「なし」ってちょっと考えづらいもの、ありますよねぇ…。