ご主人徳竹さんの奥様とは、ワインスクールの生徒だった頃からの15年を越す長いお付き合いです。
一流料亭での修行が生きる素材命のオーセンティックな和食をベースに、ワイン飲みに嬉しい“ひとひねり”を加えた(i.e.,レバーペーストの磯部巻き、油揚げのピザ…)オリジナル・メニューが並びます。
多彩なメニューは毎日徳竹さんが市場で“おいしいとこどり”して素材を仕入れているので、量は限られていますから、食べたいものは最初のオーダーでキープするのが秘訣。
プリンセスは通常、刺身の盛り合わせ、雑魚とミョウガのサラダ+季節の野菜料理、魚、肉料理から適当に焼く、煮る、揚げるなど調理法を組み合わせて選びます。
お酒もワインもお手頃価格でほど良く揃い、気軽な割烹料理屋としても、質の高い居酒屋としても大変使い勝手良好。また、〆のうどんやお握りなど米粒ものも充実しているので、肴を1、2品頼んで“クオリティ定食屋”として使うテもあり。季節のお勧めが頻繁に変わるので、通い詰めても飽きないでしょう。
さて、昨日の飲み食いの様子をご紹介します。
いつものようにハートランドで喉を潤した後、豪の泡、シシリーの赤、長者盛(冷とぬる燗)、そして私の持ち込んだルーディ・ピヒラーRudi Pichlerの2010年2種を各自それぞれ食べ物に合わせて勝手に飲む、というスタイルで楽しみました。
ぎんなん唐揚 |
刺身盛り合わせ。RudiのGV Federspielで美味さ倍増。 |
白菜、カブ、柚子のサラダ。柚子とGVが究極の相性。 |
牡蠣のオイル漬け。 オリーブオイルと上に載せたタプナードのおかげで、日本酒よりワインにピッタリ。 牡蠣&タプナードの苦味にGVは大人のハーモニー。 |
Rudi Pichler Smaragd Weissburgunder 2010 |
2010年のような、どちらかと言えば涼しい酸の高い年に、貴腐ゼロ、木樽熟成ゼロ、という手法では、普通“冷たい”“無愛想な”ワインができそうに思われます。
ところが、ルーディのワインは、酸の高さを貴腐の甘さで打ち消すのではなく、ブドウのひと房ひと房の熟度を完璧な状態で摘むことで、酸そのものを角の取れたやさしい旨みにまで持っていってしまっています。ここまでやれば、酸が高くても、貴腐を使わなくても、とっても柔和なワインにすることができるのです。言い換えれば、酸そのものを美味しい酸にすれば、それが多量にある、というのは美味しさが増す、ということにつながるわけです。
凄いぞルーディー!
鴨&白菜。Weissburgunderで味に深みが。 |
冷やしトマトはリースリングが欲しかった! |
風呂吹き大根。胡麻油風味がWBのミネラル感を呼び覚ました感じ。 |
カブ&鴨。WBの底力を実感。 |
ハリハリ鍋。WBがスープを優しく引き立てます。 |
徳竹さんの無骨な優しさもお店の魅力。 |
〆は当然こうして雑炊に。 |
ダメ押しは常連の特権、賄いカレーライス。 |
ところで、オーストリアでヴァイスブルグンダーを造る場合、できるだけ風から守られた、やや重めの石灰を含む土壌に植えるのが普通。ところがこのヒトのヴァイスブルグンダーは、原成岩土壌かつ風の強いのコルミュッツに植えられています。そして結局、土壌由来のスパイシーなミネラルこそが、ゴマ油や鴨を俄然引き立てました。
さっきルーディのスタイルはヒルツベルガーの対極にある、と書きました。
でも両者表向きの魅力は全く違っても、最後に発揮するその本領は、土壌由来のミネラルの底力。アレンジはオペラ風と現代音楽風でも、歌っている歌は同じだった、みたいなものですね。
そしてそれこそがヴァッハウの魅力なのです。
それにしても、こんな素敵な組み合わせの楽しめるお店がご近所にあるなんて、プリンセスは東京でも本当に幸せです!
日本の食はなんたって世界一!!!