去年はゼクト用のシャルドネが確か最初でしたが、今年は霜の影響で、おそらくゼクトに回せるブドウは、ないか極少なはず。それで、地場消費向1ℓビン用ブドウからの収穫となっている模様です。
ところで、以前に何度か「地元消費用の安い1ℓワインって、美味しいんですか?」と尋ねられたことがあります。プリンセスもそんなに沢山1ℓワインを意識的に比較した訳ではないのですが、地元のホイリゲで自動的に出てくるマググラスで飲むワインはほぼそれだとすると、「冷やして飲めばいけますよ。」と言ったところ。ゴクゴク飲んで喉を潤すには十分。でも何の個性もありません。従ってどこのを飲んでも、あんまり違いも感じません。
因みに周辺の畑で収穫している様子はまだ全く見かけられません。 |
はは、我がお城ワイナリーの畑ながら、お世辞にも手入れが行き届いているとは言えません : )
プリンセス、去年ドメーネ、ゴベスルブルガー、シュロス・ゴベルスブルクのブランドを冠する全ての白ブドウの育つ持ち畑での除葉やら収穫を経験しましたが、少なくとも750mlビンに入れるブドウについては、最も高値を付けるHeiligensteinハイリゲンシュタインやLammラムから、カンプタールDACやニーダーエスタライヒ等級のワインに入れられる無名の19 Jochヨッホ、といった畑まで、ブドウ栽培にかける手間に、ほどんど違いがない(収量は、ゼクトのためのグリーンハーヴェストを大量にする優良畑の方がかなり低くなりますが)ことに、とても驚きました。
けれど、少なくともお城ワイナリーでは、1ℓビンワインと、750mlボトルに詰められるワインのブドウは、ブドウを育てる時点で、全く出自が違う、と断言できます。
それでも、今日収穫したミュラー=トゥルガウのように、早熟で熟度や風味の向上はあまり望めない割に、一方でどんどん酸の下がってしまうような品種については、キチッと収穫時期だけはしっかり見極め、手間をかけないなりに最高の状態でワインにする訳です。しかも、オール手摘み! ホイリゲを持つ生産者であれば、シュトゥルムにしちゃうんでしょうね。
もちろん例えばヴァッハウの小規模ワイナリーなどの場合、所有畑の大部分が原成岩急斜面テラス状畑だったりすることもあるので、栽培の手の抜きようがない、というか、どのみちあんな場所で全て手作業でブドウを育てるには、どうサボろうにも膨大な手間がかかってしまうものなのです。なので、ヴァッハウやクレムス川、カンプ川上流の真面目で優良な畑しか持っていないような小規模生産者の1ℓワインには、氏素性の妙に正しいものが含まれていないとも限りません。
ブドウの状態は、ご覧のように健全そのもの。 |
“小規模家族経営の手作り”みたいな文句に消費者は弱いのですが、この辺りのワインに関する限り、あまりに小規模なワイナリーは、新しく興したワイナリーを除いて、兼業か向上心のない場合の方が多い。ソイル・ワークを全くせずに、化学肥料&農薬撒き放題、みたいなところがある一方で、手作りも行き過ぎて、堆肥の代わりに生ゴミを撒く、みたいな酷いところすらあるのです。
※そうそう、前のブログに書いた、死んだ土壌とカタツムリ異常発生の不気味なコントラストを作り出した犯人は、生ゴミ堆肥である確率が高いです。
お城ワイナリーでは1ℓワインは輸出はしない方針です。そしてオーストリアワインをこれから飲もうという消費者の皆さんには、やはり個性が明確でない1ℓワインより、土壌や気候の異なる個性が感じられるクラス(2,000円出さずにいくらでも見つかります)のワインを試して欲しいなぁ、と切に切に願うプリンセスであります。