2012年9月13日木曜日

ドルリ・ムア, “ストーリーテラーオヴ・ワイン” その2 アンフォラ到着!

さて、掘立小屋ワイナリーに到着してみれば、ワイナリーにはなんとカティだけでなく、旦那さんのアンドリュー・ロランドご本尊、そして夫妻の友人が待ち受けていました。
ざざっとセラーとその奥の樽貯蔵庫を案内してもらったところに、オットのケラーマイスターのギュンターとマーケティング担当の女性(ゴメン、名前忘れた…)が車でやってきます。

そして、彼らのヴァンからカティがフォークリフトでドルリの掘立小屋セラーに運び入れたのは…

これです!
アンドリュー・ロランド氏とグルジア製のアンフォラ
正直のところ、アンドリュー・ロランドとアンフォラの組み合わせに、プリンセスは一瞬ちょっと引きました。

というのも、2005年以来飛ぶ鳥を落とす勢いであれよあれよ、とクライアントを獲得していたロランド氏は、当初から正統派デメター・ワイナリーからも、そしてヴァッハウなど最もコンヴェンショナルな農法が主流の産地からも、あまりいい噂を聞かなかったからです。ただし、そのどれもが具体性を欠く感情的噂話のレベルだったため、能天気なプリンセスは「まあ、新しいこと、目立つことをやるヒト(杭)は打たれるのよね」くらいに考えつつ、この一世を風靡しているアンドリュー・ロラント氏本人と話がしてみたい、と、何度かインタビューを申込みました。

当時は1年に1,2度しかオーストリアを訪れるチャンスもなかったし、常にタイトなスケジュールだったこともあるのですが、彼の方もあまり取材に乗り気でないようで、いつも話は立ち消えに。

そうこうしているうち08年が来ました。とにかくうどん粉病とベト病が大蔓延した大変な年で、この年ゲルノート・ハインリッヒを筆頭に、ロランド氏のコンサルを受けていたビオ転換中(オーガニック認証のための最終年)のワイナリーが、甚大なカビの害を蒙り、09年初頭に2冊目の拙著の取材でプリンセスがオーストリアを訪れた時には、それだけが原因かどうかはわかりませんが、少なからぬ重要顧客が彼との契約を打ち切る、或いは関係を後退させる、という事態となっていたのです。その後彼はアメリカ(だかスイスだか)に帰った(彼はスイス系アメリカ人)、という噂を聞いていました。
350ℓのやや小ぶりのもの。1個€1,000也を2個購入。
一方アンフォラは、ヨスコ・グラヴナーの影響を受け、シュタイヤーマークのムスターやヴェルリッチあたりが07年頃から始めたのがオーストリアでは最初と思われますが、その後オットのアンフォラワインが商業的成功を納めたあたりから、「猫も杓子も」の様相を呈すようになり、今ではヴァッハウの協同組合まで、アンフォラ醸造実験を行う : )、という有様。

ヘソ曲がりのプリンセスとしては、なんというかその、新しい流れを作る動きには興奮しても、『かつて話題のヒト』と『流行のお尻に乗っかるアンフォラ』という組み合わせに、イケテないものを感じた、と言ったらいいのでしょうか。

しかーし!
プリンセスがどう感じようが、ワインにとっても、おそらくこのブログを読んで下さっている皆さんにとってもどーでもいいことですよね。
そうです。問題はワインがどうなるか、ってことなのです。

ドルリのブラウフレンキッシュは、彼女も最初から言っていることなのですが、世界的にオーストリアワインに求められるもの、つまりクールで繊細でエレガントなもの、さらにプリンセスの言葉で言い直すなら、冷涼地の白ワイン的な美質をブランフレンキッシュに転写しようとした試みです。

だから醸造上は1.過剰な或いはラフなタンニンをいかに抑えるか、というのが重要な課題となります。また2.新樽のタンニンと風味も邪魔なのです。
1のタンニン・マネジメントの技法として、フットストンピング木製垂直バスケット・マニュアル・プレス発酵が完全に終わる前のプレス(ニーポートのディルクが得意とする手法ですが、トルブレックのデイヴィッド・パウエルもやってます)…などの手法を用います。
そして2の”新樽からのタンニンと風味”を排除しつつ、きちんと空気に触れさせワインを熟成させるために、彼女は上質の使用済み小樽&中大樽を譲り受けて使用しています。で、どうしても使用樽の調達が間に合わない場合にのみ、フランソワ・フレールの新樽を購入するそうです。
これは昨日撮られた白の足踏み風景。ドルリのfacebookより拝借。
その新樽について、ドルリは面白い話をしてくれました。

F・フレールのセールスマンが新樽の売り込みにやってきたそうです。彼女は「新樽は嫌いだから」と断ったのですが、どうしてもひとつ置かせてくれ、というので、樹齢の古い最高のシュピッツァーベアクのブドウを新旧両樽に入れてみたそう。
その結果、意外なことに彼女は新樽のワインの方が好きだった、と。勿論新樽の風味は不要なのだけれど、旧樽にはそれぞれの過去のストーリー(科学的に言えば、使用による微生物の繁殖?)があって、それがワインに影響を及ぼしてしまうけれど、新樽は樽風味さえ除けば、まっさらにピュアだ、と。そのピュアさが好きだと。
粘土の壺の外側は、このような粗いセメントのようなもので固められています。
ここまで話を聞けば、彼女がアンフォラを試したかったのは、新樽のようにピュアで、使用後も樽材ほど微生物繁殖の心配はなく、なおかつ新樽風味を一切出さず、しかも微小な空気の出入りもある、というその素材の性質上、当然の帰結と理解できます。
セラーの奥手の元家畜厩舎のようなところに、さらに樽の貯蔵倉庫が。
しかも、彼女はワインを地上に貯蔵しています。いくら発砲スチロールで目張りしたところで、これは長くセラーで寝かせてワインを造る上では大きなハンディ。伝統的ワイナリーの地下セラーのワイン熟成能力をバカにしてはいけません!! (これはテルモ・ロドリゲスも言っていましたが、温度や湿度の安定、適度な空気や微生物活動の関与、磁場など様々な要因が関与していることでしょう)
中はこんな感じの地上倉庫。
で、ここからはプリンセス得意の想像ですが、アンフォラのもうひとつの重要点は、地中に埋めてワインを貯蔵する事実にあるはずです。要はひとつひとつのアンフォラが疑似地下セラー化する、ってことです。だからそのメリットは、伝統的地下セラーを持たないワイナリーにとっての方が大きいはずなのです。その証拠に、やはり地上セラーでワインを熟成させるビルギット・ブラウンシュタインは、ブラウフレンキッシュ(とシャルドネ。プリンセスはBFのみ試飲)アンフォラで熟成させ、その味わいを驚くほど向上させています。逆にあえて名前は出しませんが、アンフォラをセラーに置くだけのワイナリーのアンフォラワインにはロクなものがないような気がしています。
内側は蜜蝋でシットリ。ほんのりいい香りがします。
とりあえずセラーの中にアンフォラを納めるのを見ながら、そんな想像を巡らせるうち、赤白両方仕込むという2012年ヴィンテージのアンフォラワインに、興味が津々と湧き出すプリンセス。

アンフォラを触ったり覗いたりした後は、各畑のブドウの収穫日を決めるためのブドウ試食回り?をするドルリとカティに同行しました。
…to be continued