実はこのチケット、散々ケチのつき通し。まず、チケットを買ったお城ワイナリー当主夫妻の都合がつかないため、私が2枚のチケットを譲り受けましたが、同行者がなかなか見つかりません。ようやくドイツでリートを勉強したウィーン在住の友人が付き合ってくれることになったものの、これも1週間ほど前、急用が入った、ということでキャンセル。その後も何人かに声を掛けたのですが、結局最後まで見つからず、一人で行くことに。こういうとき、海外にぽっと一人でやってきて、仲の良い友人もまだ数少ない寂しさを感じます。
そして当日、昼食を済ませて1時の電車に乗る予定でしたが、お城を出る直前にカメラの電池を充電していなかったことに気づき、次の電車にすることに。5分後? 10分後? いえいえ1時間後しかありません。
そして1時間後、日差しが強かったので、無人駅の石の箱のような待合小屋?で電車を待ちます。来ました、来ました! ポッポーっと汽笛を鳴らしながら---
ところがなんと、電車に乗ろうと近付いてみれば、無情にも電車はプリンセスを置き去りにして無人駅を通り過ぎていくではありませんか!!!
ええ? んなことってありぃ???
ええ。こちらの電車は降りるときも乗るときも、自分でドアを開けなければなりません。それはさすがにプリンセスももうマスターしたのですが、今の今まで、待合小屋に入ったままだと(つまり、ホームの見えるところにちゃんと立っていないと)電車は止まってくれない、という当たり前の事実に気付いていませんでした。
ふう、またあと1時間待つのか…
とぼとぼ坂道を登って自室に戻ると、あろうことか、今晩と明日の通信手段であるiPhoneとバッテリー、そしてキーボードを入れたポーチがしっかりテーブルの上に置きっぱなし…
「ああ、神様は電車を乗り過ごすことで、もっと大きなミスから私を救ってくれたのね」と納得。
気を取り直して3時の電車に乗りました。
さて、予約しておいたホテルはU3(銀座線の色)のノイバウガッセとツィーグラーガッセの間をずっと北に上って行ったあたり。一大ショッピング通りであるマリアヒルファーからも、ちょっとアンダーグランドな魅力のあるノイバウからも少し距離のある、公団住宅的な建物の多いエリアを抜けて、たどり着く、Pension Pharmador。プリンセスの好きなエリアにも近く、内装はしっかりクラシカル・ウィーンしており、部屋も清潔でテレビもWifiも完備。朝食もついて€60ということで、まあ満足。
価格の割に内装や設備は充実 |
まだ大分時間に余裕がありそうだ、といことで、いくつかお気に入りの店のあるSchottenfeldgasseから少し遠回りして、ノイバウガッセに行き、Haus des Meeresの横を掠めて、ナシュマークトを横目て見ながら、カールスプラッツへ。
ちょっと遠回りが過ぎて、なんだかんだ7時の開演ギリギリに劇場に到着。
入口に入る直前にプリンセス、余ったもう1枚のチケットをどうしようか、と思い至りました。
そしてその瞬間、お泊り用の大きなバックパックから、街歩き用の薄型バックパックに、あろうことか、今度はチケットを移し忘れていることに、はたと気付きます。
プリンセスの普段のウィーンでの定宿はここ。こちらにしておけば、 ほんの少しの遅刻でチケットを取りに帰れたのに…。 |
とにかく早足で歩くことにしました。途中休憩までに戻れれば、という算段です。でも、実はプリンセス、この日素足に履いていたサンダルが悪さをしていて、この時点で既にかなり足の裏が痛かったんです。…ただ、モンテヴェルディは大好きだし、せっかくエファからもらったチケットを1枚のみならず、2枚とも無駄にするのは嫌だったし、何より生のチェンバロの音を長く聴いていなかったので、この日の舞台をとても楽しみにしていたこともあり、ひたすら頑張って歩きました。
今思えば、カールスプラッツからノイバウまで乗り換えひとつでU Bahnで行けばよかったものを、人間ショック状態では思考が固まります。さっききた道を愚直に引き返すことしか考えつきませんでした。カールスプラッツからケッテンブリュッガーガッセまでは平坦ですが、ここからホテルまではほぼ一方的な登り坂。ノイバウガッセの坂を上って、集合住宅の中庭を通り過ぎた辺りで、すでに時間は7時半を回り、このままホテルからチケットを取ってきて引き返したところで、途中休憩にはおそらく間に合わないだろうことが予想されました。
しかも、左足の裏の皮が剥け始めています。
プリンセス、遂に降参…
エファ、ごめんなさい!! …と呟きながら、道端のビオレストランの戸外テーブルの椅子に、吸い寄せられるようにヘタリ込んでしまいました。
空き切ったお腹とガックシ落胆した心に、ビオのサモサと黒ビールが、優しく染み渡ったことは言うまでもありません。