先週始まったゼクトの収穫は、5日間で終了。ゼクトのブドウはとにかく酸が命で、少しでも酸が下がったら使わないのがウチの流儀。ところが当主ミヒャエルによると、オーストリアの多くのゼクトは、通常のワインを収穫した後に残った実でゼクトを造るとか…。唖然。私の本や記事を読んで下さった皆さんは、どうして私がオーストリアのゼクトに(ブリュンドゥルマイヤー他一部を除いて)全く肩入れしないか、不思議に思ったかも知れませんが、そして実際、「この気候なのに、何故ゼクトの大半がどーでもいい味わいなのか」私自身とっても不思議に思っていたのですが、理由はそういうところにもあったのですね。
さて、ゼクトの収穫が終わると、ウチでは1~2週間ほどおいて赤の収穫を始めるのが普通です。
その間も労働者の数は普段より多めに確保されていて、例えば暑い日が続いて酸の低下が心配されたり、長い雨が予想されたりすると、糖度が十分(或いはそれに近く)にまで達した区画のブドウは収穫できるよう待機しています。で、結局全く収穫がなければ、収穫籠(といってもプラスティック製)を洗ったり、庭の落ち葉掃除やら遅めのバラの手入れに借り出されたり。
待機労力を総動員してバラ園の手入れを目論んでいたおじいちゃんペーターは、栽培・醸造長のカーナーさんが、金曜に一部のピノの収穫を決めたことで、期待していた働き手をとられてしまい、テーブルを叩いてくやしがっていました:)
この時期、同じ産地にあっても、植えているブドウの種類や量、それぞれの熟度などは様々ですから、収穫籠をはじめ様々な機器を貸し借りし合うのは普通のこと。オフィスには色々なワイナリーの当主や醸造長がやってきては話をして行きます。今日もドレさんがオフィス・マネージャーのヴォルフガングと長話をしていました。
そんな活気と緊張感の入り混じる雰囲気の中、有難いことに、ここに来て雨が丸一日降っていたことはありませんが、きっと2日以上降り続いたりすると、いやーな雰囲気になるんでしょうねぇ。
ところで今日、私の誕生日の朝は重苦しい空模様でした。慌しい状況下、誰も私の誕生日になんか気づく人間はいませんし、第一、本人自身、鍵3つ紛失の痛手から回復していません。おまけに懸念の長期滞在許可は、なんでも最近高官の移民権がらみの汚職があったとかで、異様に厳しさを増しており、通常の方法では下りそうになく…。13日の夕方に突然電話で、BOKU(University
of Natural Resourceだったか)への願書を書くように指示され、必要書類の用意やら、ドイツ語のカリキュラムと格闘しつつの出願コースの決定やらに明け暮れていましたし。
お昼近くにはとうとう雨も降り出しました。プリペイドフォンのチャージすら隣町まで行かねばできず、雨の中とぼとぼと20分以上歩いてようやくチャージ料金を払うも、今度は電話をかけてチャージを実行するのに、ドイツ語のインストラクションとの闘い。
Nothing is easy here….なのです。
そんな道中、携帯に電話が入りました。地元のおっさんのドイツ語は注意して聞かないとドイツ語ともわからない程方言が強く、お手上げ。”Auf englisch order langsam, bitte.”(英語か、或いはゆっくりお願いします)と叫ぶと、なんと鍵が届けられた、と言うではありませんか!!!
はるか北方のHornという駅からの電話。つたないドイツ語で、最寄の駅まで届けてもらえるよう依頼し、その数時間後、ようやく鍵を取り戻しました。
気がつけば空は快晴。涼やかな風が流れています。マーケティング協会の黒い名札下げにつけた3つの鍵は、最高の誕生日プレゼントになりました。
おじいちゃんは私のためにゼクトを1本セラーまで取りに行ってくれ、おばあちゃんとエファ、曾おばあちゃんの世話をしているダナは抱きしめてふたつのハッピーを祝福してくれました。
最後はいつも快晴。プリンセスの人生、そうでなくっちゃ。