2011年11月23日水曜日

ふくろうマークの "ヒードラー"             2011年収穫レポート その1

お城ワイナリーからの距離という意味では、何度かブログでご紹介したヒルシュに続いて、ふくろうのマークでお馴染みのヒードラーHiedlerが、有名どころとしてはご近所ワイナリー№.2的存在。

自転車で20分ほどの距離にあるのですが、ヒルシュと違って道のりが平坦でないことと、普段よく通る道筋にないため、お城住まいになって以来、まだ1度しか訪ねていません。
で、そろそろ崩御間近の10日、あちらの収穫がひと段落したのを確認し、お城ワイナリーも通常のブドウの収穫が終わり、翌日に貴腐の収穫を残すのみ、という状況を見計らって、2011年の収穫状況を当主ルードヴィックにインタヴューして来ました。
郷土伝統的建築でもなくハイテクでもなく、スペイン人である夫人マリアの趣味も反映したに違いな建物。
エティケットでおなじみの森の守り神『ふくろう』が門柱に鎮座しています。
基本的に、久々に質量ともに満足の行くヴィンテージになった、と嬉しそう。
問題点を挙げるなら、8月下旬から9月初頭の熱波。その影響で;
1)アルコール度はどうしても高め。
2)皮が厚く、フェノール分が高い(特にグリューナー)。
少し解説をしておきますと、
1)のアルコールについては、「今年は14.5~15%の白が出る可能性もある」と、困惑の表情。
また、通常いつも早めに収穫し、DACワインを作る畑であるシュピーゲルSpiegelでも、今年は法制上はReserveとなってしまうため、13.1%以上になってもReserveと名乗らなくてもよくなるよう、法令を改めるべく運動している、とか。

ところで、熱波の影響は当然酸にも及びますが、7月から8月中盤まで比較的涼しく日照が少なめだったため、根がよく張っており、恐れられたほど酷い低下を招かなかったかったのは救い。
また、発酵中に失われる酸量が今年は少なかったことや、自然に起こるMLFで失われる酸量も少なめに見積もられることから、最終的ワインの酸量は、天候から考えれば比較的よく保たれそう、と言っていました。

2)については、プレスの際、皮から過多のフェノール分を果汁に出さないよう、細心の注意とテクニック(ネウマティックプレスを回転させない、圧力を弱める、など)が必要だったそう。
夫人マリアのラテン気質は、今ではすっかり夫ルードヴィックにも伝染。ワイナリーは陽気な雰囲気に溢れています。
以上を総合して、「一番の問題は」とルードヴィックは言います。
「消費者のマインドだよ」と。
一時期アルコールの高い、威風堂々たるスマラクト的ワインをもてはやした消費者の嗜好は、近年真逆にスイングし、アルコールが軽めでエレガントなワインを好む傾向へとシフト。「ラベルのアルコール分を見ただけで敬遠されるのではないか」と心配そう。
けれど酸が晩夏から初秋の熱波を経ても比較的良く保たれたことや、根がよくミネラルを吸い上げたことなどの要因で、ワインの味わいはバランスよくチャーミングな果実味&香味に溢れているので、「消費者はワインを飲んで考えを変えるかも」と強気も覗かせていました。

セラー見学と、2010年ヴィンテージから、新顔など数種かいつまんだテイスティングの様子は、後日『その2』でお伝えします。