収穫を始めて長い間、プリンセスは自分がリースリングを収穫しているのか、グリューナーを収穫しているのか、ずっと迷っていました。
いえ、葉のカタチや実の色からリースリングのはずだとは思っていましたが、まずそのお姿があまりに端正で品行方正。ワイヤーに絡みついた実や葉など、全くと言っていいほどありません。
それに食べると、とっても優しい味わいで、酸がリースリングとしては柔らかい。
ウチのリースリングとのルックスの違いは、気候や土壌の違いから来るのか、クローン違いか、仕立てや手入れの違いなのか…非常に気になるところです。
ところで、ヒルツベルガーと言えば貴腐の混入率が高いことで有名。
沢山貴腐を残す、となると、決定的なのが「善玉」と「悪玉」をいかに見分けるか、ということ。
作業の最初に、フランツSr.から「これはいい貴腐、これは悪い貴腐」と説明を受けます。その説明を彼はなんと「ガンツ・ラーングザーム(=ゆーっくりでいいよ)」と締めるではありませんか!
しかも「これはどう?」「あれはどう?」と尋ねると「食べてごらんよ」と勧めるばかりか、紛らわしい状態の実を見せると「うーん、これはどうだろうね?」と自らお毒見。見れば、周囲の収穫隊の面々も、実を食べたり吐き出したりしながら作業を進めています。
なーんだ、プリンセス方式じゃん、と勝ち誇ったような気分になる、能天気なプリンセス : )
左がお城ワイナリーで主に用いている鋏。右がヒルツベルガーで使われている鋏。 左の方が太い梗などをガシガシ切るには楽ですが、チマチマ粒よりで選果するには圧倒的に右の方が使い易い。 |
何より私を驚かせたのは、選果を粒よりでしていると、ポロポロ実が落ちてしまうことも多いのですが、落ちたその実をひと粒ひと粒拾って歩く、その姿!
だから貴腐も、いい貴腐であればひと粒残らず使います。
かがんで、落ちた実を一粒一粒拾います。 |
あっちでも、こっちでも、こうして腰をかがめて。 |
一方で、「絶対混入してはいけない」という緑カビ(貴腐を造る灰色カビとは別種)を見落として混入したり…。お城ワイナリーで、かれこれ10回近い収穫をし、随分善玉と悪玉の見分け方にも習熟したような気でいましたが、まだまだですね。反省。
ね。随分沢山貴腐が入っているでしょう? |
食べて不味い実は入れるな。美味しい実は一粒たりとも無駄にするな。
ヒルツベルガーマジックの極意は、そんなシンプルなところにありました。