上部から下方を望む。これがリラ仕立て。グリューナーの強い樹勢を抑え、より太陽光に対してキャノピーを開く と同時に、適度な影を作る効果も期待できる。尚この写真はミッヒが午前中に撮影したもの. |
ウチの持つ5つのグリューナーのエアステ・ラーゲの中でも一番お値段の高いワインになる畑。…となると収穫は一番最後なのかな? …となんとなく思い込んでいたところがあります。
なのでこの日、5大銘醸畑のトップを切っているなどとはツユ知らず、午前中プリンセスはクレムスで、おそらくこちらに来て初めて、ショッピングを楽しんでいました。
それでも本来ならお昼前後にお城に戻る予定でしたが、得意のボケ発作がまた起き、何を思ったか(考え事をしていて、何も思っていなかったというのが真相)St Polten行きの電車に乗って、ドナウの南岸まで行ってしまいました。
ドナウを越して南岸最初の駅はフルト=パルト。 ガイヤーホーフやマラート、シュティフト・ゲットヴァイクなどが近いところです。 |
その時点で今日の収穫がラムだと聞かされ、慌てて自転車でハイリゲンシュタインの麓まで駆けつけました。
いたいた、お城ワイナリー収穫隊!
すると例のシェフィン(女ボス)クリスティーネが、「ラムの収穫は午前中に終わっちまったぜぇ」(ドイツ語の単語ひとつひとつはよくわかりませんが、雰囲気的にそんな語調)と。
「ええ? ここはもうラムじゃないの?」とガッカリする私。
「だったら写真だけでもちゃんと撮っておきたいから、どこからどこまでがラムなのか、教えて」と頼むと「あそこの木の後ろを廻って、古いプレスハウスの前を通って、真っ直ぐ上って行くとリラ仕立の畑に出くわすから。そこがラム」と説明してくれました。
それを再度私が確認すると、「…ったくじれってーぜ、自転車そこ置いて、あたいについといで」と、停めてあったヴァンで、現場まで連れて行ってくれました。
クリスティーネの連れていってくれた、上部リラ仕立の区画。 左上の赤黒く見えている横に並んだ木々のあたりまでがラム。その上がハイリゲンシュタイン。 |
上部コア・ラムでの午前中の収穫の様子。うちのミッヒがしっかり写真に撮ってくれていました。 |
ご覧の通り、ブドウはすこぶる健全。ただのローム土壌ではこうは行きません。 |
あまり選果に時間はかかりません。今年は久々に量的にも満足の行く出来。 |
浪花節的熱血姐御クリスティーヌ |
ところでラムは、後からカーナーさんに教えてもらったのですが、実は昔からラムとしか呼ばれてこなかったコアなラムと、他の名前がついていたけれど現在はラムとして登録されている広義のラムがあり、私が駆けつけた辺りはどうやら後者だったようなのです。
では、ちょっとラムについて解説しておきますね。
ハイリゲンシュタインの麓の緩斜面から大通り近くのほぼ完全に平坦な場所まで、結構広い畑。ウチも5haほど持っています。真南向き斜面は、軽い凹形を描く、円形劇場状なので、お日様の熱をさらにシッカリと受け止めることになります。
そして土壌は、その名の由来であるLamm(=Lehm=ロームの方言)。
…なんですが、ここがロームだけの土壌だったら、オーストリアきってのグリューナーの銘畑になることは、決してなかったでしょう。
ラム上部。午前中撮影。 |
ラム下部。午後4時過ぎの撮影。 |
最下部の傾斜は極わずか。こちらも午後、日が傾いてからの撮影。 |
そんな環境なので、味わいはローム土壌のもらたす重量感と、ここだけの原成&火成岩由来の目の詰まった白っぽいミネラル感の融合した、下に根付くエネルギーと上に伸びるエネルギー、野太さと緻密さ、という相反する要素を秘めた、厳格かつ豪奢なグリューナーとなります。
だから隣り合ったガイスベアクの、汁気が多く、黒っぽいミネラルが豊かで少し緩めのテクスチャーとは好対照で、両者の比較は、テロワールの何たるかを示唆してくれるはずです。
ウチとヒルシュがこの両畑でワインを造っているので、チャンスがあれば皆さんも是非、両方の畑と生産者を並べて味わってみて下さい!