行って来ました。朝9時から午後5時くらいまで、丸一日の収穫。なんと畑は、
一回しかお手伝いしないその日に、幸運なことにジンガーリーデル!
ヒルツベルガー家&ワイナリーは、ヴァッハウ西端シュピッツの町にあります。
ウィーンからヴァッハウに入ると、クレムスの町の後方、ドナウ北岸のシュタイン辺りから続く、原成岩土壌の急斜面のテラス状の畑が、一旦途切れる地点なので、ヴァッハウの終点、という感じの場所です。
パノニア気候がもたらす南東からの熱風は、ドナウ渓谷に沿って伝わりますから、ドナウを上流に遡れば遡るほど(東から西に行くほど)、パノニア気候の影響が少なくなる――つまり、寒くなるわけです。なので、ヒルツベルガーさんはヴァッハウでも最も冷涼な町にあるワイナリーです。
教科書的な説明はこのくらいにして、どんなところか、写真でご紹介しましょう。
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シュピッツの町はドナウ川が南⇒北から西⇒東へと流れの向きを変える地点にあります。 |
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なんだかお伽の国みたいでしょ |
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ジンガーリーデル(リースリング)&ホニフォーゲル(GV)が植えられた斜面)。 |
作業はこんなところで、こんな感じで、やっています。
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西向き急斜面の段状畑。各段には2列ブドウが植わっています。
石段の熱をより浴びる側は熟成が早いので、そちらから先に収穫します。 |
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斜面が急なので、下の段から上の段を眺めるとこんな感じ。 |
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夫人イルムガルトも、勿論作業に加わります。 |
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黄色の葉に、収穫隊お揃いの緑のブレーカーが映えます。
至極ゆったり、まったりとした作業には実は訳が… |
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なんとも楽しそうな収穫隊の秘密は、また中編、後編で詳述します。 |
「
独自の景色のあるところ、独自のワインあり」というのが私の持論で、このジンガーリーデルなどはその典型。
収穫期には
黄色に色づいたブドウの葉と屋根のレンガ色、まだ残る木々や下草の緑のコントラストが美しく、神々しいほど。
これくらい収穫期の彩りが美しい産地は、
ドルチェット葉の黄、バルベラの葉の赤、ネッビオーロの葉の緑の対比が巧まざるコンポジションを描く、ピエモンテはバローロ、ラ・モッラの丘と双璧と言えるかも知れません。
そんな、ヴァッハウで最も気温の低い場所の、けれど午後の暖かい西日を浴びる西向きの、しかも陽光を太陽からもドナウからも受ける急斜面でギリギリまでブドウを完熟させ、さらに辛口でも貴腐を嫌わない伝統的造り、
ヴァッハウの中でも最も高いと言われる貴腐混入率、アカシア樽の積極的使用…。
そうした条件が全て相まって、ヒルツベルガーの、あの
限りなく優雅な味わいは育まれます。
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バケツに収穫したブドウをこの背負い籠にどんどん空けて行きます。
因みに写真はオーストリアのスターヴィンツァーの一人、フランツ・ヒルツベルガーその人。 |
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30-35kgくらい入る籠は、男性がこうして介助しないと背負えません。 |
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これを背負って、下方のトラクターに積んだ大きな収穫ボックスまで日に十数回は上り下りします。
急斜面なので、トラクターは畝まで入れないのは勿論、各畝横にすらつけられません。 |
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それにしてもフランスSrは幾つなんだろう? 実に作業が早い。
いつもスタスタと去ってしまいます。 |
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このカットを撮るために
何枚後姿を撮る羽目に陥ったことか |
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背負い籠で運んだブドウは、このボックスにためます。
箱が大きいので驚きましたが、ワイナリーはこの斜面の直下数十メートルの至近距離。だから許されるんでしょうね。 |
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太陽が西に傾くとこんな感じ |
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午後5時頃。暗くなり、実の良し悪しが見て判断できなくなると作業終了。
斜面の急なのがよくわかる写真。 |
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作業を終える頃はこんな感じ。灯りが燈るとまたロマンティック度を増します。 |
中編では、その
貴腐魔術の秘密に迫ります!