ライタベアクDAC制定をリードしたシルヴィア |
試飲ワインは以下の通り;*(P)はグレーピンク・ラベル=軽快クラシックタイプ、(B)は黒ラベル=長熟タイプ
「ちょっとちょっと、バレルサンプルは恰好悪いからいらないでしょ?」というシルヴィアの制止を振り切っての撮影 : ) |
Pinot Blanc Seeberg (P) 2011 Barrel Sample:樹齢50-70年の古木からのピノ・ブランは、お値ごろな価格ながら通を唸らせる素晴らしいバランスとミネラル感。
Leithaberg (B) 2011 Barrel Sample:まだ赤ちゃんで評価が難しいが、ミネラルの超密さで前のワインとの格の差を見せつける。「熱波のあった11年にも酸はそれほど下がらなかった。」とシルヴィアが語る通り、冷涼さ溢れる味わい。
Johanneshöhe Blaufränkisch
2009:酸と果実味、タンニンとアルコールのバランスが見事なベスト・ヴァリュー ブラウフレンキッシュ!
Schützner
Stein2009:キュヴェ嫌いのプリンセスを唸らせる、絶妙のメルロ遣い。今の時点では上のクラスよりよく開いて魅力的なほど。
Leithaberg Blaufränkisch
2009:シストとシェル・ライムストーン土壌由来のミネラルが核の硬派なワイン。タンニンがこなれてから真価を発揮しそう。
Goldberg Blaufränkisch 2009:シスト土壌。西向のためブドウの成熟がゆっくり。ワインの成熟もゆっくり。タンニンがライタベアクより更に厚いのにむしろ柔らかく感じるのはさすが。
ところで、彼女とプリンセスのお付き合いは既に恐らく9年近くになります。
2003年、最初にオーストリアのワイン産地を訪れ、「この国の赤は絶望的」(抽出は強い、新樽は強い、垢抜けない、の三重苦で、白が魅力抜群なのと正反対)と思った中、彼女の赤は頭抜けて素晴らしく、特にブラウフレンキッシュ ゴルトベアクの緻密さと、この国のカベルネとしては唯一まともにタンニンが熟しているウンガーベアク、そして穏やかでありながら焦点の合ったヴァイスブルグンダーが印象的でした。
そして翌年、ブルゲンラントのプレミアム・クラスの生産者の赤としては、アラホンやヴェーニンガーに続いて比較的早い時期に日本に紹介されました。…が、いつの間にか消えてしまいます。モリッツやヴェンツゼル、ウヴェ・シーファーやドルリ・ムーアらの”エレガント・ブラウフレンキッシュ“の潮流がまだ見えて来ない頃の話です。
その間、彼女のポートフォリオからStラウレントが消え、ライタベアク赤白が加わり、少なくともゲルマン圏を除くインターナショナル市場においては、かつてのガッツガッツ&コッテコテのバリック・キュヴェや筋骨隆々のブラウフレンキッシュは“アウト”を宣告されます(ドイツや国内市場、スカンディナヴィア諸国ではまだまだ人気が高いようですが)。
そうなってみると、彼女やETの位置づけが非常に難しくなってきます。間違いなくエレガント・ブラウフレンキッシュの先駆けなのですが、今時の"エレガント”派の中に入ると、抽出も決して弱くはない…。
しかも彼女のワインのヴィジュアル・プレゼンテーションは、ワインのスタイルを簡潔に体現しているでしょうか? 市場に対して十分に説得力があるでしょうか? ピンクラベルが軽快なクラシックタイプ、黒が長期熟成タイプを意味する、というところまではいいでしょう。けれど同じブラウフレンキッシュ100%のワインのあるものはボルドー瓶に、あるものはブルゴーニュ瓶に入っているのに十分な理由は、今でもあるでしょうか?
どう転んでもオーストリアの赤の生産者の頂点のひとつなのに、日本市場に定着しなかった理由は、彼女のワインが一般受けというより通人に評価されるスタイルだという点も去ることながら、そんなコミュニケーションベタも大きな理由のような気がしてなりません。
元マーケティング・プランナーのプリンセスとしては、このワイナリーには質以外のところで、そういう工夫のしようが色々あるように思えてなりません。