2011年8月27日土曜日

ホイリゲにて。ヤウゼの底力に感服!

昨晩は夕方から家族で、シュロス・ゴベルスブルクの栽培&醸造長を務めるカーナーさんの実家のホイリゲ(=自家製の食事とワインを供する居酒屋)に行ってきました。St Poelten近くの本当に小さな村の素朴なホイリゲです。

いやあ、おいしかった! オーストリアの食の豊かさは、ハプスブルク由来の宮廷料理もさることながら、庶民の通う、こういうなんでもない店にこそあるのかも。

写真でお見せできないのがとても残念ですが(カメラ持っていったのにメモリーカードが入っていませんでした。私の人生、いつもそんなもんです 涙)、食べたのは所謂ヤウゼ(Jause)とよばれる、火を通さない典型的なホイリゲのおつまみ料理の数々。多種類のハムやソーセージ(といってもフランクフルトのようなものではなく、もっと太くて大きいのをハムのようにスライスして供します)、野菜のマリネ、チーズ、これまた多種類のパテやディプ・クリームの類などなどです。

中でも私のお気に入りはブラーテン・フェット(Braten Fett 直訳すると焼いた脂)、こちらの方言ではブラードルとよばれる豚の脂のラード状になったもの。脂100%と聞くと一瞬ひるむのですが、これがなんとも、脂の甘さと、何のスパイスを使っているのか不明ですが、ちょっと醤油を思わせるような旨みが凝縮して、えも言われぬおいしさ。ブラーテン(焼く)と言うからには、悪い油を火にかけて落として落として、美味しいところだけを残しているのでしょう。パンに塗って、あるいはそれだけをペロペロ舐めながらワインを飲むのに最適です。

もうひとつ、これはホテルの朝食ビュッフェなどでも必ず出るものですが、リップタウアー(Liptauer)という、チーズディップにようなもの。ベースはホイップしたバターとクリームチーズで、そこにパプリカやらハーブやら…入れるものでオレンジ、緑、クリーム色、と色とりどり(と言ってもオーストリアらしく、極彩色ではなく、淡いパステルカラー)。シュロス・ゴベルスブルクきってのグルメ、マーケティング担当のフレディによれば、使うバターの品質とホイップの仕方で味の全てが決まる、のだそうで、確かにどーでもいいものから、驚くほど美味しいものまであって、私のオーストリアでの宿泊ホテル選択の、隠れたプライオリティにもなっているほど。

ワインは酸とミネラル、アプリッコットのような楚々とした果実味が主体の、本当に清らかでシンプルなもの。乾いた夏の戸外で飲むのに、こんなに美味しいものはありません。特に日のあるうちはG'spritzer(シュプリッツァー)、つまりワインと炭酸水を半々にして割って、文字通りガブガブ飲むのが最高です。
そして当然と言えば当然なのですが、ワイン農家の作るトラウベンザフト(Traubensaftブドウジュース)は、激旨。ウェルチのベタベタ甘いブドウジュースに慣れた舌には、ブドウジュースのレーゾンデートルがひっくり返るくらい新鮮です:) 酸が高いので、味わいに立体感が出るのは、ワインと何ら変わるところがありません。

最後に驚くのが価格。東京のワインバーだったら、2-3千円の前菜になりそうな皿の数々が、大体2~5ユーロ。ほとんどが4ユーロ前後なのです。あまりの出血価格ですから、パンも有料で、お勘定の際、どのパンを何枚食べたか一応申告することになっています。ただ、散々飲んだ後に誰もそんなこと覚えていないのが普通ですが。

ちなみに本日のお勘定、ワイナリーで働く人達なども含め、こちらは総勢11人。飲みはほとんどシュプリッツァー止まりで控えめたっだとはいえ、全部で110ユーロちょっと。当主ミヒャエル持ち。ご馳走さまでした!

常々オーストリア人はドイツ語を喋るイタリア人だと思っているのですが、庶民の食の、この質の高さとこの安さ! やっぱりすごいぞ、オーストリア!!

ホイリゲで料理とワインを甲斐甲斐しく運ぶカーナーさんを見て、こんなに美味しい料理とワインを供する家に生まれ育った彼の手になるシュロス・ゴベルスブルクのワインが、美味しくないはずはない、と妙に納得。ウチのワインの真っ直ぐで懐の深い温かさの秘密が、ひとつ解けたような気がして、お腹も心も本当に満足な夜でした。