2011年10月30日日曜日

胡桃はやっぱり拾わないと

昨日収穫でできなかったお庭掃除。ちゃんと日曜にフォローしましたよ: )。
ゴベルスブルクの町はすっかり晩秋の風情。
 ところで私は先週、枯葉も胡桃も量が下火になったと書きました。
が、そんなの真っ赤な嘘!
下火になっていたのは、どうやら風などで落とされる虚弱体質の子達で、今こそ本格的に全てが土に還って行くとき。とてつもない量の落ち葉&胡桃と、午前中一杯格闘することとなりました。

この胡桃の木が、もの凄い勢いで葉と実を落としていました。
一見大したことないように見えますが…

こんな感じに、落ち葉の間に間に胡桃が隠れています。
結局このバケツに6杯分、拾いました。落ち葉はリヤカーで山盛り3杯分。
坂道の下の堆肥作り専用のゴミ捨てまで往復3回の上り下りは、なかなかの重労働。
 正直、途中「一体いつ終わるんだ、この作業…」と途方に暮れたプリンセス
何も全部今日拾う必要もないんじゃないかしら?」と、サボリの虫がムクムクと頭をもたげます
手前が皮に包まれた状態。その奥が皮の剥けかけたところ。右の二つが皆さんお馴染みの胡桃。
でも…。
このまま置いておくと、まず皮につつまれた胡桃から湿った中身にカビがついて、食べられなくなって行きます。
そうなったって土の養分にはなりますが、せっかくあんなに美味しい胡桃を、ちゃんと味わわずに土に返してしまうのは、なんだか罪深い気がして来ました。
生の胡桃、ローストした胡桃、胡桃のクリーム、リキュール、はては胡桃っぽい風味のオロロッソ・シェリーの味まで口中に蘇るではありませんか!

そう。美味しいもの、美しいものはちゃんと味わって上げなければいけないのです。
そして同様に、ヒトの能力も、最高のカタチで発揮させて上げなければいけないのです。

皆さんの周りにもいませんか? 妙に歌が、絵が、料理が上手だったり、小噺が抜群に面白かったりするヒト。仕事では冴えないけれど、何かヒョンな得意技を持ってるヒト。

そういう才能は、ちゃんと拾って、味わって上げて下さいね。
肉体労働の後の食事は最高に美味しゅうございます。
奥のビールはこのワイナリーを所有するツヴェッテル修道院が造る、いわばトラピスト・ビール。

グリューナー・ヴェルトリーナー@シュタインセッツ畑 収穫レポート

ようやく昨日土曜朝、シュタインセッツSteinsetzの収穫に参加できましたを果たしました!
日の出が遅いので7時15分に繰り延べられた作業開始時間。
ああ、でもまた今週から冬時間になるので、6時45分に戻ります。
この畑、お城南方の平坦な畑で、車窓から眺めるだけでササっと通り過ぎたなら、「なんら特徴のない畑」として見過ごしてしまうでしょう。前のブログにも書いた「無名」畑、ノインツェーン・ヨッホ19 Jochの更に下方にあるため、無名畑よりも劣格の畑、と誤解されても不思議はないほどです。
お城のある北に向かって極々微小に傾きのある、平地の畑。
背後に霞む、向かって左がハイリゲンシュタイン、道がガイスベアク
ご覧の通り。左が北側。
けれどこの畑は紛れもないエアステラーゲ(=first class vineyard こちらのGrand Cru & 1er Cruの総称)です。※と書きましたが、この畑はklassifizierte Lage(格付された畑)であってErste Lageではありませんでした。訂正し、お詫びします。ペコリ。
何故?
その理由は畑で土を見ると少しわかります
そして、収穫をしてブドウの実を観察し、食べてみれば更にはっきりと実感できます。
表土は軽い砂質。その下が小石で、水捌け抜群。
大きめの粒をみっちりとつけた大きめの房達。実に健康な状態。確かに熟しても緑色です。
この畑、実は大昔ドナウ川が流れていた辺りにあり、土壌はドナウの運んだ小石。その上を軽い砂質土壌が覆っています。つまり、水捌け抜群なのです。そこら辺りが、ローミーなやや重い土壌で、しかも地下水脈があまり深くないところを流れているノインツェーン・ヨッホ19 Jochとは、格の違いを見せ付ける要因。

ところで、このグリューナー・ヴェルトリーナー Gruener Veltlinerというブドウ。グリューン(=green)と言うだけあって、熟してもシャルドネやリースリングより果皮に緑色が残ります
実の大きさやつき方の疎密がまちまちで、ツルに絡まれまくった、ちょっと邪悪な感じのする(ま、単に野生的、と言ってもいいですが)リースリングより、一見遥かに善人風。実の粒が大きく、密に威勢よくついており、房も大きく豪勢。お百姓さん的には、とても嬉しいブドウでしょう。

しかーし!

すくすく育ち過ぎるのはワイン用のブドウにとっては決していいことではありません。剪定、芽かき、除葉、摘房などの作業にいちいち余計な手間がかかります
また、実がギッチリ詰まっている、ということは内部に湿気がたまって腐敗が起こりやすい、ということにもつながります(ただしグリューナーの場合、果皮が厚いので病害には強く、この欠点を補って余りある)。
それになんだか、ひとつの梗から双子や三つ子状に房の合体しているモノも多く、重なり合った部分が、かなりの確率で悪玉貴腐にやられています。
双子状態の房
これは三つ子状態。ジョイント部分が貴腐に冒されています。
で、そのやられ具合が、無名畑のノインツェーン・ヨッホとエアステラーゲのシュタインセッツでは、やはり雲泥の差(土が重い=湿りがち、ということがいかに悪玉貴腐の温床になりやすいかを実感)。
健全果を食べ比べても、味わいの立体感や風味の凝縮度には数日置いてもはっきりわかる差がありました。
作業の途中で写真を撮ることを思いついた房。こういうのは実を顔に近づけると、お酢の匂いがします。
真ん中の薄茶色に変色した部分がその元凶。
悪玉をお掃除し終えた状態。
この作業、当然汁が飛びますから、手袋だけでなく、着ているものはブドウ果汁でベタベタです。
もっとも、エアステラーゲの中でもトップクラスのガイスベアクと、無名畑ノインツェーンヨッホの両方のリースリングほど、シュタインセッツとノインツェーンヨッホのグリューナーに酸、糖などのアナリシス上の大きな差は、プリンセスベロ屈折度計によれば: ) 恐らくないと思います。

つまり、グリューナーはどの畑でもきちんと仕事をすれば、それなりのワインに仕上げやすい。即ち、スイート・スポットが大きい。

対するリースリングは、呆れるくらい畑を選ぶ。劣格の畑では酸っぱいばかり。スイート・スポット極小です。

ひねくれ者のプリンセスは、一見善人風で、ヒト当たりよく、それでいて分け入るとガッカリな部分もありがちなグリューナーより、ちょっと見邪悪で、ツルをかき分けかき分け、房を切り落とすにもひと苦労でありながら、様々な条件がピタっと折り合ったときには誰にも真似できない素晴らしい実をつけてくれるリースリングに、どちらかと言えば個人的には惹かれます。

ふたつのブドウの個性の違いを、ショッピングガイド風に翻訳すれば;
グリューナーにはお買い得多し。
美味しいリースリングが飲みたければ、それなりの出費は覚悟せよ。
…となります。

さあ、今週はいよいよラムLamm、レンナーRenner、グループGrub、というグリューナーのトップ・サイトの収穫に突入! お日様もようやく顔を出してくれたので、摘み手達もやる気満々のはず。


プリンセスもとっても楽しみです!






2011年10月29日土曜日

シュロス・ゴベルスブルク ゼクト RD 2001

昨晩は珍しく、本当に珍しく、プリンセスが夕食を作りました

もともとやんごとなきお育ち(ウソ。単に不器用なだけ)のプリンセスは、味にはうるさいですが食べるの専門 : ) 。料理はネコマンマみたいなものしかできません(自慢することではありませんが)。
ましてや、常に家族だけでも7-8人分を賄わねばならず、しかも専門の調理人まで雇うお城の台所に立つなど『もっての他!』

…と思っていたのですが、私がここに来る際、家族が気を遣ってウィーンの日本食品店で買い込んでくれていた、うどん、ビーフン、味噌、みりん、加えて私がお土産に持って来た海苔、鰹節などが食品倉庫の場所を占領しており、なんとか始末してくれ、との夫人エファからの悲鳴…

仕方がない、ということで、料理人レナーテさんの許可を得て端肉の豚肉と余り野菜をいただき、シンプルな焼きうどんを作る羽目に。

アシスタントは長女アナちゃん。
私のヘンテコなドイツ語の指示で実にテキパキ動いてくれます。
調理機器には恐怖すら抱く料理ベタの私など、触れるのも恐れ多いハイテク電磁調理台やピカピカの換気フードなどの使い方も、10歳にしてしっかりマスターしているこの子は賢い!

住み込みお手伝い、ダナにも助けられました。
何せ興味のないことには一切脳のメモリが振り充てられないプリンセス。調理器具やら調味法の名前なんかドイツ語でツユひとつ覚えていません。身振り手振りでの、フライパンをくれ、もっと大きいのじゃないとダメ、今度は大鍋だ、もっと強火にならないのか、生姜を擦ってくれ…などなど、よくぞ勘を働かせて(彼女英語は一切できませんので)、即座に私の要求に応えてくれたものです。

二人の絶大なる協力を得て、焼きうどんとインスタント味噌汁のディナーは、なんとか8人分、食べられる状態に仕上がりました。
目出度し、目出度し。

で、なにかと感激症のエファは「Fest Essen 晴れの晩餐みたいね」と言って、オーバーに褒めてくれます
掛け値なしに、ただなんとか食べられるレベルの出来なだけに非常にこそばゆい
おまけに和食大好きの当主ミッヒは「夕食はあと何分後?」と言って消えたかと思ったら、あのお誕生日にも開けてくれたゼクトを持参。

炒めモノの直後、しかも慣れない作業で汗だくのプリンセスは思わずゴクゴクっと、グラスに注がれたゼクトを反射的に一気「美味しい!」とこれも反射的に口を突いて出ました。

するとミッヒが「これ、2001年のLate disgorged」と、言うではありませんか!!
「え、そんなもの造ってたなんて知らなかった」と私。
「売り物じゃないよ、自家用」とミッヒ。
なるほど、エティケットの右肩にはRDの文字しかもよく見れば、それは手書きです。

※右上に手書きでDRの文字。2010年末のdisgorgeだそう。
確かに色は琥珀に近く、RDだけが持つ香ばしさと旨みに溢れています。
それがまた、仕上げに廻しかけた醤油と、イッチョマエにトッピングとして添えた、鰹節フレーク&アナちゃんが切ってくれた海苔の風味にいい塩梅に溶け合い、凡庸な焼きうどんを数段格上の味わいに仕立て上げてくれました
出汁醤油系にRDの上質な酵母=蛋白質っぽい旨みは抜群に合います!

Vielen Dank, Mich!
こんなご褒美がいただけるなら、私、毎週でもお料理しようかしら???

2011年10月28日金曜日

ゴベルスブルク@日の出前

ようやく天気も回復基調? うーん、雨こそ降っていませんが、お日様はまだ顔を出しません。

今日こそシュタインセッツSteinsetzの収穫かな? …と楽しみに6時45分、収穫隊集合場所に降りてみると、あまりに日の出が遅く暗いので、スタートは7時15分に遅らせるとの指示。しかも予定より半日雨の上がるのが遅れた影響で、今日の収穫はまだノインツェーンヨッホ畑だそう。
もうこの畑は、リースリングとグリューナーの2度も収穫を体験しているので、プリンセスは明日土曜、休日出勤で収穫に参加することとします(でも、それでお庭掃除ができないと、お婆ちゃんオカンムリかしら…)。

ところで、通常ブドウ畑の労働者は土日休みですが、収穫期には土曜出勤。天候の都合で止むを得ない場合は、日曜祭日の出勤も有り得ます。でも彼らは日当払いですから、まあ、文句はない模様。寧ろ気になるのは、待機してい、て雨が降ったりの理由で中止になったときの支払いはどうなるのか。因みに未習熟労働者の時給は€5

せっかく早起きしてしまっているし、一旦家族用の門を出てしまうと、鍵の都合で、お城に入るには5分くらいかけて表門まで廻らねばならないので、今日は早朝のゴベルスブルクのメインストリートをご案内しましょう
お城の正門を出たところ。オレンジ色の壁に黄色に色づいた木々の葉が映え、晩秋の趣を感じます。
真っ暗な町にぽっかり浮かぶ明かりはパン屋さん。上の写真の右手の白い家を右に降りていったところにあります。
千人程度の人口しかないこの町には、とにかくモノを買えるお店はこのパン屋さん一軒のみ(飲み屋=ホイリゲは私の知る限りでも3-4軒あるところが、また土地柄)。因みにお城の門のすぐ右手下方にあります。一度6時前に行ったらもう開いていたところを見ると、5時前後には店開きをしている模様。こちらのヒトは本当に早起きです。
収穫に出る泥だらけのズボンと長靴というコキタナイ格好で店に入り、「すぐ前のお城に住んでるワインジャーナリストなんだけど、ちょっと写真撮らせてね」とお願いし、店内をササっと写真に収めました。
汚れた靴を詫びると、「気にしないで」とニッコリ。田舎のヒトはウィーンっ子と違い、実に感じがいい
ド田舎のパン屋さんにしては、なかなか充実。パンは少なくとも20種類はあるでしょう。
他にコーヒー、紅茶、ジュース、POP飲料、バター、ミルクやチーズなどの乳製品も揃っています。
どこへ行っても驚くのがハム、ソーセージの充実ぶり。安くてしかも美味しいです。
下段のケースに入っているのはケーキ類。買ったことはありませんが、なかなかイケそう。
ちゃんとイートイン・コーナーまであります。一度お茶でもしてみようかしら?
ゴベルスブルクの町も我がお城も、まだ朝霧に煙っています。
教会の尖塔の霞む様子もなかなかロマンティックでしょ。
因みに私の部屋は、映っている右下の部屋の丁度裏側になります。

2011年10月27日木曜日

見落とせない、悪天候予想の心理的影響

こちらに来て初めて見えたきた側面、って色々あるのですが、今日は収穫における雨の影響のお話。

前提条件としてわかっていただきたいのは、ワインの質はブドウの質に基づく、ということ。
そして、少なくとも我がお城ワイナリーの労働者達は、想像していた以上に高い質のブドウを収穫すること(劣化果をしっかり除く=こちらでプッツッェン=掃除する、と称します)に誇りを持っており、作業レベルは驚くほど高い、ということ。
また、この辺りの傾向として、辛口ワイン用ブドウの収穫は雨の増える初冬前に終える、といのが伝統的ストラテジー。収穫期はまだ長雨は少ないので、2,3日の雨は上がるの待って収穫すればいい、と結構皆余裕の構えです。

そんな傾向に反して、収穫期に大雨が続いてしまったりしたら、厳密な選果をしようにもできない状況、つまりここまでの畑仕事は無残にも報われない、という場合も勿論有り得ます。だから物理的な長雨というのは、当然最も忌むべき状況です。

けれどおそらく、常により現実的な問題であり続けるのは、悪天候の天気予報が続くことの心理的影響です。

例えば通常4日かけて収穫する広い畑で、2日目に「あさってから2-3日は雨」という予報が出されたとします。その間収穫はできませんし、この後続々とエアステラーゲの収穫が控えています。その後の長期予報もなんだか連続晴天が望めないということになれば、当然3日でこの畑の収穫を終わらせたい、ということになります。
そういう状態になれば、2、3日目の選果は初日より粗くなるのは当たり前ですよね。

午後になって空模様が怪しくなってきた時なども、雨が降りだすまでに今日の作業予定を終えようと「マキ」の指令が出ますから、こういう時も同様に、選果の質が粗くなります。

また、いよいよ予定通りに作業が進まなければ、休日労働ということも有り得ますので、悪天候が続けば、生活の予定も狂うため、労働者の顔も曇り勝ちになります。

ことほど然様に、実際に雨にやられたブドウの悪影響も去ることながら、悪天候予想続きは畑仕事の質をどんどん落として行き、この辺りの気候(実際にブドウを劣化させるほとの長雨は収穫期には少ない)から考えると、むしろそちらの方が影響が大きいのではないか、とさえ思われます。

因みに言い訳めきますが、プリンセスの持ち帰りワイン会のお知らせメールが、あんなに混乱をきたしたのも、次の晴天までに、できる作業は全て終わらせたい、という焦りの結果。
毎日が晴天であれば、もっとゆったりプランを練り、校正に時間を取ってお知らせすることができました…。

2011年10月26日水曜日

エラ・フィッツジェラルド モースブルッガー    morning performance@6am

お待たせ致しました!

我が家の魔犬、エラちゃんの毎朝6時のお約束パフォーマンスをお楽しみ下さい!
…と書いて動画をアップしようと四苦八苦して既に1時間以上…。
おお、一日おいて、ようやく見られる(というよりお聴きいただける)ようになりました!

お城の隣の教会の朝6時の長い鐘に合わせて、御詠唱なさるのがエラちゃんの日課。(こちらに来た当初はそれがプリンセスの目覚まし代わりでしたが、畑仕事をするようになってからは、毎朝5時起きです。)

あんまり暗くてディーヴァ自身のお姿が捉えられていないため、短縮版でお送りします。
華麗なお姿をお見せしてのフル・パフォーマンスは、日の出の早くなる春にでも、またのお楽しみ、ということで。

ところで、今日はこちらは休日。今にも雨の降りそうな曇り空…いや昼からはシトシト降っています。でも天気も明日からまた持ち直す模様。
この時期の天候は本当にワインにとってクリティカルなので、ほっとしています。

天気予報通りに運べば、あさっては日の出前から行われる収穫の模様をお届けできそうです。

2011年10月25日火曜日

プリンセス崩御記念? 持ち帰りワイン会3つ

11月の一時帰国を利用し、恒例の持ち帰りワイン会を開催します! 
お友達とお誘い合わせの上、プリンセスに会いに来て下さい : )

その1  銘醸畑のグリューナーをカジュアルに味わう
お店はブログでの会場募集に応じて下さった、イタリアン“築地トラットリア・トミーナ”。シェフ冨山さんはイタリア国立料理学校 卒業後、ミシュラン星つきレストランでの修行経験あり。お姉さまはウィーンを拠点にご活躍の声楽家で、しかもそのご主人はワイナリーを実家に持つオーストリア人とか。
ワインは我がお城ワイナリー“シュロス・ゴベルスブルク”のエアステラーゲ(こちらの所謂グラン・クリュ&1er クリュの総称)である、ラム、レンナー、グループ(以上日本未輸入)、シュタインセッツ畑、そしてベスト・ヴァリュー・ワインである“ドメーネ”ラインの全てのグリューナー・ヴェルトリーナー2010年とツヴァイゲルト”も加えた計6種(テイスティング量)。
定員20名の早い者勝ち。

日時:1128日(月)午後7:00より10:30くらいまで
場所:築地トラットリア・トミーナを予定(応募定員を超えた場合、23区内で変更も有)
会費:9千円
シュタインセッツとドメーネGVのみ日本で調達します。

その2  リースリングのトップサイト”ハイリゲンシュタイン” vs ”ガイスベアク”
お店は超一級品のサービスでワイン通を唸らせて久しい、またオーストリアワイン大使の篠原ソムリエの正統派サービスの光る“シノワ渋谷”。
そしてワインは、何度もブログに登場しているシュロス・ゴベルスブルクのハイリゲンシュタインとガイスベアクのリースリング2010年を、ヒルシュの同一畑&同一ヴィンテージとともに比較。畑&生産者の個性の違いと、フレンチ・フュージョンとの相性をご堪能いただきます。シュロス・ゴベスルブルクのピノ・ノワールとブリュンドゥルマイヤーのゼクトを加え、計6種( テイスティング量)。
定員13、それを超えた場合は27名でのご案内です。

日時:1121日(月)午後7:00より10:00くらいまで
場所:シノワ渋谷またはラリアンス(神楽坂)
会費:1万3千円
ブリュンドゥルマイヤーは日本で調達します。

申込方法(2イベント共通)
piantao@nifty.comまで、氏名、連絡先(携帯)を記したメールにて先着順受付。ふたつのワイン会で同時募集していますので、必ずどちらのワイン会希望か(グリューナーの会かリースリングの会か)を明記して下さい!
締切:1111日(金)
お返事:1114日(月)中にメールにて、会場の詳細や、会費振込方法などをご連絡します。

その3  世界の銘醸リースリング比較@鮓と江戸野菜の店“壮石”
お店はプリンセスの教え子岡田壮介さんがオーナーで、プリンセスもワイン選びのお手伝いをした歌舞伎座近くの“壮石”。真っ直なお鮓と江戸野菜料理、エッジの利いた日本酒&ワインリストが魅力。
そしてワインは、オーストリアからプラーガーのヴァッハシュトゥーム・ボーデンシュタインとシュロス・ゴベルスブルクのハイリゲンシュタインを予定。さらに独モーゼル、仏アルザス、豪から、各産地を代表するリースリングを比較します。こちらもピノ・ノワールを加え、計6種( テイスティング量+参加者数により+α )を予定。
定員20名。このワイン会へのお申込みは、お店 ”壮石”tel 03-6228-4659の方へ直接お願い致します。

日時:1122日(火)午後7:00より10:00まで
場所:壮石(東銀座)
会費:1万3千円
オーストリア以外のワインは日本で調達。ブショネの場合は同等ワインをお店でオーダーします。

2011年10月24日月曜日

トラディツィオンの秘法大公開!

我がお城ワイナリーの名物ワインに“トラディツィオンTradition”があります。

当主ミッヒーが“僕の趣味プロジェクト”と言って憚らない、真底シュミシュミなワイン。
簡単に言えば、彼が引き継いだツヴェッテル修道院所有のワイナリーが、その設立(12世紀)から1960年代初頭まで変わらず行っていた製法を、ベアトランド神父の記憶と、お城に残る古文献をもとに蘇らせたグリューナーとリースリングです。

今日はトラディション用のブドウ(19日収穫)を20日午前中にプレスしている様子を本邦初公開! 
ひょっとすると世界初公開?

わかるヒトにはわかる、現代的白ワイン製法とは大きく異なる、非常にユニークな秘伝を捉えた瞬間です。製法の詳細は、収穫が落ち着いたらカーナーさんに写真を見せつつ解説してもらいましょう。
前日に収穫したガイスベアク畑のリースリング。
このように極軽くクラッシュした状態で一晩放置(天然コールドソーク)します。除梗はなし。

普通コールドソークは嫌気的状況で行いますが、トラディツィオンの場合は空気に触れ放題!
左手前のブドウなど、かなり酸化しているのが外見からも明らかです。

ブドウは最新テクノロジーの粋、ヴァーティカル・プレスで絞られます。
梗が一種のフィルター&圧力緩衝材の役割をするので、ブドウにとても優しく、尚且つ果汁は非常に澄んでいます。

コールド・ソーク中のプラ箱ですが、カーナー氏の手元をご覧あれ。ホースが差し込まれています。

このホースにはコールド・ソークしているプラスティック箱にたまったフリーランが流れるようになっています。

ホースの行き先は、下の階に置かれたオーストリアン・オークの大樽。

コールドソークのフリーランと、プレス機からの果汁の両方が、大樽に流れます。
果汁清澄作業は一切なしで自発的発酵を待ちます。

初回プレスの搾りかす(cake)は集められて再度プレスにかけられます。

プレスで圧縮されたブドウの上に写真の圧力分散&果汁浸透マットを置き、
下の写真のように新たなブドウを上に入れます。

こんな風にコールド・ソークしていたバスケットのブドウを移します。

プレス籠を定位置に収めるにはテクが必要なようです。

プレス中。順調に果汁が流れるようにホースの向きやバルブをチェックするカーナーさん

搾りかすとは言え、プレスが弱いので、まだジュースをふんだんに含んでいます。
なので、これを再度プレスにかけるわけです。

ひとつの作業工程が済んだら、必ずこうして綺麗に洗い流すのがお約束。とても重要なことです。

2011年10月23日日曜日

命の受け渡し

昨日もやりました。恒例のお庭掃除。
収穫期も終盤を迎え、枯葉の量は最盛期を過ぎましたが、まだまだ胡桃はものすごい量が落ちています。
プリンセスは一連の作業にもう手馴れたもので、全ての作業に2時間ちょっとしか要しなくなりました(まさかアラフィフになって落ち葉運びのリヤカーの急な坂道での操作に習熟するとは予想もしませんでしたが: )
ただし、箒で芝の落ち葉を掃き集めるとき、気をつけないと地雷(=魔犬エラちゃんのババ)を踏みます。ある意味これは落ち葉の間に間に隠れている胡桃を見つける以上に注意を要する作業です: )。

それはともかく、思えばゼクト用ブドウの収穫が始まった9月中旬、真昼の気温は30度前後まで上がっていました。
白ワイン用のブドウの収穫が始まった10月始め、朝の気温は5度前後まで落ち、最高気温も20度台前半にとどまるようになりました。
そして黒ブドウとリースリングのエアステラーゲの収穫を終えた20日頃、最低気温は0度前後、晴天の真昼でも15度には達しません。曇っていたりすると10度に届かない、という、東京の感覚では既に完全な真冬に突入しています。

つまり、ブドウを収穫している1ヶ月程度の短い間に、まさに真夏から真冬に一転。頭ではわかっていたものの、これが所謂“北部大陸性気候”というものなのですね。

秋=収穫期というのは、胡桃も栗もブドウも、実を落とし、葉の色を変えて、朽ちて行く、つまり死んで行く季節です。ヒトも動物も、死に行く命をお腹に入れて、或いは蓄えて冬に備えるわけです。が、その中でブドウだけは、酵母という他の微生物の力を借りて、ワインという別の命を手に入れます。命の受け渡しを果たす、つまり転生を成し得る稀有な実がブドウです。

そしてそこら辺りが、復活を遂げるイエス・キリストの一生とダブるところもあり、イエスの血としてワインがキリスト教において特別な飲み物たるひとつの要因なのかも知れません。

…いや、単にそれしか飲むものがなかったんだろぅ、という方が正解かも: )?

今週からはグリューナーのエアステラーゲの収穫が、おそらく本格化します。今度はどこかで極寒の中始まる朝の収穫の様子をお届けしますね。
ここからフィニッシュまで、どうか良い天気が続いて欲しいものです

2011年10月22日土曜日

もうひとつの真実

昨日のブログの結句を読んで「あら、プリンセスったら随分ニヒル」と思われたかも知れません。

でも、物事には必ず両面というものがあります
確かに、明らかにハイリゲンシュタインやガイスベアク、ラムやレンナーといった畑は、景色からブドウの状態から何から何まで、無名畑とは雲泥の差で、無名畑にいくら手を掛けても、先に述べたエアステラーゲ(プレミアム畑)でできるような素晴らしいブドウにならないのは厳然たる事実です。

けれど、エアステラーゲなんて数が知れています。ワイナリーの生産量全体に占める割合も微々たるものです。つまり、ワイナリーの経営を支えているのは、むしろ無名畑のブドウからできたワイン達なのです。

翻って、皆さんワイン消費者の立場で考えても、おそらく皆さんが普段口にされることの多いワイン、つまり小売店で3000円以下、レストランで5-6000円以下程度のワインのほとんどは、無名畑や、せいぜい中等級とみなされる畑のブドウから造られています

だからワイナリーにとっても、皆さんにとっても、無名&中等級畑からいかに最大のポテンシャルを引き出せるか、こそ一番肝心な点、ということになります。

ここでまたジャーナリストとして(或いはいちワイン愛好家として)の反省ですが、どうしてもそこのワイナリーの看板畑のワインにばかり注目しがちになります。
しかーし、
上の事実を証明するように、もちろんエアステラーゲで傑出したワインを造れない生産者に救いはありませんが、経営的に成功しているワイナリーは皆、そのベーシックなクラスのワインをとても好ましく仕上げています。所謂ヴェスト・ヴァリュー、ってやつに。

ベーシックなワインのボトムラインをどこまで上げられるか、ということになると、以前のブログにも書いたような、厳密な選定や整枝、除葉、グリーンハーベストの誠実な仕事ぶりだったり、収穫籠の配置だったり、使用器具のその場、その場での洗浄だったり、…と、諸々の実に地味な作業の積み重ねがモノを言うとしか言えません。実はそれは、エアステラーゲから超一線級のワインを造るための基本と全く同じなのですが。

それはおそらく、超有名絵画の影に隠された膨大な数のデッサンや、超難曲を華麗に弾きこなす演奏家の音階練習などになぞらえ得るものなのでしょう。

だとすると、私達は気づいていませんが、意外に「日々どうやって音階練習をしているか」みたいなヒョンなことに、その音楽家の「らしさ」が思わぬカタチで顔を出したりしているのかも? なんて考えてみたりするプリンセスです。

2011年10月21日金曜日

かくも残酷な真実

まずA畑の様子から。
山の西側を望む。

下方、ゴベルスブルクの村方向を望む。

東側、ガイスベアクを望む

畝越しに見下ろす下方の畑とランゲンロイスの町
次にB畑の様子をどうぞ。

ゴベルスブルクの町より数十メートル標高の高い台地状の畑

畑北西、レスの丘を望む

北方向。右側遠くに見えるのが我がお城。背後の山はハイリゲンシュタイン&ガイスベアク

信じられます? この違い!
しかも2つの畑の写真は同日の、15分と時間を空けずに撮影されたもの。
両方とも植えられているのはリースリングです。
もしあなたがどちらかの畑の傍らでピクニックをするとしたら、どちらで時間を過ごすでしょう? 
そして、どちらの畑から造られたワインが飲みたいと思いますか?

…。あなたのご想像通り、ブドウの出来も ;

A畑はこんな感じ
青い葉が多いところに注目。梗もまだリースリングらしい強さを保持しています。
付近でも珍しい石灰を含む砂岩やコングロマリット土壌が見えます。
対してB畑はこんな感じ
仮にいい貴腐に冒されていたにしても、木に残しておけないほど、
既に木が死んでいるというか、梗がかなり弱っでいます。
それでは正解は、…って別にクイズをしていた訳ではありませんが、
A畑は我がワイナリーの、いやカンプタール全体を代表する、というよりオーストリアの代表的リースリング銘醸畑のひとつに数えられるハイリゲンシュタインHeiligenstein
B畑はノインツェン・ヨッホNeunzehn Jochと名前こそついてはいるものの、カンプタールDACやジェネリック・ニーダーエスタライヒに使われるブドウを産する無名畑です。

そして肝心のブドウの味わいですが、両方から比較的よく熟した健全果を食べ比べてみると、同じ日のほぼ同時間の同品種か、と訝るほど両者の味わいは雲泥の差前者は甘くて酸っぱくて、風味が凝縮しており、味わいに立体感があります。後者は甘さが足りず、酸ばかり高く浮いており、風味も薄っぺらい

また、おそらく皆さんはエアステラーゲ(こちらの所謂グランクリュ)には手をかけて、無名畑はテキトーに栽培していると思っているでしょうが、実際はむしろ逆で、無名畑はトラブルが多く、普通のブドウを収穫するにも手がかかります。一方銘醸畑は病害が少なく、作業が楽な上、美味しい実をつけてくれるのですから、働くのが楽しいほど。

プリンセスがワインに興味を持ったのは、もちろん私が酒飲みで、ワインがその中でも美味しかった、ということもありますが、ここまで嵌ってしまった訳は、ワインというものが、時にドキっとするほど、世界の真実をまざまざと突き付けてくるからに違いありません。

そして、ここにお見せしたように、ワイン畑に民主主義は存在しません
気高いものはあくまでも気高く、凡人はどう背伸びしても一級品には成り得ないのです…。