2012年3月25日日曜日

クリスタル、ドンペリ、ドゥーツ アムール、ボランジェ グラン・ダネ、ポール・バラ@暗闇ワイン会

恐らく一年以上ぶりに、プロとその辺のプロが恐れをなして逃げ出しそうなスーパー愛好家の勉強会である“暗闇ワイン会”に参加しました。
その名の通り暗闇で、なんのヒントもなしにブラインドでワインを味わい、テーマを推測するのですが、今回は6種の中からテーマから外れる1種を言い当てるというオマケもつきました。
さて、本日のお題は泡
何の泡が注がれているのかすら告げられませんが、全てプレステージ・クラスのシャンパーニュであることは、ひと嗅ぎして予想がつきます。
が、結論として、シャンパーニュはやはり、スティルワイン的思考で推論を進めることは難しい!
例えばナッティなロースト香のようなニュアンスがあったとき、それをオートリシスが強いと見るのか、熟成が進んでいると見るのか、ベース・ワインを木樽熟成していると見るのか…
炭酸に弱く泡をあまり飲めない、そのくせ最初のシャンパーニュをいつもあまり意識せずにゴクゴクと飲み干してしまうプリンセスは、いまだにその辺の要因を取り違えることが多いのです。
ブラン・ド・ブランは端正でブラン・ド・ノワールは赤いベリーのニュアンス…と思っていたのですが、そして実際その通りだったにもかかわらず、ドサージュ由来の甘さをベリーの果実味と勘違いするという間違いを犯してしまったプリンセス。PNの骨格や体躯への影響度についてもあまり考えが及びませんでした。
結局、Bollinger Grande Aneeの甘いカラメルを思わせるトースト香を熟成香と取り違え、他の5本より明らかに旧いと推測し、しかもPaul Baraの妙にストレートな生生しい味わいをヴィンテージが新しいと読んだことで、テーマの『水平(2002)』を見抜くことができませんでした
from left: Dom Perignon 03, Crystal, Duetz Amour, Bollinger Grande Anee, Paul Bara Special Club, Dom Perignon (all 02)
実際のブラインド・テイスティング順に並んでいます。
仲間外れ探しも難航
Paul Baraの妙に高く太い酸や果実味(やや青さと生姜のようなスパイシーさ、薬草臭さ)のニュアンスが、他と違いやや一面的で複雑さを欠く印象があり、これだけNon MLFかと思いました。結果的には、グラン・メゾンに混じった唯一のRMということで、ある意味正解とも言えますが、vintageがひとつ03であるDom Perignonや、唯一のBlanc de BlancであるAmour de Deutz を、そう言い当てることはできませんでしたDeutzはあまりにバランスが良く教科書的であったため、3品種(或いは少なくともChardonnay & PN)ブレンドの典型的ヴィンテージ・ジャンパーニュだと踏んでしまったのです。
おまけに最初(03)と最後(02)のドンペリだけがウェブショップから購入したモノ(ただし正規輸入品)だったのですが、この2本のコンディションは明らかに他の4本より悪く、確かにドンペリ特有の強いイースト香はあるものの、1番はそこに缶詰のような熱を食ったニュアンスがあり(しかもこれが暑い年03の低めの酸と相俟って)、6番はそのイースト香が妙に木質的に重たく感じられ、ドンペリならではの高級な爽快感とでも言うべき端正な味わいを覆い隠してしまっており、推論を更に難しくしていました。
〆はプリンセスの手土産、お城ワイナリー リースリング TBA2009年
シャンパーニュは、同じ冷涼産地のワインとは言うものの、単一畑、単一品種、マロなし、新樽なし、の、ストレートに素材勝負的お城ワイナリー周辺のオーストリアのプレミアム辛口白とは対照的に、原料ブドウ畑&品種も色々、発酵容器も発酵形態も色々、ドサージュ他添加酵素なども色々、アッサンブラージュも縦横色々…と、考慮要素がとにかく多い…。だから結局、こうしたテイスティングで正しい推論ができるようになるためには、結果としてのハウススタイルを舌に叩き込むしか他に方法はないのかも知れません。
別の言い方をすれば、ニーダーエスタライヒの辛口白がソロ演奏なら、シャンパーニュは間違いなくオーケストラソリストの個性にいくら習熟してもオケ全体のスタイルには到達し得ないものなのです。さらに言うなら、グラン・メゾンとRMの違いは、大編成オケと編成の小さな室内楽アンサンブルみたいなものなのだ、と、RMの強みとある種の限界にも思い至りました。

いやあ、いつものことながら、大変に勉強になります!
帰国時にはやはり必ずこの勉強会には参加したいと思うプリンセスでありました。