2011年10月22日土曜日

もうひとつの真実

昨日のブログの結句を読んで「あら、プリンセスったら随分ニヒル」と思われたかも知れません。

でも、物事には必ず両面というものがあります
確かに、明らかにハイリゲンシュタインやガイスベアク、ラムやレンナーといった畑は、景色からブドウの状態から何から何まで、無名畑とは雲泥の差で、無名畑にいくら手を掛けても、先に述べたエアステラーゲ(プレミアム畑)でできるような素晴らしいブドウにならないのは厳然たる事実です。

けれど、エアステラーゲなんて数が知れています。ワイナリーの生産量全体に占める割合も微々たるものです。つまり、ワイナリーの経営を支えているのは、むしろ無名畑のブドウからできたワイン達なのです。

翻って、皆さんワイン消費者の立場で考えても、おそらく皆さんが普段口にされることの多いワイン、つまり小売店で3000円以下、レストランで5-6000円以下程度のワインのほとんどは、無名畑や、せいぜい中等級とみなされる畑のブドウから造られています

だからワイナリーにとっても、皆さんにとっても、無名&中等級畑からいかに最大のポテンシャルを引き出せるか、こそ一番肝心な点、ということになります。

ここでまたジャーナリストとして(或いはいちワイン愛好家として)の反省ですが、どうしてもそこのワイナリーの看板畑のワインにばかり注目しがちになります。
しかーし、
上の事実を証明するように、もちろんエアステラーゲで傑出したワインを造れない生産者に救いはありませんが、経営的に成功しているワイナリーは皆、そのベーシックなクラスのワインをとても好ましく仕上げています。所謂ヴェスト・ヴァリュー、ってやつに。

ベーシックなワインのボトムラインをどこまで上げられるか、ということになると、以前のブログにも書いたような、厳密な選定や整枝、除葉、グリーンハーベストの誠実な仕事ぶりだったり、収穫籠の配置だったり、使用器具のその場、その場での洗浄だったり、…と、諸々の実に地味な作業の積み重ねがモノを言うとしか言えません。実はそれは、エアステラーゲから超一線級のワインを造るための基本と全く同じなのですが。

それはおそらく、超有名絵画の影に隠された膨大な数のデッサンや、超難曲を華麗に弾きこなす演奏家の音階練習などになぞらえ得るものなのでしょう。

だとすると、私達は気づいていませんが、意外に「日々どうやって音階練習をしているか」みたいなヒョンなことに、その音楽家の「らしさ」が思わぬカタチで顔を出したりしているのかも? なんて考えてみたりするプリンセスです。