日の出が遅いので7時15分に繰り延べられた作業開始時間。 |
ああ、でもまた今週から冬時間になるので、6時45分に戻ります。 |
お城のある北に向かって極々微小に傾きのある、平地の畑。 背後に霞む、向かって左がハイリゲンシュタイン、道がガイスベアク |
ご覧の通り。左が北側。 |
何故?
その理由は畑で土を見ると少しわかります。
そして、収穫をしてブドウの実を観察し、食べてみれば更にはっきりと実感できます。
表土は軽い砂質。その下が小石で、水捌け抜群。 |
大きめの粒をみっちりとつけた大きめの房達。実に健康な状態。確かに熟しても緑色です。 |
ところで、このグリューナー・ヴェルトリーナー Gruener Veltlinerというブドウ。グリューン(=green)と言うだけあって、熟してもシャルドネやリースリングより果皮に緑色が残ります。
実の大きさやつき方の疎密がまちまちで、ツルに絡まれまくった、ちょっと邪悪な感じのする(ま、単に野生的、と言ってもいいですが)リースリングより、一見遥かに善人風。実の粒が大きく、密に威勢よくついており、房も大きく豪勢。お百姓さん的には、とても嬉しいブドウでしょう。
しかーし!
すくすく育ち過ぎるのはワイン用のブドウにとっては決していいことではありません。剪定、芽かき、除葉、摘房などの作業にいちいち余計な手間がかかります。
また、実がギッチリ詰まっている、ということは内部に湿気がたまって腐敗が起こりやすい、ということにもつながります(ただしグリューナーの場合、果皮が厚いので病害には強く、この欠点を補って余りある)。
それになんだか、ひとつの梗から双子や三つ子状に房の合体しているモノも多く、重なり合った部分が、かなりの確率で悪玉貴腐にやられています。
双子状態の房 |
これは三つ子状態。ジョイント部分が貴腐に冒されています。 |
健全果を食べ比べても、味わいの立体感や風味の凝縮度には数日置いてもはっきりわかる差がありました。
作業の途中で写真を撮ることを思いついた房。こういうのは実を顔に近づけると、お酢の匂いがします。 真ん中の薄茶色に変色した部分がその元凶。 |
悪玉をお掃除し終えた状態。 この作業、当然汁が飛びますから、手袋だけでなく、着ているものはブドウ果汁でベタベタです。 |
つまり、グリューナーはどの畑でもきちんと仕事をすれば、それなりのワインに仕上げやすい。即ち、スイート・スポットが大きい。
対するリースリングは、呆れるくらい畑を選ぶ。劣格の畑では酸っぱいばかり。スイート・スポット極小です。
ひねくれ者のプリンセスは、一見善人風で、ヒト当たりよく、それでいて分け入るとガッカリな部分もありがちなグリューナーより、ちょっと見邪悪で、ツルをかき分けかき分け、房を切り落とすにもひと苦労でありながら、様々な条件がピタっと折り合ったときには誰にも真似できない素晴らしい実をつけてくれるリースリングに、どちらかと言えば個人的には惹かれます。
ふたつのブドウの個性の違いを、ショッピングガイド風に翻訳すれば;
グリューナーにはお買い得多し。
美味しいリースリングが飲みたければ、それなりの出費は覚悟せよ。
…となります。
さあ、今週はいよいよラムLamm、レンナーRenner、グループGrub、というグリューナーのトップ・サイトの収穫に突入! お日様もようやく顔を出してくれたので、摘み手達もやる気満々のはず。
プリンセスもとっても楽しみです!