2012年4月22日日曜日

プロイドゥル、本物、太鼓判! その1

プリンセス、今日は懺悔せねばなりません
2冊もオーストリアワインに関するガイドブックを書いておきながら、こんなに素晴らしいワイナリーをピックアップできていなかったなんて…。

昨日土曜の午後、クレムスタールはゼンフテンベアクに1600年代からワイナリーを営むプロイドゥルProidlを訪ね、その素晴らしいワインの数々にノックアウトされた、という嬉しい懺悔ではありますが。
門に使われているのがこの辺りの名物岩=クフェーラー・クナイス(一種の花崗岩)
言い訳をお許しいただくなら、最初の本の取材候補に挙がっていたのです。その直後とある試飲会で、生産者本人とともにベーシック・クラスのワインを試す機会があり、製法を尋ねると、なんとその最も廉価なリースリングに「飲みやすくするためMLFをしている」と言うではありませんか!
当時のプリンセスは未熟で、「新樽なし、MLFなし」こそオーストリア辛口白の王道だと頑迷に信じ込んでおり、生産者のこの言葉を「邪道」と断じてしまったのです。

最近声を大にして「ラベリングの弊害」について書いているプリンセスですが、これは自らがその罠に嵌ってしまった恥ずかしい好例。以来このワイナリーを「邪道」の色眼鏡で見続け、真剣にワインをテイスティングしようとすらしませんでした。
大反省…。

そんな私を今一度振り向かせたのが、Falstaff誌から発行部数では大きく水を開けられているらしいものの、「読ませる」という意味でははるかにプリンセス的には気に入っているVinaria誌の記事と、各ワイナリーの全所有畑に対するエアステラーゲ比率を自分でチマチマ聞き歩き始めたところに浮上した、このワイナリーの所有畑の質の高さ
早速ワイナリー訪問を打診し、ようやく昨日念願叶った、という訳です。

「電車とバスを乗り継いで伺います」というプリンセスのメールに何度も「シュルス・ゴベルスブルクまで迎えに行くから」と返事をくれ、おまけに携帯に確認のメッセージまでくれた親切な奥さんのアンドレア。そして迎えに来てくれたのは、バイオテクノロジー研究機関勤務の長男フィリップ。
ワイナリーに向かう途中、「畑を見たいのだけれど、一旦ワイナリーまで行った方がいい? それとも、ワイナリーまでの道すがら見せてもらった方が効率的?」と尋ねると、父フランツに早速電話。一部の畑を通ってワイナリーへ向かうことと相成る。
レーヴェンツァーンの下草が満開。
標高400mあまりの頂上台地。右奥手に見える丘陵地がハイリゲンシュタインなどカンプタールの銘醸地帯
そこでまず驚いたのが、カンプタールとセンフテンベアクの丁度間の高原台地の畑の存在。
インターナショナルなオーストリア・ワインファン的には、ゼンフテンベアクと言えばニグル。ニグルと言えば廃墟下断崖絶壁に代表される、クレムスタール(=クレムス川の作る峡谷)の断崖絶壁畑注:ただしニグルから見えるあの畑こそ、このプロイドゥルの看板畑エーレンフェルスであることを、プリンセスも昨日初めて知りました…
なので、ウチからほんの7,8kmの距離にありながら、銘醸畑のないこの辺り、その存在すら意識したことがありませんでした
そして2度驚かされたのは、頂上台地の土壌
谷は上に行けば行くほど土壌が痩せているのが普通ですが、この頂上台地の土壌は非常に重い!
実は、ある坂に車を寄せて降りようとしたところ、ぬかるみにタイヤがはまり込んでしまい、2度と脱出不能となってしまう、というアクシデントがあり、この一件からも、この頂上台地の土壌がどれだけ重いか、がわかろうというものです。
手前の土壌、いかにも重そうでしょう?
車はこの左側の坂に嵌ってしまいました。
天気は快晴。涼やかな風が流れ、レーヴェンツァーンの下草が咲き誇る高原台地の畑は、快適そのものでしたが、実はプロイドゥル家のワインにとって、この辺りの畑は「一番どーでもいい場所(その証拠にブドウを抜いてしまったままの場所もあります)」。その本領は、やはりクレムス川峡谷の超急斜面、特に南から南東向きのクフェーラー・クナイス(花崗岩の一種だが所謂花崗岩ほど固くない)土壌の畑にあります

では明日はそうした斜面のお話を。