2012年5月14日月曜日

ハンガリー報告 その2 セプシ・イシュタヴァン

さて、セプシ氏がバスに乗り込み「この辺りはマードでも最も土が重い粘土質なので、最も甘く酸も高いワインになり、東部だともっとアロマティックになる」とのことですが、悲しいかなトカイ・ビギナーのプリンセスには、「ここ」が「どこ」なのかもわかりません。まあ、西にいるんでしょうね(本当は3度目ですが、いつも2,3時間の滞在なので、ほぼ何も知らないに等しい)。
それに、色々な固有名詞が聞き取れませんし、地図と照合しても所謂西洋式発音とは異なるので、にわかに発音と文字が一致しません
ここが、そのMadで最も土の重い一帯。
…そんな訳で生きる伝説のようなご本人自らの解説を受けているのに、豚に真珠も甚だしい状態。にもかかわらず、セプシ氏のいかにもハンガリー的愛嬌のあるブラック・ユーモアとでも言うのか(「悪童日記」や「笑っているのは誰」などが好きなヒトにはわかっていただけるでしょう)、いいワインを造るということへの愛情の深さと、それ故に、それを邪魔してきた社会主義政府、そしてそれが倒れた後の資本主義金儲け狂想曲に対する、痛烈な皮肉がチョロ、ッチョロっと顔を出し、抜群に面白い!
例えば;
「右側のGDC仕立てが見えるかい。あれは、社会主義時代に押し付けられた、厄災disasterの残骸だ。
こちらがディズアスター仕立て: )
社会主義時代のクローンは、実のできるだけ大きいのを選択したんだ。信じられるかい? できるだけ、実の大きいのをだよ。間違いではなく、大きい実。
「今通ってる道の名前が何て名前だったか知ってるかい? Red Army通りさ。私は町議の一人でもあるから(といったか町長でもあるから、と言ったか失念)、変えたよ。そんな名前、どこが楽しいんだ?
「社会主義が倒れて、資本家は畑を買い漁ったでも畑を維持せずに、手をかけずに値が上がってから転売しようとしたんだだが20年後、手入れされた畑とそうでない土地は価格に15倍の差があるのさ。(ざまあみろ、とは言いませんでしたが、顔にそう書いてありました)」

それはそうと、名生産者にテロワールオタクが多いのは当然のこととして、セプシ氏ほど土に対する本物の愛情と執着を発散する造り手には出会ったことがありません。
そんな彼が畑で、自宅中庭で、マードの土を解説してくれました。
この山はおそらく、St TamasかKiraly。
一旦打ち捨てられた伝統的銘醸畑が、続々と復活されつつある渦中。とてもエキサイティングです。
その模様は、また明日にでも。