2013年1月22日火曜日

忘れていません! ハイサン=ノイマン セラー&テイスティング編

畑からワイナリーに向かうと、ベートーヴェンハウスで名高いマイヤー・アム=プァールプラッツのある広場が現れ、その先の突き当りにハイサン=ノイマンはありました。
なぁんだ、目と鼻の先ではないですか!
セラー、プレスルームからの眺めが、いかにもヌースドーフ!
シュテファンはどうやら、最初から私をここに連れて来て、併設のホイリゲと呼ぶには品もクラスも高過ぎるレストランでお昼をご馳走してくれながらワインを試飲させてくれるだけの積りだったようです。
ごめんね、シュテファン。でも、プリンセスにそれは有り得ない話。畑で時間を潰し、汚れた靴で真新しいレストランの床を汚しまくった上、「お昼はいいからセラーを見せてくれ」とせがみます:)
あー、我ながらエレガントでない…
清潔で小じんまりとしたセラー。発酵の主体はステンレスタンクですが、大樽の3つ並んだコーナー、赤ワインの小樽が並ぶ一角もあり。ハッタリは何もありませんが、振動式の選果機やら小バッチのタンクやら…品質のためにはキチンと投資をしていることが見て取れます。
面白いことに、こうして畑とセラーを一回りするだけで、その人がどれだけ実作業に関わっているかは、すぐにわかります。
実作業をしているヒトは、説明しながら畑だと葉を落としたり、枝を誘引したり、針金の位置を直したり、セラーでは計器の数字チェックをしたり、不具合の機材を叩いてみたり、ポンプチューブを片付けたり…ついつい働いてしまうのです:) 

さらに面白いことに、オーナーがどこまで細かい作業までしているかは、意外にワインのレベルとは無関係。ワインメーカーに実作業は任せっ放しでも素晴らしいワインを造るところもあれば、自分で何から何までやって、凡庸なワインしか造れないヒトもいます。

畑巡りでも感じましたが、このシュテファンは本当に働き者プリンセスにセラーを案内しつつ、大樽のトップアップを行い、キチンとポンプチューヴのお片付までしてしまうのですから、天晴。

さて、最後にお昼を食べながら試飲。実はプリンセス、試飲を食事と一緒にするのが大の苦手。だって合わせる食事でワインの美味しさの印象は大違いなんですもの…。

まあでも仕方ありません。当のシュテファン自身がお腹を空かせているようですし:)
セロリのスープと人気メニューだと言う牛ステーキのフライドオニオン添えを頼みます。
うへ、凄いヴォリュームだ…。「ウィーン子はがっつり食べるからね。ガハハハハハ」とシュテファン。

1番目のワインは、最初はモアケラーで、2回目はショップで購入して、その軽快な「らしい」ミネラルに唸った、ご存知Gemischter Satz Nussbergゲミシュター・サッツ ヌースベアク 2011

続いてゲミシュター・サッツ ヴァイスライテン Gemischter Satz Weissleiten 2011軽くオレンジの香味が加わり、余韻も長く、ミネラルにも更に芯と切れがあり「これこれ」と、にんまり。

最初のワインは昨日の抜栓ということで、本来の味わいよりちょっとダレた感じもあります。まあでもヌースベアクはもう何度か試して、その軽快さはよくわかっているので問題なし。

ところで、プリンセスがゲミシュター・サッツに求めるのはあくまで「軽快な」ミネラルです。余韻の長さは、体躯のスケールの割には長い程度でよくって、必要以上に複雑で肉付きが良く、余韻が長くても重苦しいゲミシュター・サッツにはあんまり感心しません。あくまで個人的好みですけど。

ゲミシュター・サッツ ブームによって最近数多く出現した単一畑ものの多くが、ワインとしてのレベルを上げ、複雑さと余韻の長さを増す一方で、一番肝心の[軽さ]が犠牲になっていることが多いことを嘆いているプリンセスとしては、このワイナリーのヌースベアク→ヴァイスライテンのクラスの上がり方はとっても好ましい 早い話、階級上げても体重増やしちゃいかんのです。ゲミシュター・サッツたるもの。

そうプリンセスが話すと、シュテファンも「まあ、ゲミシュター・サッツっていうのは、そもそも品質を高めるためと言うより、伝統的リスクヘッジ技法だからね。つまり、単一のブドウだと、天候がそのブドウに不適当な年には全部被害を蒙る。それを分散するための工夫なんだよ。それに例えば気候的被害や樹齢の問題で木を植え替えることを考えてごらん。家族経営の農家に、一度にそんなに沢山の単一品種の苗木を調達することは難しかったはずだ。」と話してくれました。

実際に育ててみると、ジャストな収穫ポイントを見極めるのが難しいばかりか、リーフワークなどもバラバラなので、実は単一品種より面倒なんだ。味わい的にはクールネスとライプネスのバランスを取る興味深い試みだし、実際そのバランスを上手く取ったワインはちゃんと長期熟成もするんだけどね」ということです。

そして次に、「どうだ!」という感じで出して来たのがGV Haarlockenハーロッケン 2011。ヴァイスライテンとほぼ同じニュアンスのミネラルなのですが、こっちの方がスパイシーでスモーキーかつ圧倒的なミネラルの存在感! 畑を回った際にミネラルオタクを見抜かれたか…:)ここまで石灰的ミネラルがギュウギュウに詰まったグリューナーを、プリンセスはかつて味わったことがありません。

うーん、ハードボイルド! 確かにミネラルオタクは泣いて喜ぶでしょう…ただ、牛肉と合わせると、細身だと思っていたGS Weissleitenに含まれたCHA/Weissburgunderの風味が膨らんで、とてもいい豊かさが出るのに対し、GV Haarlockenは料理の風味を多少圧迫してしまい、コラボしません…ま、もう少しワインを熟成させるか、抜栓後時間を取るか、はたまた合わせるものが野菜料理や魚だとまた違うのかも知れませんが…。

そして帰りの電車の時間も迫ったので、最後のワインとしてRiesling Steinberg シュタインベアク 2011をいただきます。
オレンジブロッサムやアプリコットの風味がとても心地良いのですが、原成岩のリースリングの弾けるようなミネラルに慣れた身には、何か妙にスルリと口に入り、その割に石灰土壌独特の余韻の伸びがあまり感じられません。風味が魅力的なだけにちょっと残念…。シュテファン曰く、もう少し時間の必要なワイン、だそう。

釈然としない顔をしていると、プァッフェンベアクPfaffenberg 07を出して来ました:)。そう、シュテファンは実はKremstalの銘醸Pfaffenbergにも1ha畑を持っているのです。
ほほう、これは既にペトロール香のある、熟成感の出始めたリースリング。ミネラルは弾けます…ですよね。これがプリンセスの慣れ親しんだリースリング:)
サービスを仕切る女性はいるのですが、自分でしゃかしゃかコーヒーも淹れてくれちゃいます。

このワイナリー、他にもゲミシュターサッツのシャンパーニュ・メソッドによるスパークリングや、ピノ他の赤もあるのですが、やはり狙い目は2つのゲミシュター・サッツと、ミネラルオタク向けGV ハーロッケン辺りでしょうか(赤は試す時間がありませんでしたが…)。

ハイサン=ノイマンのゲミシュター・サッツは次回来日時に、意外な場所で極限定的にご紹介できる予定…。正式日本市場デヴューも近いか???
どうぞご期待下さい!!