2013年2月8日金曜日

あは! 見破られてました:)―― ウヴェ・シーファー訪問記 第5章

セラーでの驚きからプリンセスが回復し、テイスティング・ルームへの移動を促されつつ、ウヴェがプリンセスに尋ねます。「帰りのバスの時間は?」
ひえ! あと30分しかないではありませんか!!! …ということは、ここを15分後には出なければなりません。味わえるのは3種? 4種? 幸い現行ワインはそんなに多くはありません。

プリンセスが時間及び金銭管理能力に致命的欠陥を抱えていることは、長く、或いは深くお付き合いいただいた方の間では有名な話(自慢できることではありませんが)。こうして畑、セラー訪問やテイスティング に夢中になっていると、いつも帰りの時間を心配してくれるのはヴィンツァーの方…済みません、毎度お手間かけますぅ:)

さて、そんな訳で無駄口一切なしのテイスティング。当然写真もなし:)

最初のワインはブラウフレンキッシュ ズュドブルゲンラント Blaufränkisch Südburgenand 2011
非常に還元的に閉じたノーズ。白コショウや樟脳のようなやや神経質なミネラル。11年としてはとてもフレッシュないい酸。原成岩の白ワインのような弾けるようなミネラル感とかなりのタンニン。長い余韻。
小売現地価格€13-14くらいのワインとしては恐ろしいくらいのハイ・コスパとも言えるけれど、逆に、このクラスのワインが一般的に持つ、親しみやすさとか可愛気とかとは無縁。

次はブランフレンキッシュ パラ Blaufränkisch Pala 2011
透明感溢れるチェリーとアプリコット。非常にフレッシュな酸。細かい質の高いタンニン。…でも、開かない。可愛気はないなぁ…。新しいウチの抜栓直後はちょっと辛いかなぁ…。
なんだかズュドブルゲンラントもパラも、ボトリングされたものの方が、さっきセラーで試した未ボトリングのバレルサンプルより、さらに固く閉じてしまった感じがします。所謂ボトルショックというやつでしょうか…。

そして白に移り、ヴァイサー・シーファー Weisser Schiefer 2011
え? 前回取材時にその安さと美味しさに感服したGrüner Schiefer(GV)は? …2011は売り切れで、12からはもう止めてしまったのだそうです。残念…

気を取り直してWeisser Schiefer に戻ります。Welsch Rieslingが大半で、Weissburgunderが多少、場合によってはGVもブレンドされるというワイン。
キリッと締りのある、けれど角のない、高く軽やかないい酸。アプリコットの風味。グリーン・スレートそのものの"ウヴェ・ミネラル"カリカリしたところがなく、本当に石清水のように清冽
セラードア価格€7かそこらのグリューナー・シーファーのコスパにも驚きでしたが、それでもグリューナーはあくまでも「お買い得の超良質ワイン」というレベル。
対するこちらは、セラードア価格で€2高いとは言え、純然たる通好み。ミネラルが美しい! 素晴らしい! 絶対に「買い」!

そして最後にヴァイサー・シーファーS Weisser Schiefer S 2011
ウヴェはヴァイサー・シーファーにノーマル、S、Mの3種持っていて、Sはセレクションの意味。遅摘みブドウを小樽(4年目)熟成。オレンジ、ヌガーの複雑な風味。背後に膨大なウヴェ・ミネラル。 ウヴェはブルゴーニュと比肩し得るワイン、と言ったけれど、ブルゴーニュとはかなり違った趣…。質も申し分ないし、個性的で面白いワインだけれど…プリンセス的には、ノーマルのヴァイサー・シーファーの方が、俄然「らしい」という点で、価格はより安いけれども、「すごいワイン」だと思うのです。

因みにもうひとつのMはマイシェ(果皮)の略で、ご想像通り、果皮とともに醸した、所謂オレンジワイン。これは2011年が来年にならないとリリースされません。

ということで、もうバスに駆け込むのにギリギリの時間。ウヴェにライーブルクの08を1本買えないか、とお願いし、車に乗ろうとすると…、
…ふふふ、見透かされていました:)
プリンセス、ワインの評価が正直に表情に出てしまうのですよ。
ボトルからの試飲で一番感動したのはヴァイサー・シーファー。目当てのブラウフレンキッシュ ズュトブルゲンラントとパラが、あまりに固く閉じていて、なんだか評価のしようもなく、諸手を挙げて絶賛する、という感じにはならなかったんですよね。

「開けたワイン、全部家に持って帰って、ゆっくり楽しんでくれ」とウヴェ。「今晩から明日の方がずっと良くなるはずだから」

プリンセス、ここから5時間ほどかけて、バスと電車を乗り継ぎお城に帰ります。アラフィフ女に5本のワインは決して軽くはありません。
しかーし!
30代後半になって、日々ワインの木箱ケースを一日何十箱と品出ししていた体力は、腐っても鯛:) こういうときにモノを言います。
…ということで、有難くウヴェの申し出を受けさせていただき、片手にワイン5本入りの段ボール箱を抱え、プリンセスはお城への長い長い帰途につきました。

訪問記のエピローグはまた次回。