2012年2月14日火曜日

ヴィリー・ブリュンドゥルマイヤー 賢人のワイン

1月の最終週あたりから最高気温が-5度に達することは一切ない日々が続いています。暖かい室内に居座りたいところですが、帰国までにできるだけ沢山の2011ヴィンテージを味わい、生産者の話を聞きたい、ということで、極寒の中をウロウロとワイナリーを訪ね歩いています。そして遂に風邪をひいてしまったプリンセス。
今日は声は枯れ、気管支は痒いし、熱も出て絶不調ですが、最近訪れたご近所カンプタールのワイナリーの2011レポートを順次お届けします。…うーん、でもあさってからシュタイヤーマークを訪ねる予定だし、どこまでご紹介できるかわかりませんが。とにかく、第一弾、ブリュンドゥルマイヤーから。
この人は芯からの人格者。訪問したい意向を1週間ほど前にメールしたら、丁度オーストラリア出張中。帰国したその朝(それが昨日)に訪問承諾のメールをくれ、プリンセスが早朝にメールを確認せずに外出してしまったら、今度は携帯に連絡をくれ、私が徒歩だと知ると、わざわざ私が訪問している最中のエーンまで車で迎えに来てくれました。相手がジャンシス・ロビンソンだろうが、私だろうが、一般の観光客だろうが、いつも変わらず、とことん優しくて穏やか、そして謙虚な物腰。
プリンセスの今回の目的は、そんなジェントルな握手は気持ち悪いくらいジェントル過ぎます。経験したヒトはわかるでしょう : ) ヴィリーのワインが、何故カンプタールの著名ワイナリーの中でも最も硬派=ハードボイルドな味わいなのか、特に、最高峰ハイリゲンシュタイン アルテレーベンの全てを削ぎ落とした美、威厳溢れる美はどこから来るのか、そして同じハイリゲンシュタイン畑でありながら、何故シュロス・ゴベルスブルクやヒルシュのそれと個性が異なるのか、それを探究するためです。
頭痛いので簡単に書きます。以下ハイリゲンシュタイン・アルテ・レーベンの話です。
1)まず、ハイリゲンシュタインは広く、土壌も中気候も結構異なります。西側にある彼の畑は、理由詳細は省略しますが、より冷涼で岩ゴロゴロの土壌。⇒Sゴベルスブルクやヒルシュの畑の方が暖かくて、ややコングロマリットの砂粒が細かい。ブリュンドルマイヤーにエグゾティックな要素がないのはそのためか!
2)その名の通り古木(樹齢90年ほど)。収量は自然に低く、実は小さく、皮が厚い。⇒風味の一層の深さと複雑さはここから。
2)次に、貴腐は完全に排します。選果も畑で徹底します。(ここでSゴベルスブルクとの差が原料の段階でつきます)。⇒透明感と焦点の合ったコンパクトでスタイリッシュな味わいはここから。土壌こそ違え、RudiのAchleitenとどこか共通点を感じる(とは言ってもWilliのワインはRudiのものほど剛のイメージはありませんが)のは、畑の向きや水はけ、選果の仕方に共通点があったんですね! 因みに一度貴腐を混ぜたらパーカーでは高得点がついたけれど、1-2年で味わいがヘタってしまったとか。
3)果実味やフレッシュさ、エレガントさ、フローラルな風味が前面に出るホール・クラスター・プレス(同じハイリゲンシュタインでもリラはホールクラスター・プレス)ではなく、除梗をする⇒。ヴィリー曰く"Less flavored, more structured"なワインを目指したとのこと。
4)聞くのを忘れましたが、おそらく完全な自発的発酵ではないでしょう(彼のワインはこの周辺のワイナリーの中で常に最も残糖が少ないので、そう予測してみました。現在真相をフォロー中)。発酵の温度も高めのはずです。
5)アルテ・レーベンに関わらず、カンプタール以上のワインは、必ず大樽で休ませますが、上級クラスはステンレスタンクでの発酵最終段階に、澱とともに大樽に移します。⇒リースリングは上級クラスでもある程度ステンレスで熟成させてから、樽熟期間を短く取る(S ゴベルスブルク)、或いは半分は樽発酵熟成、半分はステンレス発酵熟成(ヒルシュ)という方法で、樽の影響を一定以下に抑えるワイナリーが多い中で、個性的。

ああ、ちっとも簡単じゃないですねぇ…(苦笑)。
昨日のインタビュー最中も鼻こそ利いていたものの、体調は良くありませんでしたが、内に秘めた硬質で神聖とも表現したい個性(ヴィリーはSakralと言っていました)の秘密が少しずつ明かされ、とてもエキサイティングな時間でした。
でもやっぱり、このワインの個性の一番の秘密は、彼自身の美意識と観察眼、そして実践的応用能力(要は頭の良さ)だと、インタビューを通し固く確信したプリンセスです。