2012年2月20日月曜日

シュタイヤーマーク その2 古都グラーツ     淡き艶やかさ

昨日のブログで地質学講座を予告しましたが、その前にグラーツ一泊報告から。
古典的中欧の美そのもの!
プリンセス、数えたことはありませんが、シュタイヤーマークへもおそらく既に8回やそこらは来ているはず。けれどこれまでほぼ例外なくウィーンから車でハイウェーを通ったので、グラーツは掠めもしませんでした。
人口はウィーンに次ぐオーストリア第2の、と言うものの、30万に満たない小都市。その規模ながら一応インターナショナル・エアポートもあるし、6つも大学はあるし、プリンセスが大ファンである古楽の巨匠ニコラウス・アーノンクールが主催する音楽祭“Styriarteスティリアルテ”の本拠地でもあるし…一度訪れたいと思っていました。そうそう、世界遺産にも指定されているし、欧州文化首都でもあるそうです。

Gross訪問を尻切れトンボで切り上げ(「今出ないと電車に間に合わない!」ということで)、ギリギリ・セーフで列車に滑り込み、グラーツ駅に降り立つと、駅舎はモダンで綺麗ですが、魅力的な街には見えません。土地勘がないので駅からなるべく近い場所に取ったホテルまでの道のりも、なんだか単調…。
Grossのシュテファンが予約してくれたレストラン Landhaus Kellerの場所をチェックし、徒歩で出掛けてみても…
しばらくひたすら退屈な裏町風情
ところが、ムーア川に架かるハウプトブリュッケ(中央大橋)を見つけ、向こう岸遠方の暗闇にぽっかりと浮かぶ要塞が視界に入るやいなや…、
そこは別世界!!
ムーア川の流れは速い!
向こう岸にぽっかり浮かぶ要塞(Grazはもともと要塞の意)
何かの都市伝説でしょうか。橋の欄干に錠前が山のように下げられています。
刃物屋の惚れ惚れとする整然としたディスプレー
ラヴリーな旧市街。お伽の国に紛れ込んだかのよう。

スワロフスキの入るビルの美しいこと!
流れの速い川が古都を縦断するさまは、即座にプリンセスに金沢を思い起こさせました。いや正確には京都と金沢の情景がぱっと頭に浮かびました。
そして旧市街に入ると、予感通りある意味ウィーン以上に古い建物や銅像が美しい!

さて、レストランを探しつつ小道に入ると、素敵な刃物商や民族衣装店が目につきます。プリンセスは全く民芸趣味はありませんし、クレムスでもウィーンでも民族衣装屋で素敵な服に出会ったことはないのですが(因みに、ブルゲンラントに至っては悪趣味の窮み)、なんだかこの町の民族衣装屋のショーウィンドウは洗練されています

レストランも、どこかウィーンと違う…もっとずっと給仕もマダムもヒトあたりが柔らかく暖かい。内装も、意匠・様式の違いとは別のところで、どこかにウィーンより明るさと艶やかさがある。でありながら、ラテン諸国や南ヨーロッパのそれとも異なり…如何にも古き善き中欧=ミッテルオイローパ。ウィーンより更にその色を濃く感じます。
シルヒャー・ゼクトの奥は木表紙のワインリスト
抑えた中間色の色使いがとても繊細
取り敢えずシルヒャー・ゼクトを飲みながら、メニューとワインリストを吟味。何をオーダーしようかあれこれ思案しつつ、周囲の客を観察していると、さっきウィンドウで見たような、とってもオシャレな民族衣装を、さりげなく着こなすヒトが多いことに気づきます。若い女性も民族民族田舎娘風情ではなく、モード系の上着にクールなミニマル・タッチのディアンドゥルを組み合わせていたり、若者もモードジーンズに民族衣装のジャケットを羽織っていたり、Gジャンの下に革の半ズボンを穿いていたりして「うーんこれってアッチ系の男性にはたまらないだろうなぁ」などと妄想を抱くプリンセス。
そこにおそらくまだ二十代前半に見える給仕がオーダーを取りに現れます。この若造(失礼!)、鼻をヒクヒクさせんばかりの勢いで客の動向をくまなく観察。バイトとおぼしき女の子のサーブの仕方に文句をつけ、彼女をムっとさせたりしています。その懸命さと誇り高さが、とっても愛らしい : )(と、この歳になって初めて思える、多少頑張りが前面に出過ぎるタイプ)。

「グラーツは初めてだからクラーツ名物を」と頼むと、なんと「Fisch魚」だと。「うーん、私は日本人なので、魚にはうるさいんだけど、まさか海の魚じゃあないでしょうね」と予防線。給仕君「ウチのはムール川で獲れたフレッシュな地物ばかり」と誇らし気なので、乗ることにしました。お勧めはSaibling岩魚。「メインはシュタイヤーマークらしく牛肉、でも重いものは食べられそうにないので…」と言うと、給仕君、ターフェルシュピッツを勧めて来ます。あまりに芸がないけれど、仰せの通りに。

アミューズまではシルヒャーゼクトで済ませ、さあ、岩魚に合わせるワイン。一人で1本は無理なので、グラスのお勧めを尋ねると、「ソーヴィニヨン・ブラン」と。ま、もう俎板の鯉。「それでお願い」。
ワイン自体極々普通の、シュタイリッシェクラシーク的なものいかにもSBな香りはドギツくなく、ほっと一息
そして、岩魚が来て納得。ワインがキュウリのソースにとても良く合うではありませんか! …ポイント
キュウリ・クリーム・ソースと岩魚&SBがとてもいい組み合わせ
ターフェルシュピッツはこうして盛り付けてくれます
次のターフェルシュピッツに何を勧めて来るか…。ヴェルシュリースリグ! 「えぇ、それはないんじゃあないの? しかもSBの後に」と思いましたが、これも料理が来てみると、この品種の持つ青リンゴのような風味が、リンゴ&ホースラディッシュのソースにドンピシャ! …更に1ポイント
左上の骨髄部分が特に美味でした。お野菜たっぷりで軽快なお味
デザートにはシュタイヤーマーク名物カボチャの種オイルのクレーム・ブリュレと、なかなか楽しそうなもので攻めて来ます。
しかも頼んでもいないのに「このデザートにはこれなんだ」と、茶色になった“1990年  ゲヴュルツのアウスレーゼ” という、目一杯「凄い」んだか、「外しまくり」なのか、判断のしようもないような : ) ワインを一緒に持って来るではありませんか!
手前はカリっと香ばしいカボチャの種
クレームブリュレは、キュルビス・オイルの風味も加わりかなり濃厚。怪しい茶色のワインもちゃんと綺麗に熟しており、心配したコテコテのゲヴュルツ香や汚い貴腐果は、あっけないくらい微塵もなく、なかなかの相性(ブリュレの重さにつり合い、しかもブリュレの濃厚モッサリ感がワインの酸である程度締り、多少の軽快さが出ます)。添えられたビスコッティに含ませると、心はトスカーナ=ヴィンサント…的な世界。…ポイントさらに追加!

いちいち外しそうなお勧めでドキドキものでしたが、なんのなんの。とっても楽しませていただきました!


なかなかイケテルぞ、グラーツ
次回はもっと明るい時間にゆっくり時間を取って、街を散策したいと思います。