2011年11月22日火曜日

リースリング ハイリゲンシュタイン&ガイスベアク   ワイン会@シノワ渋谷

昨晩は渋谷シノワでワイン会。
シノワのオーナーソムリエの後藤さんとは、もう15年以上のお付き合い。久々にあのつかず離れず、一般客には非常にスマート、常連客にはサディスティック? とも言える独特のサービスを楽しみにしていたのに、本人はオフで不在。
オーストリアワイン大使の篠原さんもつい先頃お店を辞めてしまい、寂しい限り。
その代わり、マネージャーの丹下さんとお話ができたし、ソムリエールの高木さんがシノワらしい、出過ぎず、それでいて行き届いたサービスをして下さいました。

さて、ワイン会のテーマは、お城ワイナリーのご近所きっての銘醸畑"Heiligensteinハイリゲンシュタイン"と"Gaisbergガイスベアク"。ふたつの畑をともに所有するご近所同士であるお城ワイナリーSchloss GobelsburgとヒルシュHirschの両畑を4つ並べて味わう、という趣向です。

最初にブリュドゥルマイヤーのゼクト ブリュット 07。マグナム瓶で参加者を“おおっ”と言わせてからのサーブです。かねがねプリンセスはここのゼクトをオーストリアいち、と喧伝していますが、この年はちょっと酸がダレ気味。
因みにオーストリアのゼクトには、瓶内二次発酵はしていても、ブドウ産地と瓶詰め場所に何ら関係のない、どーでもいいモノが多い。でも、勿論ちゃんと造っているところもあります。

代表選手として、まずこのブリュンドゥルマイヤーが最もシャンパーニュに近いスタイル(オートリシス、ブルゴーニュ品種主体…)。正反対に、ゼクトを主に造るシュタイニンガーの場合、グリューナーやリースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ムスカテラー、トラミーナーといったブドウ品種そのもののアロマを楽しむフレッシュなゼクト(ツヴァイゲルトやピノ・ノワールからの赤ゼクト、カベルネを使ったロゼ、なんて珍しいものもあり)。うちはブリュンドゥルマイヤー寄りで澱との接触は大切にしながら、品種的にはグリューナーやリースリングの割合が比較的多い、いわば両者の中間スタイル。

さて、メインのワインは、左から;
1) Hirsch Riesling Heiligenstein 2010
2) Schloss Gobelsburg Riesling Heiligenstein 2010
3) Hirsch Riesling Gaisberg 2010
4) Schloss Gobelsburg Riesling Gaisberg 2010
5) Schloss Gobelsburg Pinot Noir Alte Heide 2009
4つのリースリングを少しずつ、一度に味わいます。
最初は畑の違いより生産者の違い、つまり、収穫時期の差(ヒルシュは中間、ウチは非常に遅い)貴腐を混ぜるか、廃するか(因みにヒルシュは一切貴腐は排除、ウチはほとんど排除するものの、いい貴腐は多少残す)、或いは培養酵母を使うか使わないか(ヒルシュは自発的発酵のみ。ウチは自発的発酵主体だが、必要なら酵母を加える。おっとこれは味わいからはわかりません)、発酵熟成はステンレスか大樽か(ヒルシュは半々、ウチは全て何らかのカタチで大樽を使用)といった栽培&醸造の技法の違いがよりはっきり味わいに現れていました。
ヒルシュの直截なミネラル感とウチのワインの若いのに角がなく、複雑さのあるスタイルの対比ですね。
私はメインに黒鯛をチョイス。鴨や豚、鶏を選んでも、力強い白はしっかりお食事を引き立てたはず。
ところが時間とともに、両畑の土の違い(ハイリゲンシュタインは色の明るい火成岩主体。石灰分も多い。ガイスベアクは黒っぽい原成岩主体。石灰分はずっと少なめ)による味わいの差が、どんどんハッキリして来ました。
おそらくもっと寝かせると、さらに畑による差の方が大きくなったことと想像できます。

10年は比較的涼しく、酸とミネラル主体の年なので、こういう年には緻密なテクスチャーとしっかりとした骨格を誇るハイリゲンシュタインがとてもいい(09年や06年など暑い年には、若いうちは特にプリンセス的にはtoo muchな感じになりがちです:レベルでなく趣味の問題)。
汁気の多いガイスベアクは、暑く乾いた年には場合によっては、特に若いうちはハイリゲンシュタインより魅力的なこともよくありますが、こういう涼しい年になると、やはり多少控えめというか、地味な印象になります。
ハチミツと練乳のアイスにペドロヒメネスがけ
いずれにしても、畑による違いをしっかり出してくる生産者は、スタイルによる好みの差を乗り越えて、スゴイ人たちだ、ということをお忘れなく

最後のピノも09年という暖かい年、ということもあり、プロ参加者からも「いいワインだ」という声が聞かれました。実はオーストリアのピノって、中世から植わっている、いわば半地場品種ですから、レベルはとっても高いんです。

いつもワイン会に来てくれる生徒さん、大学時代の親友の先輩達やリアルで初対面の方、久々に旧交を温めた業界の古い友人、仏独のツアー通訳で出会った他のワインスクールの生徒さん達、鮓とワインの相性を見るワイン会に来てくださった方…などなど、ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました!
最後にプライベートな友人達と合流し、店主お手製の酢橘チェッロをいただきました。
皮のグリーンが外見にも味わいにもピリっとしたエッジを与える傑作! 昇天できます : )