2012年1月31日火曜日

ライタベアクとパノービレ その1 ピットナウアー  @パノービレ

先週の月曜、23日にウィーン在住13年の清水さんの運転でゴルスGols &ヨイスJoisのワイナリーを訪ねて来ました。

オーストリアのワイン産地を認知する標準的過程は恐らく、大きな括りで言えば、ヴァッハウを中心としたドナウ一帯(GV & Riesling)⇒ウィーン(Gemischter Satz)⇒シュタイヤーマーク(Sauvignon Blanc & aromatic)⇒ノイジードラーゼーの東西湖畔(貴腐)⇒ミッテルブルゲンラント(BF)⇒そして最後に残るのが、カルヌントゥムとノイジードラーゼーの北方、ゴルス&ヨイス近辺なのではないでしょうか。
つまりある程度オーストリアワインを知っているヒトでも、一番産地として『なんだかよくわからない』のがこの辺りなのではないか、とプリンセスは見ています。かつては白中心の産地でありながら、ここ20年ほどで赤白比率が逆転を見せているのもこの辺りで、それがますます産地としてのアイデンティティを訳のわからないものにしています

ということで、白のお宝をヴァインフィアテルで探すのと同じ理由で、赤のお宝はないか、とこれまで訪ねたことのないワイナリーや、質は高いのに日本未輸入のワイナリーを訪ねてみました。

ただし、ゴルス近辺は、ワイン畑が散在するヴァインフィアテルとは大きく異なり、カンプタールのランゲンロイスと並んでワイナリー集積度の高い町。しかも中世に修道士が最初にブルゴーニュ品種を持ち込んだのもこの辺りらしく、ピノ・ノワール、ザンクト・ラウレント(ピノのハーフ)、ツヴァイゲルト(ピノのクオーター)、といったブルゴーニュ系ブの産地として知られています。
それに、白の適地と赤の適地の交わる辺り――特に石灰&シスト由来のミネラル感溢れるワインを生むライタベアクは、プリンセスがデイヴィッド・シルクネヒト(ワイン・アドヴォケイトでオーストリアやブルゴーニュを担当するヒト)より早く注目していた(?  :)「エレガント・ブラウフレンキッシュ」の産地として、シュドブルゲンラントのアイゼンベアクとともに一挙に世界のワイン通の耳目を集めつつある場所です。

ヨイスから東に向かって湖のほぼ北から北東を走る丘の連なりがパノービレ。こちらは産地としてはノイジードラーゼー。一方でヨイスの西側、プルバッハを通ってドネアスキアヒェン、シュッツェンと湖の北西を斜めに走る丘陵地帯がライタベアク。こちらは産地的にはノイジードラーゼー=ヒューゲルラントとなります。
丘陵地としてこのふたつは連なって見えるのですが、土壌がはっきり異なります。東側は場所によって重さは異なりますが、石灰と鉄分、小石を多く含む砂地主体。西側は貝殻石灰とシスト主体です。で、東の有名生産者としてハインリッヒやペクル、ウマトゥム、西にはプリーラーやモリッツ(この人の最も有名な畑はミッテルブルゲンラントやシュドブルゲンラントにありますが、ワイナリーはこちらにあり、ブドウの調達元もこちらに増やしたい意向のよう)、コルヴェンツがいます。
なのですが、なにせ丘が連なっているため、両方に畑を持つA & H ニットナウスやウマトゥム、シュロス・ハルプトゥルンのような例が多く、これがまた混乱に輪をかけています。

以上、タダの講義はよそう、よそう、と思いながらもついやってしまう、オーストリアワイン講座でした : )。

では、最初の生産者ピットナウアーPittnauerから簡単に振り返ります。パノービレのビオディナ=ロジック(或いはバイオダイナ=ロジック;ビオディナミの手法を採るが、デメター認証を受けない。プリンセスの造語)の生産者です。
つい先ごろタスマニアからステファノ・ルビアナが来ていたらしく、「自分達のスタイルは日本人の嗜好に合うのではないか」と日本市場に興味を持っていたところへプリンセスが訪問。welcome気分満載のポジティヴ・オーラが楽しいテイスティングでした。
当主ゲアハルトとブリギッテ。「自分達のやっていることを分かって欲しい」
という真摯な思いがヒシヒシと伝わりました。
2009年に有機認証を受けたビオディナ=ロジックの効果か、
畑にモグラの穴が沢山見られます。土が生きている証拠。
緩斜面の下方は粘土の多い黒い土に小石。
上に行くほど石灰分が増え、土が白っぽくなります。
丘の下方はハイデボーデン。更に南にノイジードル湖が光ります。

ブリギッテお手製のザルツ・シュタンゲルの美味しかったこと!
風邪で咳込みながらも、熱心に説明してくれるゲアハルト
ポップなエティケットのワイン達。
最初のワインを除いて全部赤でしたが、飲み疲れなし。旨味の乗った果実味が心地良い、好ましいワイン達。
果実味の熟度はこの辺りとしては控えめでエレガントなのに旨味の十分に乗った、とても素直で暖かいワイン達。
光っていたのはSt. ラウレント。聞けばお城ワイナリーのSt. ラウレントも大好きだとか。
ツヴァイゲルトもピノも、その深みと透明感を両立した果実味と、適度なタンニンは心地いいのですが、プリンセス的には、特にピノは今少し酸が足りない…。そしてストラクチャーがちょっと緩い。
「うーんでも、一般受け、という意味ではこの両者の方がいいのかも知れない…。」と思いつつも、自身の尺度に忠実に、ザンクトラウレントのサンプルをいただいて来ました。

これも運のいい方、プリンセスの次回帰国時にご一緒しましょう!