2011年12月16日金曜日

オタク道まっしぐら@大阪            お好み焼きパセミア&ランジュ・ヴァン

昨日はプリンセス、大阪近辺でビジネスミーティングを2つこなし、夜は若い同業者のツバメK君と業界人の間で話題のお好み焼き"パセミア"でデート: )。
K君は22歳の医学生でありながら、既にワイン誌への寄稿もしているというスーパーボーイです。
さあ、オタクナイトの始まり始まり!


私のために自宅からワインを持って来てくれるに当たり、どんなものが飲みたいか尋ねられたのは当然ながら「ブラインドにしますか?」という問いにまずビックリ
プリンセスはお食事で飲むときにそういうことはまずしません。
そして最初のワイン、Rietsch Riesling Grand Cru Wiebelsbuerg 08に口をつけるといきなり「揮発酸出てますね」
うん、まあ。酸化もしている。でも空気に晒したリンゴの芯のような感じで、汚い感じはなく、私的にはセーフの範疇、と伝える。
すると、「岩城さん的には何点ですか?」
なのでいきなり説教。「あのね、安物に点数つけるのはいいかも知れないけど、グラン・クリュに点数つけるなんて、昨日のアルゲリッチは80点、って採点するのと同じ。そんな失礼なことはしないでしょ。アートに点数はつけられないでしょ。」
そう、プリンセスは誌上試飲やワインコンクールのジャッジなどで止むを得ぬ場合を除いて、ワインに点数を付ける行為は、特に個性を味わうべきプレミアムクラスについてはナンセンスだと思っています。

最初のオリーヴ
次にOstertag Riesling Menschberg 06。こちらも色合いはかなり濃くなって、酸化のニュアンスはあるものの、ガリっとしたミネラル感があり、しっかり土地の個性を現している、という意味で、最初のワインより一段も2段も格上。
様々な葉っぱと風味の異なる生ハムが2種、そこに柿のフレークやマーマレード、野菜のパテなどが配されたサラダ
カブのスープ。カブの甘さに黒胡椒がピリリ

ところでパセミアのお料理。突き出しの小豆島のオリーヴ、そして最初のサラダから素晴らしい! さながらお皿は野菜のパレット。微妙な風味のハーモニーを楽しんで欲しい、という作り手の繊細な味覚とさりげない配慮が感じられます。
とにかく野菜が美味。特に蓮根や人参など根菜類が秀逸。
2つ目の皿は初めて聞くような名前も含む多種の温野菜と鴨肉。鴨を見たら反射的にピノが欲しくなってしまいました。
すると、さすがはK君。そういうことも想定し、FourrierのGevrey Chambertin 09も持参してくれていました。ナイスな読みです。ただこのワイン、まだまだ幼児虐待的。もっと置いてから開けてあげるべきでした。ちょっと生真面目で生生しい感じではありましたが、体躯のしっかりした無口な健康優良児、といった感じで、時間とともに深みを増しました。

ちょっとちょっと、私達2人で3本め! しかもツバメ君は甲斐甲斐しくグラスにワインをどんどん注ぎ足してくれます。

メインのお好み焼きが来る頃にはプリンセスはすっかり出来上がり、K君と「テルペン、MLF、酸化、還元、ブレタノマイシス…」と呪文ばかりの超オタク話に花が咲きます。「あなたオタクとしては大したものだけれど、人間としてはサイテー」などなど、もうプリンセスは言いたい放題。オーナーで焼き手の中川姉弟には「今の録音しておきたかった」と、何度も言われましたから、もうこの辺りでアラフィフ&正真正銘息子の年代の医学生の”デコボコ ワインオタク漫談”みたいになっていたんだと思います。





お好み焼きを焼く間にfacebookでメッセージを入れておいた大阪在住のワインエデュケーターのK田氏より合流するとtel。彼の持ち込んだ泡とLouis LatourのCorton Granceyも、お好み焼きを食べながらどんどん注がれます。
ここでまたヴィンテージをブラインド。私2001、K君2002の予想で、彼の勝ち。確かにあのポテっとした焦点のない感じは01ではなかったかも。でも私、もう既に呂律が回っていないのが自分でもわかるくらいキテいます。

お好み焼きはオーバーでなく、アートの領域。焼き上がりにポン酢を振り掛けると、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐります。ちょっとこのシズルをお楽しみ下さい!
K田氏曰く、「お好み焼きは粉料理ではない。キャベツを最も美味しく食べる技である」。全く同意。

さて、パセミアで死ぬほど満足しているのに、さすがにK君は若い。キタ新地のワインバーへハシゴを誘われます。
そしてここでもK君の選んだワインをK田氏と私でブラインド。
K田氏の予想はヌフ・デュ・パプ。もう完璧に出来上がってしまっている私のアタマにはぼんやり最初に「熟成したブルネッロ」。続いて「ボルドー系の還元熟成」という言葉が浮かび、答えは後者にしておきました。シラフならブルネッロ+ボルドー=スーパータスカン、と正解が言えたかなぁ?
 Tignanello 83? 写真では判読不明だし、もう皆パーフェクトな酔っ払いだったし。K田氏は怪しい金属棒を鞄から取り出し、グラスに漬けてかき回しているし…。でも実際、銅の棒でワインの汚い還元香はかなり飛ぶことが判明。それがわかると酔っ払い3人で交代交代グラスを混ぜ混ぜ…。いやあ、近寄りがたい怪しいオタクオーラ全開の光景だったでしょうねぇ : )

本来人間もワインも、欠点を探すよりいかに美点を評価できるか、が幸せへの鍵だと考えるプリンセス。
しかし昨晩は”ワインのアラ探しゲーム”にどっぷり嵌ってしまいました。しかもそれが“子供の頃秘密基地で秘密実験”をした時のような痛快な楽しさで…。
オタク取りがオタクになりきった昨晩でした
ブラボー、ダブル オタッKs!