2012年10月21日日曜日

ローラント・フェリヒ“モリッツ”――クオリティーの秘密に迫る その3 ルッツマ ンスブルクの官能的魅力にぞっこん…

さて、いよいよテイスティングは、モリッツの名を世界にとどろかせたブラウフレンキッシュへ。

Blaufänkisch Burgenland 2011
黒々としたベリー、インク、スパイスのノーズ。滑らかで綺麗な、いかにもモリッツ的タンニン。通常12.5%のことが多が、この年は13.0%。…ということで、暑い年らしく、味わいは完熟した濃いベリー風味でやや甘さに傾き、多少ベタつくが、空気に触れてより深みを増す。後味に極軽い樽の痕跡。
ネッケンマークトの若木と、Lutzmannsburg, Zagersdorfの樹勢の強い古木(斜面下部の肥沃な部分)からのブドウを使用。ややマセラシオン期間とエクストラクションを抑えめにし、樽熟期間が約1年と短いことを除けば、上級ワインとほぼ同じ醸造方法で造られる。
正直€11という価格からは勿体ないくらいのポテンシャル。樽熟期間が短い分、やや生々し過ぎる果実味があるので、セラーのあるヒトは家で5年以上寝かせて飲んでみると、このワインの本当の実力がわかるはず。

Bkaufänkisch Reserve 2011 barrel sample
10-12か月澱とともに寝かせ、ラッキング後3か月。まだSO2も一切添加していない段階。因みにこのヒトのワインは超低SO2。例えば2009年のNeckenmarkt Alte Rebenはtotal 36, free 19という値。ローラント曰く長い澱との接触によりワインの抵抗力が増すため、この低さでワインをキレイに保つことが可能だということ。ただそのため、多少還元的になるのは止むを得ず、コルク打栓によって空気に触れさせることが不可欠で、スクリューキャップでは、味わい上困ったことになるので、醸造のやり方から変える必要が出る、とのこと。
コルクとスクリューキャップのメリット&デメリット、そして両者の比較テイスティングなどは散々行われていますが、なるほど、打栓というアクションそのもののもたらす空気、という視点も重要でした。

おっと、テイスティング・コメントを忘れていました。ふふ。やはりReserveとなると格が違います。香りも全然深みが増すし、フローラルでありながら、暗くネットリとした、所謂“ブラウフレンキッシュのマジカル・タンニン”を、ノーズから既に予想することができます。そして味わいはピュア、ストラクチャーに溢れ、タンニンは柔軟でキメ細かく、きれい。そしてスパイシー。長い余韻。既に気高さを感じます。

そしてRaidingライディング 2011 barrel sample
初めて味わうワイン。外観からして色が濃く、レッグが只者でなく厚く…。
香りは閉じ、空気に十分触れさせた後、ようやくスパイシーなアロマが少し出ます。味わいは甘く黒いペイスティーなタンニンがみっしりと詰まり、スパイスは固く、アルコールも高めで、これまでの彼のワインとは少々趣が違う
北部はホリチョンに跨る南西向きの畑の70年を超す古木ブドウより。
彼のアルテ・レーベンを構成する数あるバッチのうち、何故これを敢えてテイスティングに供したのか、と尋ねると、「誰もライディングのことなんか話さないから、ちょっとシンパシーがあって。古木になると其々の表の個性を超えて、こういう風に自分自身に帰るのさ」…と、なんだかわかったようなわからないような
因みに天才肌のヒトにありがちですが、このヒト、尋ねたことに直球で答えを返してくることはまずなく、まあでも、プリンセスの質問へのダイレクトな答えなんかより遥かに詩的&哲学的に興味深い話をしてくれるので、そのまま聞き入ってしまうのですが、後からノートを見返しても話の論旨が追えないこともよくあります(泣)…。

いよいよLutzmannsburg ルッツマンスブルク 2011 barrel sample
うわ! プリンセス既にノーズだけで悩殺されてしまいました。優美で深いスミレ、野バラ、黒糖、ジューシーで柔和…うーん、これは官能的だ…
口に含むとスルッと喉に液体の流れ込むシルキーでスムースなテクスチャー。リコリスの濃く深い風味がありながら、飲み心地はいたって軽やか。重さとは一切無縁。非常に長い余韻。
これ、このまま嗅いでいたい…。飲んでいたい…。

Neckenmarkt Alte Reben 2011 barrel sample
香りは閉じ気味。より固く、直線的。品行方正&ややシャイな感じ。バレルサンプルやリリース直後のNeckenmarktをLutzmannsburgと比較すると、いつもそうなのですが、ルッツマンスブルクの華麗さの前にちょっと影が薄い印象を、始めは与えます。
けれどよりフレッシュな酸、テンションとトーンの高いブルーベリー的果実味、そしてルッツマンスブルクの黒に対し、白いスパイス。リーフィーでハーバル、複雑な風味。よりキメの細かい密なテクスチャーとより堅固なストラクチャー…と、全ての要素がこのワインの長期熟成の可能性、化ける潜在性を示唆しています。そしてある一点を超えると、必ずLutzmannsburgを凌ぐ魅力を発揮するに違いない、と思わせる内に秘めた力と複雑さ、そして威厳を今でも十分に感じることができます。

いやあ、いつもながらアルテ・レーベンは凄い!

この後、たまたまテイスティング中に電話の入った、ヤギーニのワインを造るハネス・シュースターと、彼のワイナリーロージー・シュースターのザンクト・ラウレントを試飲することに。
ここでプリンセス、またまた衝撃的出会いをします。
to be continued